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(短編集)
レベル3
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レベル3の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.38pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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不思議なしかも短編小説であり何度も読み返しました。ありふれた日常生活の中から一瞬ふと思わせる光景が目の前に浮かび上がります。私が一番最初にニューヨークに訪れたのが交換留学した1978年でした。あの摩天楼やイエローキャブ、雑多な人種のるつぼ、思わず見上げてしまう高層ビルフィニー氏は当時何を思ったのでしょうか?読む度にその光景が自分に投影されその時代に引き込まれていくような感覚になっていきます。タイムトラベルは氏の小説のテーマになっており氏の没後に色々な映画やドラマに使われています。なぜフィニー氏の小説が注目されるのか?現実と未来への関係、予言を思わせるようなドラマ設定、氏は見たのであろう。未来を他の短編集を 読んでいくと所々に現代社会のカラクリ?当時から存在していた人間の思い込みを利用する人達の動きを風刺した本であることがわかる。フィニー氏は未来を予見したのであろうか。いや、彼はその仕組みを知っていたのである。そして彼は未来にその仕組みの危うさを現代に教えていたのである。 | ||||
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SF・ファンタジーで活躍したジャック・フィニイの短篇集。 いずれの作品でも、時間や時代を扱った物が多い様に思えました。それと、あまり陰惨な事件が起こらず、死者もでない作品が多いので、読後感も爽やかな物が多かった様に感じました。 ただ、今読むと流石に古びた感じがするのも否めないと思ったのも真実でした。最近のミステリ、SF、ファンタジーを読んでいる層には訴求しないかもとも思います。おまえの頭が悪いと言われるのを承知で言えば、何を伝えたいのかイマイチ読解できない作品もありましたし。 この人の長篇の「盗まれた町」は名作だと思いますが、本書では若干低めの評価にしておきました。すいません。 この頃の牧歌的なファンタジーが読める短篇集。お暇ならどうぞ。 | ||||
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ジャック・フィニイという作家を知っている人なんてほとんどいない。少なくとも、ぼくの周りじゃ誰も知らないし、ぼくだってつい15分も前に知ったばかりだ。なのに、ぼくはこの”レベル3”という短い短編に一発でやられてしまった。知らない誰かに話しかけて、「ねえ、この一編だけでも読んでみてよ」って言いたいぐらいだ。どこがどういいのか、それを説明するのはむずかしい。ニューヨークのグランド・セントラル駅で、ありもしない地下3階を見つけたとか言っている男の戯言、なんていう説明をしたって、「へえ。で?」という返答しかもらえないと思う。でも読んでもらいたい。エドガー・アラン・ポーという作家の名前はなんども聞くけど実際手に取ってみたらそうでもなかったんだよな、とか考えている人や、早川SF文庫ってみんないいって言ってるけど気に入ったものなんてなかったんだよな、とか落ち込んでいる人には特に。SFのようでSFじゃない。現実的なんかじゃまったくないけれど、かといって完全犯罪小説よりかはいくぶん現実的に映りもする。おそらくそれはこの作家についてぼくが何一つ知らないからだと思う。この作家がいつの時代に生きていたのかも、どういったことを生活を送ってきたのかも、そもそも存在していたかどうかさえ、ぼくは知らない。だからこの小説のことでさえ、ほんとかどうかわからないと思ってしまう。もしかしたら本当かもしれない。グランド・セントラル駅の地下3階は、本当に存在していたのかもいしれない。そこでチケットを買い求め、あの場所へ行くこともできるのかもしれない。 | ||||
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25年程前に読みました。今でも大好きな本の中の一つです。 『レベル3』や『失踪人名簿』は、現実逃避したい辛いときには、 もってこいのお話だと思います。 | ||||
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宮部みゆきの「レベル7」の中で、題名だけ出てきたことある作品。 どんなモノ?とレビューを調べてみたら面白そうだったので試しに。 時間や空間の跳躍が題材となった短編ばかりの作品集ですなー 当時としてはだいぶSF的な作家さんだったのでは?等など いくぶん斜に構えて読んでました。 最後の「死者のポケットの中には」までは。 それまでの作品群にあった一歩進むと過去の世界に・・・ではなく 一歩踏み出すと死の世界に直行という境目に、主人公は立たされます。 平穏な日常のすぐそばに、”それ”はあったんですねぇ・・・。 (その気になれば、これを我々も体験出来ます) 作者は今作で、題材・展開・無駄のない筆致により、 人生というもの集約してを描ききっているのではないか?と思えました。 それは、凡百の作家なら何百ページも費やし、てやっと到達出来るかどうかの 文学的高みなのではなかろうか? 個人的にはこの一編で、この本の価値が一変した(駄洒落か)。 最後にもう一捻りあるのですが、人生で大事なものを悟った主人公の行動は・・・。 イッセー尾形さんの一人芝居で、これを見たいかも。 | ||||
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大昔に傑作短篇「愛の手紙」(短篇集「ゲイルズバーグの春を愛す」)を読んで以来、フィニィのファンだ。 この人の書くものはSFというより懐旧的でロマンチックなファンタジーであり、素晴らしい切れ味のオチと相まって読後感の良い作品が多い。 11作品を収めるこの短篇集も期待に違わないファンタジー路線で切れの良いオチの連続・・・なのだが、「ゲイルズバーグ」とは雰囲気が明らかに違う。 旧き良き時代への憧れが変質し、現実を拒否してほとんど敵視する域に達している。1957年という発表時期を考えると、作家の繊細な神経が核戦争を予感していたのではないか。そこここに反戦の意志が伺える。オチが三重になっている表題作、また「おかしな隣人」「こわい」「失踪人名簿」、歴史改変ものの「世界最初のパイロット」などはその傾向が強く出ている。 一転して、ごく短い「雲の中にいるもの」「青春を少々」は洒落たラブコメディ。50年代アメリカのミュージカル映画を見ているような気分で、フィニィの名人芸を楽しめる。 最後の作品「死者のポケットの中には」は異色の恐怖譚。 読み始めてすぐに再読と気づき、慌てて本を伏せた。あの心優しいファンタジーばかり書いているフィニィがこんな怖い話を書くのかと、びっくりしたことを思い出したからだ。 はっきり言うが、これは怖がりやさんや高所恐怖症の人が絶対に読んではいけない短篇だ。事故が起きても不思議ではない。 「出だしだけ」と思うのもまずい。少しでも読み始めると、主人公と同じように地上11階のマンションの窓の外へ足を踏み出さざるを得なくなる。 確かに日本製ホラーも怖い。しかし、あの怖さは後ろからいきなり肩を叩かれるような怖さで、一瞬で終わる。フィニィのは生理的な恐怖が直撃し、読んでいるあいだ中、喉元を突き上げ続ける。暴力的なまでの恐怖だから体に変調をきたす。 ・・・ああ怖かった、やっぱり読んでしまった。主人公が一瞬、地表を見てしまう場面では思わず叫び出すところだった。オチがきれいで助かった。ハッピーエンドでなかったらひどく後味の悪い話になったろう。 主人公の揺れる心理の描写はまさに圧巻、本当に指折りの恐怖譚だ。 | ||||
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◆「死人のポケットの中には」 上昇志向が強く、仕事漬けの毎日を送るトム・べネク。 そんな彼が四週間もかけて調査したスーパーマーケットの各種陳列棚における 客の数を記した黄色の紙片が、風に飛ばされ、アパートの角飾りの出張りと 出張りとのあいだに入り込んでしまった。 室内から回収することは不可能なため、彼は窓から外に出て、 それを取ろうとするが、落ちたら、ただでは済まないだろう……。 日常から、たった一歩踏み出した先に広がる非日常の世界。 超自然的要素が一切なく、誰の身に起きてもおかしくない出来事なだけに、 そこから喚起される恐怖のイメージは、リアルで痛烈です。 極限状況に置かれたトムが、自らの死を意識し、それに対する周囲の反応を 想像していくうちに、これまでの人生を振り返るという展開も秀逸なのですが、 思わせぶりなタイトルが、実に効果的かつ印象的です。 | ||||
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『レベル3』……存在しないグランド・セントラル駅地下3階、そこはノスタルジーへの入り口でした。ファンタジーではありがちな設定ですが、そこに著者はゲイルズバーグ(著者がカレッジに通ったイリノイ州の町)への愛をたっぷりふりかけます。そういえば著者には『ゲイルズバーグの春を愛す』という作品もありました。 『おかしな隣人』……「お隣に越してきたのは実は」というのはアメリカの小説ではよくありますが、本作では……外国人のように小銭でまごつき閉まったドアが自動的に開くかのように体当たりをしていき140年後のことを時々話す、おかしな夫婦でした。いやいや、『レベル3』のあとにこれを置きますか? 洒落た配置です。 『こわい』……ラジオからほんの短時間過去の番組が聞こえます。主人公がその話を友人たちにすると、似たようなエピソードが少しずつ集まってきます。共通点は「時間の混乱」。ペンキを塗り替えた後出現する以前のペンキ、子犬を飼い始める前の時点に出現した成長したあとの犬、写真に写った家族の未来像、犯罪が起きる前に警察に押収された凶器、80年前の恰好をした死体……そんな話がどんどん集積され、そして…… 『世界最初のパイロット』……南北戦争の時代。元ハーヴァード大学の教授の少佐は戦争に勝つためにとんでもないことを画策します。少佐が出かけたのはスミソニアン博物館。さてその目的は…… 今の目からはそれほどアイデアが捻ってあるわけでもないし強烈なオチが用意されているわけでもありません。でもだからといってがっかりするような短編集ではありません。私の読後感は「『異色』というより『良質』なファンタジイ短編集」です。スタンダードとして読んでおくべき本、と言って良いでしょう。 | ||||
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