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短編ミステリの二百年3



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【この小説が収録されている参考書籍】
短編ミステリの二百年3 (創元推理文庫)

短編ミステリの二百年3の評価: 5.00/5点 レビュー 2件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(5pt)

資料性も極めて充実の名作集

本アンソロジー・シリーズの選ばれた作品の質の高さ、鋭い批評性の新鮮さ、書誌データの正確さには巻を重ねる度に感心させられる。
冒頭のポーストの代表作を始め、トマス・フラナガンのテナント少佐もの、A・H・Z・カーの「我が家のホープ」、ミリアム・アレン・ディフォードの「ひとり歩き」などに顕著な、真実の追求と良心との相克の問題を扱ったシリアスな作品が並ぶ。とりわけアメリカ民主主義社会の縮図を見るようなシャーロット・アームストロングの「敵」は必読の名作。フーダニットというジャンルだからこそ達成される、社会的主題とミステリとしての鮮やかな技巧の高次元な融合が見られる。
巻末の評論も充実、特にEQMM誌の短編コンテスト入選作一覧は資料として極めて貴重。読後、EQMMやミステリマガジンのバックナンバーを猛烈に読み返したくなる。
短編ミステリの二百年3 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:短編ミステリの二百年3 (創元推理文庫)より
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No.1:
(5pt)

EQMM年次コンテストを中心とした第3巻。コンテスト受賞作の全リストを掲載。

はじめに
〇第3巻は作品も評論も、EQMM年次コンテストを中心とした巻。
〇第3巻の頁数は689頁で、第2巻の686頁だったので、大体同じ。面白いことに、作品集のほうは、第2巻も第3巻も423頁までで、ピタリと一致している。
〇作品集は全11短編で、これも第2巻と同じ。ポーストの『ナボテの葡萄園』(1911年)というずいぶん古い作品が入っているが、それ以外の10編は全部戦後の作品で、一番古いのがQ・パトリックの『姿を消した少年』(1947年)、一番新しいのがA・H・Z・カーの『わが家のホープ』(1969年)。
〇11編を年代順に並べると、1911年 ポースト『ナボテの葡萄園』、1947年 Q・パトリック『姿を消した少年』、1950年 フレドリック・ブラウン『最終列車』、ウィルバー・ダニエル・スティール『女たらし』、1951年 シャーロット・アームストロング『敵』、1952年 ヘレン・マクロイ『ふたつの影』、トマス・フラナガン『良心の問題』、1955年 スタンリィ・エリン『決断の時』、1957年 ミリアム・アレン・ディフォード『ひとり歩き』、1958年 ヒュー・ペンティコースト『子供たちが消えた日』、1969年 A・H・Z・カー『わが家のホープ』となる。
〇全部新訳とのこと。『決断の時』は深町眞理子訳、『ナボテの葡萄園』は門野集訳、『良心の問題』は藤村裕美訳、『子供たちが消えた日』は白須清美訳等。
〇『世界推理短編傑作集』との重複作品はない。『世界推理短編傑作集』に別作品が選ばれているのは、ポースト『ズームドルフ事件』、ブラウン『危険な連中』、Q・パトリック『ある殺人者の肖像』である。
短編集私的感想
〇形式的には、ポーストとフラナガンは、評論の第三章(承前)アメリカン・パズルストーリーの陰の流れの関連で選ばれ、ブラウンとペンティコーストは第五章四十年代アメリカ作家の実力との関連で選ばれ、残りの7編は第四章EQMM年次コンテストの関連で選ばれたことになる。しかし、フラナガンはコンテスト第一位受賞作家(『アデスタを吹く冷たい風』)で、ペンティコーストも第二位作家(『ある殺人』等)、ブラウンもオナーロールに入っているので、EQMM年次コンテストと無関係ではない。結局、コンテストと無関係なのはポースト一人である。
〇以下11編につき、簡単なコメントを付し、作品の私的評価を5点満点、小森氏の作品選択への私的共感度を5点満点でつけてみる。失礼ご容赦。
☆『ナボテの葡萄園』・・観念をそのまま小説にしたような作品で、あまり好きでない。傑作『ズームドルフ事件』との間にはかなりの差がある。作品3点。しかし、編者は「思想の実現」小説の代表として選んでいるので、選択には共感する。選択4点。
☆『良心の問題』・・テナント少佐ものは『アデスタ・・・』以外の3編に大差はなく、どれを選んでもよい。ただ、私は第四回コンテスト処女作特別賞の歴史物『玉を抱いて罪あり』のほうが好き。作品4点、選択5点。
☆『ふたつの影』・・マクロイはコンテストの二位または三位に4作品入っているが、コンテスト外のこの作品が選ばれた。お子様証言ものである点がちょっと物足りないが、一応本格推理。悪くはない。作品5点、選択4点。
☆『姿を消した少年』・・Q・パトリックはコンテストに7回連続入賞しているが、全部
クライムストーリーとのこと。コンテスト外のこの作品は、おばにいじめられる少年の苦境をユーモアと皮肉をちりばめて描く普通小説に近いが、最後は犯罪小説風。これがパトリックの代表作となると違和感があるが、個人的には好き。『ある殺人者の肖像』の絶望的な怖さに比べると、この作品のハッピーエンド(??)は好ましい。作品5点、選択5点。
☆『女たらし』・・コンテスト二位選出。面白い作品なのだろうが、面白さがよく分からなかった。作品3点、選択4点。
☆『敵』・・今回、編者が選択した第一位受賞作は2編あり、そのうちの1編。本格ミステリーの論理を擁護し、マッカーシー旋風批判のメッセージを込める。傑作。作品5点、選択5点。
☆『決断の時』・・エリンの第一位受賞作。エリンの大傑作。作品5点、選択5点。
☆『わが家のホープ』・・『黒い小猫』で第一位受賞した作家の最後の短編のよう。編者は代表作と賞賛する。ビンボー秀才息子VS金持ちどら息子は面白く、女の子を押し付けられるのも面白いが、事件が重すぎて、軽快なテンポと合わないような・・作品4点、選択4点。
☆『ひとり歩き』・・テーマは『わが家のホープ』と同じだが、より深刻。真犯人を知っているのに、それを言い出すことができないうちに・・。よくできているが、あまり好きではない。評論でこの作者の作品が数点紹介されており、そっちを読みたい。作品4点、選択3点。
☆『最終列車』・・フレドリック・ブラウンのシュールな短編傑作。作品5点、選択5点。第11回コンテストのオナーロールに入っているKillers Threeという作品は未訳のようだ。
☆『子供たちが消えた日』・・本格ミステリー+人情話の大傑作。ペンティコーストはこれを選ぶしかない。作品5点、選択5点。
〇収録作品の私的ベスト5を選ぶと、第1位『子供たちが消えた日』、第2位『決断の時』、第3位『敵』、第4位『最終列車』、第5位『姿を消した少年』、次点『ふたつの影』となった。
評論私的感想
〇今回は分量は第2巻と同じでも、解説する短篇数が多くなった感あり。つまり、選んだ作家の掲載作以外の短篇、選ばなかった短篇についても広く解説している。
〇そのため、短編集からの独立性が高くなっており、大変読み応えがあるが、前巻ほどすらすらと一気には読めない。
〇EQMM年次コンテストの歴史的意義、変遷はよく分かった。
〇コンテスト受賞作の全リストは、貴重な内容で、とても楽しかった。
〇前巻同様、賛成できない所はいくつかあるが、重大ではないし、書くと長くなってしまうので略。
私的結論
〇第4巻熱烈期待。
短編ミステリの二百年3 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:短編ミステリの二百年3 (創元推理文庫)より
4488299040

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