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ゴールドフィンチ



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ゴールドフィンチの評価: 4.76/5点 レビュー 17件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.76pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全17件 1~17 1/1ページ
No.17:
(4pt)

テオが幸せになって欲しい

ウエストサイドストーリー、アンセル、映画版を経て原作に辿り着きました。高額なため、思い切って原書に挑戦、膨大な美術、工芸関係の単語や心象表現に四苦八苦しています。(Weblio辞書では調べ切れず)
でも止まらない。この世界に浸っていたい。
あと少し、全部読めたら2度目はもっと楽しんで味わいたいと思います。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.16:
(5pt)

結果よりも行動よりも大切なものは何だろう

スパゲティー小説というのがある。スパゲティーをゆでながらもつい手にとってしまう小説、と村上春樹が言っていた。そしてオススメしていたのが、この『ゴールドフィンチ』である。

読んだ。
結果、僕にとってもこの本はスパゲティ小説であった。

ただし物語の世界に没頭できるまで、100ページくらいかかった。作者の文体に慣れるまでの時間と言ってもいいかもしれない。

僕にとって、ハマったポイントは2つあった。

1つは、主人公目線での「目の前の出来事と、世界をこんな風に見てますよ」描写が丹念なこと。心理なり考察なりを密に描きこんでいる。その質と量が圧倒的だった。

それはハリー・ポッターを彷彿とさせる。思うにハリー・ポッターは、現代っ子視点で魔法世界を語るからこそのドライブ感があった。それをファンタジー抜きで実現しているところに作者の凄味がある。

もう1つは、意志と行動と結果の関連が、予測できないこと。

多分、本書は普通に日本で教育を受けた人からすると、ラッキーに見える局面が多い。悪いことも結構起きるが、総じて言うと、ひたすら普通の男子がモテる漫画ばりに事態が好転したりする。

善良な意志の割に、破滅的な行動が取られがちである。
破滅的な行動の割に、結果オーライである。

でも現実世界も、そんなものかもしれない。
今の世の中、とかく行動が求められがちだ。
行動というよりリアクションかもしれない。

でもリアクションしなかったからと言って、あるいは規格外なリアクションをとったからと言って、どんな結果になるか誰にわかるだろう?

それよりも重要なのは、意志なんじゃないか。
意志と向き合えよ、衝動を磨けよ、という気にさせられる。
結果よりも行動よりも大切なものは何だろう、と考えたくなるスパゲティー小説だった。

(※noteに書いた記事の転載です)
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.15:
(5pt)

少年の友情ものが好きな方には間違いなくおすすめ

この本の重厚な素晴らしさは他の方のレビューの通りです。

一つ違った角度からおすすめするとすれば、本書は「友情もの」ジャンルでもトップクラスに素晴らしい作品だと思う。『ヤンネ、ぼくの友だち』(ミステリー色の強い、不思議で切ない友情もの)、『世界の果てのビートルズ』(極寒の北欧を舞台にした痛快な友情もの)、『野蛮なやつら』(男2女1、ドラッグまみれだが涙を誘う友情もの)映画なら『シング・ストリート』(若く才能のある役者陣が魅せるバンドを通じた友情もの)などが好きな方なら、一読の価値があるだろう。

大事な友達に思ってもいないこと(本心ではないこと)を口走ってしまったり、小さなことで嫌われたかもと昼夜悩んだり、もうこんなやつとは縁を切ろうと思った3日後には恋しくなったり。名前をつけられない感情が入り乱れる青春時代の友情ものには、いくつになっても惹きつけられる。本書の著者、ドナ・タートも友情を描く名手である。

率直でミステリアスなキャラクターが好きな人は確実にボリスのファンになるだろう。
長さは問題にならない。主人公が「バレたらヤバい問題」を常に抱えているため、ハラハラしつつ一気に読んでしまう。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.14:
(5pt)

これほどの小説は滅多にない驚くべき作品

日本語版で4分冊のこの小説は、英語の原文を読みながらわからないところを日本語版で確認するというやり方で読み進めた。従って読了するまでにずいぶん時間が掛かったが、それに値する作品だった。一つの絵をモチーフにしてこのような驚くべき作品を生み出した作者に脱帽するし、読書好きの人間に取ってこれほど深い満足感を味わえる作品は少ないのではないかと思う。

内容に詳しくは触れるわけにはいかないが、物語は主人公の少年テオが学校ともめて、母親と先生に会いに行くついでに美術館に立ち寄るが、そこで仕掛けられた爆弾の爆発に巻き込まれるところから始まる。
母親を失ったテオのその後の境遇が描かれるわけだが、さほど普通と変わらない少年の身に、予想もつかない展開が次から次へと続く。余り奇想天外だと現実離れしてついていけなくなるが、本書はその一線を際どく踏みとどまっているところが素晴らしい。

根底に流れているテーマは愛するものを失った人生の哀しみではないかと思うが、こんな言葉では一括りにはできない繊細で深い物語である。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.13:
(3pt)

翻訳

この翻訳をされた方にケチをつける訳ではありません。この大作、どんなに大変だったろうか、と思ってしまうほどです。
しかし、ドナ タートという作家はどうも一つ一つの言葉の選び方、使い方に細かすぎるほど気を遣っているような気がいたします。そこが私は好きです。この作品を勧められた時、何語で読もうか迷いました。私の英語力で理解不可能であれば、意味がありません。かと言って、翻訳で、ちょっと違うなあ、と思うこともあります。結局どちらも買って読み比べを
最初してみました。作家の英語は難解なものではなく、多くの人を惹きつけてしまうような美しいものでした。一つ一つの場面が映像を見るかのように、読む者の五感を刺激します。ベストセラーに納得が行きます。その代わり、物語はとても
ゆっくり進みます。
結局、そのまま原作の方を読み進めることにしました。アート、アメリカ文化に興味と知識のある方は、思わず引き込まれることでしょう。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.12:
(5pt)

いたるところにハッとする言葉が

幼少時代、何も知らぬ主人公テオが、ほとんど事故のように手に入れた超名作絵画「ごしきひわ(The Goldfinch)」。それはテロ事件で母を失い、地に足がつかない生き方をする彼の心のよすがになっていく。

「ごしきひわの所有」がどれほどテオの存在意義と関わっているか。絵の紛失を知ったときの彼の動揺がすごく、言葉に表せないほどに胸が痛くなります。母の死、無鉄砲な友人、幼少時代から恋する女の子、友人の死、愛のない結婚…そんな彼の成長過程には、いつも枕カバーに入れた絵画がテオの心臓のようにドクドク脈打っているよう。

大長編にもかかわらず、ほとんどどのページにもハッとする表現があり、飽くことなく、高揚したまま4巻を読み終えました。ラスト30ページは頭が熱に浮かされたようになって、精神的熱狂の中で終了。大満足です。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.11:
(5pt)

何年経っても鮮明に蘇る登場人物

主人公の親友、ボリスが言っていたことが気になり、その箇所を探して読み返したら、止まらなくなり、二度目の読書にして、地下鉄を乗り過ごしてしまうほどでした。これだけ人を惹きつける力のある物語にレビューが5つしかついていないなんて、もったいない!と思い筆をとりました。
もし、ディケンズの『大いなる遺産』ですとか、『デイヴィッド・コッパーフィールド』のファンであれば、この本はあなたのための本です。いくら長くても、デイヴィッド・コッパーフィールドをもう一度読むことに比べれば、はるかに敷居が低いでしょう。
ディケンズファンでなくても、ビルドゥングスロマンがお好きな方は、物語の世界にどっぷり浸って、ニューヨークのアップタウン、ダウンタウンからベガスの荒涼とした砂漠、学校、ドラッグの世界まで、主人公と一緒に旅することができます。そうでなくても、古典がお好きな方、秀逸な物語が好きな方、読みはじめたら、止められないはずです。
主人公テオには様々なことが起こりますが、ボリスのような友人を得て、一緒に濃密な時間を過ごすことができただけでも、彼の人生には意味があるのではないかと思うのでした。
タイトルのこの絵、2013年にニューヨークにフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』がやってきたときに、一緒に展示されていました。もちろん、目玉は真珠の耳飾りの少女なのですが、この小さな控え目な絵にも少なからぬ人が集まっており、この物語を読んだ共通体験があるに違いないと思いました。映画化が企画されているようで、テオ、ボリスを見てみたいような、見たくないような、複雑な心境です。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.10:
(5pt)

罪と罰はセットメニューじゃない

本書をオススメできない理由は(1)長い、(2)お値段が張る。以上2点。でも、おもしろい本にありがちな「この本に終わりなんてこなければいいのに」という気持ちにさせてくれるので、京極夏彦もまっつぁおな長さも愛おしくなります。お値段は4冊合計で、お前は松阪牛かよってぐらいの値段です。でも本は精神のご飯なので、この本が文芸界の松阪牛であると考えれば妥当なお値段だと思います(私は安いお肉も好きです)。

オススメできないのは上記の2点だけなので、お時間とお金が有り余っているのに読もうか迷ってる人はさっさと読んで文芸界の近江牛を堪能すべきです。

ここまで書いても、それでもまだ「でもどんな味がするのさ?」とのたまう人のために作品紹介をネタバレを含んで少し。
本書のテーマは「もしかすると、まちがった道が正しい道ってこともあるのではないか?」です(たぶん)。
主人公のテオ少年は美術館で起こった爆破テロに巻き込まれ、現場から逃げるときに一枚の絵画を持ち出す。テオは青年になってもこの火事場泥棒行為を『罪と罰』のラスコーリニコフばりに内省的に悶々としますが、やがてこの行いがめぐりめぐって思わぬ展開を見せることになります。
罪に罰とは限らないし、大学受験に失敗したおかげで入学のタイミングがズレて生涯の伴侶と巡り会う、みたいな話よくあるじゃないですか。どんな道が正しいかなんて後からしか判断できないんだから、選んだ道をくよくよ考えないで生きようと背中を押してもらえる作品です。

あと、読み終わるとマルチーズが飼いたくなります。さらに関係ないことを書くとボリスの風貌はラッパーのMGKを想像するととても収まりがよかったです。さらにさらに関係ないことを書くと、原書はkindle版だと562円……牛肉安い。

こんなにもふざけた長いレビューを読んでいただき、ありがとうございます。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.9:
(5pt)

語りつくせないほどの魅力にあふれた文学作品

2016年『文藝』冬号で、豊﨑由美氏が『ゴールドフィンチ』を、「人生の真実を描く文学作品」であり、「偉大な芸術小説」でもあると評し、「これからこの豊かにも豊かすぎる小説を読むあなたが羨ましくてならない」と書かれているのを読み、ぜひともこの小説を読んでみたいと思った。
 そして早速、全四巻からなる『ゴールドフィンチ』を夢中になって読んだ。とても長い小説だが、物語に引き込まれて、どんどん読み進めることができた。心理描写や情景描写は緻密で、著者の筆力に圧倒された。人物造型も優れている。とくにボリスやテオの母親は魅力的で、今にも本から飛び出してきそうだ。物語のなかでテオの母親が生存していた期間はほんのわずかなのに、その姿がなんと鮮やかに浮かび上がることか。
 絵画や骨董、音楽、文学などに関する該博な知識や洞察を織り交ぜて、巧みに構成された、エンターテインメント性を兼ね備えた素晴らしい文学作品だ。
 この本に出会えて本当によかった。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.8:
(5pt)

私にとって出会えてよかった作品

今年(2016年)読んだ小説の中で、出会えてよかったと思える作品の一つである。
私が小説に求めるものは、没頭してその世界の中を生きることができること。大胆な設定にもかかわらず、本作はその力が凄かった。
作品の中で私は様々な感情を抱き、次のふたつを再確認するに至る。
ひとつは、人生において物事は十分に理解できないまま、ましては熟考などできないまま重大な局面が過ぎていき、自分へと堆積していくこと。
もうひとつは、自分にとって、かけがえのない大切なものが、ある日突然全くつまらないものになってしまうことである。
このふたつは私の人生観において重要な意味を持っている。そしてそのことを、自分の特殊性ではないかと感じていた。しかし、優れた芸術作品は、時にひとりよがりな自己認識を否定する側面をも持っている。そのことが深く胸に刻み込まれた。
本作品を通じて経験する認知や感情は読み手によって違うであろうが、誰もが知らず知らずのうちに自分の中にある本質的な何かと対峙せざるを得ない状況に追い込まれるのではないか。そのような魔力を持った作品であるように思う。
ゴールドフィンチ 4Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 4より
4309207103
No.7:
(5pt)

長編小説の「第1巻」と「あらすじ」

本書は、全4巻の長編小説の「第1巻」。

もしかして、この「第1巻」は、波瀾万丈の運命の長編物語全体の「あらすじ」を語っているのでは?
という先入観を持って読んだ。結果は、この先入観は間違っていた。

「第1巻」では、美術館で爆破テロが起きたこと、このテロで少年は母を失い、1枚の小さな鳥
(ゴールドフィンチ=ごしきひわ=スズメの仲間)の名画を持ち去ったこと、だけが描かれていた。
また「第1巻」で読者を目いっぱい引き付けておいて、「第2巻」以降に誘導しようとする
商業的編集的な意図も感じなかった。長編を、単純に分量だけで便宜的に4分割しただけのようだ。

「第1巻」の巻末に近くなっても、次の「第2巻」に持ち越すような、意味深な謎かけも無かった。
全体的に見ると、第1巻には「起」としての伏線となる描写は当然あったが、淡々とした語り口と
なっていた。

「全4巻」をみても、長編ながら起承転結のすっきりとした筋立てになっていた。

以上のことは、変則的な読み方をして分かったことだ。
「第2巻」から読み始め、「第3巻」に進み、「第4巻」を読み終えてから、やっと
本書の「第1巻」を読んだからだ。

「全4巻」を読み終えて、やはり素直に自然に「第1巻」から読み始めればよかったと思う。
本書「第1巻」の帯には「友情と裏切り、恋と失望、ドラッグとギャング、そして名画を
めぐる恐れと魅了……」とあるが、これらは「第2巻」以降のお楽しみだったからだ。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.6:
(5pt)

あれから15年……

まずは謝罪をば。1巻のレヴューで1巻にクライマックスがあると書きましたが、この最終4巻にすごいクライマックスがありました。
それも二転三転する状況、悪党同士の撃ち合いといった本格的なスリルとサスペンスで、前2作でもゾクゾクする悪の表現がウマイなあと感嘆しましたが、本作では本領発揮といったところでしょうか。
その後に続くオチも、そうくるかという感じで、全4巻で5500円は高いけど元はとれるとおもいます。

美術に関する薀蓄がテーマかというとそうでもないし、ダメな父親やラスベガスの章は必要だったのか疑問だし、主人公の少年の成長の物語かというともう14歳からずっとドラック中毒になっているのもどうか思うし、親友とはあっさり音信不通になってしまうし、初恋の相手とも婚約者ともうまくいかないし、終盤まで不幸のオンパレードが続きなかなかみんな幸せになれないし……。
(はっきり書かれていないけど、やはりテロの被害者は社会に対して自らをデタッチしてしまうから、ということなのでしょうか)

しかしこういったことに終盤主人公の親友が意味を与えます。
ドストエフスキーの『白痴』を読んでいるギャングで、最底辺の生活をしてきたのになぜかいつも幸せそうにしている彼が。
単なる伏線の回収という程度ではない、この物語の白眉ではないでしょうか。
こんな表現ができるなら、ピューリッツァー賞もむべなるかなと納得のシーンです。

メトロポリタン美術館の爆破テロで始まる物語はポスト・テロ小説なのだろうと読み始めましたが、テロはニューヨークにあってはすでに日常の一部となっていて、全ての起点となってはいるけれど、ことさらそれを克服するとか悩まされ続けるといったストーリーでもなく、ポスト・ポスト・テロといったところなのでしょうかね。
(原書は2013年初版で、物語のテロは「14年前の4月10日」とあるので、14年前とは2000年と思われますが、その後も9.11に関するニュースは物語中には出てこないところをみると、パラレルワールドな物語として一市民が立ち向かいようのないテロの印象に支配されないようにしているのかもしれません)

9.11のちょうど15年後に読了です。少し奇縁を感じました。
ゴールドフィンチ 4Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 4より
4309207103
No.5:
(5pt)

もし

ついに完結の最終巻。待ってました、第4巻。

ピカソがどう言っているか知っているだろ。
「下手な芸術家は模倣する、優れた芸術家は盗む」(182頁)。

本書は、著者ドナ・タートの芸術論、美術論にもなっている。
文学、映画、音楽などにも実に多くの頁が割かれている。
そのために、計1200頁余り(原文で771頁)の熱い厚い本になっている。
骨董家具や愛についての持論も語られている。

もし、これらの論文的部分を削除して、筋のみに編集し直したら、
コンパクトな一冊にできるだろう。
思いもかけぬ出来事を中心に展開する、巧みな語り口のストーリーになるだろう。
それでもベストセラーにはなるだろう。
しかし、本書の深い芸術的味わいは・・・。

もし(168頁)、
主人公テオが美術館から絵を持ち出さなければ、
そしてサッシャがさらにそれを盗まなければ、
そしてボリスが報奨金を要求することを思いつかなかったら。

それなら、あの何十枚ものほかの絵もいまだに行方不明のままなんじゃないか?
おそらく永遠に?
茶色の包装紙にくるまれて。まだあのアパートに閉じこめられて。それを眺める人もいなくて。
寂しく世界から失われて。

もしかするとあの絵は、ほかの絵が発見されるために、失われなくてはならなかったのかもしれない。

著者にとって、読者にとって、
自分自身に「歌」をうたって「絶望」から脱することを教えてくれるどんなものでも、重要である。
そして、次の世代の文学の愛好家たちへ輝かしく声高に「歌」をうたっていくのだ。

以上が、作者が読者に言っておきたい「非常に重要で差し迫ったこと」なのである。

だから、僕も風の歌に耳を澄まし、コホンと軽く咳払いをして喉をクリアにしてから、
風の歌を聴く必要がある。
脱すべき「完璧な絶望」なんて存在しないのかもしれないけれど。
僕自身に「歌」をうたって・・・。

最終巻は、これでおわった。本書は、美しいものへの愛、愛の歌となっている。
ゴールドフィンチ 4Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 4より
4309207103
No.4:
(4pt)

前作や前々作の様に長い大河小説の力作

爆弾テロにあった少年がその現場から一枚の絵を持ち出し・・・というお話。
上記はただのプロローグでそこから波乱万丈の大河ドラマが展開されるという大長編。色々な評にある通り、一枚の高名な絵画を巡る冒険小説にも読めるし、様々なキャラクターと遭遇する事により人生とは何かを向き合う主人公の少年の風流譚とも読めるし、家族との愛憎を描いた家族小説とも読めるし、9.11後のアメリカ人の心象風景を一人の少年に仮託した心理小説とも読めるし、他にも様々な要素を一つの作品に過積載したボリューム満点すぎる小説でした。ただし、成長小説、所謂ビルドウィングス・ロマンという評には若干疑義を呈したくなりまして、何故かというと発端から結末まで主人公の少年があまり精神的に飛躍している様に思えなかったので。と言っても貶しているつもりは毛頭無く、一枚の絵画から始まる少年の波乱に満ちたサーガとして頗る面白かったです。
この小説を創作するに当たって、著者は多分話の発端になる絵画を見た感想からこの小説のインスピレーションを得たと思いますが、一枚の絵画からこれだけの質量の小説を創作する才能には脱帽であります。前作、前々作と見劣りしない秀作に思えました。☆5つにしなかった理由は上手く説明できませんが、全四作を通読しての個人的な感想なのであまり気にしないでください。それと、凄く長い小説で四分冊になりましたが、全体で1200ページくらいでそんなに長くない、というか前作は1800ページくらいありましたので、あまり怯まずに気長に読んだ方がいいと思います。
ピューリッツァー賞受賞という事で版権が高くなりソフトカバー4冊で合計6000円を超える値段になってしまいましたが、出来れば活字を二段組みにしてハードカバー二冊くらいにまとめて欲しかったですが・・・。
それと、最近この著者の作品を読む人が増えた様で何があったか調べたら、日本で影響力のある方が言及したとの事で、そういう作品を読む自分はクールだ、という様な読書体験にならぬ様に気を付けてほしいです。余計な情報や価値観を取っ払っても面白い小説なので。
蛇足ですが、最初の作品に10年、次の作品も10年、本書も10年かかったとか。他にも色々やってらっしゃるそうですが、長編の創作に関しては10年くらいのインターバルを掛けている所はなかなか凄いと思います。
かなり密度の濃い長編。機会があったら前作、前々作ともども是非。
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073
No.3:
(5pt)

ごしきひわ

第3巻、表紙をじっと見る。

絵を包んだ紙が一部破かれ、中から鳥が覗き見える。
ゴールドフィンチだ。和名「ごしきひわ」。スズメの一種だ。
盗み出された小さな絵を表現しているのだろう。
でも、これでは、この絵の保管状態は良いとは言えないだろう。

巨匠カレル・ファブリティウスの絵画『ごしきひわ』をネットの画像で見る。
ゴールドフィンチの絵は、洗礼者ヨハネが差し出すごしきひわのようであり、
幼子イエス(ぼく)と聖母マリア(爆発事故で死んだ母)の運命を暗示している。

ヴィバルディのフルート協奏曲「ごしきひわ」をネットの動画で聴く。

ネットで本書のドイツ語版を見る。1024ページ、厚さ22.4cmの大冊。

第3巻を読んで分かったこと。

「ぼく」が骨董商の仕事を始めたのが、十七歳頃。
その商売も、どことなくいかがわしい。
ぼくが生まれる前からあるという、公園の”母のベンチ”には、
「可能性のあるものすべて」とメッセージが記されている。
匿名寄贈者によるベンチは、一つだけの。

第3巻はひととおり目を通しただけで終わった。
集中力が続かず、よそ見、よそ聴き、ネットで終わった。
でも、楽しかった。
ゴールドフィンチ 3Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 3より
430920709X
No.2:
(5pt)

全4巻からなる超大作

いきなり第2巻から読み始めた。

ようやく読み終えて、要約版がいる本だなと気づき、本棚の奥にそっと置く。
第2巻の帯の「あらすじ」紹介では、たった5行の話しなのに。
なんという豊満な肉付け、広大なスコープ。

ぼくは、あわててニューヨークの「五十七丁目」へ戻った、で始まる。
ぼくは「五十七丁目」を地下深くへと落下、で終わる第2巻。

わあ、同じ場所だ。一冊読み終わったのに、一歩も進んでいない。
地下深くへと落下しただけだ。
書名の『ゴールドフィンチ』は鳥だろうが。話しも、もっと飛ばさなくちゃ。

ぼくの家は六番街の東五十七丁目だろう、くらいは分かった。
あとは、絵。盗んだ絵だ。
少しずつ少しずつ進む物語。

いつの間にか、本の世界に巻き込まれ、物語のうずに引き込まれてしまった。
しまった、はまったようだ。
全4巻計1,204ページを読み終わるまで夜も寝れなくなった。
現在、昼寝中。
ゴールドフィンチ 2Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 2より
4309207081
No.1:
(5pt)

神はやはりディテールに宿っているか

4分冊の最初の1冊だけでレヴューを書くのもどうかと思いますが、本家amazon.comのレヴューは24000件以上もあるのに、翻訳が出て早1か月、レヴューの一本もないのもどうかと思いまずは一筆啓上といったところです。
(2、3巻は発売されたところですが、未読です。これから読みます)

『村上さんのところ』で読んで面白かったと紹介されて約1年半たち、ようやく翻訳が出ましたね。
4分冊ですか……、相変わらずですね、遠慮なく長いですね。

もうひとつ、あいかわらずといえば、クライマックスが冒頭にあるのも本作でも同様です。
すごい構成ですよね、クライマックスからストーリーが始まるって。
最初は面食らいましたけど……、いやわかっていても面食らいました、今回も。
まあ、これなら最初からいやでも盛り上がるので、4分冊の第1巻でも心配なく読めるってものかもしれません。

さらに舌を巻くのはディテールを積み重ねていってストーリーを進めていくあいかわらずのテクニックです。
この第1巻はニューヨーク編なので、その生活や人物を書きだすのに、彼らを取り囲むものを事細かに書き込むことでうまく表現しています。
ふつうはそんなデコレーション部分を読み飛ばしてストーリーを追ってしまうんですが、本書では事物の羅列がストーリーになっているって感じなので読み飛ばせません。うまい!
(ピューリッツァ賞受賞作品なんだからあたりまえでしょうが……)

蛇足ですが登場人物が「ひらがな」を勉強しているようです。マンガやアニメのためのようです。
(ストーリーとは関係ないですが……)

前2作では架空の田舎町が舞台でしたが、本書は実在の場所(第1巻はニューヨーク)なのも、2巻以降の展開に関係があるのでしょうか、乞うご期待ですね。

あ、もうひとつ、本作にも「テキサス」でてきます、ちょっとですが。
(前作はテキサスの架空の街が舞台。作者も南部出身とのことで、タート作品ならおなじみの設定ということですね)
ゴールドフィンチ 1Amazon書評・レビュー:ゴールドフィンチ 1より
4309207073

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