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火定
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火定の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.29pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全45件 41~45 3/3ページ
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平城京で起こった天然痘のパンデミックを軸にした人間模様が本当に読ませます。今から千年以上も昔のトピックにもかかわらず、テーマは非常に今日的で、神仏にすがるだけでは何も解決しないというキャラクターたちの姿勢、数多の生死に際して覗く潔さあるいは執着心は作者の力量を存分に感じさせてくれました。さすが直木賞候補作といったところです。 受賞に関しては他の候補もありますし、また最後がややとっちらかってる面も否定できないので今の時点では何とも言えませんが、それでも十分読むに値する、価値の高い作品であると思います。感情のこもった歴史小説をお望みなら、きっと手に取って損はないでしょう。 | ||||
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この年末年始にじっくり読もうと温めていた一冊『火定』(澤田瞳子著、PHP研究所刊)を読み終えました。 奈良に都があった天平の時代、この国は天然痘のパンデミックに襲われていました。 施政者の藤原四兄弟までが相次いでなくなるほどで、人々は恐怖に慄いていたのです。 本書はその史実をもとに、人間の心に潜む光と闇を描き出した傑作です。 --------------------------------------------------------------- 京内の病人の治療にあたる施薬院につとめる蜂田名代は、ある日同僚とともに、宮城で行われる渡来品の払い下げに同行する。お目当ては遣新羅使が買い付けた甘草、桂心などの生薬だった。 ところがその場には先客がいて、すべての生薬を買い占めようとしていた。名は猪名部諸男といい、藤原房前の家令だという。 一方そのころ、施薬院には高熱を出す患者が続いていた。名代たちが診た女は、高熱で意識が朦朧とした二日後には、急に熱が下がり、病人には見えない回復を示していた。 だがそれは、身体中が豆のような疱疹に覆われ、膿を含んで腫れ上がり、やがては死に至る裳瘡(天然痘)という流行り病の初期症状に過ぎないことを誰も気づいていなかったーー。 これは疫神が跳梁する奈良の京で、必死にその万延を食い止めようとする医師と、医の道を外れかけた男が繰り広げる、天平の時代の医療人間ドラマなのだ。 --------------------------------------------------------------------------------- すでにご承知かもしれませんが、本作は、先ごろ第158回直木賞の候補に挙げられました。文芸誌『文蔵』連載時から評価が高く、ひょっとしたら、直木賞を受賞するやもしれません。 あなたの新春の読書タイムにぜひ加えていただきたく、紹介しました♪ | ||||
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これほど心を揺さぶられる物語には出会ったことがありません。この作品と引き合わせてくださった澤田瞳子先生には感謝しかありません。 天然痘の猛威が寧楽の都を地獄に変えようとするなか、苦しみ悩みながら危難を乗り越えようとする医師たち。 人々の不安につけ込み、怪しい神の護符を売りつける者。そればかりか更に憎悪を煽り立て、罪もない人間を虐殺に導く者。 極限下の人間群像が余す所なく描写されていきます。 患者を救おうと奮闘する医師の側にも嫉妬や羨望、鬱屈した思いがあり、決して聖人君子ではありません。彼らはその時々で苦しみもがきながらも、自分に出来る最善を尽くし、前へと突き進んでいくのです。 病を得て亡くなっていく人々の死は決して無駄ではありません。なぜなら彼らの死は別の人々を救うための糧となり、その命を継ぐことになるからです。 そして、タイトルの「火定」の意味、患者の死自体が、自らの身を炎に投じることによって御仏の世に近づかんとする火定入滅であると知ったとき、涙が溢れて止まりませんでした。 この作品は後世に長く伝えられて然るべきものです。直木賞の候補作になるのは当然ですし、受賞すべき作品だと思います。 | ||||
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西暦730年後半の藤原四兄弟が政権下、奈良で大流行した天然痘を扱ったパンデミックパニック小説。今は根絶された天然痘が猛威を振るい、次々と人を死に至らしめる恐怖と世の中の混乱の様子が迫力ある筆致で書かれています。 斯様な恐慌状態のなか、政治が機能しなくなると、怪しげなリーダーが現れ民衆の不安に付け入り思うままに操り暴動を引き起こすという集団行動も、感染症同様に恐ろしい。そこに、エリート侍医だった男の心理描写や哀しい人生も絡み、最後にそれが物語に厚みが加わります。 一方、下級官人である名代は、町医院の施薬院に勤務する自分の待遇に不貞腐れていたが、否でも応でも天然痘の猛威に対抗しなければならない。理不尽や自分の無力を感じながらも、町医者である綱手の叱咤を受け、人々の救助に立ち向かいます。そして、医療とは何か、生きるとは死ぬとはという意味に気付き、昔とは違い上を向いて進みます。また町医者のプライドや高官の誇りも読ませます。 リーダビリティーも高く、テーマもしっかりとした人間ドラマであり、本作に限って言えば直木賞に相応しい小説と思います。 | ||||
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平城京の姿が、これほど壮絶に描かれた作品があっただろうか。奈良・平安時代の作品に定評のある著者は、これでもかと、登場人物に絶望を与えながら、人間の「生と死」を、主人公の目を通して、現代人に訴えてくる。特に、「常世常虫の神」の存在は、現代でもあり得る現象で、この作品の核となっている。歴史の教科書には、奈良時代の政権担当者として、藤原武智麻呂以下4兄弟、疫病にて没。としか載っていない。 読み進みながら、どこまで疫病との闘いは続いていくのかと、医師や施薬院を応援している自分がいた。 この時の疫病の流行が、東大寺大仏の建立や国分寺の建立へと動きだし、やがて、平安京へ都を遷す一因になったことは、歴史上の事実である。 「火定入滅」、生きることを、考えさせられた作品でした。 | ||||
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