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七十歳死亡法案、可決
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七十歳死亡法案、可決の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.95pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全101件 81~100 5/6ページ
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近未来の日本を舞台にした小説です。人間はなぜ生きるのか、よりよく生きるとはどういうことか、考えさせられ、また、著者の筆致にはまります。 本書では介護の過酷な現場、人間の尊厳、世代間格差、ブラック企業、就職難、寿命と健康寿命のギャップなど、様々な問題が出てきます。設定は悲惨なのに、また荒唐無稽でさえありますが、人間の本音と理性との葛藤が巧みに描かれていて、面白く明るさがある作品です。 決して老人は不要と主張しているわけではありません。内容の面白さの割に、タイトルと設定の過激さが、新聞や雑誌で紹介することをためらわせたのか、あまり評判になっていないですが、いい作品だと存じます。 書店で見られても手に取るのがはばかられるような感じを受けられた方見るかもしれませんが、偏見を持たずにぜひご一読を。 | ||||
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どなたかも書いているように、タイトルが大仰なわりには内容が のほほんとしていたのががっくりでした。 描写があまりに残酷になるので”70歳”老人の処刑のディテールは あえて描かなかったのかもしれませんが、そういう要素もなければ シリアスな問題提起にはなりえないと思います。 ちなみに、私も高校生のころ同様の漫画を描いたことがあるのですが、 それは規定の年齢に達したら命を奪われる代わりに、当人が望む 最大限の贅沢をさせてくれる一方で、その宣言をしない人達は食料危機や 伝染病で苦しみながら死んでいく・・・てな内容でした。この作品でも 70歳だと〇〇の許可がされるが80歳だと〇〇しか許されない、とかの 設定があってもよかったのではないかと思いました。 | ||||
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重いテーマだがペダンチックにもならず、 わりとさくさくと読めるこなれた文章だと思う。 ただ、状況設定や登場人物達の葛藤や内省は類型的で 肉声としての迫力を感じるまでには至らない。 勿論、諧謔やアイロニーもない。 正直、着想以外みるべきものがない。 しかし、その着想にしても、筒井の「銀齢」の後 ではどうしても色あせてみえる。 | ||||
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現代の日本に一石を投ずるような内容です。「長寿社会」に必要なものは何かを訴えているような作品です。 | ||||
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70歳以上の人間には申し訳ないけれども、死んでもらう-- 今後確実に高齢化社会はすすみ、若者から老人に対する風当たりがきつくなることは目に見えている。 そんな中、このような作品が刊行されたのは非常におもしろい! しかし、ラストはこうなるんだろうな、ということが半分も読まないうちにわかってしまうのが残念。 交通事故のように突然衝撃を受けることもなく、そのまま家に直帰するかのような結末に刺激があれば、もっと面白くなったと思う。 そうは言っても、高齢化社会に対して、のひとつの答え、提案としては非常におもしろい。 こんなアプローチもあるんだな、と実感した。 | ||||
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タイトルがものものしい割には、中身は全然物々しくないです。 第一章の風呂敷の広げ方は非常に大きいのですが、第二章以降、急に日常描写が増え、やはり「尻すぼみ」感は否めません。 年齢に達した高齢者を具体的にどう「対処」するのかの説明&描写も全然ないし。タイトルのものものしさが本文に全く反映されていない、という印象です。 これ系統のテーマというと、 ・映画「楢山節考」 (一定の年齢になった高齢者を山奥に捨ててこないといけない話) ・筒井康隆「銀齢の果て」 (政府の制度により、高齢者たちがバトルロワイヤル同様の殺し合いを強いられ、生き残らないといけない話) ・星新一編の「ショートショートの広場」に収められている「首」 (高齢者の殺人が合法化され、高齢者の殺害に報奨金が出るようになり、サラリーマンの主人公が、会社の同僚と相談してお互いの両親を交換殺人するために帰省する話) ・映画「2300年未来への旅」 (30歳になったら儀式で殺されないといけない未来のコロニー社会から、主人公が逃げ出して冒険をする話) 高齢化社会ではないですが、要介護状態になった人の ・映画「潜水服は蝶の夢を見る」 (脳出血により寝たきり状態になった人物の思索のストーリー) などがありますが、この作品は「あと十年ほどで七十歳に達する人達が、人生についていろいろ考えてみた」だけの物語、といった感じです。 なにしろ、人が一人も死にません。葬式すら一回も出てこない。 見てていたたまれないような光景や、祖父や祖母を命がけでかくまう家族とか(それこそ海外に移住するとか)が、出てきたりしてもおかしくないと思うんですよね。 そういう点で、今日性の高い、非常にスリリングな着眼点であるにもかかわらず、非常にもったいないという感じがします。 テーマが「社会」とか「制度」を扱ったものなのに、一つの家庭の「家族ドラマ」でしかなく、どうもスケール感を感じないのも、ちょっと残念です。 描写についてですが、シーンが切り替わって、人物の主眼が五十代の女性から二十代の若い男性に変わっても、ほとんど描写の違いがないのも気になります。入院中の高齢者の主眼になっても、どうも描写がほんわかしていて、メリハリもないというか。 第四章のタイトルが「脳天気な男ども」というのも気になります。 こういうのって性別の問題なんでしょうか? ただ単に過去の鬱憤をここぞとばかりに晴らしている作者の私怨のような…。もちろん高齢化社会を語るときに、世代と価値観の問題として無視できない要素ですが、テレビなどでいかにも扱いそうなステレオタイプの人物造形は、むしろ筆者の見識の狭さが伺い知れる気さえしました。 政治家も出ては来るのですが、全部テレビの向こうで話しているのを描写しているだけで、ワイドショーレベルの発言と議論にとどまっています。 法案が施行されるまでのストーリーだとしても、せめて厚生労働省の前で抗議運動がひどいとか、首相官邸前でデモがあるとか、それくらいの描写はあってもよかったのかも…。 あるいは、事前に「介護疲れ」による殺人が多発している、とか、国家財政の何パーセントが高齢者対策に費やされているか、とか、もっと壮絶な描写がないと、この強引な法案の説得力が生まれない気がします。 厚生労働省の人も一人も出てこないんですよね…。デイケアサービス関連の人も出てこない。ソーシャルワーカーの人も出てこないし。 もしこんな法案が可決されたら、市役所から来たソーシャルワーカーの人が、あたかも「特高警察」や「ユダヤ人狩りをするナチスドイツの親衛隊」ばりの存在になってくる、とかの変化は起きると思うんですけど、そういう描写はまったくありません。 登場人物たちは延々と、残りの人生で旅行がしたいだの家の相続はどうするだの、家族間の力関係で悩んでいるだけです。男尊女卑とか嫁姑の人間関係がイヤだから「死ねばいいのに」って思ってる、ってレベル。 例えば、やっと授かった孫が通う幼稚園児の列に、痴呆の進んだ老人の車が突っ込んで孫が亡くなってしまった、とか、実在する事件で高齢化社会について考えさせられる要素を盛り込んだりしてもよかったのかもしれません。あるいは病院の空きベッドの問題とか。 介護疲れでの殺人や心中すら一回も出てきません。 ひたすら「将来こうなったら私はやだなあ」「あと十数年、どういうふうに生きたいかなあ」的な描写の繰り返しです。 このテーマを篠田節子さんあたりが書いたら(篠田節子氏は市役所で勤務の経験があるので、社会と個人を描きわけてスケール感を出すのが非常にうまいです。『夏の災厄』でもふんだんに描かれていましたが、福祉関連の部署での経験もあるようなので、ぴったりだと思います)、ひょっとしたらもっと面白いのかな? とか思いました。 人間の持つおどろおどろしい面を描く、という点では桐野夏生さんなどもいいかもしれません。 この筆者は、ひたすら自分の手を汚すことのない無難な描写に徹している、という感じで、テーマを充分に扱い切れていない、と思いました。 このテーマ、非常に重要であると思うので、いろんな作家さんが書いて、アンソロジー化されるといいのかも知れないなあ、などと思ってしまいました。 本文の内容からすると星1つか2つなのですが、テーマの選定と、非常に難しいテーマに挑もうとしたその心意気をかって星3つです。 | ||||
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自分が考えていた内容とちょっと違いましたが、思いのほかおもしろかった。 | ||||
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実質評価3.5 この著者の本は初めて読みました。 家族介護について考えることが出来た。あきずには読め、なかなか面白かった。ただ、総合的に話の焦点がぶれていたと思う。 多くの人に焦点が当てられながら、話が進んで行くのだが、主となる人がおらず、ほぼ平等に出番があるため話のまとめが雑に思えた。終盤の家族の心変わりが急すぎたと思う。特に夫。 また、話自体も最後すっきりしない完結に感じた。 総評として、物語の終わらせ方はともかくとして、人物の台詞が非常に印象に残った。少なくとも著者の他作品はみたくなるほどの力はありました。 | ||||
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読了して、結末に「ほっ」として安堵したのだが、反面。なんだ。と物足りなさを覚えたのも事実。現実に切迫している、超高齢化、財政の逼迫にどのように立ち向かうのか。それらを解決とまでは行かなくても、方向性を示すヒントでもあるのかなと思ったが、たんなる心がけ・姿勢の有り様を示しただけ。期待した分・或いは覚悟して読み始めた分だけ「裏切られた」感が残る。 | ||||
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<物語概要> 七十歳になったら死ななければならない、 という法案が二年後に施行される。 その法案の影響で、リハビリすれば回復 するかもしれない義母、菊乃を、残り二年間も 介護しなければならなくなった主婦、 トヨコ。 義母の実の子どもたちは、遺産相続の話 などには顔を出すが、介護等には関わろうと しない。 トヨコの娘は、介護ヘルパーの仕事で一人暮らし中。 息子は、一流大学を卒業し大企業に就職するも、 人間関係で失敗し、その後引きこもり状態。 夫は、法案を前に、会社を退職し昔の友人と、 三か月かけて世界旅行に行くという。 家族が皆ワガママ放題で自分だけが疲弊していく中、 ついにトヨコは切れ、家出を決行する。 トヨコが不在になり、結果的に残された者たちが、 菊乃の面倒を見るようになるのだが…… <登場人物> トヨコ……メインキャラクター。 介護や様々な家族の不遜に対し、疲れ切っている主婦。 昔は優秀でリーダーシップもあったらしいが、 現在では疲れ切り、世間を知らない中年女性になって しまった。 介護が必要な上にワガママばかりの義母を筆頭に、 引きこもりの息子、自分のことしか考えない夫、 家のことに関わろうとしない長女、と悩みの種は絶えない。 それでも真面目な気質なのか、なんとか良妻賢母を 演じようとするが、もう限界まできていた。 正樹……トヨコの長男。 トヨコの次にフォーカスされることが多いキャラクター。 優秀で外見も良いが、就職後につまずき挫折。 プライドの高さも手伝い、引きこもり同然の生活に。 トヨコがブチ切れて家でした後は、菊乃の面倒を、 見させられる羽目になり、すぐに音を上げ、周囲に 助けを求める。それが物語を動かすことに……。 中学時代の同級生で、現在会社を切り盛りする女性に 言い寄られたりすることも……。 桃花……トヨコの長女(正樹の姉) 現在一人暮らし。介護職の仕事をしている。 自分の容姿にコンプレックスを持っているが、 同僚の甲斐甲斐しく働く男に恋心を抱いている。 静夫……トヨコの夫。 トヨコの苦労をまったく顧みず、友人と旅行に 行こうとするような朴念仁。 <全体的な感想> 七十歳死亡法……という設定に惹かれて読んでみた。 ただ、最終的には一家庭の崩壊と再生の物語、 という感じだった。 七十歳死亡法、という法律が可決されたという背景が、 この物語を描くのに、必要だったのか? というのが、疑問に残る。 ほとんど一家庭のキャラクターたちの視点で、 苦労や心情が描かれていくし、文章も淡々と 歯切れよく進んでいくので、とても読みやすくは あった。 ただ、この設定ならでは……的なアイディアが、 私には見つけられなかったのが残念。 そして、「実はこうでした」的なオチは好きだし、 最近の政治家に比べてこの小説に出てくる政治家は、 芯が通っててカッコいいのだけど、あまりにも、 ラストが出来過ぎてないだろうか? もちろん、大団円……というのも嫌いではないのだけど。 たぶん、タイトルから私が勝手に期待したものと、 物語の内容が、食い違っていたのだと思う。 | ||||
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こんな法案が通ったら当然こういう事になるでしょうね。びっくりする設定でしたが、問題定義するうえでとても面白かったです。結局はカリスマ首相の発表で結末となるのですが、そこはちょっと出来過ぎ。今の日本にはそういう人がいないから、問題なのではないでしょうか?コロコロと首相が変わり、どいつもこいつも日本を立て直せないでいる。この小説のような首相が現れてくれる事、それを待ち望んでいます。 | ||||
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高齢化社会の到来がわかっていたのに、既得権益者と年齢に比例する投票率が怖くて改革に踏み切れなかった日本。 それを積極的か消極的か知らないが、結果的に無策と言うか無対応を支持してきた国民。 新政権も、さらに給付を増やしている。 特に年金受給者はそのつけを自分で払わないで、若者や子どもに押し付けてるわけで、 年金をもらわないと言う以上に強烈な責任の取り方を紹介してる。 無策も無知も罪であり、罪は償わなければならない。 カリスマ的人気の首相が、英断をふるうわけだが、出来れば現役労働者やこの親として、打ち上げがあって、問題意識が形成されればよいが、 それはフィクションを通り越して、ファンタジーになってしまう。 法的な安楽死になる前に、何がいけなかったのか、考える良い機会だと思う。 社会保障と言う国家予算の半分を使う、訳の分からない多くの団体や関係者がその下にぶら下がって権利ばかり主張する、複雑怪奇な世界に 国民と言うか納税者として関心を持ち、各自が考える、良い機会を提供した作品だ。 何が正しいのかは、立場によって違うが、直面してるのは事実で、状況はフィクションではない。 | ||||
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自分の親たちの現状、そして介護の仕事に関わっている関係で、 非情に興味深く読みました。 目の前でいろんな高齢者を見ていると、 自分は75歳くらいで逝きたいなーと思っています。 作品はとても読みやすく、 活字離れしている私にも数時間で読めました。 介護の当事者には、よくぞ痒い所を掻いてくれた!的なお話じゃないでしょうか。 主人公の東洋子(介護者)に当たる人はもちろん、 介護に協力しない夫や家族に、ぜひとも読んで欲しいですね。 それぞれの心情をキチンと描き、 実は悪者は一人もいないんだという流れが心地よいです。 途中から都合の良すぎる感の展開と、 全員がハッピーエンドになってしまうのには少々苦笑いしてしまいますが 納得の結末に読後感スッキリです。 ドラマにするといいんじゃないかな〜と思いました。 出来れば東洋子の怒りが爆発するシーンを もうちょっと文字数をかけて書いて欲しかったかな。 …すみません、偉そうで。(^_^;) | ||||
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とても面白くて一気に読んでしまいました。 題名はかなり過激だけど、なんか読後すっきりしました! 介護って本当にそれをしない人にはその苦労はわからない。 でも、こういう本を少しでも多くの人が読んで、苦労をわかれば、思いやりや優しい気持ちをみんなが持てるんじゃないかな? しかし、これくらいのすごい法案でも実行しない限り、 今の日本は完璧沈没する気がします。 | ||||
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内容は全く分からなかったのですが題名にひかれて買い求めました。リアルタイムな内容で、読み進んでいくうちにまるで私が小説の中の登場人物になったような錯覚をおこしてしまうほどでした。 | ||||
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刺激的な題名がかえって反感をかうかもーー題名だけでドン引き。面白く読みました。始まりは毒がありましたが、終わり方は余りに平凡ーー上手くいき過ぎてーーまあ気持ち良く、後味は良いです。 | ||||
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妻と買い物に出かける電車の中で、 私「このままの日本だと、年金も健康保険も無くなるな、どうすればいい?」 妻「60歳まで仕事して、80歳で死ぬしかないんじゃない」 と話をしていて、書店についたら、この本がありました。 答えが本の中にあるかもしれないと思い、すぐに購入を決め、早速読破しました。 この本のなかで書かれていることは、国民全員が真剣に考える事、真剣に考えた結果として行動する事という内容と思います。 真剣に考えるタイミングは、人それぞれで違うと思いますが、個人、家庭、地域、職場で話が出ると思うので、真剣に考えるにはこんな方法もあるんじゃない?と読んでみることをお薦めします。 実社会の日本では、こんな法案が可決されるわけないですから、一つの仮想現実として読んでみるのがいいと思います。 | ||||
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読む前には、題材が老人問題と法律問題なので理屈っぽく陰鬱な感じの小説かなと思っていましたが、実際に読んでみると、そんな心配をする必要もなく、楽しく一気に読めました。日本中のどこの家庭でも何か思い当たるような情景が軽快に描かれています。 題名について、この小説のメインストーリーに対してこの題名(と味付け)とを持ってくるという著者の作戦は、とても見事だと思います。もしメインストーリーに完全に即した題名を付けたら殆ど売れないでしょう。それ以上言うとネタバレになりますのでここでは言いません。何故か知りたい人は、買って読んで「なーんだ」と思ってください。 | ||||
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この小説は「七十歳死亡法案」をきっかけに若者、中年、壮年、老年それぞれの立場のエゴがぶつかっている現在の日本社会における世代間エゴイズムを表したものであると感じました。そのモデルケースとして宝田五人家族の群像劇というスタンスが取られています。 そのため、本書は、邪険にされる高齢者世代や高齢者の待遇に嫉妬する若者という特定の二極化された層だけに読まれるのは非常にもったいない作品です。 ありふれた呼びかけではありますが、今一度「あいつはうらやましい」、「自分は不遇だ」という主観的な物の見方を捨ててみて、自分に何ができるかを考えてみるきっかけになるのではないでしょうか? | ||||
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七十歳に達した者は、皇族以外全て安楽死させる。現在七十歳以上の2千万人は施行初年度に安楽死させる。 そんな法案が可決された、いつかの日本を舞台に、七十歳超の寝たきり、でも口も胃袋も元気な姑、家庭に無関心な夫、エリートからニートに堕ちた息子、家を離れ介護の現場にいる娘を持つ50代主婦を主人公に、彼女ら・彼らの葛藤を描いた作品。 年金のアテも見えないのに、保険料だけはやたら取られる若者世代が、法案を支持するといった、現代日本が目を背けるリアルを背景に置くなど、設定自体はシリアス。 しかし、その舞台に立つ者の葛藤は、そこらのドラマや小説で飽きるほど使われた者でしかない。 冒頭から繰り広げられる設定に高まった気持ちは、月並みな展開に萎えるばかり。 本作が、高齢化社会や年金問題をシリアスかつ社会的に問い掛けるものなら、ストーリーは問わない。しかし、本作は、ごくフツーの小説として人の心を描いているのだから、設定上等!だけでは、ツカミ芸だけの漫才師のようなものなので、残念至極。 まぁ、この手の話が好きな人(ラストを「前向きな気持ちになる」と評したのは朝日新聞)には、そこまで期待外れにはならないだろうが、タイトルに惹かれた向き(はい、私です)は、少し立ち読みしてから買った方がいいよと言いたい。朝日新聞編集委員には悪いが、ああいうラストは「ご都合主義」と言うものだと私は思いますよ。(もちろん「ご都合主義」=ダメではないので、そういうのが好きな人を否定する気はありません) | ||||
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