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(短編集)
若き日の哀しみ
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若き日の哀しみの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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『若き日の哀しみ』(1969)は、他の二つの小説『庭、灰』(1965)、『砂時計』(1972)とあわせて、キシュ自身により自伝的三部作と呼ばれている。そしてこの『若き日の哀しみ』はあくまでもデッサン的なものであり、『庭、灰』さらに『砂時計』として文学的に昇華されていく、とキシュ自身は語っている。 独り言のように、少年アンディ(=ダニロ・キシュ)の日常が19編のショートショートとして詩情豊かに語られていく。 その中でも『少年と犬』が、アンディの一番の友達で彼の言葉を理解し、世話をしていた牛がいなくなった時、一緒に家出をしようとまで考えてくれた愛犬ディンゴとの別れと死が、一番悲しかったです。 この短編集を読むために知っておいた方が良いと思われる若干の予備知識をまとめると次のようになります。 ダニロ・キシュは1935年にユーゴスラビアのセルビア北部の町に生まれ、戦争中はユダヤ人である父の故郷、ハンガリーで暮らす。母親はセルビア正教徒のモンテネグロ人で母方の祖父はモンテネグロで生活していた。二歳年上の姉がいる。父親は1944年にアウシュビッツ収容所に送られ、そのまま二度と帰ることはなかった。 キシュが4歳の時、第二次大戦が勃発、6歳の時には、第三次反ユダヤ法が施行されて、ユダヤ人とキリスト教徒との結婚が禁止される。キシュは反ユダヤ法が施行される前にセルビア正教の洗礼を受け、それが彼の命を救うことになる。 子供だった日々、哀しみだけを感じながら生きた人は、大人になっても同じ哀しみを抱きながら生き、そして年老いてもなお変わることなく、その同じ哀しみを噛みしめながら生きていくのかもしれない。 たとえその哀しみを表す術を持たないとしても、あなたも、もしもそうしたお一人なのでしたら、ぜひ一度読んでいただきたいと思う一冊です。 | ||||
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戦争が始まって揺れる世界で淡々と生の営みを続ける少年とその家族を描いた連作短編集。 戦争に関する小説の多くは戦闘シーンを描いてその過酷さを読者に突き付けるタイプのものか銃後の庶民の救貧ぶりを描いてその悲惨さを訴えるものが殆どだと勝手に思ってますが、本書では戦争が背景になっているけれど戦闘シーンや救貧ぶりの場面があまりありません。敢えて戦争を中心に描くことはせずにその周辺を描くことで戦争とは何かを考えさせる小説に思いました。いや、描写や筆致があまりにも淡泊な為、読者に何かを訴えかけたり、考えさせたりということももしかしたらしていないで、著者が直接体験したり見たことを描くことだけを動機にして書かれた小説ではないかとも思いました。そこらへんにこの小説の重要性、戦争を扱う小説の枠を拡げた意義があるようにも感じました。「文明は滅んでも生活は続く」という至言がありますが、そういう言葉を思い出しました。 はっきり言って殆ど何も起こらず、日々の営為が描かれているだけなので人によっては刺激や摩擦が足りないかもしれませんが、こうゆう小説も必要だと思いますし、同じような意見の人も少なからずいると思いたいです。 アリス・マンローやジョン・マクガハンの著作に匹敵する小品なれど侮れない作品。機会があったらご一読を。 蛇足ですが、やたら値段が高いですね。20年前だったら二分の一くらいで買えたのではと思い、物価の上昇に恨みの一言でも言いたくなる今日この頃です。 | ||||
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