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野望の憑依者
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野望の憑依者の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.95pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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タイトルだけからは何の作品だかようわからへん。実はこのタイトルの謎解きは最後になされている。実は悪名高い足利家執事高師直を主人公とした作品なのだ。時代は鎌倉幕府崩壊から約20年間を扱っている。 前半は尊氏、直義との絡みの中で描かれていくが、この時代は変転と裏切りで特徴づけられている時代。山岡宗八の作品や原作「太平記」を一部読んだことがあるが、いまだにわかり難い。 この20年を300ページの中で扱うということになると、わかり難い室町幕府生成期や南北朝の出来事の趨勢を取り上げていくだけで相当のスペースが要求され、その中で高師直の特異なパーソナリティを描くのは至難の業。 結局、「野心家高師直」の図式に終始してしまったようだ。結局のところ、この時代は裏切りが横行する時代であり、最後まで主君尊氏を裏切ることが出来なかった高師直はそういう意味では旧世代の人物なのだか、それを新時代の価値をリードする人物として直義とのコントラストで描こうとしたところに無理があったのか。 いつも同じ感想になってしまうのだが、どうして時代小説の作者は現代人を時代小説の枠組みの中で描こうとするのか。そこに現れるのは時代の歴史的な拘束をあまり感じさせない何とも言えない陳腐な人間像なのだ。 | ||||
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「太平記」は海千山千の一筋縄ではいかない人物が多数登場し、今日味方だった者が明日には敵に、昨日追い詰められていた者が今日は勝者になる混沌とした物語です。時代背景自体が複雑でそして面白いこともあり、一人の人物を描くには難しいと思います。主人公(高師直)を描く前に、時代背景に筆を費やすことになり、それを越えるキャラクターの悪党的な魅力を描ききれなかったと思います。でも、この作者らしく主人公の立場、様々な勢力の事情を簡潔に分かりやすく説明されていたところは読んでいて勉強になりました。この作品に関しては残念でしたが、魅力的な題材を選ばれる著者だけに、今後も注目していきます。 | ||||
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太平記を最初から最後までを1冊にすると。。。軽くなってしまいます。 吉川英治版は11冊ですから。 幕府開設からとか期間を絞って高師直の悪党ぽさをより書き込んだ方が いいと思うんですが。作者得意の短編でもいい位です。 | ||||
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野望と欲望の塊の代表のような人物として、世間的な評価は悪い高師直。 戦に強く、政治力も高い。 なんだかんだありながらも、最後まで足利尊氏を見捨てず、最後まで付き従い東奔西走する。 そんな師直になぜか惹かれます。 これは太平記の長い物語で、この高師直にフォーカスした小説です。 が、さすがに1冊にまとめるには苦しかったのかもしれません。 物語を追いかけるのに忙しく、伊東氏のいつもの描写力がやや影を潜め淡白な感じがしました。 とはいえ、もっと取り上げられ、そして見直されてほしいと願う魅力的な悪党です。 | ||||
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本書の主人公は足利尊氏の家宰として権勢をふるった高師直である。自らの野望実現のために躁鬱の気味があり頼りにならない尊氏を盛り立てて後醍醐天皇の新政権樹立させる中段までは結構面白かったが、その後次第に師直が人間味を見せ出したあたりから展開がまどろっこしくなり最後の方は結構疲れてしまった。 | ||||
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足利家の家宰である高師直を主役とした歴史小説である。勢いがあり読ませる話であるが、 野望をテーマにしているためそれ一辺倒になってしまったきらいがあることと、師直を引き立てるために足利尊氏が胆力のない男になってしまっていることが残念である。 | ||||
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かつて司馬遼太郎は「室町時代は欲望だけの世界なので書きにくい」旨をその随筆で書いていました。信長の革新性や秀吉の「人たらし」としての魅力のような、書きたいと思わせるテーマやエッセンスに欠けた時代なのでしょう。 伊東潤はこの室町の代表的な「悪役」である高師直の生涯を、司馬遼太郎が忌避した「己の欲望」一色に染めて描ききりました。 しかし、その悪行は限定的。自らが仕える足利尊氏をなだめすかし天下取りに奔らせ、弟の直義とは幕内での勢力争いで押されぎみ。女など眼中になかったはずなのに、いつのまにか人妻に心奪われ…。 年とともに己の限界を覚り、あるじである尊氏のことを一番大切に思っている自分に今更ながら気づくなど、一抹の滑稽味さえ感じさせる人物造型でした。作者が意図したかどうかはわかりませんが。 同腹の兄弟や同族同士で争うこの時代は、動きがわかりにくいのですが、そこらあたりを良く整理して書いた作者の筆力はたいしたものだと思います。 | ||||
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本書は、高師直を主役にして「太平記」の時代を描いている。 太平記を題材にした小説は決して少なくないが、全編を扱うには吉川英治「私本太平記」はじめ何冊にもわたる大長編となる。このため、本書程度のボリュームの場合には、主役を一人に絞って、彼の場面だけに限定したストーリーとすることが一般的である。 今回、著者は、高師直を主人公に置きながら、六波羅攻めから直義の死までの20年以上をほぼ網羅するストーリーを選択した。これが失敗。 1.師直の活躍は、観応の擾憂をクライマックスにした終盤だが、著者は建武新政開始までに100頁、足利政権確立までに150頁を費やした結果、終盤が見事に駆け足になってしまった。 2.師直は、史実では脇役の前半でも主役を務めるために、色々な登場人物との絡みが用意されている。廉子や正成といったメジャー級から円心などの脇役まで実に広いお付き合いをするが、無理やり感(女性大河でただのお姫様が戦国武将みんな友達になるみたいな)は否めない。 3.そして肝心の終盤では、師直ではなく、フィクションのキャラがストーリーをリードし始める。なんだこれ・・・こういうのは意外なとは言わないだろう。 4.こうした師直メインの構成のツケは、本来の主役である尊氏・直義を貶める形になって読者を困惑させる。鬱病で帝相手に失禁するようなへたれた尊氏、戦下手なくせに兄の威光で横柄な口を叩く嫌われ者の直義。確かにそういう面はあるが、そうでないそれ以上の魅力があってこそ、二人は両将軍として足利政権を確立したし、多くの将が生死をともにした。この酷い描写は、ラストのどんでん返しを全くインパクトのないものにしている。 5.実は、近年の歴史研究では、執事と弟の権力闘争に右往左往するばかりの尊氏ではなく、観応の擾乱でその両名の処刑とシンパの粛清に成功して自身と息子の将軍権力を確立させたというそれこそリアルな権力志向の政治家だったとの説が近年強まっている。著者らしからぬ、そうした最新の歴史研究のスルーは残念で仕方がない。(別に史実に即せというつもりはないが、あんなラストなら上記の方がよほど面白い) 6.太平記の時代は、日本史の中でも屈指の混乱した時代だ。新書レベルなら分かりやすいダイジェスト解説もありだろうが、なぜ伊東潤のレベルでそんなお子様本を書く必要があるのか?素直に観応の擾乱に絞った中身の濃い長編にすればよかったのではないか? まぁ、これだけ酷評しても、☆3なのは、流石の著者のストーリーテリングの巧さ故だ。 400頁弱の太平記総集編としては、まぁまぁ面白い。でも、これなら吉川版をキチンと読む方がいいわけだが。 | ||||
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