■スポンサードリンク


赤いオーロラの街で



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
赤いオーロラの街で (ハヤカワ文庫JA)

赤いオーロラの街での評価: 4.00/5点 レビュー 12件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(2pt)

そこそこ面白いが、さすがに素人っぱい。

もし、年単位の長期にわたって日本中が停電したら、都市は機能を停止し田舎は物資を絶たれ上水道も下水道も働かず商店街も病院も荒れ果ててビジネス街は廃墟と化し住宅街は糞尿に溢れ農村は略奪され多くの人が餓死し遺体の処理もままならず、家庭やコンビニやスーパーや魚市場なんかのすべての冷蔵庫から腐臭漂い伝染病が蔓延し、日本中がバイオレンスジャックやマッドマックスみたいな弱肉強食の無法の大地と化すであろう、ましてや世界同時停電なんてことになったらこの世の地獄だ、と思い込んでいた(いる)者としては、本書に描かれるめちゃくちゃ楽観的なシミュレーション、というか思考実験というか、まあ、想像ですね、その想像の楽観具合は、軽く衝撃的だった。世界同時停電が数ヶ月続いても、なにしろ人は死なないし飢えないし困窮しないし殺気立たないしギラつかないし荒れないし会社は潰れないし、略奪の描写は「東京では空き巣も増えて」程度だし、例えば物語後半に入って主人公は地元と思い定めた北海道で新聞記者になるんだけど、全世界同時停電という状況下で如何にして新聞社が記者の給与やら印刷に関わる諸経費やらを稼ぎ出せるのか、あるいは全世界同時停電という状況下で印刷なんてことが可能なのか、とか、そういうあたりの説明もいっさいない(いや、あったのに読み落としたのだとしたら申し訳ないのですが)。『アイアムアヒーロー』の14巻に「自分って、こんなに臭くなるもんなんだね」という名台詞があるが、本書にはそういう切迫したリアリティがぜんぜんない。

ああ、いや、言い直す。本書が描き出す、本書なりのリアリティには、驚くほどに切迫感がない。

ただしこれは必ずしも批判してるわけではない。何故ならば当方の悲観的な想像だって大した根拠はないわけで。だから、ううむ、この著者の楽観的な想像の方が意外に事実に近いのかも知れないなあ、オレの悲観はもしかすると紋切り型に過ぎるのかもなあ、とか、そんな可能性について思いを巡らせられたのはよかったと思う。

そもそも「太陽フレアによる全世界同時停電」なんてことを聞いたことも考えたことも憂慮したこともいっさいなかった自分が、そこに警鐘を鳴らす本書を「楽観的過ぎる」だなんて批判する権利はあるはずもないので、まあとにかく、知らなかったことを教えてくれてありがとうございます、と言うべきだろう。

ただ、好みの問題とは思うが文体が軽過ぎて、全体にちょっと残念。たとえば文末の「わけで」。

当文庫版初版44ページにこういう文がある。
”ほぼすべての、ってどこのことなのだろう。(中略)今ここだって信号なら停止してるわけで。”
そして84ページにこういう文がある。
”今大事なのは、何よりも正確な情報なわけで。”
そして86ページにこういう文がある。
”工場も動いてないから新しく生産もできていないわけで。”

ああ軽い。アマゾンのレビューとかヤフー知恵袋とかであれば別に違和感ないだろうけど、小説というものはもうちょっと端正な文体で書いてもらいたいわけで。それとも、小説というものに対する当方の価値観が権威主義的で保守的過ぎるのだろうか。考えてみれば自分がなぜ「文末のわけで」を好きじゃないのか、ちゃんとは説明できないわけで。

あと、主人公は明らかに著者自身の投影なんだけど、この主人公を、周りの人が、ちょくちょく褒めるんですよ。著者自身の筆で。それがなんかちょっと面映いというか、恥ずかしいわけで。

あと、夜空がオーロラで赤い、という描写が、途中からぱったり消える。なんでだろう、と思って読み返したら、47ページに「おそらくこれから2、3日はオーロラが続く」という記述を見つけた。ああ、2、3日で消えるのか。そうだったのか。そんなら、半年間ほどを描いた本で『赤いオーロラの街で』というタイトルはちょっとどうなの、と思いました。

さらに、この流れのついでに残念な点をもうひとつだけ言うと、方言の不在。「北海道 方言」とかでググると、なかなかチャーミングな北海道話法がわんさか見つかるけど、どうしてこの本の会話文には北海道弁がいっさい登場しないのだろうか。
赤いオーロラの街で (ハヤカワ文庫JA)Amazon書評・レビュー:赤いオーロラの街で (ハヤカワ文庫JA)より
4150313105

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!