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HELLO WORLD



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【この小説が収録されている参考書籍】
HELLO WORLD (集英社文庫)

HELLO WORLDの評価: 3.57/5点 レビュー 28件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.57pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全28件 21~28 2/2ページ
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No.8:
(3pt)

ちょっと物足りない?

MW文庫から全部まど先生の作品を読んでいますが
大衆向けに意識して書いたのか、若干いつものパンチが弱い気がしました
同時期にバベルを読んだせいもあるのか、いつものまど先生らしさというのが中盤辺り″先生″の本性が現れたときが一番ぐっときた気がします
ラストはあっさり終わった感があってちょっと物足りないきがしました
とは言っても求めるハードルガン上げしてるだけだと思うので、普通に読む分には面白いと思います
HELLO WORLD (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:HELLO WORLD (集英社文庫)より
4087458865
No.7:
(1pt)

論理破綻の集大成。下調べをせずに書いていること間違い無し。

理論物理学を専門に学んでいる身として、主に論理破綻について書く。
長くて読んでいられないという方には、4番だけでも見て欲しい。

この作品はおそらく、感動できる青春SF小説として書かれている。しかし、そもそも「彼女」や「先生」との生活や心情描写が極めて少ないため、感情移入しづらいという問題が発生している。加えて、度重なる論理破綻により、「論理破綻に見せかけた大規模な伏線」なのか、或いは「単なる著者の無知」なのかが判断できず、もやもやしたものを感じながら読まざるを得なかった。以下では、本作の問題点について具体的に解説する。

1. 「記録」と「シミュレーション」を混同している
「アルタラ」は飽くまで京都という街の情報を「記録」する装置とされている。つまり、アルタラは時間毎の情報を同時に持っている。例えば、11/27 13:18のこの座標の量子的な状態はAであり、12/04 22:41のこの座標の量子的な状態はBである、というように。それらはあくまで静的な情報であり、互いに独立している(*1)。つまり時間の流れというものは存在しない。確かにそれぞれの記録と、それらが記録された時間の情報は結び付けられているが、時間は止まったまま存在している。
一方で、(現実世界の)「シミュレーション」とは、ある時刻――例えば11/27 13:18:01――の情報を元に、次の時刻――例えばその0.00001秒後――の情報を再現(*2)することである。記録とは異なり、シミュレーションには「現在の時刻」という概念と、時間の流れが存在する。そして、これも記録とは異なり、現在時刻以降の情報は計算機内に存在しない。シミュレーションには「干渉」できるが、記録には「干渉」できない。記録に対して行えるのは、「改ざん」である。
作中でアルタラは記録装置となっているのに、実際には、過去の京都をシミュレートする計算機として働いている。これは設定の破綻である。この破綻を無くすには、「アルタラは記録装置であると共に高度なシミュレーション装置であり、次の時刻の状態の量子的な揺らぎまでを完全に再現(*3)するために、予め記録した次の時間の情報を補助的に用いている。記録の使用は補助的なものに留まるため、シミュレート結果がそれと大きく異なる場合には補正し切れない(*4)」とすれば良い。

2. なぜ直実は「先生」が見えるのか
基本的に、外部の存在は世界に干渉できないようであるし、アルタラのシステム上の存在――例えば狐面――も特殊な装置を使って初めて見えるものと描かれている。それなのに、直実は生身の体で初めから「先生」が見えている。それは何故か。個人的に最大の謎だが、SFであるから奇跡で片付けても良いのかも知れない。或いは、明示されてはいないが、そうなるように「先生」が試行錯誤を繰り返した可能性も否めない。

3. ブラックホールの記述が非現実的過ぎる
作中の描写(p.205)によると、直実は地球のようなものを1cmにまで圧縮し、ブラックホールを生成している。そしてこれは雷や川の水だけを都合良く処理している。そんなことが起きる訳はない。直実が創り出した物体は、世界に干渉できるという設定であるし、だからこそ「先生」は直実に手袋を使わせている。現実的には、直実も「彼女」も、それどころか京都全域さえ消し去られる。「彼女」を助けるための手段として、なぜブラックホールを描こうと思ったのかが理解できない。児童向けの漫画やライトノベルなら兎も角も。

4. 量子情報が観測後に変質するとしている
p.225で、「彼女」の精神を手に入れるには、量子情報を高精度で観測する必要があり、その観測に伴って情報は壊れてしまうため、アルタラ内の世界から「彼女」は消えてしまった、と説明されている。これは、本作の中でも最も大きな論理破綻の一つである。量子情報は、観測後に破壊されるのではなく、観測時に破壊される。つまり観測によって得られる情報は、観測の影響を受けた後の情報に他ならず、高精度の観測を行ったところで真の、乃ち観測する前のものと本質的に等価な情報は決して得られない。量子力学の常識である。「彼女」を消してしまうほどの情報変化を伴う観測するのであれば、観測して得られた情報も全く使い物にならないほど破壊されている。
これは「彼女が消える」という大事件の根幹に関わるだけに、決して許されない論理破綻である。この破綻を解決するには、その事件そのものを無くさなければならない。そうすると、言うまでもなく、「彼女」を取り戻すために直実が奮闘する物語の後半部全てが書き直しの運命を辿る。

[脚注]
(*1): アルタラに無限の容量を持たせるために、似た量子情報を結びつけて、効率良く記録している可能性は否めないが、少なくとも作中では一切語られていない。そもそも無限のものを圧縮して有限にできるかは自明でないが、その点はSFとして無視する。
(*2): 量子力学的な不確定性までは再現できない。
(*3): 厳密には、「再現」という言葉は不適切である。量子的な揺らぎは何らかの確定した値を持つものではないから、「過去に生じた量子揺らぎとシミュレーション結果を一致させる」と言うのが正しい。
(*4): 大きな干渉は結果を変え得るということである。「先生」がそうしたように。

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浅い知識で現象を説明付けようとしており、下調べが圧倒的に足りていない。特に3や4は素人でもブルーバックスを一冊読めば知る――「理解」とは言っていない――ことができるのに、著者はその努力すらも惜しんだのだろう。
SF小説だと謳いながら、内容が現代の自然科学の範疇を超えていない。それゆえに、自然科学に精通している者ほど楽しめない作品だと思う。

評価できる部分もある。それは、量子情報と現実を区別できないものとしている点である。どこまで著者が理解していたのかは分からないが、任意の実体は素粒子が並んだものであると考えられているため、全ての座標における素粒子の状態と、それを次の状態に発展させるに足る物理法則の理論体系さえあれば、現実を全く再現してしまうことができるし、それは「現実」である。これはSFではなく、今自分たちが生きている世界が、一般市民の言うところの現実であるかを問うことは無意味であるし、哲学的命題であるが故に一意解は存在しない。
ただ、おそらく著者は、「先生」の世界すら仮想世界であることを明かして、「先生」の直実への過去の発言が伏線になっていたことを提示し、読者に大きな驚きを与えたかったのだと思うが、私は第一章の時点で、展開の一つとして予想できていた。同じような人も数多くいると思う。この世界がシミュレーションと区別できないという事実は、物理学に精通しておらずとも、SF好きなら知っている人は少なくないだろうし、きっと著者が想定したであろうほどの効果を見込める展開では無かったのではなかろうか。

全体的に薄っぺらい物語だった。
HELLO WORLD (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:HELLO WORLD (集英社文庫)より
4087458865
No.6:
(3pt)

脱「マニュアル人間」を目指す少年の成長を描いた作者としては大人しめの内容。終盤はやや勢い頼み。

メディアワークス文庫や電撃文庫、講談社タイガと各レーベルを渡り歩いてきた野崎まどだけど、今回集英社文庫に初登場。聞けば脚本を担当した劇場公開予定のアニメ映画のノベライズらしい。アニメはあまり見ないのだけどこれまで刊行された作品のレベルから考えてそう外したものでもなかろうと思い拝読してみる事に。

物語の主人公は京都に住む高校に進学したばかりの少年・堅書直美。高校に入って周りになんとか馴染もうとするものの二時間目になっても三時間目になってもお昼休みになっても近くの生徒に声を掛けるタイミングが掴めず「仕方なしに」文庫本を開く始末。放課後誘われたカラオケにも参加できないまま四条の大垣書店に赴いた直美は決断力を鍛えるという実用書を購入する羽目に。

「可能な限り冒険を避ける」「結果が分からない事には挑まない」そんなチャレンジ精神が見事に欠けたマニュアル人間である直美は翌日のホームルームで図書委員を「何となく断り辛く」引き受けるなど変わりたいけど変われないという日々を過ごす事に。

そんなある日京都市南図書館を出た帰り道、直美は足が三本ある奇妙なカラスに遭遇。鳴き声に驚いて取り落としてしまった本を咥えて飛び去ったカラスを追いかけて直美は伏見稲荷へ。千本鳥居でようやくカラスに追いついた直美だったがその目の前に突如どこからともなくフードを被った奇妙な男が現れ「堅書直美」と声を掛けてくる。気味の悪さから逃げ出す直美だったが逃げた先の二条駅で先回りしていた男は「俺が誰なのか、お前が何者なのか教えてやる」と京都府旧庁舎へと直美を連れて行くが、そこで直美は自分と自分を取り巻く世界の「真実」を告げられる……

んー……過去に発表した作品の作風から「野崎まどだし、どんな魔球が飛んでくるか」と期待していたら投げられたのは意外にもストレートだったという所だろうか?作者にしてはえらく「普通」だったと言うべきか。どこで読者の予想をひっくり返す様な展開をぶつけてくるかと待ち構えていたら最後までまっすぐ突き進んでいった作品だった。いや「まっすぐ」が悪い訳では無いのだけど「あれ、野崎まどってこんなのも書くのか」という意外さと言うかある種の肩透かし感が残ったのは否定できない。

物語の方は冴えない少年である直美が序盤で「自分と自分の住む世界の真実」を突如現れて自分の事を知っていると思しき謎の男から告げられるのだけど、ぶっちゃけここが本作における最大の「驚くべき展開」だったとだけ申し上げて置く。荘子の「胡蝶の夢」みたいな世界観にはなかなかに驚かされた。

ただ、その「胡蝶の夢」の様な世界で直美が謎の男から突き付けられるのは「同じ図書委員の女の子と仲良くなった上で、彼女を待ち受ける悲劇から守って見せろ」というもの。「先生」と呼ぶことになる男の指示に従って「これから起きる事」が全て書いてある最強マニュアルを武器に同じ図書委員の一行瑠璃に近付いていく直美の姿を追うボーイ・ミーツ・ガールっぽい展開が前半のメインストーリー。

リアルな京都の描写は「know」っぽいし女性に対する執着という点では「ファンタジスタドール・イヴ」らしかったとも言えるけど冴えない主人公の少年が「先生」の授けてくれる道具とアドバイスの力を借りる関係を考えるとどこか「ドラえもん」ぽくもある。本作はそんな「のび太君」みたいな主人公・直美が「結果の分からない事には挑まない」という自分にとって何より渇望した「これから起きる事が全て載っている最強マニュアル」を手にして、頼り、やがてそのマニュアルに依存した状態からの脱却を描いた成長の記録であると言って良いかと。

「先生」の口から明かされた世界の正体には驚かされたけど、直美と瑠璃の関係が少しずつ近付いていく様はかなりストレートなボーイ・ミーツ・ガールとなっており「ガチンコのSFは苦手」という方にも比較的読みやすいかと。最初は取っつき辛かった瑠璃に図書委員会主催の「古本市」の為の本集めや、やっとの思いで集めた本を襲った危機を乗り越えて親密になっていき、やがて瑠璃のヒーローになっていった直美が「先生」の意思に反して=既に決まっている運命や「安全なルート」を離れていく様はまさに「成長」。

後半は前半のボーイ・ミーツ・ガールから若干離れて「先生」が軸となった話がメインとなるのだけど、結局は「レールの上から離れられなかった自分」を捨てて結果の分からない事に挑戦する直美の姿が中心になっているという意味では前半の延長線上にある。

ただ、終盤の展開がなんというか……「ああ、確かにこれはアニメ映画のノベライズだな」と思わせる様な描写が中心だった事に「純粋な小説」との違いを感じざるを得なかった。瑠璃を失った直美が残された世界におきる異変であったり、クライマックスでの巨大なラスボス相手の立ち回りなど「アニメであれば絵的に映えるであろう場面」の連続で野崎まども頑張って書いているんだけど小説として読むと些か浮いているというか、こんなものなのかなあという違和感が拭えなかった。

作者にしては珍しくストレートなボーイ・ミーツ・ガールのストーリーであり「野崎まどならでは」を期待するとちょっと面食らうし、終盤の「アニメにすれば絵的に映える」という部分が続くあたりは「結局、ノベライズだからな」という限界を感じたりもするけど決して「外した」作品では無い事から一応は及第点という評価にさせて頂いた。
HELLO WORLD (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:HELLO WORLD (集英社文庫)より
4087458865
No.5:
(2pt)

SF小説というか恋愛ファンタジー小説

今まで読んだ野崎まど作品の中では一番つまらなかった。

SF要素で現実にはあり得ない現象が発生するが、「なにが起きたのか説明できない」「なにも解っていない」の一点張りで物語の最後までごり押しされるのが、キチンと解釈しようとするSF好きにとっては辛い。謎を残しつつも面白いSFは存在するし、全てを説明するのが良い小説だとは決して思わないが、本作は映画の脚本として描かれた弊害なのか、説明不足が目に余る。

SF小説の常であるどんでん返しも予想を超えてくることがなく、どちらかと言えば期待外れだった。物語の最後の締めも大味でパッとしない。野崎まどの新作かつ映画化ということで期待値が高すぎた感が否めない。

過去作と比較する是非は人それぞれだと思うが、本作では野崎まど作品で良く出てくる「なに考えているかわからない、ミステリアスで魅力的な女性」が出てこないのが個人的に残念だった。

また、野崎まどは狐面を使うのがよくよく好きだなと思う。過去作では別々の物語を関連させていくアイテムとして上手く機能していたし、登場する必要性があったように思う。しかし、本作は新作映画の脚本であり既刊との関係性を入れ込む必要はない筈で、狐面登場の必要性は全く感じない、狐面を大量発生させるに至ってはナンセンスに感じられて仕方がない。
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4087458865
No.4:
(3pt)

無理解ゆえの違和感で乗り切れず

※以下の内容には【ネタバレ】が含まれる可能性があります

『恋愛青春SF小説』が謳い文句としてあり,ラブコメっぽい軽めの序盤をはじめ,
二人が惹かれ合っていく様子や,少女ためにと冒険はしない主義だった少年の奮闘,
大事な思い出が『嘘』を見抜く終盤など,それなりに見せ場はあったと思うのですが,
特殊な世界設定はあるものの,良くも悪くも普通の学園恋愛小説という印象を受けます.

また,その特殊な世界を描いたSFパートは,恥ずかしながら概念が理解が追いつかず,
起きていることはわかるのですが,世界とそこに対する展開への疑問がいくつも生まれ,
無理解ゆえの違和感が抜けないまま,最後まで彼らの恋愛や選択に乗り切れませんでした.

エピローグもあれこれと解釈は浮かぶ一方で,結果だけを見てみれば想定の範囲内で,
もしかしたら大変なことが起きたのかも知れませんが,驚きやピンと来るものはなく….

このほか,アニメーション映画のノベライズだからか,絵になりそうな場面が多い反面,
終盤は少しそちらに偏り気味にも思え,いささか大味になってしまったように映りました.
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No.3:
(3pt)

どんでん返しに拘りすぎ

本作のヒロイン、一行瑠璃は、いわゆるクールビューティーである。それも、主人公に恋愛感情を持ちながらも、それを表に出さない綾波レイや長門有希タイプの無口キャラ、というより、戦場ヶ原ひたぎや霞ヶ丘詩羽のような、主人公に平手打ちをすることも躊躇しない強気の孤高キャラである。有体に言ってこれはそんな瑠璃がデレる話だ。何しろ、主人公の未来人格が出現し、こうやれば瑠璃はデレると教えてくれるのだから。
 お約束にしたがって、主人公は途中で「瑠璃をデレさせるより、瑠璃を幸せにする」ことを優先し、そして、結果的にその無私の心意気が本当の意味で瑠璃をデレさせる。それはきっと、必勝マニュアルに従うのではなく、自分の意志に従って、行動した主人公の想いに瑠璃が心打たれたからだろう。ここまではよかった。
 だが、そのあとの展開が個人的にはいただけなかった。まず、主人公の未来人格が瑠璃をデレさせる「真の」目的がいただけない。なんの伏線もない上に、理由づけが唐突すぎる。SF考証的な理由づけもこじつけが過ぎる。どんでん返しに拘る余り、話の流れをぶった切りすぎなのだ。そうだったのか、という納得感がない。
 ラストのどんでん返しもいまいちで、納得感がない。最後の最後に、一行瑠璃と主人公の未来人格の立場がある意味「逆」だったことが明かされるのだが、主人公の未来人格が払ったであろう膨大な自己犠牲の描写が、一行瑠璃については何もないまま「実はあべこべでした」と言われても納得感がない。
 一行瑠璃が主人公とその未来人格との間で板挟みになり、最後にどちらかを選ぶ立場になる、と言った展開も可能だったはずだ。当初、強い意志を持ち、孤高の存在として描かれたはずの一行瑠璃がデレた後は受け身のただの女子になってしまう。最後の最後に実はそうじゃなかったと言われても遅すぎる。
 ということで、あくまで個人の感想ですが、ためにするどんでん返しになってしまった惜しい作品、という感想に至りました。
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4087458865
No.2:
(5pt)

あなたの持った全ての思いが作品の魅力になります

本作品を読む前の人にも、既に読んだ人にも是非やって欲しい事があります。

【あなたが抱いた疑問や違和感を大切にして、もう一度作品を読み返してみてください】

もちろん、本作『HELLO WORLD』は、9/20の映画公開がとても楽しみになる傑作です。1度読めば読者は世界観に期待を抱き、青春に胸を打たれ、ストーリーに興奮するでしょう。
しかし、きっとそれと同時にいくつかの疑問や引っ掛かりも得るはずです。だから私は声を大にして言います。

「そこで立ち止まってしまうのは勿体無い!!」

飽きさせないストーリー展開や魅力的なキャラクターを知り、あなたが抱いた思いや疑問全てをぜひ大切にしてください。それらを作品に問いかけたのなら、本作品はきっと応えてくれます。
読者の抱いたものが作品の1つのピースとなり、そのピースが嵌まった瞬間、新たな景色が見えるはずです。その快感こそが、野﨑まど(パズル)作品の大きな魅力と言えるでしょう。

「HELLO WORLD」。それが本作のタイトルであり合言葉です。
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4087458865
No.1:
(4pt)

映画ノベライズ、「過去は覆せない」VRと時間パラドックスに挑む王道ストーリー

はじめに、星4の評価であるが、これは「小説」であることを前提とした評価であることを断っておく。
映画の原作であることが既に発表されており、様々なメディアで展開される「ストーリー」として評価するならば、これは星5の評価となる。

あらすじで紹介されるように、本作はVRのような仮想現実の世界観の中で、過去改変に挑む時間SFの流れを汲んでいる。多くの傑作時間SFにみられるように男女の恋愛感情が発端となる基礎格子を忠実に展開し、かつ、世界観の説明に終始させずに男女の関係性に重きを置いているため、SFを読まない人でも感情移入がしやすい。
小説では〈一つ目のどんでん返しまで〉主人公の堅書の一人称が長く続き、ごくまれにヒロインの一行の一人称が挿入される。これは映画では堅書のショットが多く登場し、ボクとキミの関係とされる「セカイ」系の中で、男性主人公に深い感情移入を促す仕組みと考えられる。最初は一人称での独特の感情表現が感情移入を妨げるが、徐々に読者と主人公が同期するにつれて、あなたはヒロイン一行瑠璃を救う主人公を応援するようになるだろう。
そして一回目のどんでん返し──セカイの転回が始まる。ここから終盤までの流れは秀逸で、セカイ系青春SFで青年層に受け入れられやすい甘酸っぱいストーリーが続く。

著者の野﨑まど氏は、デビュー作『〔映〕アムリタ』で二重・三重の「どんでん返し」を仕掛ける作風を確立し、ライトノベルを中心に活躍されてきた。SFレーベルでは早川書房より『know』が刊行され、京都と拡張現実を舞台としたエンタメ小説を展開された。
近年、アニメ『正解するカド』など映像分野の脚本を手掛けるようになり、『正解するカド』ではどちらかというと『〔映〕アムリタ』系列のライトノベルの要素が強い結末を描き、特に終盤については好みが非常に分かれるものとなった。今回はカドとは対照的に、結末までの格子が時間SFの体裁を強く持つことから安定しており、著者の「どんでん返し」も綺麗に決まった感がある。

最後に。小説であることを前提にした場合の星1減点の理由は以下の通り。
* 著者のSFの特徴であるが、フィクションとした仮定と現実の物理理論だけで説明のつかない現象が今回もみられ、ストーリーを綺麗にまとめるために説明不足な箇所がみられる。
HELLO WORLD (集英社文庫)Amazon書評・レビュー:HELLO WORLD (集英社文庫)より
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