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蜻蛉始末



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【この小説が収録されている参考書籍】
蜻蛉始末
蜻蛉始末 (文春文庫)

蜻蛉始末の評価: 4.11/5点 レビュー 9件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.11pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全9件 1~9 1/1ページ
No.9:
(5pt)

明治維新という化け物の「光」と「影」

明治に起きた「藤田組贋札事件」に題材をとった歴史ミステリーが本書である。”とんぼ”宇三郎は北森氏の想像の産物であって実在したモデルはないと考えて良さそうだ。謎が多い「藤田組贋札事件」に宇三郎という架空の人物を介在させることによって事件の空白を埋め、劇的な物語に仕上げているところが素晴らしい。
 傳三郎と宇三郎は固い絆で結ばれている。出版社の紹介文では二人の関係に「友情」という言葉が使われているが、その絆は友情ではあり得ないだろう。きっちりと上下関係があり、友情というには想いの方向が一方的に過ぎるからだ。二人の関係はまさに「光」と「影」であり、表舞台で光りを浴びる人間と影勤め(陰守り)の関係といえる。そしてまたこの物語は、傳三郎(光)と宇三郎(影)だけの物語でなく、倒幕、明治維新、そして西南戦争と時代が大きな渦となって変わる中、眩いばかりの光を放った人物達と、彼らが輝くためにあえて影に回った人間や、時代の流れと運命に抗えず陰となった者達を鮮やかに描いた物語でもある。ここに描かれているのは志士たらんとした者達の心の揺らぎ、裏切り、変節、欲による薩摩閥と長州閥の暗闘だ。登場人物の人品が際立って描かれているのも、山口県出身の北森氏ならではのことだろう。史実や現在に伝わる人物評をうまく織り交ぜながら、あたかも歴史小説ではと思わせるほどのフィクションとなっている。北森鴻の最高傑作と評する読者も多いに違いない。
蜻蛉始末Amazon書評・レビュー:蜻蛉始末より
4163201505
No.8:
(4pt)

見事な歴史小説になっている

主人公は藤田傳三郎。
商人でありながら、奇兵隊の一人として幕末維新を駆け抜けた男。
というよりは、のちに大財閥・藤田組を一代で築き上げ明治の経済界を牽引した男である。
実際の傳三郎には、財閥を軌道に乗せるまでの行動に語られていない部分が多い。
その傳三郎の半生を、彼が巻き込まれた明治初期の大経済事件である「藤田組贋札事件」を主軸に、
幼馴染の宇三郎の友情と対立を横軸に描いだ力作。
導入部からぐいぐいと引きずり込まれる。
偽札事件の容疑者として逮捕された傳三郎の回想は、高杉晋作たちと攘夷を目指した時代に飛ぶ。
久坂玄随、井上馨、山県有朋などの人物と絡みながら、幕末維新から明治初期まで二人の行動を描く。
そして史実で未解明な部分を著者が得意の推理で明確にする。
友情と憎悪の結末、最後に明かされる意外な偽札事件の真相。
ミステリー作家らしい、歴史の謎解きの快感に満ち溢れ、同時に見事な人間ドラマとなった小説である。
著者にはもっと歴史小説を書いてほしかった、何回読んでもそう思わずにはいられない。
蜻蛉始末Amazon書評・レビュー:蜻蛉始末より
4163201505
No.7:
(5pt)

北森鴻の歴史小説

私にとっては北森鴻さんでは初めて読む歴史小説?でした。今まで北森作品ではミステリーばかり読んでいましたので。いや、これからは是非このジャンルの作品も書いていって頂きたいです。なかないの作品だと思います。元々私は維新前後の歴史小説、時代小説には結構興味があり、それなりに読んできましたが、北森作品はなかない良いと思いました。最後部分は枚数の加減なんでしょうか、些か急がれているような気もしないではないですが…。でも、いつも考えさせられるのですが、維新成ってからの政治家は、何故か急に魅力がなくなりますね。清廉さを失っていくようで。理想と現実の硲で、美しく生きることはやはり難しいということなのでしょうか?今まで藤田グループは知ってはいても、創始者については余り深く考えたことはなかったですが、例え小説なりにでも知ることが出来て、ちょっと嬉しい気分です。しかし、今までも井上馨って余り好きな人物じゃなかったけど、益々嫌いになりそう…。人を利用しようとする人間って嫌なんですよね…。でもいつも余り良く書かれない井上馨って、ある意味不思議な人物です。残された久作のことが気になります。今後の北森さんの活躍の方向に是非時代物も書いて頂きたいです。勿論ミステリー仕立てなら尚嬉しい。これからトンボを見るたびに、宇三郎と傳三郎のことを思い出しそうです。
蜻蛉始末Amazon書評・レビュー:蜻蛉始末より
4163201505
No.6:
(4pt)

価値観が我が儘だった時代

江戸から明治へと時代が移り変わったとき、正しいことよりも権力者が正義となった時代だった。価値観は我が儘なままだったのだ。したいことを出来る力を持ち得たモノが、正義を振りかざしたのだろう。
開国前後を描いているのに、勝海舟が登場しないままで十分に書ききる才能には脱帽だ。お上よりも、民衆の中の方が大変だった時代なのだ。
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4163201505
No.5:
(3pt)

裏切り

 2001年に出た単行本の文庫化。
 ミステリ作家の北森氏が時代小説に挑戦したもの。正直に感想を言えば、失敗だったのではないかと思う。
 なにより、人物に魅力がない(これは氏のミステリの多くにも言えることだが)。主人公である「とんぼ」には惹き付けるものがなく、また、その性格の変化も唐突すぎて付いていけない。
 また、氏の持ち味である緊迫感ある文章が、本書では感じられなかった。
 厚いだけで内容のない一冊だった。
蜻蛉始末Amazon書評・レビュー:蜻蛉始末より
4163201505
No.4:
(3pt)

幕末・明治を描く上質な歴史小説。あくまで、歴史小説。

幕末から明治にかけて活躍した、政商藤田傳三郎の生涯を描く歴史小説。傳三郎とともに生きた「トンボ」こと宇三郎との相克を通して描かれる、幕末・明治という時代。藤田組贋札事件を素材に、人の、そして時代の「光」と「影」を見つめる。明治の実際の事件、藤田組贋札事件を素材にした歴史小説。そこに自由な推理の翼を広げる。明治期に活躍した人々が一個の個人として、躍動感を持って動き出す。そんな中でトンボの思った「食われてしもうたんじゃ」という言葉は、作品全体を象徴するようでとても面白い。光と影が幾重にも重なり合い、それぞれの人間模様を照らし出す。
蜻蛉始末Amazon書評・レビュー:蜻蛉始末より
4163201505
No.3:
(4pt)

“とんぼ”宇三郎がいい。彼の存在感がぐんぐん増していった。

 本書の前半は、藤田傳三郎の視点で読んでいった。ところが話の中盤から、“とんぼ”宇三郎が俄然生彩を帯びてきて、読み終えてみれば、これは傳三郎ではなく宇三郎が主役の話だったのではないか、そう思えて仕方なかった。 幕末から明治初頭にかけて、政商として活躍した藤田傳三郎と、彼の忠実な“影”として生きた“とんぼ”宇三郎、このふたりの運命が交錯し、変転する様を描き出して行く話である。長州藩の萩で暮らしていた頃は、傳三郎が“主”で、宇三郎は“従”でしかなかった。しかし、傳三郎が時代の大きなうねりのなかで翻弄され、深刻な挫折を経験するうちに、宇三郎の存在が次第に増してくる。傳三郎を心から慕う宇三郎が“影”としての呪縛から次第に解き放たれていくところ、そこに話の一番の妙味を感じた。 歴史上の人物が、実名で出てくるところにも興味を惹かれた。幕末に長州藩で奇兵隊を組織するなどして活躍した高杉晋作、明治初頭に起きた「尾去沢銅山払い下げ汚職事件」で悪名を馳せた井上馨のふたりの人物の描写が印象的。とは言え、本書でスポットライトが当たっていたのは藤田傳三郎であり、それ以上の輝きを持って描き出されていたのは、傳三郎の“影”として生きた宇三郎であったと思う。 宿命的な繋がりを持って、幕末から明治にかけての激動の時代を生きたふたりの男の物語『蜻蛉始末』。ぐいと心を掴んで引き込んでいく小説の力があり、存分の読みごたえを感じた。
蜻蛉始末Amazon書評・レビュー:蜻蛉始末より
4163201505
No.2:
(5pt)

とんぼ

2人の男の数奇な運命を描いた大作です。明治維新の暗部を垣間見るようなサスペンスです。歴史好きにはたまらない作品です。
蜻蛉始末Amazon書評・レビュー:蜻蛉始末より
4163201505
No.1:
(4pt)

裏日本史

面白かった~。一気に読んでしまいました。明治維新という激動の時代が創られる過程を、真実と虚実を上手くミックスさせて、極上の歴史小説に仕上げています。歴史物好きには、オススメ!謎解き、ミステリー方面の期待には、残念ながら答えてくれてません。そこが、残念。「狂乱廿四孝」的な歴史ミステリーを期待してたのですが、、、。でも、面白かったー!
蜻蛉始末Amazon書評・レビュー:蜻蛉始末より
4163201505

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