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巡礼の家



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【この小説が収録されている参考書籍】
巡礼の家

巡礼の家の評価: 4.08/5点 レビュー 13件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.08pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全10件 1~10 1/1ページ
No.10:
(4pt)

遍路道の「お接待」で人間が再生する物語

舞台は道後温泉の宿「さぎのや」。
 水害で兄以外の家族を亡くした15歳の雛歩は、お世話になっていたおじの家の認知症のおじいさんを「殺して」家を飛びだし、山でたおれているところを「さぎのや」のおかみに救われる。
 さぎのやは、帰る場所のないお遍路を、道後温泉がひらかれた3000年前からうけいれてきた。
 底抜けにやさしい「さぎのや」の人たちもまた、恋人や夫や子どもといった大切な人を亡くした経験をしている。
 生きる気力をなくした主人公は少しずつ癒やされ、逆にみずから知らぬうちに、子をなくして遍路をしていた夫婦を癒やす。
 私は道後温泉のすぐ近くに住んでいたから、道後公園、湯築城跡、椿湯……といった名称がなつかしい。毎日のように温泉にはいり、美味しい魚を食べていた日々。当時はそれがあたりまえだったけど、ふりかえれば、あのときが幸せの頂点だった。
 当時道後温泉近くの石手寺は、行き場のない人をうけいれていた。非戦を訴え、被災地の支援をしていた。さぎのやと石手寺がだぶってみえる。だが石手寺の住職は2021年に急死した。
 底抜けにやさしい人たち。人助けがあたりまえの人たちのなかで育つとそれがあたりまえになる。遍路道では、ふつうの人たちが、お遍路さんに食べものやお茶などを接待する。それがあるからさまざまな出会いが生まれる。絶望の底にいる人がそれだけで元気になるわけではないけれど、40日間かけて歩き、人々の親切にふれるとなにかがかわる。遍路道は「つらいときに帰ってこられる場」と思える。さぎのやはそんな不思議な空気がただよう遍路道のエキスをギュッと凝縮した場として描かれている。
 クライマックスは秋祭りの神輿の「鉢合わせ」だ。
 みこしの上から「跳びまーす」と、雛歩はみんなの上にダイビングする。
 「未来少年コナン」で、ラナちゃんが帆船の帆の上から海に飛びこむシーンに感動したのを思いだした。人間への信頼が勇気をうみだす。コナンもこの本も希望と再生の物語だった。
巡礼の家Amazon書評・レビュー:巡礼の家より
4163911049
No.9:
(4pt)

まっちゃま弁が懐かしく優しい世界

祖母が松山の道後温泉近くに住んでいて、子供の頃は夏休みには必ず訪れていたので、『まっちゃま(松山)弁』が懐かしく心地よかった。

他の方もレビューに書いていたけれど、雛歩の言動にリアリティがないと言うか、最後まで違和感がありました。
雛歩の知識や言葉の間違い方が、面白い展開になるわけでもなく、イラッとさせられるだけで、ただただ浮いてしまっていてそれが残念。
設定が幼稚園児か小学一年生あたりならちょうど良かったかも。

著者の本は読むのにエネルギーがいることが多いですが、この本は力を抜いて読める本です。
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No.8:
(4pt)

救われる

これを書いているのは、世界中が新型コロナウイルスの対応に追われている頃です。日本ではマスクを求めてドラッグストアに行列ができ、列の順番をめぐってお年寄りが暴力をふるったり、外出自粛要請が出ていても「俺は大丈夫だから」と言ってバカ騒ぎをする若者がいたり。
「なんだかなあ」と思われる現実社会に比べて、巡礼の家「さぎのや」の人々は暖かい。うまく言葉が見つからないけど、嘘くさいほど、暖かい。罪を犯してしまった主人公雛歩をどこまでも暖かく包み込み、やがて雛が巣から飛び立つのを心の底から支えてあげている。女将をはじめ、かっこいい飛朗、私もギュッとハグされたいマリアさんなど「さぎのや」の人々の心に、救われる思いを感じた。
道後の街の人々もまた、暖かい。祭りの鉢合わせで相手方に乗ったスキンヘッドさんが、勝利した雛歩に拍手を送る場面には男気を感じ、胸が熱くなる。そうした人々の暖かさが、嘘くさくなる一歩手間で現実の世界として描かれているところに、天童氏の上手さがある。
しかし10年前に「悼む人」を読んで以来の天童氏の作品だけに、前の作品とのギャップに最後まで馴染めなかった。例えば雛歩のおバカな心の声。読み始めてからしばらくは、この作品は「こんなおバカにならないでね」と若者に伝えるために児童雑誌に書かれたものだと思ったほどだ。また登場人物が本人やその家族の過去を語らせる時。あまりにも説明的で、白けてしまった。そうしたことを考慮して、星4つ。
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No.7:
(5pt)

桃源郷!

殺人を犯した少女が拾われた旅館「さぎのや」。そこは、サギが神から許されて人間と暮らすことになった聖地であった。そこに暮らす少女は…。とこのような出だしで始まる新作は前作『ペインレス』で性の深奥に迫る試みとは180度内容が異なる。サギ神話に驚かされた。道後温泉の旅館「さぎのや」を舞台に拾われた少女の今後がどうなるか、楽しみである。四国の山奥の森と来れば、大江健三郎の『燃え上がる緑の木三部作』を思い出す。伝説・神話に彩られながら、人々は様々な問題に直面しつつも、めげずに生きていく。しかし、本書は共生の物語ではない。一人の少女の物語である。今後が楽しみだ。
お勧めの一冊だ。
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No.6:
(5pt)

癒しと再生

冒頭から作品の世界に引きずり込まれました。物語の節目に一呼吸入れようと時計に目をやると、いつの間にか1・2時間が経過しているのが当たり前でした。結果、12時間で読破し、普段使っていない頭が疲れを訴えているのを感じながら、このレビューを書いています。

個人的な体験を踏まえますと、本書は翌日に休みが取れる状況で読み始める事をお勧め致します。一人旅の宿で温泉に浸かり、美味しい食事を楽しんだ後、くだらないテレビや普段慣れ親しむネットから離れて読み始めれば最高だったかな?と思います。

舞台は温泉宿、主人公は少女、拙い私なりの解釈をお披露目させて頂けるなら、テーマはタイトルの通りです。何となくですが、国民的な支持を受ける某アニメ映画の世界観に通じるものを感じました。

元々は話好きの私ですが、様々な経験を経て人の怖さを知った今、友人を選ぶのに良く言えば慎重、悪く言えば臆病者になりました。

数少ない友人にそっと自分の秘密を打ち明けるようにお勧めしたい作品です。
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No.5:
(5pt)

普段本を読まない人は28章を読め!

とにかく28章に参った。読み終えた今でも、その章を思い出すだけで泣ける。今ならはるかぜちゃんより早く泣ける(笑)
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No.4:
(4pt)

人の温かさがギュッとつまった物語。

道後温泉に興味があったのと、本の表紙の絵が可愛いらしい感じだったので、何となく手に取ってみた。読んで良かった。本当に久しぶりに涙を流しながら本を読んだ。心が洗われたと言った方がいいのかもしれない。
「永遠の仔」のときもそうだったが、人が内側に抱えているものを描くのが本当にうまい。ある意味、その部分がミステリー小説のような仕掛けになっていて、一気に読み進めてしまう。
物事には、陰と陽というか明と暗というか、辛い部分を抱えているからこそ、その分もっと明るく輝けるということを教えられた気がする。
舞台が田舎の下町で、たくさんの人物が登場し、ワイワイやっている雰囲気が、まるでNHKの朝ドラ見ているような心地よさを感じた。
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No.3:
(5pt)

愛媛産には愛がある

タイトルの言葉は愛媛では、当たり前のように目にする言葉であり、さすがは俳句王国!言葉遊びの上手な県民性が非常に出ている。その他にも“いい加減は、いい加減”や“恋し、結婚し……”等々、たくさんの力ある言葉が街に溢れている。そのような街で産まれ育った天童荒太さんの巡礼の家だが、読み終えた時に……数年前のテレビでの一コマを私は思い出した。
北野武さんと爆笑問題さんがテレビに出ており、太田さんが真剣な眼差しで語り始めた。
昭和という時代はとても良い時代で人が人を貶したりするような時代ではなかった。そこに一歩踏み込み、それを上手く笑いに変えてしまったのは北野武さんでそれが新しい時代であったからこそ、お笑いの世界がここまで大きく成長したのであろう。ただ、その世界だけを見てきた人間からすると(その後に産まれてきた人間からすると)、笑いに変えたことを知らない人間からすると、こんな世の中でいいんだとなってしまう。このままでは危険だ。いまこそ、何かを変えていかなければならないのではないか?と訴えたような気がする。(私の解釈があっていれば…)
東野圭吾さんのナミヤ雑貨店の奇蹟、天童荒太さんの巡礼の家。
高橋一生さんのドラマの僕らは奇跡でできている等々……
前述に気づいた人々がが、その何かを変えようと歩み始めた作品のように私には思えたのである。
今はまだ葉に落ちる たった一雫の希望(Def Tech Boleroより)かもしれないが、ここから新しい希望と悲しみを分かち合う世界が始まると思える珠玉の一冊である。

生きづらいと思えることが多い今やけん、読んで、愛が溢れる道後温泉につかりにおいでや。
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No.2:
(5pt)

苦悩からのリリース

自分で自分を責める苦悩から解放された経験の有る方はもちろん、無い方でも、その時の嬉し涙ってこんな感じだった/かも、と回顧/想像させてくれます。軽くなると同時に熱いものがこみ上げてきます。
350頁「縁もゆかりも無うても、困っとる人にために、汗をかける自分でおられるかどうか」。胸に刺さりました。今のところ今年のマイベストです
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No.1:
(5pt)

大切な問はここに

人生が迷子になっていると感じる方は読まれると良いと思います。
人は理想を求めて遥か彼方へ旅をするのですが、旅の果てに出会うのはいったい何でしょうか。
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4163911049

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