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蝶の眠る場所



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【この小説が収録されている参考書籍】
蝶の眠る場所

蝶の眠る場所の評価: 4.54/5点 レビュー 26件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.54pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

(2021年―第90冊)現役日テレキャスターの小説デビュー作品

2018年、毎朝テレビの記者・榊美貴は後輩の不祥事をかばったために、深夜の低視聴率・低予算ドキュメンタリー制作チームに左遷となる。折も折、町田市相原町の小学校で児童の転落事件が発生する。美貴は事件を調べているうちに、死亡児童の祖父が母娘殺害容疑で死刑になっていたこと、そして児童の母はそれを冤罪だと信じ続けていることを知る。美貴は調査取材を始める……。
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 著者自身、日本テレビの現役ジャーナリストで、2013年に「NNNドキュメント」のプロデューサーとして、冤罪の疑いのあった飯塚事件を取材した経験の持ち主です。まさに自身のオルターエゴである榊美貴というテレビ記者を主人公に仕立てた小説デビュー作ということです。
 冤罪事件による加害者一家のたどる末路や、先進国で唯一といってもよい死刑制度保持国・日本の現状、幼い子を抱えた35歳のシングルマザーのキャリアの問題、スクールカーストの闇、視聴率とテレビ番組の関係など、現代的な課題がてんこ盛りといってもよい小説です。そのどれもがため息をつかずに読めないものばかりです。
 400頁を超える長編もなんのその、文章は読みやすく、すいすいと頁を繰ることができます。

 ただし、刑死した被告の家族、警察関係者、転落死した児童とその同級生と、この広い大東京の、しかも町田市内の、半径数キロ圏内にいる赤の他人たちが、見事なまでに過去を重ねているさまは、小説としては実に都合よすぎる気がします。読んでいて鼻白む思いがしたのも事実です。
 また深夜のドキュメンタリー制作チームの面々が、一癖も二癖もある、面倒くさそうな人ばかりでありながら、その実、切れ味鋭い推理力と取材力がある人物ばかりに造形されている点も、不必要な戯画化のように思えてなりませんでした。

 今日現在、12人のレビュアーが5つ星をつけているほどの高評価作品ですが、つぶさに見てみると、12人中4人がこの小説以外のレビューをしていませんし、さらに残り8人のうち3人がこの小説以外の書籍にはレビューをしていないことがわかりました。12人中7人がこの小説【だけ】を意図的に選んで5つ星をつけているのは、あまり尋常ではない気がします。
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*420頁:「ささいな出来事がきっかけとなって、想像以上に大きな出来事が起こることの例え」を『バタフライ・シンドローム』という、と昌が言う場面があります。しかしこれは間違い。正しくは『バタフライ・シンドローム』ではなく『バタフライ・エフェクト』です。
 なお、『バタフライ・シンドローム』とは、遺伝性の皮膚疾患である「表皮水疱症」を指していうことばです。蝶の羽のように非常に敏感な肌を持っているため、「表皮水疱症」のを患う子供たちは、「蝶々の子供」と呼ばれています。
 このいい間違いはちょっといただけませんね。

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 冤罪事件を描いたノンフィクションを紹介しておきます。

◆坂上 遼『 消えた警官 ドキュメント 菅生事件 』(講談社)
:1952年6月2日、大分県菅生(すごう)村の駐在所で爆破事件が発生。共産党員二人が現行犯逮捕される。逮捕された二人はこの時間、村の実力者が営む製材所に勤めていたある男に呼び出されて現場近くにいたと証言。しかしその男・市木春秋は事件直後に姿をくらます。そしてやがてこの男が警察官であった可能性が浮上してくる…。

◆清水 潔『 殺人犯はそこにいる 』(新潮社)
:著者は1958年生まれの日本テレビ記者。栃木県と群馬県で1979年から1996年の間に5人の少女が行方知れずとなり、うち1件を除いて被害者が遺体で発見されるという痛ましい事件が発生。このうち1990年に発生した足利市の誘拐殺人事件で菅谷利和さんという男性がDNA「型」鑑定をもとに逮捕されたところで、事件は一応の決着を見たとされた。このルポルタージュは、菅谷さんが誤認逮捕なのではないかと疑問を呈した東京勤務の著者が、一から事件現場を歩き、DNA型鑑定の何たるかを学び、5件の誘拐事件の関連性を調べてまわったうえで上梓したもの。

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蝶の眠る場所Amazon書評・レビュー:蝶の眠る場所より
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