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親しい友人たち
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親しい友人たちの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点5.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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著者の没後50周年記念の出版だというが、今読んでも全く古びた感じのしない短編33、 静かな迫力を湛えてこちらにひたひたと迫ってくる感がある。 時代背景のせいで感じる違和感や語彙からの印象の差異はともかくとして、 ミステリーというよりも怪談に近い怖さ。 寂しく切なくやるせない、後悔や諦め、人生の切片、欠片が静かに降り注いで来るような雰囲気、 透明な怒りに握り込まれたかのような痛み。この感覚は、読後感は何に共鳴しているのか。 | ||||
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彼と此のキワキワにロープを張ったようなフラジャイルでレトリカルな文章。 ポスト柳田な「ジャンの新盆」のお盆考、読者へダイレクトな死をぶつける「夏の葬列」、会話のやり取りが実に洒脱な「トコという男」は村上春樹のようなモダンさを湛えている。素晴らしい短編集です! | ||||
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短篇集『親しい友人たち――山川方夫ミステリ傑作選』(山川方夫著、高崎俊夫編、創元推理文庫)によって、山川方夫という作家を初めて知りました。 収められている『赤い手帖』は、愛とは何かを考えさせられる作品です。 行き場所がなくなり満員状態の深夜喫茶に入った演出家の「彼」は、たまたま空いた、恋人どうしらしい若い男女の向い側のシートに座ります。「そのカップルは彼の存在がよほど気になったとみえ、それまでのひそひそ話を中止すると、娘がハンド・バックから小さな赤革の手帖を出し、二人は、それで筆談をはじめていた。交互に頁をめくってはなにかを書き、それを見てはまた細い鉛筆をうけとる。ことに娘のほうは、相手が読んでいるときじっとその横顔をみつめていて、それはけっこう愉しげな光景にも眺められた。男は工員ふうで黄色いナイロン・ジャンパーを身につけ、娘は淡いピンクのカーディガンを、きちんと喉もとまで釦をはめて着ていた。きっと両方とも、まだ十七か八か、そこいらだろう。一杯のハイボールを空にすると、彼は腕を組み、目をつぶった。すぐ眠った」。 朝が来て、「店の客のほとんどは姿を消し、向い側の席にいた二人づれも、その姿がなかった。忘れたのか、汚れた黒い卓の上に、昨夜みたあの赤革の手帖が斜めに置かれている。それが、ふいに彼に昨夜のいっさいを思い出させた」。 なに気なく赤革の手帖を持ち帰った彼が、中を見ると、交互に筆談が交わされています。「ませてやがるな。思いながら、彼は奇妙な微笑ましさと同時に、二人がひどく愛という言葉に拘泥しているのに、ちょっと意外なものをかんじていた。いまどき、こんなにも『愛』などという言葉を尊重し、必要とする若い男女がいるという事実に、なにか虚をつかれたような気分だった。だが、いずれにせよ、高校三年というのだから、どうせ十七か八だろう。その娘が、なんとかかんとかいいながら、結局のところは父母なんかは『カンケイナイ』と無視して、好きな同じ年くらいの男と堂々とシケ込みに行くのだからリッパなもんだ。コワクテ、イタイノ、アイッテ、フフフ、か。おたがいのオヘソのことまで書いてやがる。たいしたタマじゃありませんか。ぶらぶらと仕事の待つ局へと帰りながら、彼は、おれも二十七か、年をとったな、と思った」。 ところが、その夕、彼は、あの二人について、思いもかけない事実に直面させられます。 山川方夫という未知の書き手に出会えた幸運を噛み締めています。 | ||||
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さすがに山川が得意なショートショート。 雀のほど小さくても、あるべきものを漏れなく揃えている。 | ||||
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とても素晴らしい本で、一日で読み終わりました。このような本が沢山出てほしい | ||||
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山川方夫さん(1930年2/25~1965年2/20)懐かしいですね!私が山川さんの名を初めて知ったのは、 大学2回生の頃で、奥野健男さんの「日本文学史 近代から現代」を読んだ時だったと思います・・・1行か2行程度の記述でした・・・。 その当時、山川さんの本は少なく・・・冬樹社の全集もまだ出ていなかったと思います・・・・、作品を読むのに苦労した記憶があります。 今年は、山川さんの没後50年ということで、創元推理文庫からミステリ傑作選という形で、本書が出ました。収録作品は、下記のとおりです。 Ⅰ:ヒッチコック・マガジン(1962年~1963年)に掲載された「親しい友人たち」、E・Q・M・M(1964年~1965年)に掲載された「トマという男」 Ⅱ:単発のそれ以外のミステリ風の作品。 ヒッチコック・マガジンは、小林信彦さん編集の伝説的な雑誌ですが、小林さんの慧眼の凄さに感服してしまいます。 ミステリ色はそんなに強くなく、全作少し長い目のショート・ショートといった感じですが、強烈なツイストが効いている作品が少なくありません。 高名な「夏の葬列」だけでなく、「蒐集」「非情な男」、「メリイ・クリスマス」などは、怪奇小説あるいはファンタシーとしても優れていると思います。 「トマという男」は、トマとその話し相手を主人公にした連作集ですが、哲学的で、ときには、G・K・チェスタトン張りの逆説、皮肉が随所に出てきます。 この連作集もミステリ色はそんなに強くありません。 Ⅱ:高名な「お守り」以外にも、面白い作品が多数含まれています。「トンボの死」、「あるドライブ」、三つの声」の凄い幕切れはどうですか!! 山川さんは芥川賞に5回ノミネートされただけあって、他にも秀作が沢山あります。 山川さんは、突然の交通事故で、知る人ぞ知るマイナー・ポエットといった存在ですが、好きな人にとってはたまらない作家です。 わたしも、少し前、冬樹社版の全集を非常に安く入手し・・・今、古書の全集が結構安いんです!・・・、ぼちぼち読み進めています。 | ||||
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収録作品 Ⅰ 〈親しい友人たち〉 待っている女/恐怖の正体/博士の目 赤い手帖/蒐集/ジャンの新盆 夏の葬列/はやい秋/非情な男 菊/メリイ・クリスマス/愛の終わり 〈トコという男〉 動物の秘密/デパートにて/二人の同一人物 アルス・アマトリア/人間の条件 /ヘンな日本人 嘘八百の真実/〝健全な心配〟/行動の理由 〝恐怖〟のプレゼント Ⅱ 十三年/お守り/ロンリー・マン 箱の中のあなた/予感/暑くない夏 トンボの死/あるドライブ/三つの声 頭上の海/他人の夏 古書店で見かける度に「ヒッチコック・マガジン」を買うのが楽しみになっている。掲載作品の質の高さもさることながら、高度成長に向かう日本の著しい変容の時代のドキュメントとしても貴重な小林信彦編集によるサブカルチャー関連の記事、コラムの先進性には驚く。そして1962年に連載されていた山川方夫の短編連載〈親しい友人たち〉は当時、本格化しつつあった大量消費社会の中で疲弊する人間たちのスケッチとして、そのクールな筆致に込められた恐ろしい程の虚無と孤独は現在も秀れて普遍的だ。 高名な「夏の葬列」を始め、LIFEに英訳掲載された恐怖小説の名作「お守り」、エッセイ風の語り口の中に不条理な読後感を残す連作〈トコという男〉、冷ややかな結末が忘れ難い「三つの声」など収録された作品の全てが著者の早逝がいつまでも惜しまれる理由を証明する。ノスタルジアとモダニズム、詩情と恐怖、さらに鋭い批評性が交錯する独自な世界に魅了される。 在りし日の著者の人柄を伝える岡谷公二氏のエッセイ、法月綸太郎氏による解説も簡潔だが読み応えがある。 | ||||
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