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影の中の影
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影の中の影の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.64pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全28件 21~28 2/2ページ
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ワタクシの今一押しの作家、月村了衛氏の最新作。 やはり期待を裏切りませんでした。 私は一気読みするパワーもないし、またじっくり楽しみたい方なので、読み終わるのに何日かかかりましたが、一気読みできる人は、数時間で読んでしまうのでは?それくらい面白かったです。 この作家らしい戦闘へのこだわりが感じられて、正に男が読む小説といった風情です。 もちろん、女性が読んでも面白いと思いますが。 月村さん、できれば、この主人公でシリーズ化してもらえませんかね? 機龍警察シリーズも、続編を待ってます!!! | ||||
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絶賛の嵐の中だったので期待し過ぎた面はあると思います。 しかし正直残念でした。 某国の特殊部隊が弱すぎる。最強の部隊のはずが、ヤクザにどんどん殺されてしまう。 更に敵将サイドの描写が一切ないため、名もない敵がどんどんやられていくだけで、話に深みがない。 他の描写に力を入れたためだとは思うが、「あいつら」とか「特殊部隊だ」だけでは正直ノってこなかった。 好敵手あってそこの主人公の強さ、不屈さが際立つ気がするのだが。 限られた時間、場所での短期決戦のアイディアは良かったし、ロシアの武術あたりを入れてくるあたりも新機軸だなと思うので、 次回作には非常に期待したい。 | ||||
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男たちそれぞれの死にざまが泣けた・・・ その間際、自分の命を盾に守った相手に 本当に守りたかった、けれど守れなかった人を いつの間にか重ねている男たちの無念が 本当に大切な相手とは、真の幸せとは 一番近くにあたりまえのようにあるものだと 完璧な構成で何度も巧みに気づかせてくれる。 樋口の病気が切ない。 しかし一方で、その病気によって自制不能になる瞬間が異様に輝いて見える。 不謹慎は百を承知で書けば、ゾクゾクする。 関係ないが、その病気は、ちょっと前に世間を震撼させた、 あの事件を思い起こさせたのは私だけだろうか。 曜子のキャラが隣にいそうな女性像であるところや 実際に出てくるに国際情勢も事実なので すごく自然に曜子目線でドキュメントを追っているように読めた。 今は、この本が世に出たことにより、著者が、 かの国の暗殺リストに載らないことを祈るばかりだ。 | ||||
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※ネタバレがあります※ 一気読みの面白さであり、「読ませるエネルギー」は従来の作品と変わらず健在で、概ね楽しめました。 一方で、前作の『槐』と同様に、どうも「マンガ的」 (小説なので「ライトノベル的」が的確?) 描写や展開が鼻について、他の方のように手放しで称賛は出来ないと言わざるを得ませんでした。 本作はエンターテイメント作品であり、特有の「お約束」についても重々理解かつ容認しているつもりなのですが、少なくとも自分の中での許容範囲を越える点が幾つかありました。 例えば、後半の和久井、樋口、宋老人、並びに須永の死に様について。 敵の攻撃から誰かを守る→相討ちになるor共倒れにさせる→守った人に一言二言残して死ぬ→守られた人が悲しむ このパターンが、和久井‾宋老人まで短いページのうちに3回も繰り返されます。須永は少し後ですが大体同じ流れで、都合4回あります。 さすがにこれはマンガ的展開で辟易しました。守った人に残す言葉もいちいち出来すぎており、イマイチ感動することが出来ませんでした。 思い返せば、『槐』において私が最も萎えたシーンも、教頭先生による柔道無双の果ての相討ちで、同じ様な展開演出でした。 本作は、『槐』よりは遥かにマシでした。 しかし、現代のリアリティ極まりない国際・時事問題を下敷きに、マンガ的キャラ造形やマンガ的展開をされると非常に萎える (少なくとも私は)、ということが分かりました。 理不尽な暴力にさらされる無力な主人公の前にダーティヒーローが現れて、敵に大量の死人を出す一方で味方も大事な人を死なせるが、相手を完膚なきまでに倒し、また去っていく、という流れも二作は全く同じですね。 機龍警察シリーズは、常にハードカバーで買うほど大変好きなのですが、どうもこの著者のSFでない現代劇は合わない模様です。 やはりSFでない以上、キャラクターや描写についてはどうしても現実との解離が気になってしまい、子どもだましのように感じてしまうのでしょうね。 今後は機龍警察シリーズのみを楽しみにすることとします。 追記 改題したのは、『カーガー』ではタイトルまでもヒーローの異名という『槐』と同じようになってしまうと考えたためでしょうか。 ワンパターンな二作を短期間のうちに出したのならば、改題に大した効果は無いと思いますが。 | ||||
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面白くて一気に読んだ。 中国の生物兵器の秘密を握るウイグル人たち、彼らはアメリカへの亡命を希望しているが、それが受け入れられるのも、明朝の5時。 それを阻止しようと、ウイグル人たちを襲う中国の暗殺部隊。中国の行為の黙認するどころか、彼らに協力する日本の警察。 それに対するは、闇の世界で恐れられている存在「カーガー」、影村瞬一。ロシア武術システマの達人にして、居合の名手でもある。彼と共に、ウイグル人たちを守るのは広域暴力団の組員たち。彼らは以前から取材を通して昵懇の間柄であえる女性ジャーナリストがこの件に巻き込まれたために、ジャーナリストを守るために、組長から覇権されてきた者たちだ。 影村たちは高層マンションに立てもこもり、中国の刺客たちと数時間の攻防が繰り広げられる。暗闇の中、ビルの中での闘いは、まさに「ダイ・ハード」を思い浮かべた。 アメリカ大使館、CIA、KGB、途中には米軍までが絡み、様々な素材を組み入れながらも、話は見事に収束していく。 「ゴルゴ13」的な面白さもありながら、ちょっと人情味や暖かさもある。 こういう男っぽい小説を待ち望んでいた。 | ||||
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月村氏の著作は1冊残らず買い、読破してきたなかでの感想。 傑作。迷わず買うべきである。 前作「土漠の花」があれだけの賞賛を得る中、正直組織階級編成に満足を得られず、モヤモヤ感で悩んでいたところの、この一冊。 とにかく、読んでほしい。 何かを書こうとすれば、少しでも漏らしてしまいそうになり、あらゆる事が全てネタバレにつながりそうであり、緻密に練られた構成を味わってもらいたい。 ただ一言でいうならば、「再生の記」とでもいうべきか。 久しぶりに一気読みしました。 文句無しの読後感。強烈におすすめの一冊です。 | ||||
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『機龍警察』シリーズで日本SF大賞・吉川英治文学新人賞、『コルトM1851残月』で大藪春彦賞、 そして本書刊行から丁度一年前『土漠の花』が日本推理作家協会賞を受賞。 僅か5年足らずで新進気鋭にして最大の注目作家として頭角を現した、現代冒険小説の立役者・月村了衛。 昨年10月から小説新潮にて連載されていた作品『カーガー』を改題、大幅な加筆増補を施した単行本が本書である。 暴力団から官僚組織…現代の裏社会を暴かんとする矜持を持つ社会派ジャーナリスト・仁科曜子。 30を越えた齢に迎えた新テーマ、それは中国共産党の横暴に虐げられる東トルキスタン・ウイグルだった。 そして、亡命ウイグル人が語ったその恐るべき暗部に対面した彼女は、 中国人民解放軍が放った刺客のみならず日本政府と警察にすらその身を追われる事となる。 だが、そこに過去を焼き尽くされた一人の男が表れた。 やがて彼女は多者多様の様々な思惑の中、凄絶な死闘に身を投じる事となっていく… いやはや、口を開く度に肝心な部分を漏らしてしまいそうで危うい。 今まで何度同じ台詞を言ったか、或いはこれからも豪語し続けるかわからないが…断言できる。 これはシリーズ作品以外での長篇小説として傑作ではないだろうか。 狭量な井の中に矮小化するでもなく、極端な大風呂敷を広げる訳でもない。 個人の生き様と国家組織の鬩ぎ合いが佳境に向かうにつれ、見事に集束する。 まるで、ジョン・ル・カレの『スマイリー三部作』の様に。 本作品からは、昨年11月に刊行された著者の処女作にして代表作の『機龍警察』シリーズの 長編第一作目である「機龍警察〈完全版〉」の寄稿された論稿でミステリ評論家の霜月蒼氏(『土漠の花』と同時に 第68回日本推理作家協会賞〈評論・その他の部門〉を受賞)が語ったところの「『冒険小説』とは、 闘争を通じて〈個〉の尊厳を取り返さんとする物語」という本質を秀逸なまでに感じさせられた (メタファー〈暗喩〉として主人公の景村には「影」に「彡(さんづくり)」が存在しない) ここで重要なのは、ただ単に壮絶な戦いが繰り広げられるだけではなく、 個々の登場人物が抱える過去を吐露する場面に不条理と皮肉に糊塗された 暗澹たる悲哀からのペシミズム・センチメンタリズムが垣間見える。 この静寂と暗闇からの激動と騒乱という光明のコントラストの一貫性こそ、月村了衛が成し得る絶妙な創作力だ。 差し出がましい事を申せば、『黒警』の様に、『景村瞬一シリーズ』として継続しても何一つ違和感は無い。 以前、著者が帯紙に推薦文を贈っていたマーク・グリーニーの『暗殺者・グレイマン』サーガの如き臨場感を『土漠の花』以来、 ここでも存分に堪能させて頂いた。 昨今、冒険小説の隆盛と飛躍は東西冷戦が終結した90年代に入った後に失速したと考えられていた。 しかし、世界情勢の多極化とテクノロジーの進化が齎す変貌が新たな流れを現出させた。 その本質を見極め、掴み取る技量を持つ著者こそ「冒険小説の復権」を成し遂げんとする先駆けなのだ。 尚、杞憂や蛇足である事を願えば、昨年に『土漠の花』で「集団的自衛権」に絡めた 一定の政治性を読み取ろうとする傾向が僅かながら存在したが、 それを本作で描かれた日中関係や少数民族について当てはめ、「愛国・右派エンタメ」と形容するのは ナンセンスであると申し上げたい。前言した様に、本作は〈個〉の尊厳を取り返さんとする物語なのだから。 追記:本書を読了すれば早川書房から刊行されるミステリマガジン1月号より連載開始の 長編第5作『機龍警察 狼眼殺手』をもっと楽しめる…筈である。 | ||||
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ウイグルから日本に逃げてきたグループを、中国から遣わされた暗殺者集団が追う。 本書の中で暗躍するのは実在の巨大国家である。それに、仁科曜子など、自然な振る舞いが物語の中で一貫していて、現実にいそうな感じがする。物語の舞台が、実際にありそうな感じのするものになった。 「人間とは裏切る生き物であり、且つまた矛盾する生き物なのだろう。」(144頁)。物語の描く人間像が、また一層、厚く、奥深い。 後半の死闘においても、人物達が死の危機に瀕して考えたり悟ったりする思考は、人生経験に裏打ちされていて意味深く、重厚だ。イッキ読みするのも勿論良いだろうけれども、少し言葉に注意して読むと、容易に眼にとまる。 心に傷を負い憎悪を抱き、社会システムの中のややズレた位置に立ち、憎悪を原動力に社会の暗部を破壊しようとする者はヒーローである。 僕のような読み手は社会の平凡な成員であったとしても、なんらかの負の体験は持っているものである。 ヒーローは 自分達の非公式な抑圧された感情を代弁することができ、自分だけの困難さに向き合う力を想い出させてくれることもある。 ヒーローを突き動かす憎悪はそもそも熾烈である。本書のヒーローにおいて、挫折と憎悪は一段高い視点から捉え直され、調和が再獲得された(214頁)。より高い目的のもとに、困難に向き合う。 ヒーローに 「再生」が備わったのだ。 これにてヒーローの姿が定まった。 連作化を期待したい。 | ||||
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