蜻蛉始末
- 幕末 (129)
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明治に起きた「藤田組贋札事件」に題材をとった歴史ミステリーが本書である。”とんぼ”宇三郎は北森氏の想像の産物であって実在したモデルはないと考えて良さそうだ。謎が多い「藤田組贋札事件」に宇三郎という架空の人物を介在させることによって事件の空白を埋め、劇的な物語に仕上げているところが素晴らしい。 傳三郎と宇三郎は固い絆で結ばれている。出版社の紹介文では二人の関係に「友情」という言葉が使われているが、その絆は友情ではあり得ないだろう。きっちりと上下関係があり、友情というには想いの方向が一方的に過ぎるからだ。二人の関係はまさに「光」と「影」であり、表舞台で光りを浴びる人間と影勤め(陰守り)の関係といえる。そしてまたこの物語は、傳三郎(光)と宇三郎(影)だけの物語でなく、倒幕、明治維新、そして西南戦争と時代が大きな渦となって変わる中、眩いばかりの光を放った人物達と、彼らが輝くためにあえて影に回った人間や、時代の流れと運命に抗えず陰となった者達を鮮やかに描いた物語でもある。ここに描かれているのは志士たらんとした者達の心の揺らぎ、裏切り、変節、欲による薩摩閥と長州閥の暗闘だ。登場人物の人品が際立って描かれているのも、山口県出身の北森氏ならではのことだろう。史実や現在に伝わる人物評をうまく織り交ぜながら、あたかも歴史小説ではと思わせるほどのフィクションとなっている。北森鴻の最高傑作と評する読者も多いに違いない。 | ||||
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主人公は藤田傳三郎。 商人でありながら、奇兵隊の一人として幕末維新を駆け抜けた男。 というよりは、のちに大財閥・藤田組を一代で築き上げ明治の経済界を牽引した男である。 実際の傳三郎には、財閥を軌道に乗せるまでの行動に語られていない部分が多い。 その傳三郎の半生を、彼が巻き込まれた明治初期の大経済事件である「藤田組贋札事件」を主軸に、 幼馴染の宇三郎の友情と対立を横軸に描いだ力作。 導入部からぐいぐいと引きずり込まれる。 偽札事件の容疑者として逮捕された傳三郎の回想は、高杉晋作たちと攘夷を目指した時代に飛ぶ。 久坂玄随、井上馨、山県有朋などの人物と絡みながら、幕末維新から明治初期まで二人の行動を描く。 そして史実で未解明な部分を著者が得意の推理で明確にする。 友情と憎悪の結末、最後に明かされる意外な偽札事件の真相。 ミステリー作家らしい、歴史の謎解きの快感に満ち溢れ、同時に見事な人間ドラマとなった小説である。 著者にはもっと歴史小説を書いてほしかった、何回読んでもそう思わずにはいられない。 | ||||
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私にとっては北森鴻さんでは初めて読む歴史小説?でした。今まで北森作品ではミステリーばかり読んでいましたので。いや、これからは是非このジャンルの作品も書いていって頂きたいです。なかないの作品だと思います。元々私は維新前後の歴史小説、時代小説には結構興味があり、それなりに読んできましたが、北森作品はなかない良いと思いました。最後部分は枚数の加減なんでしょうか、些か急がれているような気もしないではないですが…。でも、いつも考えさせられるのですが、維新成ってからの政治家は、何故か急に魅力がなくなりますね。清廉さを失っていくようで。理想と現実の硲で、美しく生きることはやはり難しいということなのでしょうか?今まで藤田グループは知ってはいても、創始者については余り深く考えたことはなかったですが、例え小説なりにでも知ることが出来て、ちょっと嬉しい気分です。しかし、今までも井上馨って余り好きな人物じゃなかったけど、益々嫌いになりそう…。人を利用しようとする人間って嫌なんですよね…。でもいつも余り良く書かれない井上馨って、ある意味不思議な人物です。残された久作のことが気になります。今後の北森さんの活躍の方向に是非時代物も書いて頂きたいです。勿論ミステリー仕立てなら尚嬉しい。これからトンボを見るたびに、宇三郎と傳三郎のことを思い出しそうです。 | ||||
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江戸から明治へと時代が移り変わったとき、正しいことよりも権力者が正義となった時代だった。価値観は我が儘なままだったのだ。したいことを出来る力を持ち得たモノが、正義を振りかざしたのだろう。 開国前後を描いているのに、勝海舟が登場しないままで十分に書ききる才能には脱帽だ。お上よりも、民衆の中の方が大変だった時代なのだ。 | ||||
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2001年に出た単行本の文庫化。 ミステリ作家の北森氏が時代小説に挑戦したもの。正直に感想を言えば、失敗だったのではないかと思う。 なにより、人物に魅力がない(これは氏のミステリの多くにも言えることだが)。主人公である「とんぼ」には惹き付けるものがなく、また、その性格の変化も唐突すぎて付いていけない。 また、氏の持ち味である緊迫感ある文章が、本書では感じられなかった。 厚いだけで内容のない一冊だった。 | ||||
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