ギリシャ悲劇の殺人
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「ギリシャ悲劇の殺人」という副題は日本語訳でつけられたもので、原題は“THE MAIDENS”(乙女たち)のみである。これはケンブリッジ大学のギリシャ文学講座の人気教授を取り巻く女性グループを直接的には指すのだが、本文を読めばわかるように、ギリシャ神話の収穫の女神デメテルとその娘で死の女神ペルセポネの後者がメイデンに重ねられている。 他方、主人公のグループセラピストは、1年前に愛する夫がエーゲ海のナクソス島で水難事故死したショックから立ち直れておらず、ナクソス島のデメテルの神殿の廃墟に夫を連れて行ったことがペルセポネの怒りを買ったのではないかというトラウマに苦しめられている。 物語はこの主人公がケンブリッジ大学にいる姪から助けを求められ、姪の友人が巻き込まれたメイデンズ連続殺人事件の捜査に関わるというものだが、冒頭から容疑者が名指しされており、その動機と証拠を求めて物語が展開していく。 ギリシャ悲劇で主に用いられるのはエウリピデスの「アウリスのイピゲネイア」であるが、これはトロイア戦争に出航しようとしたアガメムノン王率いるギリシャ連合船団が女神アルテミスの不興を買って足止めされ、そのために王の娘のイピゲネイアを生け贄に捧げるという悲劇であり、これがトロイア戦争後に王妃クリュタイメストラによる夫殺し、オレステスとエレクトラによるその復讐といった凄惨な復讐の連鎖へと続く序幕である。ホメロスやギリシャ悲劇のファンには堪えられない舞台設定で、連続殺人があたかも生け贄の儀式のような様相に見えてくるのだが、最後に意表を突くどんでん返しが待っている。 また、主人公の仕事であるグループセラピーの手法やセラピストとスーパーバイザーとの関係など、セラピーの実際が詳しく紹介されているのも興味深い。 ただ、グループセラピーを主宰する主人公自身が大きなトラウマを抱えて不安定な心理状態であることや、事件へのかなり危険なのめり込みなどには首をかしげるところが多かった。 急転直下のあわただしい事件終結についても、連続殺人のディテールが解明されないままですっきりせず、説得力が今ひとつである。 | ||||
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アレックス・マイクリーディーズという覚えにくい名前の作家の第2作(2021年)。 優れた先行レビューがあり、前半のあらすじがうまくまとめられているので、私はほかのことを書こう。 原書のアマゾン・レビューを覗いてみると、たくさんのレビューが載っている。日本からのものも数本あり、そちらではあまり褒められていない印象。 一方、海外レビューでは大いに褒めているものが多い。ギリシャ悲劇の味付け、興味深い登場人物、叙述・展開の巧みさ、燻製にしんなどなど。もちろん、駄作としているレビューもある。 比較的意見が分かれるのが意外な結末で、絶賛もあるが、非現実的、未完成との批判もある。 私的感想 ◯かなり長い本で、狭い世界での話で、アクションも少ないのに読みやすい。すらすら読めた。 ◯主人公を含め、キャラクターはたしかに興味深い。背後に性的関係がいろいろ設定されているが、具体的描写は少なく、上品である。 ◯主人公が心理療法士で、本人、友人、他人の心理描写、心理推測がいろいろ出てくるのが楽しい。肝心の部分が当たっていないのも楽しい。(これが燻製にしんかな) ◯ギリシャ悲劇がうまく使われていると思う。 ◯最大の問題は、最後に明らかになる意外な真相で、これを非現実的、不完全とする批判は理解できる。しかし、個人的には、ミステリー的に面白い真相で、よく考えられた真相と思う。 私的結論 ◯★★★か★★★★か悩むが、★★★★にする。 | ||||
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作者の前作「サイコセラピスト」(2019/9月)はスティレットの切れ味を持った納得のサイコ・スリラーでした。本作は、果たして?しかし、思いの外読み終えるのに時間がかかりました。 エウリピデスのギリシャ悲劇「アルケスティス」からアガメムノンの物語へ。 心理療法士の主人公・マリアナはセバスチャンと出会い結婚しますが、彼は一年ほど前に海の事故で亡くなり、マリアナは深い悲しみの中にいます。彼女と同様ケンブリッジで英文学を学ぶ姪のゾーイから連絡があり、若い女性の惨殺死体が発見され、その女性がゾーイの親友のタラかもしれないことを知らされます。マリアナはゾーイのためにケンブリッジへと駆けつけます。そこでは、カリスマ的人気を誇る<ギリシャ悲劇>を専門とするフォスカ教授がおり、彼には<乙女・メイデンズ>と呼ばれるエリート女子学生の取り巻きたちがいました。繰り返し起こる凄惨な殺人事件。その事件に<メイデンズ>はいかに関わっているのか?犯人はフォスカ教授なのか?マリアナは探偵としてこの事件の真相に迫るべく調査を始めますが・・・。 マリアナの心の動きに同調できなかったことが読書のスピードを遅くさせています。それは、極々個人的な感性によるものかもしれません。ケンブリッジ大学、ギリシャ悲劇、いわくありげな集団<メイデンズ>と道具立てに不足はありませんが、目くらましが多すぎて、その分<論理>の飛躍に気づいてしまった後は特筆すべきスリラーとは思えなくなってしまいました。よって、次の読書へと移ることにしましょう。 混乱の最中にいる心理療法士=マリアナの悲劇に、本当の悲しみはなかった。 ■「ザ・メイデンズ ギリシャ悲劇の殺人 "The Maidens"」(アレックス・マイクリーディーズ 早川書房) 2024/3/2。 | ||||
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