短編ミステリの二百年4
- 短編ミステリの二百年 (12)
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江戸川乱歩編の世界推理短編傑作集(全5巻)の外伝というか、小森収氏による現代の視点で集成した評論+短編集として、東京創元社が力を入れて発行している感のあるアンソロジーである。ミステリ・ファンとして、その野心的な取り組みは応援したいし、実際、第1巻から第3巻まではなかなか内容も良かった(第1巻、第2巻:星4つ、第3巻:星3.5というところか)。 ただ、本巻については、集められた短編自体は、ミステリ・ファンとしての私としては、ミステリ「らしさ」が不足している気がして、「驚き」に乏しく、あまり感興を覚えなかった。マッギヴァーン「高速道路の殺人者」は(ちょっと長いが)サスペンス溢れた佳作だし、スレッサーの「正義の人」も余韻があってよいが、あとは後味の悪いものが多く、あまり好きになれなかった。特に、シャーリー・ジャクスンの「家じゅうが流感にかかった夜」は読むのに苦痛を覚え、これはどう考えてもミステリじゃないだろう。なぜ選んだのか??あと、リチャード・マシスンの「獲物」も、小説としての感興というよりホラー映画にした方が良い感じ(やはり「ある日どこかで」の作者らしい、映像感覚が長所)。ターナーの「争いの夜」もたしかにリアルだが、ミステリとしては、だから何?という印象。 本書については、通常長すぎると思われる小森氏の評論(というより、感想的な読み物だが)の方が、ときどき意見に賛同しかねるものの、読み物としては面白かった。本書については、評論のページ数が多くて良かったと思う。評価としては、(小説部分:星2つ+評論部分:星3つ)で、平均して星3つという感じ。 | ||||
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マンハント掲載という事実が意外なほど憎悪と暴力の不毛を描く「争いの夜」。著者ターナーの「クリスマスの贈り物」という短編をミステリマガジンのバックナンバーで読んだが、これもまた傑作。個人短編集が編まれても良い作家だ。 ローレンス・トリートとマッギヴァーンの作品はいかにも警察小説黎明期らしいテンポの良いスピーディーな展開で往年のアメリカン・ミステリを読む魅力そのものを堪能した。 スレッサー、リッチーのヒッチコックマガジンを代表する短編ミステリのアルチザンの競演はストーリーの曲節の果てに人生の哀歓と滋味溢れる結末が待つ。 周辺ジャンルとしてファンタジー、恐怖小説畑からはセレクトされた作品では、その無邪気さ故に奇跡のように戦場を生き抜く若者を描いたブラッドベリと子供時代に誰もがうなされた悪夢を思い出させるダーレスの対比が鮮やか。そして奇怪な人形との闘いの果てに、それを上回る真の恐怖が待ち受ける「獲物」はマシスンの代表作と呼ぶに相応しい。 一見、ハートウォーミングなエッセイであるシャーリー・ジャクソンの『野蛮人との生活』からの一編に巧みな技巧性の存在を看破する編者の指摘はまさに慧眼。 ニューヨーカー誌に掲載されたドン・チーヴァーとMWA賞受賞作である「その向こうはーー闇」と「服従」、「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」のジャンルの境界線の曖昧さ、あるいはジャンルを分ける無意味さが、1960年代以降のミステリの成熟を雄弁に語っている。特に本邦初訳となる「服従」には心から感銘を受けた。確認されている中で作者の唯一の作品だということだが、歴代エドガー賞短編の中でも屈指の傑作だ。 | ||||
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〇第4巻の頁数は663頁で、第3巻の689頁よりちょっと薄い。薄くなっているのは作品集が薄いからで、第3巻が423頁なのに、第4巻は341頁である。一方、評論の方は第3巻より厚くなっている。 〇作品集は全13短編で、第3巻の全11短編よりもむしろ多い。つまり、短いものが多いことになる。戦前はレイ・ブラッドベリ『戦争ごっこ』だけ、残りは戦後で、1970年まで、つまり、年代としては、第3巻と大体重なっている。 〇13編を年代順に並べると、レイ・ブラッドベリ『戦争ごっこ』(1943年)、オーガスト・ダーレス『寂しい場所』(1948年)、シャーリー・ジャクスン『家じゅうが流感にかかった夜』(1952年)、ジョン・チーヴァー『五時四十八分発』(1954年)、ロバート・ターナー『争いの夜』(1956年)、ウィリアム・オファレル『その向こうはー闇』(1958年)、ウィリアム・P・マッギヴァーン『高速道路の殺人者』(1961年)、ヘンリィ・スレッサー『正義の人』(1962年)、レスリー・アン・ブラウンリッグ『服従』(1963年)、ローレンス・トリート『獲物のL』(1964年)、ジャック・リッチー『トニーのために歌おう』(1965年)、リチャード・マシスン『獲物』(1969年)、マージェリー・フィン・ブラウン『リガの森では、けものはひときわ荒々しい』(1970年)。 〇ジャンル別に並べると、目次の順となり、マンハントが『争いの夜』、警察小説が『獲物のL』と『高速道路の殺人者』、アイデアストーリーが『正義の人』と『トニーのために歌おう』、幻想と怪奇が『戦後ごっこ』、『淋しい場所』、『獲物』、再び雑誌の時代が『家じゅうが流感にかかった夜』、『五時四十八分発』、エドガー賞が『その向こうはー闇』、『服従』、『リガの森では、けものはひときわ荒々しい』。 〇大変興味深いのは、1970年のエドガー賞受賞作『リガの森では、けものはひときわ荒々しい』の作者マージェリー・フィン・ブラウンについて、ハヤカワ・ミステリ文庫『エドガー賞全集下巻』(1983年)188頁では、著者履歴も他の作品も不明と書かれていたが、本書324頁には興味深い履歴が書かれていること。終戦後陸軍大尉の夫に従って占領下の日本に移住し、毎日新聞の記者として働き、帰国後に日本体験記も出している。2010年没。 私的感想 〇第3巻までいろいろ生意気なことを書いてきたのだが、今回は評論の厚みに圧倒されてしまい、ようやく読み終えてフーフー言っている状態。好きな短編を選び、簡単なコメントを付して終わりとしたい。 〇第一位 ウィリアム・P・マッギヴァーン『高速道路の殺人者』・・高速道路を舞台にしたサスペンスフルな警察小説。一番長いが、一気に読める。最後の人質救出に唸る。 第二位 レスリー・アン・ブラウンリッグ『服従』・・エドガー賞の本邦初訳作品。鮮やかの一言。これがこの作家の確認できる唯一の著作とのこと。 第三位 ジョン・チーヴァー『五時四十八分発』・・ちょっと異様な復讐譚、というより、卑劣な男に落とし前をつけさせる話。後味良い。 第四位 ローレンス・トリート『獲物のL』・・平凡なようで、きっちりした構成の警察小説。最後のオチも効いている。 第五位 マージェリー・フィン・ブラウン『リガの森では、けものはひときわ荒々しい』・・本シリーズは新訳が売り物だったように記憶しているが、本作品は上記の文庫本の翻訳の再録と思われる。ただし、用語は一部変えられている。リンゴ→林檎、料理→調理、オクス男爵→オックス男爵のように。なお、難解で有名な作品であり、今回の評論でもその難解さが強調されている。ここで生意気なことを言ってしまうが、これは1960年末から1970年初めの文化によく出てきた薬物依存幻想を取り入れた世界ではなかろうか。本作品では、薬をまともな心臓病治療薬にして、性的幻想を抑制して、モラルを保っているが、それは、著者の立場や掲載誌(女性誌?)等を考慮したからか。ともかく、とんでもない展開とまではいえず、一応ストーリーとしてつながっている。 次点1 シャーリー・ジャクスン『家じゅうが流感にかかった夜』・・これは、ホーム・コメディなんですよね? オチがよく分からなくて、評論で教えてもらえるかと期待していたが、何も書かれていなかった。 次点2 リチャード・マシスン『獲物』・・恐ろしいオチについては、私はない方がよいと思うが、あるものはどうしようもない。人形との戦いは最高だった。 次点3 レイ・ブラッドベリ『戦争ごっこ』・・このネタはあまり好きではない。しかし、名作であることは理解できる。 | ||||
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まあ、最初から、「アンソロジー+評論」のような構成のシリーズなんですが、ミステリ史に関する評論部分が巻を追うごとに長くなっていくのはちょっと…… その評論部分では、相変わらず主観的・独断的な作品評価が展開されているだけに、余計にアンソロジー部と同じくらい長いと、こっちを減らすか、作品数を増やして欲しいと思ってしまいます。 ただ、個々の作家や作品への評価部分に目をつぶれば、おおまかなミステリと周辺分野の時代の流れが追えますし、 長編と違ってあまり機会のない短編の内容紹介が豊富にある――入手困難なものが多いとはいえ――のも、魅力ではあります。 アンソロジーとしては作品を楽しんでいるので最後までつきあうでしょうから、ともかくこれ以上は評論部が長くならないことを祈っています。 | ||||
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