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(短編集)
死者の奢り・飼育
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死者の奢り・飼育の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.54pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全47件 41~47 3/3ページ
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私の大江健三郎の初体験は、「個人的な体験」でした。そこには世界で戦争が起きていても何よりも自分の子供のことを含めた自分の周辺を何よりも優先するという、ある種のセカイ系世界観が描かれているように思いました。 この短編集は、大江健三郎の初期の短編を集めたものです。どれもとてもおもしろいです。この短編の人物は、世界から、国家から、社会から、あらゆるものから閉じこめられています。そのちいさな世界のなかで感情がゆすぶられ、吐き気がするほどの嫌悪がほとばしっていきます。彼らは結局のところ、子供なのです。子供であるがゆえに世界からそとにでることができず、そして無力ゆえに激しく悲惨な目にあいます。まるで世界から嫌われているかのような少年が次々登場して、次々悲惨な目にあっていきます。それを乗りこえるのは、けれど成長なのでしょうか。成長したあと、彼らはもう悲惨な目にあわないのでしょうか。きっと、そうではないのでしょう。 大江健三郎の文章は、やっぱりへんだと思いました。 | ||||
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死者の奢りは、仏文科の学生の「僕」は、女学生と共に死体処理室でアルバイトをします。 アルコール槽の死体を移し替える仕事でした。 死体は生きている人間よりも「物」の量感があり充実感に満ちていると「僕」は思います。 作業が終わった時、その仕事が全て徒労であったことを思い知ります。 現代人の虚無的な徒労感みたいなものを、うきあがらせる感覚的な鋭さがあります。(平野謙氏談) 私は、この小説は非常に論理的でいてウネリまくった文体で書かれているなあと思いました。異端的です。そして大江さんの小説はマニア的なエロさがあります。女性の○○○についての描写が官能的・・・ 細かい描写ですので、頭にイメージがわき易いですよ。 | ||||
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作者はこれを戦後10年ほどたった頃、学生時代に書いた。 自分と自分を取り巻く雰囲気の対比が鮮やか。 人間の羊、他人の足なんて特に。自分の生きてる世界の「外側」、たとえば道徳とか正義とかを盲目的に信じた思想と、ただ自分のみの世界を生きる主人公の対比の中に滲む虚脱感は、強い共感を感じる。 初期の大江作品の牧歌的で、心理を鋭くえぐるような短編は本当におもしろい。 | ||||
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私は実際、あまり小説を読まない類の人間なのだが、最近この本に興味を持って以来、進んで小説を読むようになった。 大江健三郎はノーベル賞受賞作家だけあって、内容は深くシビアで重苦しい。なかなか読破するまでに時間がかかる。 しかし重苦しいだけの話ばかりではなく、例えば「他人の足」のようなちょっぴり風刺の効いた小話も収録されている。 私はあの話が結構気に入ってるので、(もちろん「飼育」も面白かったが)大江さんは難解なストーリーに親しみ易いユーモアを挿入してバランスを取っている作家なのかな、と思った。 やはりこの短編集でズバ抜けて面白かったのは「不意の唖」ですね。 話は「飼育」の後日談の様なものなのだが、淡々とした日常の描写はこちらの方がきめ細かく描かれていて、読後は不思議な後味の悪さと充実感で満たされました。 少し観念的過ぎかな、という話も多いですが、この作者の中では読み易い部類の本だと思います。 | ||||
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もう10年以上前だ。 大学の時にこの短編集を読んだ衝撃は今だに忘れられない。 「傍観者の欺瞞」といったキャッチだったが、その凄みと痛みは 読む者の魂を鷲づかみする圧倒的な力だった。 バスの中での恥辱をえぐられる男性。療養所の少年への扇動と裏切り。 その完成度も含め、脱帽だった。 畑正憲氏(ムツゴロウさん)が、東大在学中に大江の初作が東大新聞に 掲載され、「同じ大学にこんな凄い奴がいる」と、それを読んで作家を あきらめた、と奥様との書簡集に書かれていたが、その気持ちがよくわかる。 ノーベル文学賞受賞からやけに「貴重品扱い」され、ここ10数年の 文体の変化でとっつきにくさが大江健三郎が纏うイメージだが、 本当の原点に立ち戻って、ドストエフスキーと拮抗する位のど偉い長編 を書いてほしい。 本当に才能ある「作家」なのだから。 | ||||
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読んでいると何かが粘液のように重くまとわりつき、口の中が乾いてくるような生理的な居心地の悪さを感じてしまう。嫌悪感と言うよりは、やりきれない後ろめたさの感じである。「後ろめたさ」とは自分でも意外だが、とにかく大江の作品はどれを読んでもそう感じてしまう。 追いつめられた状況、逃げられない異常な環境の中での行動を描くとき、作者は意図することのなく、より緻密な描写をしてしまうに違いない。心だけでなく体までが重くなってくるようなリアルな感じがある。 芥川賞受賞時代の短編で構成される作品集である本書で、大江はすでに十分に大江健三郎である。まず一冊読むのに進められる作品だ。読んでみて、自分の体質に合うか考えて下さい。 | ||||
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状況は異なるが本書のストーリーでの心情的展開は現代の私にも通じるものがあり胸騒ぎがした。戦争の時代の捕虜とのやりとり(飼育)の中で独特のその場ならでは味わることの出来る感情があぶり出されているところがずっしりと重く、生々しく臨場感があり惹き込まれた。大江健三郎の作品は初めて読んだがこんなにしっくりと読めるとは思わず、出会えてよかった。また度々その読後の感慨にふけることになる作品群になることは間違いない。 | ||||
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