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フィルムノワール/黒色影片
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フィルムノワール/黒色影片の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全18件 1~18 1/1ページ
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久し振りの二村永爾シリーズ。 作家デビュー間もない頃、1972年の短編に於いて神奈川県警の刑事として登場した二村永爾は、矢作俊彦としては異例で、他に類を見ないことなのだが、その後長らく登場することになった人物だ。 三作の短編を経て、1978年に長編一冊目が刊行されたが、レイモンド・チャンドラーを意識したと思わせる様な文体を持ったその作品たちは実に魅力的だった。 二村シリーズは、2004年に刊行された長編三冊目から暫くご無沙汰であったが、10年間を経た2014年に刊行されたのが本書だ。 年齢を重ねても尚、スターであり続けている大女優との会話から物語は始まる。この辺りもチャンドラーっぽい。 刑事を辞めたものの、再雇用プログラムにより、今では神奈川県警の嘱託になっている二村永爾だったが、女優に相談を受けた捜査一課長の指名により、彼女がオフィスにしているホテルニューグランドのスィートルームに訪れた。そこで二村は、映画監督であった彼女の父親についての話を聴く。戦前からパリや満州で活躍していた監督は、戦後は日本に戻り、日活でアクション映画を撮っていたが、香港でもメガホンを握り、そのまま20年近く居着いた末に死んだ。 タイトル不明のプリントフィルム全9巻。父の最後の一本。このフィルムがオークションに出品されたものの、突然取り下げられた。そこで出品者に連絡をつけ、事務所の若い男が直接買い付けに出掛けていったが、消息を絶ってしまった。香港にいる筈の彼を探して欲しい。そしてフィルムも手に入れて欲しい。それが依頼だった。 一旦は断る二村ではあったが、町田駅で起きた射殺事件と、連鎖的に発生した殺人事件に関連しているらしいことを悟った二村は、消息を絶った男を探しに、被害者支援対策室という閑職を離れて香港へと飛ぶのであった。 どうやら本作は、日活映画100年記念としての作品らしく、全編を通して日活のみならず様々な映画ネタが散りばめられ、矢作俊彦お得意のフィクションとノンフィクションが混然と同居し、虚実の境が判然としない世界が展開される。 女優の父親が最後に撮ったフィルムは香港に実在したエースのジョーという殺し屋を扱ったものらしいし、なんと作品上に堂々と当時存命していた宍戸錠が登場する始末だ。 元より日活無国籍アクション映画と矢作俊彦との縁は切っても切れない。スクリーン上に映る石原裕次郎や渡哲也に憧れを抱いていた矢作氏は、銀幕の斜陽を嘆き、なんとかしなければと奮い立ってシナリオをしたためた程だ。そのシナリオを、「これじゃまるで小説だ」と評されたものが、デビュー作『抱きしめたい』となったのだ。 さて本作は、570ページもあるだけにプロットは複雑だし、そもそも矢作作品は読者に対する説明はあまり親切ではなく、二村のひねくれた科白も相俟って、なかなか細部が繋がらないことがしばしばあって何度か遡って読み返したりしていたが、途中からはもうこうなったらじっくり矢作流を楽しもうと腰を据えて読み進めた。 そんな訳で読了には時間がかかったが、それだけに堪能もし得たのである。 | ||||
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2021年6月購入したけれど、初版本でした。一人称主人公の二村氏の「年齢を感じさせない」活躍に少々引いてしまいました。何しろ、初めてのクリケットで大活躍、凶悪な殺し屋を仕留める、女と金には極度に潔癖といったスーパーマンぶりです。文中「宍戸錠(1933生)より3回り若い」ことになっているので、1969年生まれ、2010年で40歳ですね。デビューの頃は義務教育年齢ですよね(がきデカ?小林少年?)。サザエさんやゴルゴ13のように時間(年齢)を固定するなら、空間(横浜 香港)や人(宍戸錠)も架空のものにしないと不自然ですよね。シンディ シャーマンも最近のセルフポートレートでは自らの老いをテーマとしています。次回作では「脳梗塞でデイケアに通いながらスマホで事件解決」する二村氏を登場させてください。 | ||||
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脚を組み直したとき、彼女がストッキングを履いてないことに気づいた。 この出だしでKOでした。 矢作さんの作品とりわけこのシリーズに登場する女性はどうしてこんなに素敵なんだろう。前作の海鈴さんもかっこよかったけど、本作のアリアーヌ・ヤウさんもすごい。また、映画好きの私には答えられない作品だった。 前作に続いて感じられるのは古き良きものへのオマージュ。 筋もろくに追えないのにだけど良かったのだ。 | ||||
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昔のハリウッド映画や日本映画の小ネタが散りばめられています。 全てわかる人は少ないと思います。 語り口がいつも通り、隠喩や暗喩だらけでまどろっこしいのですが、そこが魅力です。 ストーリーは平板でカタルシスもないのですが、そこが魅力です。 そう言えば数十年前、著者と代官山の駅のホームですれちがった事があります。 何となく声かけにくかったです。 | ||||
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翻訳小説ような文体。チャンドラーのような人物描写。 若かりし頃『マイクハマーの伝言』『神様のピンチヒッター』『ヨーコに隙だと言ってくれ」などを読んでいた頃の感動が甦って来た。 そして本作を読み、もう一度かつて読んだ作品をすべて読み返したくなった。たぶん30年前に読んだときは、その表層的なカッコよさにばかりに目がいっていたような気がする。還暦まじかで再読すれば、違う味がするに違ない。 | ||||
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再び二村さんに会えたこと自体は嬉しいのですが、前作の寂しげな終わりが印象に残っていただけに、何事も無かったかのようにバリバリ働いている二村さんにちょっと戸惑ってしまいました。 パラレルワールドのように捉えることでなんとか話に入っていくことができましたが、やはり前作の落とし前のようなものをつけてほしかった気持ちがあります また今作の登場人物全般に、これまでのような魅力を見出だせず、二村さんも、ちょっとオヤジ臭くなってしまった気がします なんだか文句ばかりになってしまいました 自分が初めて読んだ二村シリーズが前作ロンググッドバイでなければもう少し感想は変わっていたかもしれません… | ||||
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この文章を読みたくて、矢作俊彦の作品を買ってきた。 相変わらず期待を裏切らない。 なかなか新作が出てこなくて、さびしい。 | ||||
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映画が好きでアクション映画が好きで日活映画が好きで宍戸錠と渡哲也が好きなら買うべし!読むべし!矢作俊彦ファンなら尚更だ。 この小説が売れなきゃ読まれなけりゃ、「俺には明日はこねえんだ」 | ||||
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相変わらずナメるように読み進んだ。 主人公とともに街をさまよい、人に出会い、事件はそれなりに収まる。 その最中が小説の悦びであり、チャンドラーそのものでもある。 村上某が、チャンドラーの訳出を出すのにクロスして、矢作はチャンドラーのやろうとしたことを紡いでみせた。 これに幸福を感じるのは、一部の人間だけかもしれないが。 私にとっては極上のワインだった。 宍戸錠まで出てくるんだから。 | ||||
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書評は概ね他の方が書かれている通りだとおもいます。合う合わないでいうなら私はあいませんでした。 本作をチャンドラーやロス・マクドナルドみたいなハードボイルドや、社会派探偵物を期待して読むと大外れ打と思います。 本作は前提として戦前から戦後の60年代までの映画の知識が要求されます。特に満鉄の話なんてコアな映画ファンでない限り知らないし、著者は知らないなら調べろよとでも言わんばかりに作中に放り込んできます。 しかし予備知識が求められるのはこれに限ったことではない。私が本作を読んでて辛いと感じたのは、著者自身のオタク二ありがちな自己満足を痛々しいく感じたからだ。作中で"シネフィル"ーフランス語かなんかで映画狂だと自称するが、所詮映画オタクであり、著者の時代なら映画キチ◯イと呼称するのではないか?その辺もオタクが無理に気取っている感じがして好きに慣れません。 作中に登場する宍戸錠はひどく滑稽で、彼の全盛期の作品を見返したくなりました。そもそも宍戸錠の日活アクションはハードボイルドではないですし、ハードボイルドと結びつけているのも著者の自己満足いがいに根拠が感じられませんでした。 さらにいうならば主人公は探偵ではなく、警察の嘱託であり、つまり下働きなのは多くの情報を得るための便利な設定のように感じました。 結局ディティールをえがくことばかりに時間を費やしてオチは全く切れ味が有りませんー正直そのディティールも怪しいものですがーどこぞの評論家に言わせると戦後生まれの読むべき作家は村上春樹と矢作俊彦だけらしいです。村上春樹はともかくこの人は違うと思います。 | ||||
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久方ぶりの二村登場。 宍戸錠をだすとは、さすが日活アクションファンの矢作らしい。 もうワクワクしながら読んだ。 ストーリーといい、ボリュームといい、すべてに満足。 それにしても二村はいつどんな理由で腐れ神奈川犬警(犬に失礼か?)を辞めたのだろうか。 実際に嘱託というのは有りなのか? | ||||
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前作で二村氏を囲むキャラクターがことごとく退場してしまい、残された二村氏の孤独感が悲しかったのですが見事な復活です。 次作につながるようなあらたな人物も登場し喜ばしい限りです。 | ||||
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神奈川県警嘱託の元刑事が、大女優の依頼で幻の映画フィルムを探しに香港へ飛ぶ、そして行く先々で出くわす怪しい男と女と死体、という絵に描いたようなハードボイルド探偵小説。今どきこういう愚直なまでにフォーマットに則った作風は貴重で、主人公と事件関係者の丁々発止の遣り取りは古典落語にも通じる趣きがある。 この作者、元々マニアックな傾向があり、今回も日活無国籍映画やゴダール作品などの小ネタが頻出して「ついてこれない奴は置いてきぼりの、読者を選ぶ作品」になっている。500頁に及ぶ錯綜した物語、万人にはお勧めしかねるけど、私は十分楽しめた。 「彼女が広東語で罵った。その声は四五口径のように私の背中を撃った。」 ・・・このテのチャンドラー直伝のレトリックは素晴らしいの一言に尽きる。村上春樹もたまにやるけど、やはり矢作の方がセンスが良いですな。 | ||||
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矢作氏の作品は、どれも面白い! 台詞まわしが何ともたまりません。 | ||||
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作者自身映画監督をされたほどの映画フリークなんでそのあたりの知識があまりない私にとっては少々難解でした。 なにせ洋服のブランド、拳銃、香港地名、そして映画関連、やたら固有名詞を乱発されるので読んでいてもイメージがわかない。 横浜と日活映画については『複雑な彼女と単純な場所』で熱く語られているので一読されることをお勧めします。 あとベルルッチがベルトリッチと表記されているんだが。 | ||||
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二村永爾を知ったのは37年前。ラジオドラマでだ。 原作を読んだのは、30年前。 以来、矢作俊彦の作品を読んできた。 二村永爾には、忘れた頃に出会う。 前作から十年。 まさかの再会だった。 この作者の本、読み進めるうち、次第に頁から目が離せなくなる。 ひたすら、文章を追っていき、最後になにかが心に残る。 今回もそうだった。 作者のつくる世界にのめり込むんでしまうのか、彼の文章力のなせる技か。 とにかく作者の力量に、ただただ脱帽。 私は日活映画はあまり観たことはないが、以前BSで観た渡哲也の映画が頭に浮かんだ。 東京で人を殺し、神戸に流れてきて、杉良太郎が弟分。 そして、やたらと「東京に帰りてぇなぁ」と言う。 私の生まれ育った街で、なんてことを言いやがるんだと思った映画。 表紙の渡哲也は、その時のかな。 ところで、この作者の作品、万人受けする訳ではないようだ。 大方、絶版になってしまう。 大きなお世話だが、この作品もじきに、絶版になってしまうのだろう。 だから、さっさと次の作品を書いてくれよ、と切に思う。 私は、いまだに読みたくて仕方がない「コルテスの収穫」の下巻を諦めてる。 これくらいのこと書いても罰は当たらないだろう。 | ||||
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文芸誌に連載されていたとは思えないほどストーリーが交錯していて、読む者に 緊張を強いる小説だった。何度か前の章に戻って人間関係を確認したほどだ。 ただ、この小説は「読む」行為そのものを楽しむ小説だと思う。 文章は翻訳調で決して読みやすいとは思わないが、なぜか引き寄せられる。 今までの矢作作品同様、のめり込む様にこの世界に没頭した。 「ロング・グッドバイ」の二村永爾と比べると、かなり行動的で若さに溢れているが、 終盤に差し掛かるとシリーズ特有の悲しさが漂い、ラストシーンでの二村の 優しさには胸を揺さぶられた。 二村はすでに刑事では無い。よりマーロウのような探偵に近づいたと言える。 事件を追う事が(刑事としての)仕事ではなくなった二村が、この後どこに向かうのか とても興味がある。 作者には次作を期待したい。できればもっと短いスパンで。次も10年後じゃ待ちきれない。 その時には、また横浜・横須賀を舞台にしてこのシリーズを書いてほしい。 今回作品の出来は素晴らしいと思ったが、舞台が主に香港であることにショックを受けた。 作者がハードボイルド小説の舞台に日本を選べなくなったのではないかと思ったからだ。 スマートフォンのカメラとツイッターがどこにでも顔を出すこの沁みっ垂れた世界で、 国産ハードボイルドを成立させる事ができるのは矢作俊彦しかいないと思う。 私の杞憂など吹き飛ばす作品を期待したい。 | ||||
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読み終えるのに非常に時間がかかったが、面白くなかった訳では無い。その逆だ。一行一行を味わい尽くした為だ。 十年の時を費やし、江口寿史氏の素晴らしくスタイリッシュな装画とともに、長く待ち望んだ二村永爾の帰還。 シリーズ前作『THE WRONG GOODBYE』の憂愁に満ちた姿ではなく、当世風にスマートフォンを手にした二村永爾が颯爽と身を投じる、謎の死を遂げた映画監督が残した幻のフィルムを巡る『大いなる眠り』並に錯綜した事件と陰謀。 未だ魔都の面影を残す香港を舞台に華麗なワイズ・クラックの応酬と飛び交う銃弾、転がる死体。そして特別出演とも言うべき宍戸錠の登場に象徴される、日活アクションを始めとした映画への熱烈なオマージュ。 初期からの矢作氏の愛読者として、しばし雑事を忘れ、至福の時を過ごした。 我々は熱烈に待った。そして大いに報われたのだ。 | ||||
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