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密航者
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密航者の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.80pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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. マリア・フォンタナはコロンビア大学の心理学科長を務めるシングルマザー。ニューヨークの刑事法廷で陪審員を務めたところ、評決が割れた結果、連続小児殺人犯ワイアット・バトラーが釈放されることになる。直後からマスコミやSNSは陪審員たちへの痛烈な批判を始める。これがきっかけとなった一連の騒ぎののち、マリアは大学から無理やりサバティカルを取らされる。そこで家族を連れてイギリスのサウサンプトンへと旅に出るが、乗った客船内でバトラーの手口そっくりの残虐な殺人事件が連続する。果たして犯人はバトラーなのか……。 ----------------------------- アメリカのコメディアンであるジェイムズ・S・マレイと、イギリスの作家ダレン・ウェアマウスの共作スリラーです。 原作『The Stowaway』はアメリカのAmazonで600人超のレビュアーのうち5つ星をつけた人が62%、4つ星は23%(2024年4月4日現在)とかなりの高評価を得ています。ですから私はかなりの期待をもって邦訳文庫の頁を繰り始めたのですが、結果的に肩透かしを食ったという思いだけが残りました。 物語にひねりがありません。込み入ったプロットを組み立てるつもりが作者にはないようで、お話は単純明快といえば聞こえは良いでしょうが、あまりに予定調和的で残念です。むしろ映像的に残忍凶悪ぶりをこれでもかと見せつけようというのが主眼のようで、読んでいてきつい描写が続きます。「人間にどんなことができるか知ったら、あんたはショックを受けるだろうよ」(280頁)という言葉が妙にぴったりきます。 ページ数こそ360ほどありますが、改行が多いので、同程度のページ数の小説に比べて文字数は少なめだと言えるでしょう。 最終章では新たなる事件の発生が宣言され、マリアの次なる活躍を読者に期待させようとする幕切れとなっていますが、これをシリーズ化しようというのが作者二人の魂胆でしょうか。正編の出来がこれでは、続編への期待は低くならざるをえないというのが正直なところです。 ----------------------------- 気になった点をひとつ記します。 *113頁:連続殺人犯ワイアット・バトラーの裁判の場面で「連続殺人犯とされる被告を訴追する」という表現が出てきますが、「被告」とは民事裁判で訴えを提起された者のことです。ですがワイアット・バトラーの裁判は刑事裁判であり、刑事裁判で検察官に犯人であると主張され起訴された者は「被告人」とする必要があります。 ----------------------------- 同じくサウサンプトン行きの客船内で発生する怪事件の謎を追うミステリー小説をひとつ紹介しておきます。 ◆セバスチャン・フィツェック『 乗客ナンバー23の消失 』 :ベルリンの覆面捜査官マルティン・シュヴァルツの妻と息子はクルーズ船<海のスルタン>号で旅行中に突然姿を消した。おそらく母子無理心中を図って海に身を投げたのだとみられる。 それから5年、同じクルーズ船に乗るようにとマルティンのもとに電話がかかってくる。電話の主は老婦人ゲルリンデ・ドプコヴィッツ。乗船客の彼女は、マルティンにテディベアを渡す。それは彼の息子が愛用していたものだ。ゲルリンデによれば、2か月前に船から姿を消した母娘がいたが、娘のほうがそのぬいぐるみを手に突然姿を現したのだ。マルティンは否応なく、新たな乗客失踪事件と向き合わざるをえなくなる……。 . | ||||
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主人公は、コロンビア大学心理学科長、マリア・フォンタナ。彼女は連続小児殺人事件の陪審員を務めています。被告人は殺害した子供の死体を残忍な「作品」に仕上げていたと思われる時計の修理人、ワイアット・バトラー。すべての状況証拠はバトラーが犯人であることを指し示しますが、陪審員十二人の内の一人が無罪に票を投じたことによって無評決審理が確定し、バトラーは現実社会に放たれることになります。多くの抗議、非難が巻き起こる中、マリアは記者会見を開き、自分がただ一人「無罪」に投票したことを発表します。このバトラー裁判の暴露本が出版され、その著者のジェレミー・フィンチと悶着を起こしたことからマリアは、大学から一年間の<サバティカル>を取るよう命じられます。そして、約一年の後、マリアは双子の我が子たちと婚約者のスティーヴと共に英国への十二日間のクルーズに出発します。しかしながら、そのゆったり、のんびりの船旅の船内で凄惨な人間の頭部が発見されることになります。犯人は一体誰?動機は?クルーズの行方は? ストーリーをまとめてみると裁判に纏わる"つかみ"の鋭さには感嘆しますが、その後の展開、要は中盤以降のクルーズ船内でのストーリーに特筆すべきものは発見できませんでした。決して面白くないわけではありませんが、Netflixが提供するミニ・シリーズのシノプシスのようなスリラーのまま小説はその結末を迎えます。いくつかツイストもありますが、それらはスリラーである以上あってしかるべきもの程度の小さな驚きに過ぎません。 ということで、私は次の読書へと向かうことにしましょう。 ■「密航者 "The Stowaway"」(ジェイムズ・S・マレイ&ダレン・ウェアマウス 早川書房) 2024/3/12。 | ||||
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