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囚われの山
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囚われの山の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.19pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全25件 1~20 1/2ページ
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人は過ちを犯す。 日常ならまだしも、死の恐怖にさらされたなら、なおさらだ。 軍も過った、仕官も過った、無論若い兵卒だって、そしてやはり村人も過ったのだ。 そういった人びとの過ちの積み重なりにさらに軍の事なかれ主義が覆い被さり、知られてはいけない秘密は降り積もる八甲田の雪の中に永遠に閉じ込められていくのだ。 今となっては真実は分からない。 自分にだってあっておかしくない人間の業が、ジャーナリストの業により、ジャーナリズムだからこそのペンの力で雪の下から掘り返される、人間の裏側が悲劇を呼び、それをなかったことにするためにまた悲劇を呼ぶ、実に怖い話。 | ||||
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史実をなぞりながら、現代の登場人物を織り交ぜた描写は、実際に現代や遭難当時の八甲田を訪れたかのような感じで読み進められた。 それぞれの登場人物の絡みも面白く、最後の描写には「そうきたか…」と驚きをもって本書のイメージを記憶にとどめおかれた。 読んでよかった。 | ||||
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伊東潤氏は時代物、とりわけ戦国期の歴史小説に多くの佳作をものしているが現代史を取り上げた(と言っても明治時代だが)洞察鋭いこのような作品もあるのかと刮目しました。 この小説を読んだ後、更に映画を観たくなりDVD「八甲田山」をAmazonで購入しました。 | ||||
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文庫本の帯に「120年前の大惨事に雑誌編集者の男が辿り着いた”真実”とは?」とあり、筆者にとっては新田次郎氏でイメージが確定している「八甲田山」をどのように新たな作品として成り立たしめるのかという興味で本書を購読。 現代パートと往時パートの対位に引っ張られて面白く読んだ。田代温泉へ向かう編集者と一等卒を重ね合わせるところなどはベタなほどに外連味のない王道だ。安易に描かれると鼻白んでしまうところだが、素材が正統ど真ん中なのであまり気にならない。それにしても最後のオチからすると主人公編集者と編集長の仲はその後も継続的だったのかと思ってしまう。 ここまで著者を聞いせずに読んだが、改めて著者名を確認すると、比較的的最近に著者の「歴史作家の城めぐり 〈増補改訂版〉」 (幻冬舎新書)を読んでいた。軍事・歴史マニア的indexと物語戦国東国史が絡み合って楽しかった。本作品の現代劇パートの一件紋切り型な展開のようでそれに留まらないところと似ているように思えてしまう。 | ||||
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この事件をあまりよく知らなかったのであまりの壮絶さに自分も読みながらグッタリしてしまった、すごい緊迫感と絶望感 文章や登場人物の描き分けがうまいのでスラスラ読めた 戦争が背景にあるときの人間の命の軽さにとても胸が痛む、面白い小説でした | ||||
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本作読了時(単行本)は、まずかなり複雑な思いに囚われた(←タイトルのとおり)。本屋の棚で見かけた時は、その昔の新田次郎版をアップデートした剛直な遭難実録をイメージしたところが、「一人足りない!」という歴史ミステリー。そして、なぜか現代の視点人物へと頻繁に話が戻り、そして、ある意味で驚愕の大団円へと至る。もちろん、ストーリーのクオリティは極上。しかし、作者の名からイメージされる内容とあまりに違った展開に、大いに戸惑ってしまったのである。同じような思いを持った読者は多かったようだ。しかし、マーケットがその答えを出した。当作は、かなりの売れ行きだったと聞いている。歴史小説の枠を広げ、新しいエンターテイメントを作る。作者は、この挑戦に成功した。そして現代劇へも活躍の場を広げ、傑作「修羅奔る夜」をものしたのである。成功し、あるひとつのカテゴリに囚われた作家が、その桎梏を引きちぎるまでのドキュメントでもある本作、閉塞感にあふれたこの現代を生きる我々にも意義深い一作である。 | ||||
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歴史小説でもありミステリーでもある。なかなか、面白かった。 | ||||
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雪中行軍をテーマに、ミステリーとも言える内容。クライマックスがまた凄い | ||||
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小説・映画化もされた所謂「八甲田山 死の彷徨」雪中行軍訓練を、現代の東京の歴史雑誌編集者が再構成・新解釈するという体裁の物語。勿論、行軍に随行参観した大隊長の山口少佐、山口少佐の従卒の稲田一等卒、雪中行軍訓練の有能な企画立案者兼事実上の指揮官だったが山口少佐の随行参観のお陰で腕が振るえなかったとされる神成大尉、やはり随行参観した倉石大尉などの(回想)主要登場人物達の設定は史実のままである。歴史雑誌の廃刊を阻止するためのアイデアとして「八甲田山」を採り上げたという形で物語が始まる。主人公を務めるのは部内ではチョット浮いた存在の菅原。 菅原は出張で青森に飛ぶが、記録上の遭難者数が「200→199」と初報から後報の間で減っている点がまず気に掛かる。混乱から生じたミス(軍では考えられない)でなければ、公にされていない人間が1人居た事になる。また、山口少佐の荼毘の日が他の犠牲者より3日早い事も発見する。その山口少佐の自死についても疑問点がある。1回の出張の"記録だけ"の調査で簡単に問題点に辿り着き過ぎという感が否めないが。また、実地体験という事で、菅原は地元の教師の(偏執的な)小山田の案内で行軍ルートを踏破し、山口少佐が神成大尉に代って実質的な指揮を執っていた(山口・神成が常軌を逸した後は倉石大尉が指揮を執っていた)事や行軍が現地の状況に不案内(軽装で臨む等)だった事などを聞く。 加えて、行軍は「進めば体力を消耗し、その場に留まれば凍死」という絶望的状況だった事も聞かされ、菅原は「八甲田山」に「囚われ」始める(行軍の悲劇と自身の離婚トラブル(に代表される人生)とを重ねあわせている)。しかし、この行軍に依って3年後の日露戦争において日本軍は1人の凍死者も出さず、低体温症や凍傷に罹る兵も殆ど居なかったという(!)。偶然とは考えられない。 菅原の執念で遭難者数の差の謎も解かれる。小山田も「八甲田山」に「囚われ」ていたのだ。「八甲田山 死の彷徨」を全く別の壮大な視座で透緻した秀作。編集者間の争いは頁数稼ぎでムダだと思ったが。 | ||||
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昔の軍の雪中訓練の遭難事故の話はすごくおもしろいです しかし現代編の話がダメですね 安いつまらない話で現代編だけ飛ばし読みしました 昔の雪中訓練の話だけで一作書いてほしかった すごい名作になったと思います | ||||
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120年の時空を超えて展開するストーリーには、圧倒されます。それこそ時の経つのも忘れて、一気に読了しました。 | ||||
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長編小説でしたが週末の一昼夜を掛けて一気に読みました。雪中行軍「遭難事件」となってしまった雪中行軍の「真の目的」を初めて知るとともに、小説の主題である「遭難者人数の食い違い(こちらはフィクション)」を混ぜた読み応えのある内容です。自分も「青森5連隊駐屯地内の資料館」を訪ね、また夏ではありますが実際に八甲田山を歩いているので、その分も自分がこの本に囚われたのだと思います。 ただ残念なのは、読者をグイグイ引き付けてきた小説の結末があっけなく終わってしまう最終章の残り数ページとエピローグでした。主人公は最後のビバーク地から街へ生還できたのかも省かれています。ここを丁寧に書いてあれば「星5」でした。 | ||||
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八甲田山雪中行軍遭難事件に基づくフィクション小説ですが、事件の知識があまり無くても、作品中で丁寧に説明されていますので、読み進めていく上では問題は無いと思います。 史実に作者の想像力が加わり、過酷で悲惨な雪中行軍、軍部の理不尽さや闇などが語られていきます。ラストはミステリー的な要素も含まれ、大変読み応えのあるエンターテインメントで骨太な物語ですが、エピローグは余分だったかなと個人的に思います。タイトルに引っ張られ過ぎた感がありました。 | ||||
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一粒で二度おいしい小説。 『八甲田雪中行軍遭難事件』を、同時代での描写と、現代からの検証としての視点の両方で、多面的に追体験できます。 日清・日露戦間期の旧日本軍の士官や兵卒の心情は、現代の我々からは窺い知れないところが多いです。それを、雑誌編集者の個人的な体験と執念を通じて伝わらせる手法が見事です。 所々に顔を出す南部弁のセリフが、山に生きる人々の思いをよく表現してます。 | ||||
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物語りが展開された地点を示すのに地図が最初に載せてあるが、この切り取り方でいいの、逆に分かり難くないのって思ってしまうところが唯一の惜しいところだが、お話自体は星5つ。2020年に読んだ中では一番楽しめた。極寒の雪山での遭難を体験させてくれる本書はとてもよいものだ。悲劇の話だが読み終わったあとに引きずらないのもいい。 | ||||
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久しぶりに読んでみたいと思ったので購入しました。少しずつですが読み進んでます。引き込まれますね、期待通りで良かったです。 | ||||
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世界登山史上最大級の犠牲者を出した八甲田山遭難事件といえば、多くの小説好きが思い描くのは、新田次郎著『八甲田山死の彷徨』であろう。私もその一人だった。 本作はそんな名作の先入観をぶち破るほどの、斬新かつ巧妙な仕掛けにより構築された歴史ミステリーとして、高い完成度を持った作品となっている。 現代の雑誌編集者の視点により、陸軍の無謀とも言える雪中行軍がなぜ行われたのかという謎に迫っていく物語。現代と過去を行きつ戻りつしながら、謎がさらに深い謎を呼んでいく展開が秀逸で、猛吹雪の描写の中でさえ、手に汗握るほどのドキドキ感を与えてくれる。 とくに雪中行軍については、歴史作家として重厚な作品を次々と送り出してきた著者らしい緻密で迫力ある描写の連続で、「もし死ぬなら凍死だけは絶対に嫌だな」と読者の誰もが思ったことだろう。 読み終えた今、しばらくスキーには行きたくない。 | ||||
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映画で固定していたイメージを 動かしてくれた。 雪を踏みしめる音を想像しながら読む。 伊東作品で描かれる地獄の風景…、 今度は冬の山にあった。 暗闇の白い地獄。 涙も凍る 人の作り出す地獄なのだ。 私は好きだ。 好きだからそれで良い! | ||||
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標題は、イギリスの歴史家E・H・カーの言葉ですが、『横浜1963』、『ライトマイファイア』、『真実の航跡』と続いてきた伊東潤の現代史小説に、私はカーの言葉と同じ精神を感じます。 伊東潤は、決して現代の価値観で過去を裁断しません。登場人物を現代の価値観に合わせて行動させたりもしない。あくまで、その時代の当事者の価値観と感情に寄り添う。それでいて、作品の根底には著者の現代日本に対する問題意識が一貫して流れている。司馬遼太郎、大岡昇平が残した優れた歴史小説も、また、そのような作品でした。 著者には幕末・明治維新が舞台の『武士の碑』・『走狗』・『西郷の首』という傑作があります。『囚われの山』は、これら三作品と『真実の航跡』(舞台は太平洋戦争)をつなぐ置石と感じています。 置石が線で結ばれ、骨太な伊東潤・日本近現代史観が完成するのを心待ちにしています。 | ||||
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八甲田山遭難事件といえば新田次郎『八甲田山死の彷徨』が、それを原作とした映画と共にあまりにも有名ですが、そちらで知っている人にもおすすめ。 新田作品による強い印象が定着している題材ですが、こういった切り口でも描けるのかと感心しました。そしてその有名な遭難事件に「謎解き」要素を組み込み、しかも「本当にあったのでは」と思わせるだけの見事な創作部分が本当に巧みです。ネタバレになる話を避けて紹介すると。ほとんどの人が「誤記か、それほど重要な意味はない」と考えてしまいそうな「一次史料の食い違い」に注目して一気に想像を広げた作品と言えるでしょう。 そしてここに単に想像・創作と思えない凄さがあります。「なぜ軍は7月まで捜索を続けたのか?」。新田作品では全遺体収容後も2挺の銃が見つからず(実は他部隊が持ち去った)、それらの捜索が続けられる描写がありますが、現在ではこの2挺の銃はすぐに返還されていたことが明らかになっています。「では一体、軍は何を探していたのか」がこの作品の鍵となっています。 主人公の周囲を描いた現代部分は史実重視派にとっては退屈かもしれませんが、よく読むと各所に作者のこだわりと遊び心(多分)が散りばめられており、それを探す楽しみもありかと。 | ||||
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