(短編集)
マンハッタン・オプI
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マンハッタン・オプIの総合評価:
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矢作俊彦氏の初期の代表作。 本来、日本のハードボイルドはこうした矢作作品もとにして進化するべきだったのではないかと、つくづくと思う。 いつの間にか、 オヤジ系文庫に代表される溝鼠のような刑事や探偵ばかりが活躍する物語が、書店に溢れてしまった。 矢作俊彦は、もっと評価されてもよい作家である。 文壇が嫌ったのだと思う。 文壇は社会の底辺に目をむけたばかりの作品が評価する。 世の中の大半が中流意識を持っていることを忘れないでほしい。 グローバルな視点で読むと、こちらの方が全世界に読者を得れそうな気がするね。 | ||||
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ユニヴァーシティ・プレイスが雨に煙っている。 カウンターの上には、ひんやり静かな昼下がりの空気、グラスには三杯目のギブスン、ラジオからはヘレン・メリル 低く甘く、帰ってくれと囁きかける。 家へ帰っておくれ。すてきな気分にさせてあげる。 一人暮らしのフラットへ帰るには、だが少しばかり早すぎる。おまけに私は、もう充分すてきな気分だった。 三杯目が空になる。唇がゆっくりしびれていく。私はこっそり口笛を吹いた。 "GEE BABY, AIN'T I GOOG TO YOU"より 右ページにこの描写、左ページには谷口ジローの挿絵。 「マンハッタン・オプ」について語るには、拙い言葉を連ねるよりも、上のセンテンスを読んでいただきたい。 ストーリーは簡にして要。とにかくその文体が最高にかっこいい。 | ||||
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ニューヨーク、マンハッタンに事務所を構える名無しの探偵の活躍を描くシリーズ第1弾。 かつてCBSソニー、角川、光文社と出版元がバラバラで、かつ絶版状態が続いていただけに、今回の再編集による出版は嬉しい限りである。 随所にチャンドラーへのリスペクトが溢れる点はもちろん、スピレインばりのアクションやブラウンばりの軽快な語り口などハードボイルドファンであればあるほど楽しめる内容である。 また、谷口ジローの押絵も作品の世界観をぐっと盛り上げている。 伝説の名作、ここに復活。是非バーボン片手に楽しんでほしい。 | ||||
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マンハッタンを舞台にした私立探偵「私」のハードボイルド連作短編です。で、正直ここまでとは思ってなかったです。 ハードボイルドにはきっとそれなりに皆さん好みがあると思いますし、それで良いのですが、ここまで短編でやるとは!!!本当にびっくりです、とてもクオリティ高いです。 『ハードボイルドする』のは、簡単そうに見えてかなりの高度なテクニックが必要です。ただの1人よがりの1人称では到底醸し出せない、直接語らない重要な何かを読者に響かせなくてはハードボイルドできないからです。そのため、どうしても情報量として分量が多くなります。ですから有名なハードボイルドは長い小説が多いと私は思ってます、トリックも、伏線も、背負う傷も、最初の巻き込まれ方、「私」のスタイルも、酒も、様々な手垢がついているとしても、そうする事でしかなかなか『ハードボイルドする』のは難しいからです。 つまり、その世界に、『読者』を巻き込める、読ませるチカラが無い限り、客観性が『ハードボイルド』させてくれなくなってしまうのです。 それを、短編で!やるなんて、相当技術がないと出来ないと思いますが、もう見事です。 たしか、(うる覚えに人の名前を使うのは良くないのですが)斎藤美奈子さん(かなり私の好きな文芸評論家です、「妊娠小説」や「趣味は読書」など、良書だと思いますし、切り口が鋭くて好き)が「ハードボイルドは男のハーレクイーンロマンスだ」と言っていたことがあったと思うのですが、ええ、その通りな部分もありますが、必要な人、必要な時があります、男でも、女でも、ハードボイルドでも、ハーレクイーンロマンスでも。それでも読ませるからプロなんじゃないかと。 私の好きな短編は「KISS OF FIRE」、「ANGEL EYES」、「I CAN'T GET STARTED」です。どれも最高です。これを最高と言ってしまう私もちょっと恥ずかしいけれど。ちょっとタイトルから期待しすぎて残念だったのは「AS TIME GOES BY」、「MISTY」です、どっちも大好きな曲だったから。それでもとても楽しめました、ハードボイルド好きな方にはもちろん、そうでなくとも、短編が好きな方にも是非オススメ致します。 | ||||
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…ひと頃、私たちは、彼には指が十八本あるに違いないと信じていた。今ではそんなことは口が裂けたって言えはしない。あちこちが煩いからだ。 で、なければ狂気にとりつかれているんだと言って憚らない者もいた。今だったらあちこちにあれこれされてかなわない意見だったろう。 ピンカートン・インベスティゲーションにいた頃の矢作俊彦はそうした男で、まるで自分の映画に出てくるヒチコックのように、我々の文学シーンにとっては重要な作家だった。… と下手糞なフェイクは、いい加減にしないといけない。しかし、矢作俊彦の紹介となると、こちらも身構えないわけにはいかない。なにしろ、あちらは別れの決めの台詞を思いつかない限り人には会わないと噂される強面の作家だ。私にとっては何より、あの傑作『気分はもう戦争』の作者として圧倒的な存在感を持っている。 「暴力にもユーモアがあると言ったのはボードレールだったかね」 「ちきしょう だからアカは嫌いだよ…すぐ難しいことを言いやがる」 「我々は戦争をしている…我々の戦闘にパリのデカダンスは無縁だ」 「ケッすまねェな もっと判りやすく言ってくれよ ラーメン屋以外の中国人と会うのは初めてなんだ」 こんな矢作節を何度読み返したことだろう。そんな私にとって、あのFM東京の伝説的深夜番組「マンハッタン・オプ」のスクリプトが完全版で文庫化されたという知らせは、朗報だった。早速手に入れ、かつての日下武史の語りを思い出しながら、少しずつ楽しんでいる。 雰囲気を味わうべき作品なので、読むシチュエーションにも凝って、一篇ずつゆっくり味わいたい。普通にいうと、深夜バーボンを片手に(オールド・クロウなどがよさそうです)というところだが、硬い本に疲れた頭を少し休ませるために読むのも良さそうだ。廣松渉『事的世界観への前哨』(ちくま学芸文庫)とのカップリングなんてどうだろう。 | ||||
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