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殉狂者
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殉狂者の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.71pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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日本赤軍に欠片もシンパシーを感じず、嫌悪感しかないので、過去編には主人公に対する反発しか湧かなかった。物語は相変わらず「こうならなかったらいいな」と思う方向に疾走していくが、冒頭の大量殺戮テロがひどすぎるので、何があっても主人公に同情する気にならない。現代編・過去編がサンドイッチになる構成で、長大作となるのは避けられないが、それにしても長すぎた。 | ||||
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【まだ下巻を読んでおりません。 あくまでも上巻の感想、上巻からの推測です。】 馳氏の著作群のなかでは珍しく読むのに時間がかかりました。 珍しく“普通”の小説と言えるかもしれません。 これは必ずしも否定的な文脈ではなく、じっくりと読み進めないといけない雰囲気が作品にあるということです。 (現代の)日本を舞台にしている場合、これでもかというくらい<暴力と性>を描写されてもどこか現実感がない。 そのどこか「近いようでいて遠い」と」いう感覚が諸作品の“おもしろさ”となり、読者にある意味で気軽に、そして凄まじいスピードで読ませるちからとなっているのだと思います。 不思議なもので、本作のように1972年&2005年のスペイン及びフランスの《バスク地方》という、日本人一般にはあまり馴染みのない土地で物語が綴られると、かえって自分にとってより距離の近い話となる。 テロ組織であるETAによる(このように断定すべきかどうかは意見がわかれると思いますが)大規模な殺戮や暗殺の方が現実に「起こりうるもの」として伝わってくる。 ですので、軽々しい気持ちで読み進めることができないのでしょう。 馳氏による“普通”の小説、これからも様々な作品を読んでみたいものです。 *** スペイン代表がワールドカップを初制覇したのが2010年7月11日。 本作(原題『エウスカディ』)は同時期に書かれ、同年9月28日に出版されています。 代表で大活躍したシャビ・アロンソらバスク人のサッカー選手たちに触発されて、本作が生み出されのではないかとも想像致しました。 *** 「組織に密告者=裏切り者がいる」という話が出た瞬間に、なんとなくその人物がわかったような気がしました。 「主人公である父子を精神的に最も奈落の底に突き落とすのはどの人物か?」と考えると、答えはひとりに絞られると思いますが、如何でしょうか。 色々怪しげな人物を登場させてきますが、結局はそのカモフラージュではないかと。 もしこれが当たっていたとしたら、設定があまりに安易過ぎますね。 下巻ではこの推測を見事に裏切る展開となることを期待します。 *** なお、馳氏の近年の作品群に共通して言えるとだと思うのですが、著者は取材を綿密になさった結果、何かその世界を<わかったような気>になってしまい、その驕りが文章に顕れてしまってはいないでしょうか? 作品中で自分が取材・勉強で得た知識をひけらかすきらいがあるように思われ、この点についてはあまり良い印象を持つことができません。 P.7 [「セニョール・ジョシオカ?」 「ヨシオカだ」おれは彼女の発音の間違いを正してやる。 一部のスペイン人はYの音をJと発音する。] どの言語のアルファベット<J>の発音を基準しているのか。 おそらく英語、あるいは日本のローマ字の音を著者は想定しているのだと思われます。 しかし、スペイン語の<Y>の発音は英語の<J>やローマ字の<J>と完全に一致するわけではない。 「一部のスペイン人はYの音をJと発音する。」という文章からは、馳氏がこの作品を書くに際しスペイン語についてもかなりの勉強をなさったことがわかりますが、結果としてその知識が十分ではないため、残念ながら不正確な情報となってしまっています。 ※外国語教育でカタカナを用いるべきではないと言われますが、スペイン語の<Y>から始まる単語は日本語の「ジャ、ジ、ジュ、ジェ、ジョ」か「ヤ、イ、ユ、エ、ヨ」に近い響きの発音でどちらも正しいとされます。 日本人の耳にはまったく異なる発音ですが、スペイン語を母国語にする人々には同じかとても近い音に響くようです。 YOSHIOKAさんに「ジョシオカではなく、ヨシオカだ」と言われても、たぶん何を間違いだと言っているのか理解できないと思います。 (スペインの各地方、中南米各国・地域で違いがあります。) ※スペイン語のアルファベットに<J>、これを正しく発音するのは日本人には至難です。 カタカナでは「ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ」に近いと思われ、本作でもJESUSという人物の名前は「ヘスス」と表記されています。 しかしながら、そのカタカナの発音ではスペイン語を母国語にする人々にはかなりの違和感を与るようです。 | ||||
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馳星周のノワール小説。 フランコ政権下のスペインを舞台にして、過去(1970年代)、現在(2005年)軸でバスク独立のテロ組織(ETA)に身を置く筋。 主人公は日本人吉岡良輝、その息子のバスク人アイトールヨシオカが過去と現在のパラダイムシフトにおいてそれぞれの主役。 吉岡は連合赤軍より、世界革命の連携目的で派遣された。アイトールはそのスペインで生まれた吉岡の遺児。 ETAとは関係をもたずにそだったアイトールの周辺に過去の亡霊がつきまとい、また当時の吉岡とETAとしての活動にスコープして展開される筋。 馳星周ぽいテンポの良さが健在。 吉岡の革命への決意、父性の葛藤。 1970年代に何があったのか。 同じ作者の不夜城などと違い決定的に主人公の孤独感が足りなかった気がする。 暴力、展開、孤独を書くのがうまいと思っているので、そこは残念だった。 | ||||
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9・11以降、いっさいのテロは唾棄すべきものとみなされ、矢吹駆(笠井潔)のような理論武装も孤高の ヒロイズムも受け入れがたい現代において、たかが数十年前とはいえ、連合赤軍(日本赤軍)のメンバーの 心境を推し量ることはもはや難しい。そこで本書は、70年代初頭、バスク地方でETAと共闘する吉岡を、 馳星周の他の主人公のように虚無を抱えたアウトローとして描くばかりか、現在形で進行する彼の物語と 彼の死の謎を追いかける息子アイトールの現在の物語を組み合わせることによって、読者が物語世界にすん なりと入れるように配慮している。 ただし、バランスを配慮した代償なのか、暴力も辞さない熱に浮かされたような70年代の空気がいま ひとつ伝わってこない。テロリスト(「殉狂者」)の狂気が描き切れていないようだ。 このインパクトの弱さは、本書の構成にも原因がある。 『エウスカディ』を改稿した本書は、文庫で上下二冊、合計1000ページにも及ぶ大作だが、ドライヴ感のある 読書の愉楽にはほど遠い。70年代初頭の吉岡とその息子アイトールの現在(2005年)のパートが交互に 展開するが、この交代があまりに早すぎるのだ。各章はおよそ10ページ程度にすぎないため、過去の物語に 引き込まれつつあるところで中断して現代に呼び戻され、また過去に引き戻され…の繰り返しには、正直 苦痛を覚えたほど。 もちろん、ETA内部の裏切り者の正体という謎を軸として現在と過去が重なり合う、終盤の緊迫した展開は見事 だし、読後のやるせなさと荒涼感はこの作家ならではのものだが、やや強いられた長い読書の代償としては、 いささか物足りなく思ったことも否めない。 | ||||
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