中野のお父さんの快刀乱麻
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北村薫さんの本を相当読んできた者です。本書は6編の短編集ですが、どのストーリーにも温かい気持ちをもった登場人物がいるので、読後感の良さが魅力にあげられます。 「中野のお父さん」シリーズも3作目に入りました。毎回、お父さんの博覧強記ぶりには感心してしまいます。そこに北村薫さんの姿が投影されているようで、読みながらにやにやしてストーリー展開の妙を楽しんでいました。高校の国語の先生をしていたというのも共通していますので。 『円紫さん』シリーズのように、落語への造詣の深さはずっと以前の作品から理解しているのですが、「菊池寛の将棋小説」のように将棋の知識や関心のあり方にも驚いています。幅広い守備範囲を見せられて、作者の知識の奥深さが伝わってきました。 小ネタのようですが、「太宰治と松本清張」が同じ明治42年の生まれ(15p)ということを教えてもらいました。実に意外です。活躍した年代が異なりますし、太宰が心中をしてから松本清張ブームが起こったことも併せて、小説家が脚光を浴びた時期の違いが浮き彫りになるエピソードでした。 なおかつ大岡昇平も同じ明治42年の生まれと書かれています。近代文学史を飾る小説家の生まれの偶然の邂逅と言えるでしょう。 後に北村さんも早稲田大学の教授をされていますが、このような背景を教えてもらえる授業があれば聞いてみたい気がします。 映画への造詣の深さも半端ではありません。ここまでしっかりと鑑賞できる眼があるからこそ、見事なストーリーを紡ぐわけなのかもしれません。 167pのワセダミステリクラブの機関誌『PHOENIX60』も北村薫さんの大学時代の思い出が投影されていました。1年先輩にあたる瀬戸川猛資さんを登場させています。「19、20の人間が、これを書いている」とあるように、学生でこれだけ質の高い評論を書いていた人がいるだけで驚きです。50歳でお亡くなりになっていましたが、その瀬戸川さんのエピソードも上手く作品の中に織り込まれていました。 どの作品も驚きの連続でした。深い知識と筆力が合わさると素敵な作品になるという見本のような短編集でした。 | ||||
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北村さんの「中野のお父さん」の第三作目。小津安二郎の映画、大岡昇平の「武蔵野夫人」のタイトルの謎、それから、作者の好きな落語の物語など、蘊蓄と書物への愛に溢れた本になっている。また、親子のやり取りなどが心温まる作品だと思う。途中から、コロナの影響でそれまでの生活が出来なくなり、一緒に食卓を囲む事も出来なくなる様も克明に描かれている。 ただ、欲を言えば、前作の様な物語りとしての切れの良さ、上手さというのは、余り無くなり、淡々として、小説と言うよりも、エッセイの様な感じにシフトしているかもしれない。ただ、その中で、ヒロインの編集者の先輩の女性が、前作で結婚して、現在は編集長になり、ヒロインも、段々、責任ある立場になりつつある。また、体育会系だと思って居た彼女が、女らしい部分もあると言う発見もあり、登場人物の描き込みも豊かになっている様にも思う。 | ||||
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文芸誌の編集者の娘と高校教師の父のコンビが娘の持ち込む謎に応えるシリーズ。好みは分かれるかもしれないですが、シリーズ第3弾もおもしろく読ませていただきました。世の中がなんだかギスギスしている今こそ、父娘のほのぼのとした謎解きに心が洗われる思いすらします。 | ||||
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田川美希は出版社の文芸部に勤める編集者だ。仕事の過程で出くわした、ミステリアスな事件のことを、東京・中野の実家に帰るたびに父に話して聞かせる。高校の国語教師である父は美希が持ち込む謎の解をたちどころに提示してみせる。 ----------------------------- 北村薫の「中野のお父さん」シリーズの第3弾です。 小説『武蔵野夫人』の題名を考えたのは果たして誰なのか。(「大岡昇平の真相告白」) 古今亭志ん生が語った蚊帳詐欺事件の真相とは。(「古今亭志ん生の天衣無縫」) 小津安二郎の映画『秋日和』と『彼岸花』の原作者は本当に里見弴なのか。(「小津安二郎の義理人情」) 映画『動く標的』を半世紀前に評した瀬戸川猛資の論評にある記憶違いとは。(「瀬戸川猛資の空中庭園」) 菊池寛の将棋小説のネタ本とは。(「菊池寛の将棋小説」) 編集長の義母が聞きたかった落語のCDとは。(「古今亭志ん朝の一期一会」) いずれもが、膨大な歴史の真実を古い文献を渉猟して取り出してくる北村薫の手腕があったればこその物語ばかりです。インターネットが拾いきれない情報がまだまだあることを痛感させてくれます。 二篇目の「古今亭志ん生の天衣無縫」で、手塚治虫の漫画『ブラック・ジャック』の1エピソード「もらい水」のことが取り上げられています。このくだりを読んで、ああそうそう、あったなぁ、と思わず膝を打ちました。老母の息子に対する静かな愛情が感じられる佳品だったことを思い出したのです。 ドイツ映画『会議は踊る』は数十年前に見ましたが、ナポレオン時代のドタバタ恋愛劇といったものだと感じてそれなりに楽しめましたが、「小津安二郎の義理人情」が指摘するように、二つの大戦の狭間に作られた映画だからこその苦味を感じ取ることができるという見方には虚を衝かれました。あの映画を同時代作品として味わうことの意味をこうして教えられるのは意義深い思いがします。 同時代の作品といえば、最終編の「古今亭志ん朝の一期一会」がいみじくも指摘するように、作品とはそれを鑑賞する人との相互作用によってその時代だからこその味わいかたが生まれようというものです。 「観る者と観られる者の作る舞台が、一日も早く戻ってきますように」(311頁)――そうした願いが込められた物語であることを、この新型コロナ禍の中で強く感じました。 . | ||||
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基礎教養が追い付かない部分もあるが、この手の問答はとても楽しい 自分の「朝顔に~」はなんだったっけ?と読み進んだら、「あーそうだった!それだー!」で、「もらい水」の内容を思い出し、切なくなって…そして苛立ちが湧いて来た。お前!息子!1から10まで説明されなきゃ分かんねーのか!?の憤りがこんなとこで再燃するとは思いもよらなんだ 同好の士にわくわくしちゃって「親切の押し売りじみて」も、張りきっちゃうトコが愛しい 楽しく読みました | ||||
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