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望月のあと
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望月のあとの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
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出来上がった「源氏物語」には、いろいろな「謎」が含まれており、いろいろと論議を呼んでいます。 そうした「謎」に果敢に挑んだ「源氏物語」ミステリー三部作の三冊目が、ついに出版されました。 早速、手にし読み上げました。 扱っているのは、「玉鬘十帖」と「若菜」です。「玉鬘十帖」は非常に面白く、「若菜」は「源氏物語」の中核であり、これこそが紫式部が書きたかったことの様に思えます。 この三冊目は、光源氏と道長の対比を非常に上手く書いており、道長の一喜一憂が「源氏物語」の一帖毎の物語と連動し、楽しく読むことが出来ました。 ミステリーとしての面白さよりも、権力者道長の孤独具合が、良く表現されています。 タイトルにもある「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」の歌が、この本の主題であり、「若菜」の主題でもあると思います。 作者は、三部作と公言して書いてきた作品群ですが、どの巻も楽しいものでした。 ここまで来たら「宇治十帖」も書いて欲しいなと思います。 | ||||
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「源氏関連モノ」が目に入ったらとりあえず読んでます。たまたま目に入ったんで、前2作未読です。 玉葛十帖まではとても面白く読めました。個人的にそこまでは☆4ですねー。 その後は何となく「源氏」からは遠ざかってしまった感じで、あまり気を入れて読めませんでした。 | ||||
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三作目ですか。著者のアプローチは独特です。本文中ではそれなりに解説されますが、このシリーズを楽しむためには源氏物語や平安時代についての相当な知識が前提とされます。それがなければこのシリーズの肝である大きなストーリー(メイキング・オブ・源氏物語)が楽しめないのです。 本文で展開される「事件」自体は謎といえるほどの魅力を持って読者をひきつけるものではありません。ワトソン役として事件に直接的にかかわるのは、式部(香子)の周りの人物たちで、これらはフィクションとして造型された人物ですが、その間の会話や話の展開も陳腐なものです。むしろ魅力は、著者が描く、道長に代表される歴史上実在の人物の様々な動きとその交錯なのです。その動きと源氏物語の執筆の動機の関連付けこそがこの作品の肝なのです。 この人物たちの関係は複雑ですが(人物相関図や系図が必須)、そこでは著者の時代と人物への鋭い解釈が広げられ、この時代と源氏物語自体への理解を深めさせてくれます。式部を中心としてその周りに架空の人物を配置し、その人物たちが現代人にもわかりやすい役回りを演じるというフォーマットはとっつきやすいなのですが、どうも重厚感に欠け、著者の狙いとはうまくフィットしないようです。別な「叙述」の形式が必要なのかもしれません。 | ||||
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副題に「覚書源氏物語『若菜』」とあるが、 むしろ本文第二章「玉葛十帖」の方がインパクトがあったような…。 ――などという野暮な愚痴はさておき。 紫式部を探偵役とした源氏物語シリーズもとうとう三作目。 前作の発売から9ヶ月で続編の刊行という早さには、大いに喜んだ。 第一作目にあったようなミステリー要素はなりを潜めているが、 それでも、彼女の描く式部やその女房・阿手木達のなんと魅力的なこと。 源氏物語という歴史的大著を作り手の側から紐解いていく森谷氏の力量は相変わらず健在だ。 さて、今回はタイトルに『望月の〜』とあるように、 「この世をば 我が世と思う 望月の」の歌で有名な藤原道長の視点がメインとなっている。 これまで不遜な態度で式部達を蹂躙してきた道長だが、 本書では今までの意趣返しとばかりに彼女達に翻弄されていて、 読者側としてはようやく胸のつかえが取れた、というのが読了後の感想だ。 しかも『千年の黙』で描かれていた「雲隠」のエピソードを式部の視点でも補足してくれていて、 第一作目からファンを続けている身としては、この上ないご馳走である。 源氏の盛衰を描いた物語はこれにて一応の完結を迎えるが、 あとがきによると、まだ宇治十帖を題材にした構想があるとのこと。 また早いうちに式部や阿手木達に会いたいものだ。 | ||||
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前作から9ヵ月で第3弾の発表です。 前作で登場の少なかった左大臣が、今回は出ずっぱりです。 玉葛十帖と若菜上下に紫式部が忍ばせたものとは…。 ご本人は、あとがきで「紫式部の源氏物語やっちまった話」を書きたくて書いたといっています。 読んでみると、少年たちの成長が心に残りました。 次回作は発行がいつになるのか? 今から楽しみです。 | ||||
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紫式部を探偵役にすえた『千年の黙』のシリーズ最新作。探偵役と書きましたが、殺人など日常をおびやかす突発事件があって、それを解くというのではなく、権謀術数うずまく内裏の中のあれこれの人生の機微を、作家の目で見つめ、解いてゆく、(そして物語に仕立てる)と言ったほうが近いかもしれません。 なによりも本書は、作者自身があとがきで書いているように、『源氏物語』メイキングです。当時の宮廷の女房たちのあいだの大人気連載小説のようなものですから、「次はどうなるの?」「こういう話があるけれど、ネタにならない?」「年立て(年表)を作ってみたけれど、ここが矛盾では?」と熱心な文学女房たちが言ってくる、その感想を受けて、式部がまた想を練ったり、物語中の人物について考えこんだり。和歌の達人、和泉式部も書写にひと役買い、宮廷では物語を中心としたサロンができています。 作者と読者の、この双方向的なやりとりの面白さ。文学とは、実人生と虚構の、密接な応答とからみあいによってできているのだなあ、と感じます。 ストーリーですが、最初の物語の続きとして、本書は『玉鬘』や『若菜』の巻がどんなふうに成立していったかを伝えてくれます。自分を光源氏に擬してしまうほど権力の頂点にいた道長が、筑紫から呼び寄せた姪にあたる瑠璃姫に対して抱く傲慢な欲望を、式部は「玉鬘」の巻として書くことで、彼をあおったり、また牽制したりし、けっきょく姫君はぶじ逃げ出しますが、その顛末は『源氏物語』の別の箇所のくだりをとっさに思い出してまねした元子女御の機転によって成功します。 物語ははかないようでいて、ほんとうは人生が物語を模倣してゆくのかもしれない。 式部の愛読者である道長は、宮廷の政治を、天子の譲位から次の東宮の選出まで一手に牛耳っていますが、その彼が、彼女の書く物語に翻弄されたり、自己を省みたり。 人生が物語を生み、物語が人生を導く。虚実がひとつになって織りなす人生の深さが伝わってきます。 式部の見聞きする範囲(つまり女性読者に興味のある範囲)での歴史や政治、時代事情のからませかたもうまく、『源氏物語』とは、ほんとうにこうやってできていったのだろうなあ、と、そのこと自体、大きなミステリの種明かしを見せてもらったような気がします。 このシリーズはいわば『源氏物語』の優れたコクのある「二次創作」として、『源氏』好きには自信をもってお勧めできます。またしばしば幼い童の視点が導入されているのも、風通しがよく、児童文学の味わいもあります。 ページを開いてこの世界に入ったら、その体温のようなぬくもりの心地よさに、読み終わるまで抜け出せなくなるかもしれません。 | ||||
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