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罪の壁
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罪の壁の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.25pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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魅力的で香るような文体。ぼくの生まれる一年前に出版された古い小説。それでいて本邦発邦訳。しかし、決して古臭くて読みにくいというような小説ではない。 確かに携帯電話もパソコンも人工衛星もない。情報入手や相互連絡の手段は著しく限られ、作中では電報が多用されている。しかし、人間の罪と犯罪は、どの時代も変わらない。不穏な黒い勢力も、彼らに牛耳られた警察組織も。人々の愛情も、憎悪も。欲望も、貧富の差も。 アムステルダムの飾り窓の女。運河に落ちて死んだ兄の事件。ナポリ。アマルフィ。セレブたちのパーティ。青の洞窟。ファム・ファタール。大戦の影。行間に薫る香気。懐かしい冒険の時代。大戦後の平和への一歩を踏み出したばかりの世界。セピアカラーの映画のような小説。 ごった煮感のあるジャンルを盛り過ぎて欲張った感のあるストーリーなので、海洋や絶壁でのアクションも豊富であれば、個性豊かな男女のラブロマンスもこってり。今にしてみればサービス過剰の部分もあるけれど、これで運河の事件は終わり? と思うと何だか肩透かしを食らった気分でもあり、複雑。 でも読みごたえ、やキャラクターたちの個性や、それを取り巻く地中海、そこに住む地の塩のような住民たちの心意気等々、島国日本から見れば国際色豊かな環境など、つくづく羨望を感じてやまない。そんなロマン溢れる舞台に展開する、恋と冒険の物語。ロマンの王道をゆくエンタメ作品。それでいてハードな魂と気品を忘れさせぬ騎士道精神。恋と闘いに燃える青年たちの駆け引きドラマが、大戦後間もないが冷戦の緊迫を秘めるヨーロッパに展開する作者渾身の力作である。 今では失われて久しい小説作品に久々に出会えたようなアナクロめいた密かな喜びをもたらしてくれるので、作品の現代性やサービス精神に不足を感じてもなお基調で豊穣な読書体験をもたらしてくれる作品である。CWA賞第一回受賞作品として今更ながら翻訳されている不思議、という点もミステリーファンにとっては、興味深いと思う。 | ||||
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