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(短編集)
トマト・ゲーム
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トマト・ゲームの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.30pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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情景がまざまざと浮かび上がってくる | ||||
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近年、皆川博子の初期作品が復刊されることが多く、嬉しい限り。 本作は「犯罪小説集」と謳われており、収録されているのは、いずれも危険、残酷、不条理・・・といった言葉が似合う話ばかりだ。 自分のように「死の泉」以降の比較的「にわか」な愛読者には、「皆川先生、こんな作品も書いてたの?」と目を見開かされる思いだった。 著者自身が「あまりに不健康かなぁ」と思ったという「蜜の犬」や「獣舎のスキャット」といった作品などは、下手をすると、単に過激・猥褻といった印象を与えかねない内容だ。 しかし、そんな「不健康」な作品であっても皆川ワールドはもちろん健在。 人間の悪意や狂気をこれでもか、とばかりに書いてあっても、そこには独特の美学が貫かれている。 読後にはなんともいえない後味の悪さが漂っているのに、むしろ、それがクセになってしまう。 ファンなら必読、の一冊。 (初めて皆川博子を読むという方には、ちょっと刺激とアクが強すぎるかな・・・?) | ||||
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全八短編。愛憎と復讐の暗い情念に満ちた短編集。表題作「トマト・ゲーム」は、途中までやや古臭い感じがしたが、ラストシーンは鮮やかだ。30年ほどをまたいだ二つの映像が重なり合って映し出され、年齢や人生経験などという分別を軽く吹き飛ばす。 「蜜の犬」や「花冠と氷のつるぎ」などは、少しシュールさもあり、この世が必ずしも条理にかなっている訳ではないことをほのめかしている。 | ||||
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約30年前に書かれた作品だが、全く古さを感じなかった。 表題作はそれほど楽しめなかったが、個人的には「獣舎のスキャット」と「アイデースの館」が好きだった。 「獣舎のスキャット」は、初等少年院から出てきた弟と、誰からも愛されず普通に生きてきた姉の物語。姉は弟の生活を盗聴するのだが、とんでもない秘密が隠されていた。タイトルの意味も最後に明らかになる。 「アイデースの館」は、5つのデス・マスクを巡る物語。誰が何のために作ったのか。その謎を追求していく過程と結末がおもしろかった。 | ||||
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これだけ変態ぽい題材を扱いながら、グロさを感じさせずドキドキさせてくれる、これぞ小説の醍醐味! | ||||
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ここ数年、尋常ではない数の皆川作品が刊行されている。ご自身、齢八十を超えて新作長編を精力的に発表し続ける一方、出版芸術社から『皆川博子コレクション』が順次刊行されている。また、いくつかの旧作が文庫化されたりもしており、過去の作品にもスポットライトが当たりはじめている。どこもかしこも皆川博子である。というのは冗談だが、無視できない流れではある。 おそらくその流れのひとつとして、本書も「復刊」されたのだろう。待ち望んでいた人も多いのではないかと思う。なにしろ、この本の単行本は1974年に講談社から出版され、のち1981年に講談社文庫に入ったがやがて絶版となり、現在ではいずれも入手困難だからである。本書は、その単行本から文庫本になるときに削られた2編とその代わりに追加された3編もすべて収めた「完全版」ということになる。今回も編集を務める日下三蔵氏の抜かりのない仕事ぶりにはいつも感心させられる。 本書に収められている8編のうち、「トマト・ゲーム」は表題作だった分だけ期待しすぎてしまい、実のところ今読むと多少の古さを感じる。私のオススメは「獣舎のスキャット」、「蜜の犬」、「アイデースの館」、「花冠と氷の剣」の4編である。無論、好みの問題ではある。「獣舎のスキャット」と「密の犬」は、30年前の文庫化の際に著者自身が「あまりに不健康かなァと、自粛してしまった」作品で、強烈な猟奇性だけを見ればそれもむべなるかなといった感じ。ただ、「密の犬」に見られる次のような文章は、皆川博子の作家としての天稟をまぎれもなく表している。 「いま、市郎の目のはしに、キラッと光ったのが、泪だとしたら、自虐の底に自分を沈めこもうと、少年の要望に応じたのかもしれないけれど、それは、雲の切れめからのぞいた青い空のかけらが、一瞬眼球にうつって踊ったにすぎないともみえた。」(227-8頁) こういう文章に出会えたことを大変うれしく思う。 | ||||
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これがやはりどこを切っても皆川節満開なのである。表題作である「トマト・ゲーム」は一種のチキンレースを題材にした青春物・・・・といってしまえば簡単なのだが、やはりそう簡単にはいかない。ここで描かれるのは相克だ。いまの青春を謳歌する若者とかつての青春にすがりつく二人の男女。そこには長い時間が厳しく横たわっている。そして、それを乗り越えようとしたときに一番最悪なことが起ってしまうのである。ぼくが一番感心したのは「アイデースの館」だ。これは導入部からして異様な雰囲気をたたえているのだがそれが二転三転して大きな陰謀が浮上してくるあたりの話の転がし方が素晴らしい。いまでいえばジャンル・ミックス的なおもしろさなのだ。この人この頃からこんなスゴイ話書いてたのね。「アルカディアの夏」は、非常に印象深い一編。思春期の少女のあやうさを切り取っているが、その手法が独特だから、強烈に印象に残ってしまうのである。でも、この感覚はよくわかる。エロスとタナトスの関係は永遠に不滅なのだから。 「花冠と氷の剣」は、これを読んで『贅指』という言葉を知ったのが一つの収穫。着眼点がすごいよね。この感覚はスタージョンに通じるものがあると思うのだが、どうだろうか?これは主人公である女医がどんどん転落していく様がすさまじい。溺れるのを通り越して、最初から死んでるみたいなものだもの。凄惨だ。「漕げよ、マイケル」は本書の中で唯一ミステリ色の濃い作品。なにせ高校生の完全犯罪を描いているからね。しかもちゃんとトリックもあるから素晴らしいではないか。それと付随して描かれる同性愛的な描写が妙にマッチングしていて、これも印象深い。すごい短編集でございます。 | ||||
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これがやはりどこを切っても皆川節満開なのである。表題作である「トマト・ゲーム」は一種のチキンレースを題材にした青春物・・・・といってしまえば簡単なのだが、やはりそう簡単にはいかない。ここで描かれるのは相克だ。いまの青春を謳歌する若者とかつての青春にすがりつく二人の男女。そこには長い時間が厳しく横たわっている。そして、それを乗り越えようとしたときに一番最悪なことが起ってしまうのである。ぼくが一番感心したのは「アイデースの館」だ。これは導入部からして異様な雰囲気をたたえているのだがそれが二転三転して大きな陰謀が浮上してくるあたりの話の転がし方が素晴らしい。いまでいえばジャンル・ミックス的なおもしろさなのだ。この人この頃からこんなスゴイ話書いてたのね。「アルカディアの夏」は、非常に印象深い一編。思春期の少女のあやうさを切り取っているが、その手法が独特だから、強烈に印象に残ってしまうのである。でも、この感覚はよくわかる。エロスとタナトスの関係は永遠に不滅なのだから。 「花冠と氷の剣」は、これを読んで『贅指』という言葉を知ったのが一つの収穫。着眼点がすごいよね。この感覚はスタージョンに通じるものがあると思うのだが、どうだろうか?これは主人公である女医がどんどん転落していく様がすさまじい。溺れるのを通り越して、最初から死んでるみたいなものだもの。凄惨だ。「漕げよ、マイケル」は本書の中で唯一ミステリ色の濃い作品。なにせ高校生の完全犯罪を描いているからね。しかもちゃんとトリックもあるから素晴らしいではないか。それと付随して描かれる同性愛的な描写が妙にマッチングしていて、これも印象深い。すごい短編集でございます。 | ||||
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