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(短編集)
顔
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顔の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.20pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全85件 41~60 3/5ページ
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D県警シリーズ第一作である『陰の季節 』にちょっと顔を出した似顔絵婦警がヒロインとして活躍する連作集。 さすが横山秀夫と言うか、全編一気に読ませるが、かと言って氏の代表作かと言えばそうでもない。 氏の作風から言えばちょっと異色というか箸休め的小品。 作品の背景に『陰の季節 』収録の「黒い線」があるので、できれば時系列に読むのをお勧めする。 D県警シリーズ全体の象徴とも言うべき、二渡調査官が脇役ででも登場するかと期待したが、最期まで出て来なかった。 このシリーズ、次は話題の大作『64』まで飛んじゃうのがちょっと残念。 | ||||
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D県警シリーズ。今回の主人公は、女性警察官、平野瑞穂。彼女の警察官としての過程が五つの連作短編で綴られる。女性ゆえの軋轢、不平等な扱いを周囲の助けを借りながら跳ね除け、成長するストーリーが面白い。 | ||||
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主役の平野瑞穂はD県警の婦警である。D県警 機動鑑識班で似顔絵を作成する準専門職だったのだが、上司に指示された不正に嫌気がさし、失踪事件を起こした過去がある。このいきさつは、『陰の季節』の短編「黒い線」で読むことができるが、本短編集では、瑞穂は秘書課の広報公聴係に配属されている。失踪事件がたたって冷や飯を食わされているのだ。瑞穂に不正を強いた森島など「黒い線」の登場人物が本短編集にも顔を出しているため、前もって「黒い線」には目を通すことをおすすめしたい。本短編集での瑞穂の苦悩や成長がより鮮明になるだろう。 D県警シリーズは警察組織の中の管理部門の人々が主役である。警察の面子を守るために奔走し、組織の内部統制をいかに保ち続けるかに腐心する警官らの姿が描かれており、警察小説としてとても新鮮だった。警官らの野心や失意がひしひしと伝わる人間ドラマなのだ。 本短編集は、瑞穂が直接事件と関わりもつものもあるため、他のD県警シリーズとは趣が違う。信念を貫いたために、組織から爪弾きにされてしまった瑞穂のガンバリが、20代女性の視点で描かれていく。瑞穂の嫉妬、悔悟、混迷といった内省的な部分にスポットがあたっているのも本短編集の特徴だ。典型的な男社会の中で、事あるごとに過去の失敗をもちだされる瑞穂。ヘコまされても、ギリギリのところで撥ね返していく瑞穂の意地に、清々しさを感じるだろう。 ■共犯者 銀行強盗の訓練中、時を同じくして別の支店で本物の強盗事件が発生した。このためD県警は現場への到着が遅れるという失態を犯してしまう。訓練については支店長を除き、知らされていない。訓練に参加した瑞穂は監察官からの追求で、同期の婦警に話をしたこと口にしてしまう。友情が壊れかけている瑞穂は信頼を取り戻すべく、不審な行動をしていた人物の似顔絵を描き、聞き込みを開始するのだった ・・・ 瑞穂の似顔絵と推理が冴える作品。本作品は、短編を読み進めていくと瑞穂が成長していることが良くわかるようになっている。 ■心の銃口 南田安奈婦警が襲われ拳銃が強奪された。安奈は意識不明のため、犯人の足取りがつかめない。強行班捜査係に転属した瑞穂は、現場の状況から目撃者を特定し似顔絵を作成する。しかし、それは全くの見当違いの人物だった ・・・ 本短編で、いくつかの失敗を繰り返しながら、警察官として自覚していく瑞穂が描かれている。どんでん返しもあって、ミステリとして十分に楽しめる作品だ。瑞穂の心の銃口という言葉が、爽快感をともなった余韻を残していく。 その他、魔女狩り/決別の春/疑惑のデッサン を収録 | ||||
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「陰の季節」からのスピンオフ。 ”黒い線”の主人公 平野瑞穂が警察官という職務に 誇りを持ちつつも、組織に対する疑問や 警察という、男社会での葛藤を描いた短編集。 主人公がいつもの横山作品とは違い「女性」であるがゆえ どこか、甘さが拭いきれない。 同じ女として、この”甘さ”を感じてしまうところが 自分自身、ちょっと戸惑いを感じてしまう。 主人公の瑞穂は、ある意味純粋で生真面目である。 そのひたむきさは、痛々しい程。 それでも、こんな風に必死になって頑張れる姿を羨ましいとさえ思えるのは 自分自身が、いつのまにかそういうモノを 失ってしまったような感じを受けるからなのかもしれない。 警察という組織と、男という社会にもまれながら 少しずつ成長していく姿は、読んでいて応援したくなる。 七転八倒しながらも、最後には”私は警察官なのだ”という 瑞穂の誇りが清々しく、どんな仕事であれ 「誇り」を持つことの大事さを改めて痛感させられた。 ●魔女狩り ●決別の春 ●疑惑のデッサン ●共犯者 ●心の銃口 の5作品が収録されているが、中でも「心の銃口」は一読の価値有りです。 | ||||
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刑事モノの秀作です。 似顔絵婦警として、悩みつつ、少しずつ成長して行く平野瑞穂の生き様が何とも清々しいです。 著者の作品をもう一冊読んで見たいと思いました。 | ||||
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こどもの頃に婦警のコスプレがしたいと思い立って、ついに婦警になった女性の話。 同じ登場人物と舞台背景による連作短編集である。一章ごとに異なる事件が取り扱われる。 運動は苦手、拳銃も苦手、 事件が起こるとしばしば感傷的になってぼんやりする主人公:平岡瑞穂の姿勢に愕然とした。 性格が公僕というよりポエマー(poetではなくてポエマー)なのだ。 これでは幾ら探偵眼が優れていようとも、アテにはならない。 小賢しい探偵ごっこの前にすべきことがあるのではないか? 正直、主人公は可愛い。だがその可愛らしさが完全に空回りしていて楽しくない。 ドジっ子が様になるのはメイドさんだけで充分だ。ドジっ子婦警は本当に洒落にならん。怖い。 半人前の婦警が成長していく話なら大いに結構なのだが、そういう成長録とも違うようである。 少なくとも私はこんな婦警の世話にはなりたくない。 婦警を含めた登場人物の多くが、形は違えど婦警を軽くみなしていて、 しかもその蔑視になんの救いも見られなかったのが非常に後味悪い。 フィクションとは言え、婦警のイメージが極端に悪くなった。 どうせ作り話なのだから"何かしら"善後策を講じてくれれば良かったのに。 | ||||
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星は超辛口で3つとした。 やはり、横山秀夫ならではの緊張感が希薄であるのがその理由。 本書は、男性が女性を書くという難しさがよく出ていると思う。 横山秀夫をもってしてもいかんともしがたかったのだろう。 女性モノは、乃南アサや桐野夏生に任せて、 男の小説を書いてもらいたい。 ヒリヒリするようなやつを。 | ||||
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男女雇用均等法など幻想にすぎない。 今でも男社会は存在するし、女性を多く登用しているという会社の実情も、管理職の女性と事務職の女性の格差社会だ。 警察は優秀な女性を広告塔として持ち上げても重用することは殆どない、旧態依然とした男社会である。警察という危険に身をさらし、常に緊張がともなう職場では仕方ないかもしれない。この中ではヒロインのみならず、そういった社会で静かにもがく女性の群像が描かれる。 この短編集のヒロイン瑞穂は信念を曲げ、上からの命令に従った事で心に異常をきたし、閑職においやられた若き巡査である。 有能ではあるが正義感が強すぎて周りに妥協できない。しかし、誰よりも仕事に対する誇りを持っている。警察という組織社会の中では上手く立ち回っていけないタイプであろう。 この小説を見ながら、女性が男社会で生きていく困難さ、そして様々な障害を目の当たりにした。 一つ一つの作品がコンパクトにまとまり完成度も高い。 作者が得意とするもっと骨太の警察小説のファンには物足りないかもしれないが、このように男社会で懸命に生きているヒロインの姿に元気付けられた、そんな一冊であった。 | ||||
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めちゃくちゃ面白いというわけではありませんでしたが、まぁまぁ面白かったです。 よくある小説のような伏線ががばっちり謎解きにはまっているというのではなく、伏線かなと思わせたものが実は関係ないことでただの失敗だったとか。人間は失敗して成長していくというようなことが書かれていたと思います。 | ||||
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本書のタイトルはズバリ一文字で「顔」。タイトル一字の本というのはミステリー作品のなかでも意外と珍しいのではないか。横山作品では本書が初めてだろう(森村誠一の作品には、『駅』や『窓』といった一字タイトルの諸著作がある)。 主人公は、『影の季節』に所収の「黒い線」で登場した23歳の平野瑞穂婦警。彼女はかつて鑑識班で犯人の「似顔絵」作成を主たる任務としていたので、これがタイトルの由来である。似顔絵作成は犯人の「心の闇」を描くことである本書の触れ込みは、見事なストーリー展開と文体によって、十分に堪能できる。絵画教室で絵の技法を学ぶにとどまらず、平野は「少し背伸びをして、絵の心のようなものを吸収したいと自分なりに心掛けていた」(146頁)。 簡潔で、しかも温かな余韻を醸し出すプロローグとエピローグは、本書の「閉じ方」として申し分ない。プロローグにおける、小学校1年時の平野瑞穂の夢である「ふけいになること」はその後実現し、典型的な男性社会における幾多の壮絶な困難を果敢に乗り越えてゆく彼女のバイタリティ溢れるストーリーが展開されていく。「直接の被害者だけでなく、思いも寄らないところにまで不幸の波紋を広げ、多くの大切なものを踏みにじる」(212頁)犯罪を憎み続ける彼女の赤裸々な心情も本書全体を通じてリアルに表現されている。 「心の銃口」という作品は思わず唸ってしまうほどの出来栄えだ。『臨場』では52歳の検視官である倉石義男の活躍を描き、今作では彼よりも約30歳年下の婦警の生き様を描いている。年齢も役職も、何より性別が異なる二人の人物像を照らし合わせた時、横山作品のもつ幅の広さを痛感しないわけにはいかない。なお作者紹介の「顔」は、本書のものよりも、『臨場』における横山氏の「顔」のほうが私は好きだ。三ツ鐘警察著を舞台とした『深い追い』(新潮文庫)も情緒豊かな人間が数多く登場するお薦めの作品である。 | ||||
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本書の主人公・平野瑞穂は生き方が不器用な為、自分の希望する部署からある事件をきっかけに左遷させられしまう。次々と起こる事件に誠実に、ひたむきに、不器用にぶつかっていく瑞穂は警察官として、そして、人として成長していく。 瑞穂に限らず、横山秀夫が描く主人公達、全員に共通することは”不器用”な事(無論、手先とかではなく、生き方や性格が)ではないだろうか?作者・横山秀夫も自分が創作した人物達に負けず劣らずに”不器用”な人物なのだろう。なんたって、日本で一番有名な文学賞に向かって喧嘩するぐらいだし・・・。もちろん、私もそんな不器用な横山秀夫をこれからも読み続けたい。 | ||||
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『陰の季節』の一遍『黒い線』からスピンオフした連作短編集。非日常を切り取 る小説の中で連作短編集は非日常を描いていますが、長編よりやや日常的、小粒な 事件が連なっています。県警がひっくり返るような大事件は起きなくても主人公は 新しい経験を重ね段階的に成長していく姿を追っていくのは興味深いです。 所轄警察署を大企業の地方支店と考えると男性の考え方や女性に対する期待が 民間企業と20年くらいのギャップを感じました。確かに登場する警察官は職務に忠 実で熱心に取り組んでいる事が伺われます。しかし彼らの発言の端々に「古さ」を 感じてしまうのは私だけでしょうか。一般企業であれば市場にさらされて当の昔に 淘汰されてもおかしくない組織なのですが、改善をしなくても生き残ることのでき るシステムが彼らを現状にとどめていると考えます。同じような多くの公務員組織 が制度疲労を起こしている気がしてなりません。国は優秀な人材の使い捨てをやめ て、キャリアの警視クラスを署長に据えたら少し良くなるのではないでしょうか? 婦人警官が主人公の作品は少ないので、平野瑞穗の成長物語として読むと真剣に 職務と向き合う女性がどんなモチベーションで仕事をしているのか、おじさんにも 理解できるよう分かりやすく描いてあります。やる気のある女性の部下をどう扱っ て良いか戸惑っている管理職の方にもお奨めの一冊です。 | ||||
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警察をテーマにした小説は少なくない。というか、多い。 この作品の主人公は23歳の婦警。 若い婦警が主人公の小説となると、ぐっと数は少なくなるように思う。 さらにこの作品の異色さとして「主人公が同じ職場にずっといない」ことが挙げられる。 大体警察モノは主人公が刑事で、犯人を追い詰める捜査の一線で活躍する人間ばかりだ。 ところがこの作品の主人公は 「目撃者の情報から似顔絵を作成する鑑識」→「マスコミ対策本部」→「テレフォン相談員」→「現場刑事」 と物語のたびに職場が変わっていく。 すべて警察内部の都合。企業となんら変わりは無い、突然の人事異動。 それは「女性軽視」の現場であるがゆえ、一般企業よりひどいものかもしれない。 それでもひとつひとつの「業務」の内容をわかりやすく、魅力的に描く作者の技量はさすが。 特に最後の「現場刑事」をこなしている最中犯人を追い詰めるくだりは文章に疾走感があり、目が離せなくなる。 ☆マイナスの理由は最後の「現場刑事」の締め部分がやや芝居臭かったこと、そしてエピローグが主人公目線でなかったこと。 エピローグを他人の目から語ることによって物語がフェードアウトしていく様子はうまい表現だが、 その語ってる相手が「ほんの一日」ペアを組んだだけ(少なくとも小説上では)だったことに違和感を感じる。 主人公と深い繋がりのある七尾あたりが適任だったと思う。 それを避けたあたり作者の意図があるのかもしれないが、少なくとも私には味気なく感じられた。 疾走感あるラストだっただけに、あまりの味気なさに毒気を抜かれてしまったというのが正しいのかもしれない。 | ||||
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主人公は、婦警に憧れ、実際に夢を実現した女性。 しかし、夢と現実とのギャップや、 典型的な男社会の警察という組織の中で 求められる女性の役割は、 マスコット的な存在としてだったり、 正義感あふれる彼女にとっては、 とても許せないような警察の中に潜む、 汚い悪の部分に押しつぶされそうになったり。 主人公は、元は似顔絵婦警として活躍していたが、 ある事件をきっかけに、その担当を外され、 希望と反する業務に配属されている。 短編のストーリーの中で、色々な事件を解決しながら 彼女が色々な形で絡んでいくのが面白い。 あまりに正義感が強く、融通がきかなく、 若干、頭が固すぎる印象の主人公だったけど、 とても温かい人間性がよく描かれている。 | ||||
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甘すぎる…横山作品の中では、 現実離れしてる感じが。 不祥事、ましてや甘えたような勤務をし続ける主人公が、 警察組織にずるずると居続けられる訳、ないんですが。 今までの作品からして、堅い、静かだけど熱い物語 を期待していたのですが、そういう点からも、 人物の描き方と現実がかけ離れている点も、 この本は肩すかし感が否めません。 まぁ、読み進めてしまう展開は相変わらず巧いので 2つ…。で、恐らくは作風(タッチ)の転換を 計ろうとした意欲に1つ。 | ||||
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「陰の季節」に收録された「黒い線」に登場してゐた「似顏繪婦警」、平野瑞穗を主人公とした連作短篇集。 プロローグでは、瑞穗が小學生の時に書いた作文がタイムカプセルから發掘され、紹介されてゐる。 この作文で瑞穗が子供の頃、婦警になりたいといふ夢を持つてゐたことが讀者に知らされる。 何氣ないエピソードながら、瑞穗の幼い頃からの婦警への憧れが傳はつてくる。 「黒い線」で辛い經驗をした瑞穗が復職してゐるのを知つて嬉しく思つたのは私だけではないはず。 彼女のひたむきさは私などが既に失つてしまつたものだ。 警察といふ舊態依然たる男社會の中で奮鬪する瑞穗。 この本でまた彼女の活躍に觸れることが出來て、仕事といふものの意義をあらためて考へさせられた。 單に生活の手段といふだけでなく、誇りをもつて仕事をしたい。 私の好きな作品は、「心の銃口」。 犯人と拳銃を構へて對峙するシーン。 瑞穗の心の動きがよく描かれてゐると思ふ。 「魔女狩り」 警察の情報がマスコミに洩れる。 いつたい誰がどのやうにして情報をリークしてゐるのか。 祕書課廣報公聽係に配屬された瑞穗。 男社會の中で女が生きてゆくことの難しさ。 「決別の春」 搜査一課犯罪被害者支援對策室に配轉された瑞穗。 「なんでも相談テレホン」によせられる相談に對應する仕事だ。 その瑞穗が「きつと私、燒き殺されます・・・」といふ電話を受ける。 かけて來た女性の子供時代に經驗した或る事件の眞相が明らかになつてゆく。 「疑惑のデッサン」 瑞穗のあとを繼いだ「似顏繪婦警」の三浦眞奈美。 彼女のデッサンは稚拙である。 それにも拘らず、喧嘩殺人事件の犯人の似顏繪は犯人そつくりであつた。 かつて瑞穗の經驗したやうなことがあつたのか? しかし今囘は犯人の寫眞があるわけではない。 それなのに、何故? 「共犯者」 銀行強盜の通報訓練をしてゐる最中に、同じ銀行の別の支店に銀行強盜が入つた。 訓練中で警察はそちらに手を取られてをり、事件への對應が後手に廻つた。 その時間に訓練があることは、その支店の支店長と警察しか知らない筈だ。 いつたい、誰が、どのやうにして、その情報を利用したのか。 瑞穗の觀察力が活かされる。 「心の銃口」 射撃竸技大會で優勝するほどの腕前をもつた婦警が襲はれ、意識不明の重態になつてしまふ。 しかも彼女の持つてゐた拳銃が奪はれてしまふ。 彼女ほどの射撃の名手が何故、發砲もせず鐵パイプで毆られたのか。 意識を取り戻した彼女の記憶を頼りに、瑞穗が似顏繪を描いたが・・・ 現場に投入された瑞穗が犯人を追ひ詰める。 2006年3月27日讀了 | ||||
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『陰の季節』にも登場していた女性警官:平野瑞穂が主人公となった作品集。 前作で、節を曲げることを強いられていた彼女が、 今回も組織の暗部にめげそうになりながら、警官であろうとしています。 どの作品にも、男社会で生きる女性の無理しなきゃならない姿が描かれていて、 そこに、組織の非合理的な非情さが滲み出ているよう。 だが瑞穂は、その視線に納得のいかなさを感じつつも、 「女だから」という視線に対して肩肘張るわけではなく、 (女であることにさほどこだわらずに)自分に何ができるか、 自分は何をしたいのか、ということだけを体当たりで実行している。 そのひたむきさが眩しくて、けれどよわっちいところに引き込まれる。 ただ、横山さんの作品にしては、 「男社会の中の女」とか「組織」の描き方がステレオタイプのように感じたので星3つ。 それが社会の実情なのかもしれませんが。 | ||||
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面白かった。 「影の季節」に、ちらりと姿を現す婦警をこちらでは主人公にしているものです。 女性を主人公にしているからか(男性の著者であるにも関わらず)、桐野夏生の 一連の主人公の内面描写に似てなくもない。 男社会の典型のような警察組織の中の女性の立場、心理、が非常に興味深い。 警察組織での、婦人警官の位置づけは新鮮だった。 謎解きその他も一筋縄でいかない部分あり。 短編連作で、とてもスピーディだったです(その分ちょっと深みに欠けたかな)。 短いストーリーだが佳作ぞろいでした。 | ||||
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この文庫本には、少し違和感を感じました。 物語全体は面白いと思うのですが、私は平野婦警に甘さを感じます。 もちろん同じ女性として、女性が警察の中で働いていくのは大変なことだと思います(一般企業もそうですが) でも、権力に屈せず真っ直ぐに貫くというのもひとつの方法ですが、現実的ではないように思いました。 この中に出てくる女性記者のほうに、私はより親しみを感じます。 | ||||
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被害者から特徴を聞き犯人の似顔絵を描く、その似顔絵が元で犯人逮捕……のはずが、逮捕された犯人は似顔絵には全く似ていなかった。上司は記者会見を前に写真を見て似顔絵を描き直せと言う。 自分の仕事に誇りを持っていれば許せない一線と言うのが確かにあって、その一線を無理矢理越えさせられた一人の婦人警官の再生と成長の物語、とは大げさか。 「半落ち」で興味を持って、横山秀夫さんの作品を読むのは2作目になります。人物描写が巧みで、警察小説という今まで興味もなかったのに気がつくとぐいぐいと読み進め一気に読み切ってしまいました。 前半は主人公が気づいた点がことごとく事実と食い違っていて、実は読んでいていらいらするのですが現実にもこういうことありますよね。ちょっとした勘違いと事実の繋がり、実に巧みな小説だと思いました。 他の作品も読んでみようかなぁ。 | ||||
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