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病院坂の首縊りの家
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【この小説が収録されている参考書籍】
病院坂の首縊りの家の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.76pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全34件 1~20 1/2ページ
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上巻が昭和28年の事件、下巻が昭和48年の事件と、きれいに分かれている。 金田一耕助シリーズには、彼が事件に関わる事件の遠因が、20年ほど過去の未解決事件にあるものがやたらに多い。思いつくままに数作挙げると、『八つ墓村』 『女王蜂』 『幽霊座』 『悪魔の手毬唄』 『迷路荘の惨劇』……。殺人事件を伴わず、種がどーのというやらかしに広げれば、その数はぐんと増えるww【注1】 本作はその“二十年前の事件”から金田一耕助ががっつり関係し、上巻で現在進行形として語られるという趣向で、最大の特色である。 上下巻で800頁近くあるボリュームと生首風鈴という圧倒的な印象の割に、トリックという点では本作の発明でもない小粒なものがひとつあるだけなのだが、長尺故のドラマの豊かさと、金田一耕助の活躍の掉尾を飾る作品という尊さで、満足度の高い作品だと云ってよいだろう。 プロット的には、とびきりキャッチーな残虐さの演出とその動機の意外さという点で、『貸しボート十三号』を思い出した。背景説明を読んでも、少々納得しきれない点も共通だw それで連想的に頭に浮かんだのだが、上に書いた長尺故のドラマの豊かさ。 その中のひとつには、上巻でのチョイ役が下巻で存在感を増していたりと、20年の間に人間が如何に変わるか/変わらないかという読みどころが仕込まれている点がある。また恐喝者=完全な悪人、とも云いきれない微妙なバランスまで取らせながら、探偵/推理小説でよく揶揄される登場人物のステロさに一石を投じてもいる。 だが一方で、「本来の資質は高潔だが、不良ぶって事件をかき回す若者」役割のキャラはめちゃめちゃステロでないかい? 本作でその役割の法眼鉄也は、ハンサムではないが、長身で体格もよく、女性にもモテるw ある意味金田一耕助の容姿の真逆設定のキャラ設定でもあって、本作で久し振りに40代となって登場した多門修も、本来はその範疇のキャラである。 他に具体例は示さないが、この手の類似キャラはシリーズ中に数多く見られる。まぁいーかw 本作で法眼一族も五十嵐産業もどでかいダメージを蒙ったが、本来の性格を取り戻した鉄也が事業を再建できたのか、あるいは初志のとおり音楽の道に進んだのか……。 多門修がマネージャーとして差配しているK・K・Kの3つのKのうち、2つは風間と金田一のイニシャルだなんて設定は本作での後付けだと思うが、緑ヶ丘荘あらため緑ヶ丘マンションに1フラットを無償で与えられながら、その風間の好意が少々重荷に感じられて云々なんて描写は、金田一耕助が此の事件を最後に渡米して消息を絶ったという設定が、本作執筆の早いうちに決められていたことが想像できて興味深い。同じく「拾遺」で、筆者が耕助に、「ここに二、三当時の事件の記録があります。~どの事件にもどちらかの警部さんが関係していらっしゃいますから」(下P.405)と事件資料を渡される箇所がある。著者の宣言である。 その言行一致の作品が、磯川警部の関係した『悪霊島』だが、等々力警部の登場予定だった『女の墓を洗え』と『千社札殺人事件』は、残念ながら形になることはなかった……。 原作小説とドラマや映画でのキャラの違いと云えば、金田一耕助よりも等々力警部が大きい。 映像作品の等々力警部は、やかましいだけのコメディリリーフであることが多いが、原作小説での彼は、謎解きという面では然程に違いはないにせよ、警察組織の情報収集結果を利用して、本来部外者の金田一耕助が能力を発揮できるように最大限に便宜を図るとともに、時に彼の精神面や金銭面までを慮る、出来はよいが危なっかし気な弟を見守る兄のような存在である。 本作では退職後の等々力元警部の状況が詳しく描かれているものの、事件の関係者としての行動は、本條直吉の保護を分担して請け負いながら、甘さゆえに隙を作ってしまったバツの悪いものになってしまった。息子は警察キャリアとして父の後を追って警視庁で勤務し、自らは二か所の探偵事務所を経営するという勝ち組街道を歩んでいるにしては、残念な幕引きである……。 【注1】同年の事件ながら、金田一耕助は後半にしか登場しないという変奏曲ならば、『夜歩く』というのもある。 | ||||
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「病院坂の首縊りの家」は横溝正史の長編推理小説。昭和50年12月から昭和52年9月まで「野性時代」に長期連載された作品で、昭和29年7月に「宝石」で連載がスタートした「病院横町の首縊りの家」という未完の短編が原型となっている。杉本一文氏による表紙絵は本作の特徴を見事に描き出しており、横溝作品の中でもお気に入りの一つだ。 角川文庫のKindle版で金田一耕助シリーズを読み始めたときから、最後に読むのはこの「病院坂の首縊りの家」にしようと決めていた。それはこの作品が名探偵・金田一耕助が挑む最後の事件であり、金田一の相棒である等々力警部にとっても最後の物語だからである。読み終えた時の寂しさは言葉にできないものがあった。 本作は第一部「輪廻の章」、第二部「転生の章」の二部構成となっており、後編でようやく20年前に迷宮入りした事件の真相が明らかにされる。この壮大なスケールの物語について、まずはあらすじから紹介したい。 ●第一部「輪廻の章」(上巻) 昭和28年8月。金田一耕助は法眼病院の理事長である法眼弥生から、孫娘の由香利が誘拐されたので調査してほしいという依頼を受ける。時を同じくして金田一は、本條写真館の跡取りである直吉から奇妙な結婚写真にまつわる相談を受けていた。現在は廃墟となっている旧法眼邸に出張し、記念写真を撮らされたというのだ。その廃墟は「病院坂の首縊りの家」と呼ばれているという。 かつて病院坂の法眼邸では、山内冬子という哀れな女性の首吊り自殺があった。その女性は法眼弥生の夫・琢也の愛人だったが、戦争を機に幸福から転落し、空爆で死亡した琢也の終焉の地ともいうべき場所で縊死したのである。彼女には継子の敏男と、琢也との間にできた小雪という娘がいたはずだが、二人の消息は杳として知れなかった。 調査を進める金田一は、その結婚写真に花婿として収まっているのが、ジャズ・コンボ「怒れる海賊たち(アングリー・パイレーツ)」のリーダーを務める山内敏男であることを察知する。また、前後不覚の状態で花嫁衣裳を着せられているのは、小雪ではなく誘拐された由香利ではないかと推理していた。しかし、容疑者と目されていた敏男の生首が、「病院坂の首縊りの家」で風鈴のように吊るされて発見されるのだった……。 > 父来たり母いそいそと子らふたり、 > 心まろやかに眠るなりけり……天竺浪人 ●第二部「転生の章」(下巻) 自ら犯人だと告白する手紙を送ってきた山内小雪は行方不明となり、そのまま迷宮入りしてしまった「生首風鈴事件」。あれからおよそ20年が経過した昭和48年4月、金田一耕助は本條直吉から再び依頼を受ける。何者かに命を狙われていること、その原因は父・徳兵衛が長年にわたり法眼弥生を強請っていたことにあると告げたうえで、自分が殺されたら真実を明らかにしてほしいと懇願するのだった。 警視庁を定年退職し秘密探偵事務所を開設した等々力元警部の元を訪れ、ともに直吉の身辺警護にあたる金田一であったが、その努力も空しく直吉は転落死してしまう。これを皮切りに「怒れる海賊たち(アングリー・パイレーツ)」の元メンバーを狙った連続殺人事件が発生。その容疑者として浮上したのは、法眼由香利の一人息子であり、山内敏男の面影を色濃く残す法眼鉄也だった……。 > 風鈴はいとしからずや語り合う、 > ふたりの窓に鳴りつづけいて……琢也 この恐ろしい物語は昭和28年8月28日にはじまり、昭和48年4月30日にやっと解決したという、金田一耕助の扱った事件としては他に類を見ないほど長年月を要した事件である。その間じつに19年と8ヶ月。金田一の手腕をもってしても、病院坂の首縊りの家における「生首風鈴事件」は容易に解決できぬ事件だったと言えるだろう。 山内敏男の挽き切った生首を風鈴になぞらえてぶら下げてあったというが、はたして首から下はどこへ行ってしまったのか。また、自らを犯人だと告げる手紙を送ってきた敏男の妻・小雪はその後どうなったのか。法眼弥生が頑なに守ろうとした秘密とはいったい何だったのか。これらの謎は20年もの年月を経て、ようやく明らかになるのであった。 シリアスな本作だがユーモラスな場面も用意されている。事件現場の広いホールは一面が血飛沫に覆われており凄惨を極めるものであったが、そんな場所でも「だって、あそこにヨカナーンの首がある以上、どこかにサロメがいるはずだからね。わっはっは」と冗談をとばす等々力警部と、この上司に向かってまっこうから噛みつきそうになる高血圧の真田警部補という組み合わせは愉快だった。 柄にもなく探偵みたいに病院坂の空家を探検し、金田一に懐中電燈で脅されたあげく、女房に無断外出だと叱られふてくされる横溝正史も微笑ましい。だが、空家へ潜り込んだ正史が鼠の穴から発見した、風鈴にぶらさがっていたと推測される短冊と、その裏に棒紅で走り書きされた「助けて 由香利」という言葉が、金田一がこの事件を推理するうえで大いに役立つのである。 > 池の端池を渡りて吹く風に、 > 鳴る風鈴の音ぞ哀しく……琢也 事件解決後、金田一耕助はこれまで世話になった山崎老夫婦やあちこちの施設に全財産を寄付したのち、アメリカへ旅立ち消息不明となる。「本陣殺人事件」から36年という月日が経過し、「病院坂の首縊りの家」は金田一耕助と等々力警部にとって最後の事件となった。著者はこの後、もう一人の相棒である磯川警部の花道を飾る作品として「悪霊島」を書き上げているので、併せてお読みいただければ幸甚の至りだ。 ところで、「病院坂の首縊りの家」は市川崑監督の映画版でご存じの方も多いのではないだろうか。大長編である原作をそのまま映画化することは出来ないため、原作では解決まで20年近くかかった迷宮入り事件を数ヶ月に短縮したり、事件の展開や登場人物にも数々の改変が加えられたりしてまったくの別物になっている。結末も原作と異なるが、あの坂道での美しいラストシーンには強く心を動かされた。 映画版「病院坂の首縊りの家」の見どころは、何と言っても桜田淳子が一人二役で演じている法眼由香利と山内小雪である。ジャズ・コンボ「怒れる海賊たち(アングリー・パイレーツ)」のボーカルとして、「It’s Only a Paper Moon」を歌う姿はとても魅力的だった。本書の余韻に浸りつつ、映画の方もまた観てみたいと思う。 <第一部「輪廻の章」登場人物> 法眼琢磨 … 東北のさる大藩の典医。鉄馬に英才教育を施した。 法眼鉄馬 … 琢磨の長子。法眼病院創設者。汚職で陸軍を辞す。 法眼朝子 … 鉄馬の正妻。剛蔵の娘。子供ができなかった。 法眼千鶴 … 鉄馬の異母妹。夫健一の死後、猛蔵と再婚した。 法眼琢也 … 鉄馬の養子。すみの息子。歌集「風鈴集」を残す。 法眼弥生 … 千鶴と健一の娘。琢也の妻。法眼病院理事長。 法眼万里子 … 琢也と弥生の娘。鬼っ子。山内冬子を酷く罵る。 法眼三郎 … 万里子の夫。法眼病院内科医。夫婦で事故死した。 法眼由香利 … 万里子と三郎の娘。無軌道な性格で誘拐される。 宮坂すみ … 鉄馬が陸軍軍医時代に深く契った女。妾となる。 桜井健一 … 千鶴の夫。日清戦争の際、澎湖島で散華した。 山内冬子 … 琢也の妾。小雪が実娘で敏男は継子。自殺した。 山内敏男 … ジャズ・コンボ「怒れる海賊たち」のリーダー。 山内小雪 … 「怒れる海賊たち」のソロシンガー。敏男の義妹。 秋山風太郎 … 「怒れる海賊たち」のピアノ。山藤道具店の倅。 佐川哲也 … 「怒れる海賊たち」のドラム。敏男が左目を潰す。 原田雅実 … 「怒れる海賊たち」のテナーサックス。元配線工。 吉沢平吉 … 「怒れる海賊たち」のギター。元銀行員。及び腰。 加藤謙三 … 「怒れる海賊たち」の見習い。好奇心が強い少年。 五十嵐剛蔵 … 法眼琢磨の盟友。堂々たる政商。鉄馬の舅。 五十嵐猛蔵 … 剛蔵の倅。朝子の弟。我執の強い俗物。道楽者。 五十嵐泰蔵 … 千鶴と猛蔵の息子。孤独で異父姉の弥生を慕う。 五十嵐光枝 … 泰蔵と駆け落ちし妻となる。元女中。旧姓田辺。 五十嵐透 … 泰蔵と光枝の息子。若い頃女を作り滋が産まれる。 五十嵐滋 … 透の息子。泰蔵の養子。デブ。由香利に惚れる。 本條権之助 … 芝高輪の泉岳寺そばにある本條写真館の創始者。 本條紋十郎 … 権之助の息子。本條写真館の二代目。 本條徳兵衛 … 紋十郎の息子。本條写真館の当主。 本條直吉 … 徳兵衛の頼りない跡継ぎ。金田一の依頼人。 兵頭房太郎 … 戦災孤児だったのを徳兵衛が拾い弟子にした。 杉田誠 … 芝高輪郵便局の局員。病院坂の空家で死体を発見。 山田吉太郎 … 杉田誠と一緒に空家へ踏み込んだ近所の住人。 伊藤泰子 … 佐川哲也が住む「いとう荘」の大家。戦争未亡人。 伊藤貞子 … 泰子の娘。独身。女性居住者のよき相談相手。 井上良成 … 詩壇の大家。レコード界の大御所的存在。酒豪。 井上美禰子 … 良成の後妻。元歌手。夫婦で麻雀に眼がない。 森ひろし … 井上良成に発掘された演歌歌手で麻雀仲間。 横溝正史 … 探偵作家。砧の隠居。金田一は成城の先生とよぶ。 お妙 … 正史が金田一を招いた銀座の上方料理ひさごの女中。 張潮江 … 探偵小説誌ジュエルを主催。詩人張嘉門。正史の友。 天竺浪人 … 詩集「病院坂の首縊りの家」の著者。山内敏男。 多門修 … クラブK・K・Kの用心棒。前科者。金田一の助手。 風間俊六 … 風間建設社長。金田一の旧友でパトロン。 お清 … 金田一が居候している割烹旅館「松月」の女中。 古垣博士 … 高名な法医学者。金田一耕助や等々力警部と昵懇。 加賀助手 … 古垣博士の助手。 山本先生 … 高輪署の嘱託医。 真田警部補 … 高輪署の捜査主任。金田一の協力に感謝感激。 芥川警部補 … 大崎署の捜査主任。口が悪く通称は悪たれ川。 塩月警部補 … 渋谷署の捜査主任。福徳円満。温顔の持ち主。 加納刑事 … 高輪署の刑事。山内冬子の縊死事件を担当。 坂井刑事 … 大崎署の刑事。山内兄妹のギャレージへ急行。 新井刑事 … 警視庁捜査一課所属の刑事。等々力警部の腹心。 寺坂巡査 … 病院坂上派出所配属。本條らと生首風鈴を発見。 葉山巡査 … 寺坂巡査と交替し現場へ。本條写真館と馴染み。 今西巡査 … 葉山巡査と交替した同僚。 等々力大志 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。 <第二部「転生の章」登場人物> 本條徳兵衛 … 本條会館を急成長させた恐喝者。直腸癌で死亡。 本條直吉 … 徳兵衛の倅。本條会館会長。金田一の依頼人。 本條文子 … 直吉の妻。非常な良妻賢母。 本條徳彦 … 直吉の倅。年齢も高校も一緒の法眼鉄也は親友。 本條直子 … 直吉の娘。徳彦の妹。 石川鏡子 … 直吉の秘書。 加山又造 … 直吉が所有するリンカーンの運転手。 伊東俊吾 … 本條会館の専務で支配人を兼ねている。 高畑英治 … 本條会館の背後に建つ「温故知新館」管理主任。 兵頭房太郎 … 本條会館を辞めたのち人気ヌード写真家になる。 チャコ … ヌード・モデル。房太郎とは親しい間柄。 法眼弥生 … 法眼家の実権を握る女傑。由香利以外は面会せず。 法眼由香利 … 弥生の孫。五十嵐産業会長。法眼病院の理事長。 法眼滋 … 由香利の婿養子。五十嵐産業社長。本條会館の重役。 法眼鉄也 … 由香利の息子。海外育ち。目下浪人中。 五十嵐光枝 … 滋の祖母。鉄也の曾祖母。肥満体で愚痴が多い。 喜多村博士 … 法眼病院院長。琢也の愛弟子。弥生の主治医。 遠藤多津子 … 喜多村博士の指示で弥生に付き添う看護婦。 里子 … 法眼家で一番年の若い女中。 関根美穂 … 法眼鉄也の幼馴染で恋人。 関根健造 … 美穂の父。外交官。今も外国に住んでいる。 関根玄竜 … 美穂の祖父。有名な彫刻家。日本で美穂を預かる。 関根いと子 … 玄竜の妻。夫婦揃って孫の美穂に眼がない。 関根竜一郎 … 健造の兄。大学教授。美穂はなぜか馴染めず。 関根幾久子 … 竜一郎の妻。外聞ばかり気にする教育ママ。 町田啓子 … 美穂の友人。「ザ・パイレーツ」の熱烈なファン。 佐川哲也 … 「ザ・パイレーツ」のバンドマスター。片眼帯。 伊藤貞子 … 哲也が青山に構える豪華マンションの家政婦。 秋山浩二 … 毎年ヒット曲を出す人気作曲家。哲也と交流あり。 原田雅実 … 御徒町で原田商会という電気器具商を営む。 加藤謙三 … 銀座界隈で流しの演歌歌手をしている。 吉沢平吉 … 三栄日曜大工センターのマネージャー。陰々滅々。 倉持六助 … 三栄日曜大工センター社員。仕入れ部所属。 早瀬藤造 … 三栄日曜大工センター社員。 香川信治郎 … 三栄日曜大工センター社員。 山本七郎 … 三栄日曜大工センター社員。 お八重 … 日曜大工センターの近所にある赤提灯ちぐさの店員。 山上良介 … 吉沢平吉に接触してきた初老の紳士。自宅に招く。 風間俊六 … 風間建設社長。金田一の旧友でパトロン。 菊池寛子 … 風間のかつての愛人。クラブK・K・K共同経営者。 多門修 … ナイト・クラブK・K・Kの総支配人。金田一の崇拝者。 山崎 … 金田一が無償で住んでいる緑ヶ丘マンションの管理人。 山崎よし江 … 山崎の妻。金田一耕助のハウス・キーパー。 加納警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。合同捜査を統率する。 等々力栄志 … 警視庁の警部補。等々力大志の倅。 甲賀警部補 … 高輪署の捜査主任。 栗原警部補 … 玉川署の捜査主任。 真田警部補 … 20年前の捜査に関わっていたが高血圧で死亡。 等々力大志 … 退職後に開設した等々力秘密探偵事務所の所長。 金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。 | ||||
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「病院坂の首縊りの家」は横溝正史の長編推理小説。昭和50年12月から昭和52年9月まで「野性時代」に長期連載された作品で、昭和29年7月に「宝石」で連載がスタートした「病院横町の首縊りの家」という未完の短編が原型となっている。杉本一文氏による表紙絵は本作の特徴を見事に描き出しており、横溝作品の中でもお気に入りの一つだ。 角川文庫のKindle版で金田一耕助シリーズを読み始めたときから、最後に読むのはこの「病院坂の首縊りの家」にしようと決めていた。それはこの作品が名探偵・金田一耕助が挑む最後の事件であり、金田一の相棒である等々力警部にとっても最後の物語だからである。読み終えた時の寂しさは言葉にできないものがあった。 本作は第一部「輪廻の章」、第二部「転生の章」の二部構成となっており、後編でようやく20年前に迷宮入りした事件の真相が明らかにされる。この壮大なスケールの物語について、まずはあらすじから紹介したい。 ●第一部「輪廻の章」(上巻) 昭和28年8月。金田一耕助は法眼病院の理事長である法眼弥生から、孫娘の由香利が誘拐されたので調査してほしいという依頼を受ける。時を同じくして金田一は、本條写真館の跡取りである直吉から奇妙な結婚写真にまつわる相談を受けていた。現在は廃墟となっている旧法眼邸に出張し、記念写真を撮らされたというのだ。その廃墟は「病院坂の首縊りの家」と呼ばれているという。 かつて病院坂の法眼邸では、山内冬子という哀れな女性の首吊り自殺があった。その女性は法眼弥生の夫・琢也の愛人だったが、戦争を機に幸福から転落し、空爆で死亡した琢也の終焉の地ともいうべき場所で縊死したのである。彼女には継子の敏男と、琢也との間にできた小雪という娘がいたはずだが、二人の消息は杳として知れなかった。 調査を進める金田一は、その結婚写真に花婿として収まっているのが、ジャズ・コンボ「怒れる海賊たち(アングリー・パイレーツ)」のリーダーを務める山内敏男であることを察知する。また、前後不覚の状態で花嫁衣裳を着せられているのは、小雪ではなく誘拐された由香利ではないかと推理していた。しかし、容疑者と目されていた敏男の生首が、「病院坂の首縊りの家」で風鈴のように吊るされて発見されるのだった……。 > 父来たり母いそいそと子らふたり、 > 心まろやかに眠るなりけり……天竺浪人 ●第二部「転生の章」(下巻) 自ら犯人だと告白する手紙を送ってきた山内小雪は行方不明となり、そのまま迷宮入りしてしまった「生首風鈴事件」。あれからおよそ20年が経過した昭和48年4月、金田一耕助は本條直吉から再び依頼を受ける。何者かに命を狙われていること、その原因は父・徳兵衛が長年にわたり法眼弥生を強請っていたことにあると告げたうえで、自分が殺されたら真実を明らかにしてほしいと懇願するのだった。 警視庁を定年退職し秘密探偵事務所を開設した等々力元警部の元を訪れ、ともに直吉の身辺警護にあたる金田一であったが、その努力も空しく直吉は転落死してしまう。これを皮切りに「怒れる海賊たち(アングリー・パイレーツ)」の元メンバーを狙った連続殺人事件が発生。その容疑者として浮上したのは、法眼由香利の一人息子であり、山内敏男の面影を色濃く残す法眼鉄也だった……。 > 風鈴はいとしからずや語り合う、 > ふたりの窓に鳴りつづけいて……琢也 この恐ろしい物語は昭和28年8月28日にはじまり、昭和48年4月30日にやっと解決したという、金田一耕助の扱った事件としては他に類を見ないほど長年月を要した事件である。その間じつに19年と8ヶ月。金田一の手腕をもってしても、病院坂の首縊りの家における「生首風鈴事件」は容易に解決できぬ事件だったと言えるだろう。 山内敏男の挽き切った生首を風鈴になぞらえてぶら下げてあったというが、はたして首から下はどこへ行ってしまったのか。また、自らを犯人だと告げる手紙を送ってきた敏男の妻・小雪はその後どうなったのか。法眼弥生が頑なに守ろうとした秘密とはいったい何だったのか。これらの謎は20年もの年月を経て、ようやく明らかになるのであった。 シリアスな本作だがユーモラスな場面も用意されている。事件現場の広いホールは一面が血飛沫に覆われており凄惨を極めるものであったが、そんな場所でも「だって、あそこにヨカナーンの首がある以上、どこかにサロメがいるはずだからね。わっはっは」と冗談をとばす等々力警部と、この上司に向かってまっこうから噛みつきそうになる高血圧の真田警部補という組み合わせは愉快だった。 柄にもなく探偵みたいに病院坂の空家を探検し、金田一に懐中電燈で脅されたあげく、女房に無断外出だと叱られふてくされる横溝正史も微笑ましい。だが、空家へ潜り込んだ正史が鼠の穴から発見した、風鈴にぶらさがっていたと推測される短冊と、その裏に棒紅で走り書きされた「助けて 由香利」という言葉が、金田一がこの事件を推理するうえで大いに役立つのである。 > 池の端池を渡りて吹く風に、 > 鳴る風鈴の音ぞ哀しく……琢也 事件解決後、金田一耕助はこれまで世話になった山崎老夫婦やあちこちの施設に全財産を寄付したのち、アメリカへ旅立ち消息不明となる。「本陣殺人事件」から36年という月日が経過し、「病院坂の首縊りの家」は金田一耕助と等々力警部にとって最後の事件となった。著者はこの後、もう一人の相棒である磯川警部の花道を飾る作品として「悪霊島」を書き上げているので、併せてお読みいただければ幸甚の至りだ。 ところで、「病院坂の首縊りの家」は市川崑監督の映画版でご存じの方も多いのではないだろうか。大長編である原作をそのまま映画化することは出来ないため、原作では解決まで20年近くかかった迷宮入り事件を数ヶ月に短縮したり、事件の展開や登場人物にも数々の改変が加えられたりしてまったくの別物になっている。結末も原作と異なるが、あの坂道での美しいラストシーンには強く心を動かされた。 映画版「病院坂の首縊りの家」の見どころは、何と言っても桜田淳子が一人二役で演じている法眼由香利と山内小雪である。ジャズ・コンボ「怒れる海賊たち(アングリー・パイレーツ)」のボーカルとして、「It’s Only a Paper Moon」を歌う姿はとても魅力的だった。本書の余韻に浸りつつ、映画の方もまた観てみたいと思う。 <第一部「輪廻の章」登場人物> 法眼琢磨 … 東北のさる大藩の典医。鉄馬に英才教育を施した。 法眼鉄馬 … 琢磨の長子。法眼病院創設者。汚職で陸軍を辞す。 法眼朝子 … 鉄馬の正妻。剛蔵の娘。子供ができなかった。 法眼千鶴 … 鉄馬の異母妹。夫健一の死後、猛蔵と再婚した。 法眼琢也 … 鉄馬の養子。すみの息子。歌集「風鈴集」を残す。 法眼弥生 … 千鶴と健一の娘。琢也の妻。法眼病院理事長。 法眼万里子 … 琢也と弥生の娘。鬼っ子。山内冬子を酷く罵る。 法眼三郎 … 万里子の夫。法眼病院内科医。夫婦で事故死した。 法眼由香利 … 万里子と三郎の娘。無軌道な性格で誘拐される。 宮坂すみ … 鉄馬が陸軍軍医時代に深く契った女。妾となる。 桜井健一 … 千鶴の夫。日清戦争の際、澎湖島で散華した。 山内冬子 … 琢也の妾。小雪が実娘で敏男は継子。自殺した。 山内敏男 … ジャズ・コンボ「怒れる海賊たち」のリーダー。 山内小雪 … 「怒れる海賊たち」のソロシンガー。敏男の義妹。 秋山風太郎 … 「怒れる海賊たち」のピアノ。山藤道具店の倅。 佐川哲也 … 「怒れる海賊たち」のドラム。敏男が左目を潰す。 原田雅実 … 「怒れる海賊たち」のテナーサックス。元配線工。 吉沢平吉 … 「怒れる海賊たち」のギター。元銀行員。及び腰。 加藤謙三 … 「怒れる海賊たち」の見習い。好奇心が強い少年。 五十嵐剛蔵 … 法眼琢磨の盟友。堂々たる政商。鉄馬の舅。 五十嵐猛蔵 … 剛蔵の倅。朝子の弟。我執の強い俗物。道楽者。 五十嵐泰蔵 … 千鶴と猛蔵の息子。孤独で異父姉の弥生を慕う。 五十嵐光枝 … 泰蔵と駆け落ちし妻となる。元女中。旧姓田辺。 五十嵐透 … 泰蔵と光枝の息子。若い頃女を作り滋が産まれる。 五十嵐滋 … 透の息子。泰蔵の養子。デブ。由香利に惚れる。 本條権之助 … 芝高輪の泉岳寺そばにある本條写真館の創始者。 本條紋十郎 … 権之助の息子。本條写真館の二代目。 本條徳兵衛 … 紋十郎の息子。本條写真館の当主。 本條直吉 … 徳兵衛の頼りない跡継ぎ。金田一の依頼人。 兵頭房太郎 … 戦災孤児だったのを徳兵衛が拾い弟子にした。 杉田誠 … 芝高輪郵便局の局員。病院坂の空家で死体を発見。 山田吉太郎 … 杉田誠と一緒に空家へ踏み込んだ近所の住人。 伊藤泰子 … 佐川哲也が住む「いとう荘」の大家。戦争未亡人。 伊藤貞子 … 泰子の娘。独身。女性居住者のよき相談相手。 井上良成 … 詩壇の大家。レコード界の大御所的存在。酒豪。 井上美禰子 … 良成の後妻。元歌手。夫婦で麻雀に眼がない。 森ひろし … 井上良成に発掘された演歌歌手で麻雀仲間。 横溝正史 … 探偵作家。砧の隠居。金田一は成城の先生とよぶ。 お妙 … 正史が金田一を招いた銀座の上方料理ひさごの女中。 張潮江 … 探偵小説誌ジュエルを主催。詩人張嘉門。正史の友。 天竺浪人 … 詩集「病院坂の首縊りの家」の著者。山内敏男。 多門修 … クラブK・K・Kの用心棒。前科者。金田一の助手。 風間俊六 … 風間建設社長。金田一の旧友でパトロン。 お清 … 金田一が居候している割烹旅館「松月」の女中。 古垣博士 … 高名な法医学者。金田一耕助や等々力警部と昵懇。 加賀助手 … 古垣博士の助手。 山本先生 … 高輪署の嘱託医。 真田警部補 … 高輪署の捜査主任。金田一の協力に感謝感激。 芥川警部補 … 大崎署の捜査主任。口が悪く通称は悪たれ川。 塩月警部補 … 渋谷署の捜査主任。福徳円満。温顔の持ち主。 加納刑事 … 高輪署の刑事。山内冬子の縊死事件を担当。 坂井刑事 … 大崎署の刑事。山内兄妹のギャレージへ急行。 新井刑事 … 警視庁捜査一課所属の刑事。等々力警部の腹心。 寺坂巡査 … 病院坂上派出所配属。本條らと生首風鈴を発見。 葉山巡査 … 寺坂巡査と交替し現場へ。本條写真館と馴染み。 今西巡査 … 葉山巡査と交替した同僚。 等々力大志 … 警視庁捜査一課所属の警部。金田一耕助の相棒。 金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。 <第二部「転生の章」登場人物> 本條徳兵衛 … 本條会館を急成長させた恐喝者。直腸癌で死亡。 本條直吉 … 徳兵衛の倅。本條会館会長。金田一の依頼人。 本條文子 … 直吉の妻。非常な良妻賢母。 本條徳彦 … 直吉の倅。年齢も高校も一緒の法眼鉄也は親友。 本條直子 … 直吉の娘。徳彦の妹。 石川鏡子 … 直吉の秘書。 加山又造 … 直吉が所有するリンカーンの運転手。 伊東俊吾 … 本條会館の専務で支配人を兼ねている。 高畑英治 … 本條会館の背後に建つ「温故知新館」管理主任。 兵頭房太郎 … 本條会館を辞めたのち人気ヌード写真家になる。 チャコ … ヌード・モデル。房太郎とは親しい間柄。 法眼弥生 … 法眼家の実権を握る女傑。由香利以外は面会せず。 法眼由香利 … 弥生の孫。五十嵐産業会長。法眼病院の理事長。 法眼滋 … 由香利の婿養子。五十嵐産業社長。本條会館の重役。 法眼鉄也 … 由香利の息子。海外育ち。目下浪人中。 五十嵐光枝 … 滋の祖母。鉄也の曾祖母。肥満体で愚痴が多い。 喜多村博士 … 法眼病院院長。琢也の愛弟子。弥生の主治医。 遠藤多津子 … 喜多村博士の指示で弥生に付き添う看護婦。 里子 … 法眼家で一番年の若い女中。 関根美穂 … 法眼鉄也の幼馴染で恋人。 関根健造 … 美穂の父。外交官。今も外国に住んでいる。 関根玄竜 … 美穂の祖父。有名な彫刻家。日本で美穂を預かる。 関根いと子 … 玄竜の妻。夫婦揃って孫の美穂に眼がない。 関根竜一郎 … 健造の兄。大学教授。美穂はなぜか馴染めず。 関根幾久子 … 竜一郎の妻。外聞ばかり気にする教育ママ。 町田啓子 … 美穂の友人。「ザ・パイレーツ」の熱烈なファン。 佐川哲也 … 「ザ・パイレーツ」のバンドマスター。片眼帯。 伊藤貞子 … 哲也が青山に構える豪華マンションの家政婦。 秋山浩二 … 毎年ヒット曲を出す人気作曲家。哲也と交流あり。 原田雅実 … 御徒町で原田商会という電気器具商を営む。 加藤謙三 … 銀座界隈で流しの演歌歌手をしている。 吉沢平吉 … 三栄日曜大工センターのマネージャー。陰々滅々。 倉持六助 … 三栄日曜大工センター社員。仕入れ部所属。 早瀬藤造 … 三栄日曜大工センター社員。 香川信治郎 … 三栄日曜大工センター社員。 山本七郎 … 三栄日曜大工センター社員。 お八重 … 日曜大工センターの近所にある赤提灯ちぐさの店員。 山上良介 … 吉沢平吉に接触してきた初老の紳士。自宅に招く。 風間俊六 … 風間建設社長。金田一の旧友でパトロン。 菊池寛子 … 風間のかつての愛人。クラブK・K・K共同経営者。 多門修 … ナイト・クラブK・K・Kの総支配人。金田一の崇拝者。 山崎 … 金田一が無償で住んでいる緑ヶ丘マンションの管理人。 山崎よし江 … 山崎の妻。金田一耕助のハウス・キーパー。 加納警部 … 警視庁捜査一課所属の警部。合同捜査を統率する。 等々力栄志 … 警視庁の警部補。等々力大志の倅。 甲賀警部補 … 高輪署の捜査主任。 栗原警部補 … 玉川署の捜査主任。 真田警部補 … 20年前の捜査に関わっていたが高血圧で死亡。 等々力大志 … 退職後に開設した等々力秘密探偵事務所の所長。 金田一耕助 … 雀の巣の頭にくたびれた着物袴。ご存知名探偵。 | ||||
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最初は薄っぺらいアイドル映画かと思って観ていましたが、桜田淳子の佐久間良子や石坂浩二、草刈正雄を向うに回しての圧倒的な演技力に驚かされました、変な宗教にはまらなければ、今頃は日本を代表する女優になっていたかと思うと残念でなりません。 | ||||
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上巻を読了し、その日のうちに下巻に手を伸ばした。乱読多読の自分なので、他にも読みかけの本は多数あったが、やはり一番早く読み終えたのが本作品だった。 真犯人は上巻を読んでいる最中に予想はついた。おそらく本作品を読まれている方の多くは、上巻を読み終えた時点で真犯人像は絞り込めているだろうと思う。下巻に期待していることは、トリックの謎解きではないだろうか。血筋と愛憎の織りなす人間関係に起因する殺人を紐解くのが金田一耕助。今回も堪能しました。 〈金田一耕助ファイル〉は本作をもって終了。シリーズ全作を最後まで読みきりましたが、本当に楽しかった。こういった作品を手に入れやすい価格で提供してくださった角川文庫さんに感謝です。ありがとうございました。 | ||||
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〈金田一耕助ファイル〉シリーズの最後を飾るのが本作品、ファイル20『病院坂の首縊りの家』上下巻である。シリーズ一作目『八つ墓村』を読んだのが、2016年。6年の歳月をかけ楽しんできた本シリーズも、これが最後の作品かと思うと、ゆっくりと楽しみたいと思う。 しかしながら、いつものことではあるが、読み始めると面白くて、なかなか途中で閉じられない。結局、いつも通り、あっという間に読み終えてしまった。 この書評を書いている現時点では、まだ下巻は読んでいない。そのため今後の展開は分からないが、謎解きに必要な登場人物や状況設定は、おそらく上巻で全て出てきているのだろう。上巻には「首縊りの家での殺人事件」の全貌(と思われるストーリー)が示されている。一方で、謎解きはほとんど出てこない。謎解きの手がかり(と思われる)部分が出てきたところで、上巻は終わる。続きがとても気になる、心憎い演出である。 上巻の書評を終えたら、早々に下巻へと手を伸ばしてしまいそうである。 | ||||
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犬神家や八つ墓村といった田舎の名家が舞台のドロドロした雰囲気に魅せられ二十数年。やっと読みました。そもそも映画を先に観て全然好みじゃ無かったのでずっと避けてきました。ただ「金田一最後の事件」とか「解決まで20年」などファンとしては読まざるを得ないでしょう。それだけです。何の思い入れも無い方は読む必要ないと思います。 | ||||
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昔読みましたが、内容は忘れてたので、楽しく読ませていただきました。 | ||||
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昔読んでました。懐かしかったです。 | ||||
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金田一耕助最後の事件。昭和二十八年と、その二十年後の昭和四十八年に起きる二つの事件の真相が暴かれるという形式ではあるが、実のところ金田一自身の推理が冴えるというものではない。物語の焦点はむしろ法眼家の異常な家庭環境に置かれている。そうであるがゆえに人間関係はかなりややこしいし、冒頭から長々と系譜の説明がなされ、かつそれを理解しないことには話がはじまらないために取っつきにくいとは言える。そして明かされた真相はまるで江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」にも似て、禁忌に踏み込んだという点ではそれ以上の内容である。因みに「病院坂」とは言うものの、病院そのものは特に関係がない。それはそうと今気づいたが、「D坂の殺人事件」は明智小五郎初登場の物語である。そして『病院坂』は金田一耕助退場の物語であって、これは横溝の意図した坂にまつわる対称性なのだろうか。 さらに因みに、このタイトルを本歌取りとして島田荘司『暗闇坂の人喰いの木』が書かれ、「坂」と「病院」をテーマとして京極夏彦『姑獲鳥の夏』が書かれた(のであろう)ことを思えば感慨深い。 | ||||
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金田一最後の事件。私は鮎川哲也氏と共に戦中・戦後の日本の本格ミステリの牙城を守った作者の功績を高く評価しているものの、個々の作品は評価していない。本作も作者の欠点が詰まった駄作である。と言うよりも、私が選ぶ「横溝作品ワーストNo.1」である。 長いだけで作中に謎はなく、ただ事件の概要をなぞっただけの愚作。まあ、もうミステリを書くだけの余力が無かったのだと思うが。私の(もしかしたら私以上の)ミステリ・マニアの友人にこの感想を話した所、「あの歳で作品を書いた事自体が凄いんだ」という素っ気ない返事。私は適当に受け流したが。 金田一最後の事件としたのは作者自身が力尽きたと考えたのだろう。もう少し分別があれば本作も発表せずに済んだかと思うと、作品ではなく作者の鬼気迫る執念を感じた。 | ||||
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本作は一度は解決したかに思えた事件を20年越しに解決するという金田一耕助最後の事件です。 生首風鈴やら呪われた一族的なお馴染みの世界から、昭和元禄に飛んだりして、等々力警部の引退後の生活が垣間見れたりとファンサービスに振り切った作品です。 クリスティにならって、「最後の事件」を書きたかったのでしょうが、本作に瑕疵があるとすれば、まさにその点に尽きます。 金田一耕助の最後の事件であるべき必然性がこの事件にはないのです。 もともと事件を解決すると孤独感に襲われ行方をくらましたくなるのが金田一。 今回はいつもより長い放浪に出たということなのでしょうか。 横溝正史の代表作をすべて読んでから読まないと後悔する一品です。 | ||||
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もともと1975-77年に『野性時代』に連載されたもの。「金田一耕助最後の事件」として知られている。 昭和28年と、昭和48年の2つの事件から構成されている。いかにも横溝っぽい因縁話である。エログロもひときわ強く、横溝のやりたかったことが詰め込まれた作品といえるだろう。 上巻では、昭和28年の一件が収束するあたりまで。だいぶ盛りあがってきたが、道具立てからすると、真相はあのあたりなのかなあ。 | ||||
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もともと1975-77年に『野性時代』に連載されたもの。「金田一耕助最後の事件」として知られている。 昭和28年と、昭和48年の2つの事件から構成されている。いかにも横溝っぽい因縁話である。エログロもひときわ強く、横溝のやりたかったことが詰め込まれた作品といえるだろう。とくにエロチックな要素は過剰なくらいだ。 結末は予想通り。定番の材料を、手際よく料理した一冊とでもいおうか。驚きは少ないが、作品としての完成度はそこそこ。 | ||||
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金田一最後の事件という点で意味のある作品だが、推理小説としての出来はよくない。他のレビュアーも書いているように、とにかく冗長で、おまけに後段の昭和48年の事件は明かにとってつけたような代物である。だから、横溝正史の小説は、徹夜覚悟で一気に読ませる作品が多いにもかかわらず、この作品の下巻は何度も挫折しかけた。だから、読後感はただ疲れた、というものである。 とはいえ、この作品はあらすじだけ追えば実に面白い。その舞台設定、横溝正史の十八番であるドロドロした血縁関係などは、実によくできている。もっとテンポのいい文章で、昭和28年の事件だけで決着させていれば、「犬神家の一族」「獄門島」「悪魔の手毬唄」まではいかなくても、かなりのレベルの作品になっていただろう。 その点、上映時間の制限がある映画版では、内容をうまく端折っているので、小説よりもテンポがずっと良くて面白い。さすが、市川崑だと思えるレベルである。もし、映画を先に見ていたとすれば、小説は読まずに済ませた方が正解だろう。 | ||||
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中断していた作品を20年後に書き継いだ執念。これには感服するが、執念だけに、ボリュームが大きくなりすぎたようです。 | ||||
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中断していた作品を20年後に書き継いだ執念。これには感服するが、執念だけに、ボリュームが大きくなりすぎたようです。 | ||||
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それに尽きる。冗長で読んでいて飽きる。 推理小説の醍醐味は無く、退屈極まりない。そう、推理小説を読んでる気がしない。 唯一、強いて言えば金田一耕助の生き様を確認する為に読む価値はある。 とは言え、それも下巻のラスト数ページを読むだけで十分かも知れない。 それだけの本。 | ||||
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横溝正史が、確か70代で書いた作品です(違ってたらゴメンなさい) 高齢でこれだけの作品を書いた執念は凄いと思いますが、トリックも伏線もなくてただ冗長な作品。金田一耕助がなぜこれほど手こずったのかわからないし、もっと陰惨で悲しい事件を解決したこともある金田一が、この事件でアメリカに行ってしまった心境がよくわかりません。 横溝正史の独特な世界観は健在だが、とにかく長すぎる! | ||||
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石坂浩二の病院坂の首くくりの家が好きで、読み始めました。 内容は違うんですが、面白いですね。 | ||||
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