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パニック・裸の王様



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パニック・裸の王様の評価: 4.55/5点 レビュー 33件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.55pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全33件 1~20 1/2ページ
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No.33:
(5pt)

4篇とも文句なくおもしろい 若い才能が噴出している

〇 あの有名作家の人気の短篇4篇で、どれも面白くてついつい惹き込まれ、ひと息に読んでしまった、となれば議論の余地なく5星だ。

〇 収録4篇の発表時期は、著者が27歳になった昭和32年の8月、10月、12月、それから昭和34年1月。読者はここに若い才能のさかんな噴出を目撃することができる。

〇 美点をあげると、テンポのよい文章、よく計算された物語構成、過度に文学的すぎないが十分に魅力的な比喩と形容、作者の主張を真っ向から提示してみせる正直さ潔さ、などである。とりわけ「パニック」におけるネズミの増殖、「巨人と玩具」におけるキャラメルの販売不調、「裸の王様」における少年の抑圧など、物語前半でエネルギーがしずかに少しずつ蓄積されていくのだが、その抗いようのない推進力と不穏な緊迫感が見事ですっかり魅了された。

〇 不満があるとすれば、貯めこまれたエネルギーの圧力が頂点に達して起きる爆発がわたしが期待したほどの大爆発ではなかったということである。わずかではあるが、うん?これくらいで終わりにしてしまうの?という感じが残った。もうひとつ告白すると、「裸の王様」の最後のだいじな場面で、それまで太郎の絵に不満と批判を繰り返していた児童画審査員たちが太郎の父親が誰かを知ったとたんに恐れ入ってしまうのだが、なぜ彼らが恐れ入ったのかその理由が何度読んでもわからなかった。何かを読み落としているのかもしれない。

〇 もうひとつ。これは不満ということではないのだが、この4篇にある種の既視感を覚えたことも言っておきたい。つまり、だれも見たことのないモノを創り出した作品ではなくて、取り上げられたことのある素材を巧みに使って著者なりの表現を創ったというタイプの作品だ、ということである。もっと簡単に言えば、大傑作ではないけれど十分に傑作だ、ということである。
パニック・裸の王様 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (新潮文庫)より
4101128014
No.32:
(4pt)

強烈なシニシズムを感じる作品群 |『パニック・裸の王様』開高健

過去にも読みましたが、実に20-30年ぶりくらいの再読。

いやあ、なかなかしびれました。

本作、4編の短編から構成された作品群ですが、強烈に感じたのが、通底するシニシズムでありました。お金、権力、偽善への痛烈な批判のようなものを感じました。

・・・
「パニック」では、若手公務員の視点で描かれます。

自らの属する官僚組織に巣食う汚職や腐敗、権力を毛嫌いしまた見切りつつ、120年に一度起こる恐慌(ネズミの巨大繁殖とその後の農作物大被害)について声高に対策を上程します。新人の戯言として無視されるも、これを「想定の範囲内のもの」としてあえて看過。のちにネズミ恐慌が起こった時の「それ見たことか」感。

この斜に構えた感が個人的には大分共感しました。まあ私は50歳手前で「それ見たことか」感出しながら仕事しているダメなおじさんですが笑。

・・・
「裸の王様」もまた、シニシズムを湛えた、こども絵画教室主宰の「ぼく」の視点からの作品。

やや理想主義ながら、こどもの絵をかく能力を「自由に」「制約なく」描かせることに腐心する主人公と、それを無意識に阻んでいる親や家庭環境、あるいは教育の現場。こどもに真正面から向き合わない親や教育現場を痛烈に批判します。

表面的な美徳に潜む腐臭、善意の顔をした商業主義のようなものを全力で揶揄しようとするかのような作品です。

・・・
「巨人と玩具」で感じたのはむしろ徒労感、でしょうか。

レッドオーシャンにあえぐ菓子メーカーのキャラメル部門をめぐる話。競合三社があの手この手でシェアを増やそうと努力しつつという中で、「私」が見た宣伝部でのイメージキャラクタの選定や景品の選定などをめぐる話。社会派の作品でありながら、すさんだ競争社会を揶揄しているような作品でもありました。

ある意味この昭和の営業現場の熱気は、今でいうベトナムやインドなどの熱気などに似ているかなあと感じました。徒労感という意味では、私が勤めていた証券会社での終わりのない営業ノルマを想起しました。

・・・
「流亡記」は中国は秦の始皇帝が始めた万里の長城構築をモチーフにした、用役人夫の視点からの作品。

人夫が用役に駆り出される前から物語は始まりますが、最終的にはこの人夫の達観がこれまた徒労感を呼び起こします。駆り出されたことは不幸といえば不幸。でもこれを駆り出す役人も、規定の人員を規定の日付まで送り届けなれば死刑。つまり管理する側される側は同じ土俵で死と向かい合う。人夫は将来の反乱も予想するも、長城の建設・辺境での戦い、王位に就くものの横暴等は続いていくものとの達観を得ます。

単調さの中に物語は終えますが、シニシズムが光る一作。

・・・
その他、全編にわたりとても密度の濃い書きぶりも気になりました。流麗な比喩や美辞とでもいおう表現が多数使用されています。

とてもライトな書きぶりとは言えないのですが、密度の濃い文章は味わい深い読み口であったと思います。

・・・
ということで開高氏の初期作品の再読でした。

本棚整理のための再読ですが、これは取っておくかどうか迷うところです。斜に構えた感じがとても私のツボでありました。他の作品も読みたくなりました。
パニック・裸の王様 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (新潮文庫)より
4101128014
No.31:
(5pt)

その作家人生で二度と書き得ない、貴重な作品

輝ける闇・・・開高健の代表作のひとつである。
ヴェトナム戦争見聞録、とも評し得ようが、著者の「若き感性の崩壊の記録」でもあろう。
同じ著者が、その作家人生で二度と書き得ない、貴重な作品と評し得よう。
新潮日本文学 63 開高健集 輝ける闇・パニック・裸の王様・なまけもの・流亡記Amazon書評・レビュー:新潮日本文学 63 開高健集 輝ける闇・パニック・裸の王様・なまけもの・流亡記より
4106201631
No.30:
(5pt)

我々には生命力がある。想定外の不確実性なんて、屁のかっぱ。

著者はよく、「頭の地獄に堕ちたら、とにかく手足を動かせ」と言っていた由。
肌感覚を取り戻せ。
自縄自縛に陥ってるぞ。
走れ、歩け、食え、飲め、寝ろ。
不確実性に胸を貸してやれ。我々には生命力がある。
パニック・裸の王様 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (新潮文庫)より
4101128014
No.29:
(4pt)

年季

年季が入っている感じの本。中身は面白かったが。
パニック・裸の王様 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (新潮文庫)より
4101128014
No.28:
(4pt)

組織の中で

"想像していたより太郎はひどい歪形をうけていた。彼は無口で内気で神経質そうな少年で、夫人とぼくが話しているあいだじゅう身じろぎもせず背を正して椅子にかけていた。"1960年発刊の本書は芥川賞受賞作を含む"組織の中で生きる人間"をテーマにした4篇を収録した傑作短編集。

個人的には著者作は『日本三文オペラ』についで手にとりました。

さて、そんな本書はアンデルセンの"裸の王様"を下敷きに画塾へ来た少年、太郎と『僕』の交流、魂の救出を描く芥川賞受賞作『裸の王様』カミュのペストを彷彿とさせるネズミの大量発生に対処する役人の悲哀『パニック』著者の会社員経験がうまく活かされている製菓会社同士の競争話『巨人と玩具』そして、入れ替わり立ち替わり様々な兵士たちに蹂躙される町の人々を描く『流亡記』と、当時の【急速に組織化されつつあった戦後社会】を背景に【抑圧されながら生きる人間】をテーマにした4篇が収録されているわけですが。

ビジネスパーソン的寓話『パニック』や『巨人と玩具』もそれぞれ社会や組織に対する皮肉さが感じられて面白かったが、20代の作品らしく【初々しさと実験的な野心を感じる】『裸の王様』が、私自身が絵画好きということもあって面白かった。

また、架空の町の話かと思って読んでいた『流亡記』が、始皇帝による万里の長城工事へと繋がっていくのに驚き、2022年現在。丁度、人気マンガの実写映画として公開されている『キングダム』が浮かび、マンガや映画では華やかに描かれる戦場の将軍や兵士たちの一方で【当時もこうして犠牲になる人たちがいたのだろうな】と、そんな事を考えたり。

昭和の空気感が保存された社会派小説が好きな方へ。また優れた短編作品を探す人にもオススメ。
パニック・裸の王様 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (新潮文庫)より
4101128014
No.27:
(5pt)

流亡記

この短編集の中では「流亡記」が抜群に素晴らしい作品です。

開高健の文体は後年に向かうにつれて大きく変化していくのですが、
この時期に大きな賞を取った裸の王様ももちろん良いですが
パニックは少々堅苦しさがあり力が入りすぎているようにも感じます。
裸の王様は最後に向かうにつれてすかっとするものがありますが
話を作り込みすぎているようにも感じます。

圧巻なのは「流亡記」です。この作品こそ開高健の真骨頂のような気がします。
パニック・裸の王様 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (新潮文庫)より
4101128014
No.26:
(5pt)

裸の殿様

この書籍の中にある「裸の王様」が、開高健氏の芥川賞作品だと知り購入しました。
主人公の「ぼく」は、画塾の講師で子供たちに画を教えている。
そこへ、太郎という絵具会社大手の社長を父に持つ児童がやってきた。
彼は、仕事一筋で家庭を顧みない父親の温もりを知らず、実母は彼が小さい時に死別し、継母に育てられているという複雑な生活環境下にある。継母は、教育熱心で画意外にも、ピアノ教師、家庭教師をつけている。遊ぶ仲間も継母が選定するという腰の入れようで、彼の内面は歪曲してしまっている。
そのことは、画塾でも明白に画にあらわれ、彼の内面の異常を目の当たりにした「ぼく」は彼の内面の改革に動くことにした。……

「ぼく」は、とあるきっかけからデンマークへアンデルセンの童話の挿絵を交換しようという旨の手紙を書き、返事ももらい実現に向けて動き出そうしたときに、偶然に大田社長(太郎の父親、絵具会社の社長)もデンマークとコンタクトをとっていた。
「ぼく」の方は、児童の純粋な画をデンマークに送って、デンマークのアンデルセンの童話の挿絵を獲得することが目的だった。一方、大田社長はビジネス絡みの匂いがするデンマークとの取引を感じさせるものだった。「ぼく」としては、童話本に忠実な画は求めていなかった。

画塾で、アンデルセンの童話のはなしを「ぼく」がした次の日の夜、太郎はそれを画にして持ってきた。そこに、太郎の発想が開花した画があった。王冠ではなくちょんまげの大名が、フンドシ姿でお堀端を闊歩する「裸の殿様」を想像した画であった。
画期的な一枚となったこの画が、最後どのようになるのかは?
自分の目で確かめてほしい。

この小説を読んで思ったことは、文章表現の格調の高さである。これには、私は脱帽してしまった。
譬えの表現の高尚さにも凄さを感じた。
今まで、色々な芥川賞作品を読んできたが、この文学作品は圧倒的にとびぬけていると思った。
パニック・裸の王様 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (新潮文庫)より
4101128014
No.25:
(4pt)

面白い。

面白い。
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4101128014
No.24:
(5pt)

とても綺麗でした

とても綺麗な本でした。ありがとうございました。
パニック・裸の王様 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (新潮文庫)より
4101128014
No.23:
(5pt)

異能の作家

開高健という作家は体内に独特のセンサーを具備していて、嗅ぐ匂いの正体やら水中生物たちの煽る波動の重さなど、並の作家では察知不能な感覚を文章に表現してくれる。「裸の王様」の中からは次の二カ所を見つけることができた。
 『子供には子供特有の体臭がある。(中略)日向でむれる藁のような、乾草のような、甘いが鼻へむんとくる匂いである。子供はそんな生臭い異臭を髪や首や手足から発散させてひたおしに迫ってくる。』
 『水のなかには牧場や狩林や城館があり、森は気配に満ちていた。池は開花をはじめたところだった。水の上層にはどこからともなくハヤの稚魚の編隊があらわれ、森のなかでは小魚の腹がナイフのようにひらめいた。ガラス細工のような川エビがとび、砂の上ではハゼが楔形文字を描いた。ぼくは背に日光を感じ、やわらかい風の縞を額におぼえた。
 池の生命がほぼ頂点に達したかと思われた瞬間、ふいに水音が起こって、ぼくは森に走り込む影をみた。ハヤは散り、エビは消え、砂地にはいくつものけむりがたった。影の主の体重を示して森の動揺はしばらくやまなかった。』
 こういうのを月並みな言葉だが、異能というのだろう。だが表現のことだけでなく、彼が見つけてくる小説の題材も、この「裸の」も「パニック」も、なにかこういう独特のセンサーで掴み取ってきているのではないかと思わせられる。
 「流亡記」は、作者の自信作らしいが、一人称「私」によって全編が綴られているものの、寒村の百姓家の若者に中国全体を見渡す目があったはずもなく、二章以降の印象は教科書の記述のようであり、パールバックの「大地」のようにバリバリと読み進めることはできなかった。
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4101128014
No.22:
(5pt)

研ぎ澄まされたナイフのような切れ味の描写。

個人的に、という前置き付きですが、情景と状況の描写において、この全盛期の開高健を凌ぐ作家を自分は知りません。

言葉で評するのがあまりにおこがましいので、とにかく短編のどれか一つでもお読み頂きたい。
読書に慣れた人ほどのめり込むはずです。
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4101128014
No.21:
(5pt)

素晴らしい

素晴らしい。この人の文章は刺さります。
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4101128014
No.20:
(5pt)

日本のエリート社会の雰囲気が感じられる小説

開高健(かいこう たけし)「パニック」は、小松左京「日本沈没」と並ぶ、日本の代表的な社会派小説。高校の国語教科書にも掲載されたことがある名作。小説中の出来事を一言で言えば「ネズミ増殖騒動」。初版は昭和33年(1958年)。しかし、不都合な事象への対応の様子や、登場人物達の会話のやり取りは、全く古さを感じない。つまり、日本エリート社会の、時代に左右されない独特の雰囲気を表現している。独特の「あ・うんの呼吸」を味わえる。非常におすすめ。
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4101128014
No.19:
(4pt)

パニック・裸の王様

とつじょ大繁殖して野に街にあふれでたネズミの大群がまき起す大恐慌を描く「パニック」。打算と偽善と虚栄に満ちた社会でほとんど圧殺されかかっている幼い生命の救出を描く芥川賞受賞作「裸の王様」。ほかに「巨人と玩具」「流亡記」。工業社会において人間の自律性をすべて咬み砕きつつ進む巨大なメカニズムが内蔵する物理的エネルギーのものすごさを、恐れと驚嘆と感動とで語る。
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4101128014
No.18:
(5pt)

パニック たまげた

まだパニックしか読んでませんが、その面白さにたまらず投稿します。
詳しく述べるつもりはありませんが、その中で描かれる、巨大なエネルギーと喪失感にはたまげました。本当にオススメ
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4101128014
No.17:
(4pt)

抗しきれないものの前で現実を受け入れる

「裸の王様」は中学の教科書に載っていたのを思い出した。あらためて読んでみると、中坊向きじゃあない。当時感じた孤独な少年と絵画教室の先生との心の交流という美談とは違って、人間のどろどろとした部分が垣間見える。

大量発生した鼠のために町中が混乱に陥る「パニック」も同様、権力とか権威に如何ともしがたい苛立ちを覚えてしまった。

サントリー宣伝部にいた著者ならではの「巨人と玩具」、始皇帝の圧政に翻弄される人々「流亡記」も、抗しきれないものの前で現実を受け入れる様は類似してると言えるかな。

【芥川賞】
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4101128014
No.16:
(3pt)

面白い。興味深い。なんだけど

どうにも旧漢字が苦手。旧漢字が全部読めない訳ではないし、知らない漢字でも前後で推測できるから意味不明になる事はない。
が、どうにもそこでいちいち引っ掛かってしまい、折角の文体のリズムに乗れない。気持ち良く文章の流れに乗ろうとする度につまずく感じ。
↑これは単に私の能力不足の問題です。波に乗れない自分が悔しい感じです。
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4101128014
No.15:
(4pt)

記憶していた『パニック』が一番楽しく読めた。

中学生で敗戦を迎えた吉村昭氏とほぼ同世代3歳年下の作家である開高健氏の本書『パニック・裸の王様』は、35年以上前に読んだ本だが気まぐれに押入れの中から探し出して再読してみた。
 開高健氏が27歳の時(1957年)に、芥川賞を受賞した本書中の『裸の王様』の全てを忘れ去り、鮮明に記憶していた話は『パニック』だけだった。
 勿論本書に掲載している他の二編『巨人と玩具』『流亡記』などもすべて忘れ去り、初めて読むような小説だったから我が脳みその働きの衰えたことに情けなくなってしまった。
 ベトナム戦争を取材した『輝ける闇』や『ロマネ・コンティ・一九三五年』『地球はグラスのふちを回る 』など記憶に残っているものもあるから我が脳みそがすべて毀損した訳じゃ〜ないのだと気を休めることにした。
 開高健氏の文章は、装飾され饒舌とも思えるようなスタイルで書かれていることが多く、評者など少々好みに合わない作品もある。
 本書中の『流亡記』などは、「もう少し読みやすく簡潔に書いて早く先に進んでくれよ」と少々イラつきながら読み進んだのである。
 やはり氏の得意な分野である釣りや酒についてのエッセイなどを書いたものは、「饒舌」「装飾」された文章だからこそ面白く印象深く記憶に残っているようである。
 先に読んだ吉村昭氏の『史実を追う旅 』のなかで「優秀な編集者なら原稿の一行を読んだら書いた作家が判るものです」と、零戦の設計者として有名な堀越二郎氏に語ったエピソードを思い出したが、開高健氏の個性ある文章は、評者のような素人でも一行は無理としても、本の一ページを読んだら判るのではないか、と思いながら大昔に読んだ本書を読み終えたのである。
 『パニック』5、『裸の王様』4、『巨人と玩具』4、『流亡記』3、として、ま〜本書の評価星4ヶとしました。
パニック・裸の王様 (1960年) (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (1960年) (新潮文庫)より
B000JAPHTK
No.14:
(5pt)

ずっと後を引きます

はじめて、開高健さんの本をよみました。
すっかりはまってしまい、一気に読んでしまいました。
奥付をみて、初版が昭和35年。私のうまれる遥か前にこんなものが書かれていた
なんて、と思うと、ちょっと感動しました。
時代を越えて、こういう本に出合えたことがすごくうれしい経験でした。
久しぶりに、今後もう一度読み直したいと思う本でした。

どのストーリもその後の展開にいろいろと想像をめぐらせる余地がたくさん
残されていて、ずっと尾をひく読後感です。しかもどのストーリも、はっきりいって暗いん
です。こういう小説は大好きです。お気に入りは巨人と玩具。
パニック・裸の王様 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:パニック・裸の王様 (新潮文庫)より
4101128014

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