病院坂の首縊りの家
評判
病院坂の首縊りの家の評価:
3.76/5点 レビュー 34件。 B ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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全37件 1〜20 1/2ページ
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金田一耕助シリーズには、彼が事件に関わる事件の遠因が、20年ほど過去の未解決事件にあるものがやたらに多い。思いつくままに数作挙げると、『八つ墓村』 『女王蜂』 『幽霊座』 『悪魔の手毬唄』 『迷路荘の惨劇』……。殺人事件を伴わず、種がどーのというやらかしに広げれば、その数はぐんと増えるww【注1】
本作はその“二十年前の事件”から金田一耕助ががっつり関係し、上巻で現在進行形として語られるという趣向で、最大の特色である。
上下巻で800頁近くあるボリュームと生首風鈴という圧倒的な印象の割に、トリックという点では本作の発明でもない小粒なものがひとつあるだけなのだが、長尺故のドラマの豊かさと、金田一耕助の活躍の掉尾を飾る作品という尊さで、満足度の高い作品だと云ってよいだろう。
プロット的には、とびきりキャッチーな残虐さの演出とその動機の意外さという点で、『貸しボート十三号』を思い出した。背景説明を読んでも、少々納得しきれない点も共通だw
それで連想的に頭に浮かんだのだが、上に書いた長尺故のドラマの豊かさ。
その中のひとつには、上巻でのチョイ役が下巻で存在感を増していたりと、20年の間に人間が如何に変わるか/変わらないかという読みどころが仕込まれている点がある。また恐喝者=完全な悪人、とも云いきれない微妙なバランスまで取らせながら、探偵/推理小説でよく揶揄される登場人物のステロさに一石を投じてもいる。
だが一方で、「本来の資質は高潔だが、不良ぶって事件をかき回す若者」役割のキャラはめちゃめちゃステロでないかい?
本作でその役割の法眼鉄也は、ハンサムではないが、長身で体格もよく、女性にもモテるw
ある意味金田一耕助の容姿の真逆設定のキャラ設定でもあって、本作で久し振りに40代となって登場した多門修も、本来はその範疇のキャラである。
他に具体例は示さないが、この手の類似キャラはシリーズ中に数多く見られる。まぁいーかw
本作で法眼一族も五十嵐産業もどでかいダメージを蒙ったが、本来の性格を取り戻した鉄也が事業を再建できたのか、あるいは初志のとおり音楽の道に進んだのか……。
多門修がマネージャーとして差配しているK・K・Kの3つのKのうち、2つは風間と金田一のイニシャルだなんて設定は本作での後付けだと思うが、緑ヶ丘荘あらため緑ヶ丘マンションに1フラットを無償で与えられながら、その風間の好意が少々重荷に感じられて云々なんて描写は、金田一耕助が此の事件を最後に渡米して消息を絶ったという設定が、本作執筆の早いうちに決められていたことが想像できて興味深い。同じく「拾遺」で、筆者が耕助に、「ここに二、三当時の事件の記録があります。~どの事件にもどちらかの警部さんが関係していらっしゃいますから」(下P.405)と事件資料を渡される箇所がある。著者の宣言である。
その言行一致の作品が、磯川警部の関係した『悪霊島』だが、等々力警部の登場予定だった『女の墓を洗え』と『千社札殺人事件』は、残念ながら形になることはなかった……。
原作小説とドラマや映画でのキャラの違いと云えば、金田一耕助よりも等々力警部が大きい。
映像作品の等々力警部は、やかましいだけのコメディリリーフであることが多いが、原作小説での彼は、謎解きという面では然程に違いはないにせよ、警察組織の情報収集結果を利用して、本来部外者の金田一耕助が能力を発揮できるように最大限に便宜を図るとともに、時に彼の精神面や金銭面までを慮る、出来はよいが危なっかし気な弟を見守る兄のような存在である。
本作では退職後の等々力元警部の状況が詳しく描かれているものの、事件の関係者としての行動は、本條直吉の保護を分担して請け負いながら、甘さゆえに隙を作ってしまったバツの悪いものになってしまった。息子は警察キャリアとして父の後を追って警視庁で勤務し、自らは二か所の探偵事務所を経営するという勝ち組街道を歩んでいるにしては、残念な幕引きである……。
【注1】同年の事件ながら、金田一耕助は後半にしか登場しないという変奏曲ならば、『夜歩く』というのもある。