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穢れなき者へ
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穢れなき者への評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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1993年頃、カナダから車でボストンまで戻る途中、メイン州を南下しました。所詮私は観光客ですから、アカディア・ナショナル・パークを訪れ、その景観の美しさに度肝を抜かれたりもしましたが、総じてメイン州を走るハイウェイは退屈でした。走っても走ってもその景色が変わらない。食事を摂るべく訪れた場所は、閉鎖的なレストランで誰も注文を取りに来ず、地元住民と思しき他の客たちの東洋人を見つめる視線は、禍々しいものでした。まあ、今はそんなこともないのでしょう。 マイクル・コリータの著作を読むのは、「冷たい川が呼ぶ」(2012/12月 創元推理文庫)以来になります。それについては、ほぼ内容を忘れてしまっています。 本作の舞台は、メイン州の島、サルヴェーション・ポイント島。かつて罪を犯したことがある主人公、イズレル・パイクは、海に漂うクルーザーを見つけ、乗り込んでみると船内は血の海、七人の死体が残されていました。イズレルは父親を殺害した罪で有罪判決を受け、服役、九週間前に戻ってきたばかりでした。被害者七人中、二人は政敵の間柄であり、何故二人が同じクルーザーに乗り合わせているのか不可解でした。イズレルは第一容疑者として、叔父のスターリング保安官補に目をつけられ執拗に追及を受けることになります。実は、イズレルには秘密にすべき州警察との密約がありましたが、それを表面化することはできません。何故? もう一人の主人公、十二歳のライマンはアルコール依存症の父親から虐待を受けていて、彼の隠れ家で一人の負傷した女性、ハチェットと出会います。ハチェットは事件のあったクルーザーに乗っていたのか?(乗っていなかったとしたら、困ってしまいますが(笑))ライマンは、身を挺してハチェットを守り抜こうとします。少し説明が長くなりすぎました。 美しい海に囲まれた島で繰り広げられる謀略と犯罪。質の高いサスペンス小説になり得ていると感じました。 理由は、ほぼ交互に語られるイズレルと少年ライマンの人生が交錯し、生き様までがオーヴァーラップしていく中で、罪人でありながら正直に生きようとする男の心情が静かに語られ、尚且つイズレルが撮した写真の被写体でもあるライマンの海を駆ける「まるで重力なんて存在しないみたいな」姿に心惹かれるからに他なりません。巻頭にコーマック・マッカーシーによる「ザ・ロード」からの一文が掲げられていますが、「ザ・ロード」の父と子の姿が、何故かイズレルとライマンの姿にダブります。いつまで経っても悪辣さから逃れられないこの世界で唯一信じられるものがあるとすれば、「正直さ」だけなのかもしれません。 得体の知れない私立探偵、カルーソも脇役としてとても魅力的でした。 次週、本当に久しぶりですが、米国西海岸を旅行します。その間、読書量は減ることになるでしょう。でも、その旅行がそれ以降の読書にワクワクするような楽しさを与えてくれるよう祈っています。 ▫️「穢れなき者へ "An Honest Man"」(マイクル・コリータ 新潮社) 2025/9/05。 | ||||
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