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(短編集)
小さな異邦人
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小さな異邦人の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.09pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全11件 1~11 1/1ページ
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著者の連城さんは大好きな作家。中でも「戻り川心中」は本当の傑作でした。なのにもう、彼の作品が読めないなんて。悲しいです。 本作は彼の遺作のようです。短編集で、最後の「小さな異邦人」が本書のタイトルになっています。けれど、その異邦人は余り出来がよくない気がします。だって、叙述スタイルがちょっとルール違反(笑)。 でも、それ以外はとっても大人の話。よくこんなプロットを思いつくなと感心しました。さすが連城さんです。失ったものは大きいですね。 ところで、著者のペンネームは「恋情」との掛詞なのかな。いまさらだけど。 | ||||
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表題作の他、「指飾り」、「無人駅」、「蘭が枯れるまで」、「冬薔薇」、「風の誤算」、「白雨」及び「さい涯てまで」の全8つの短編から構成される、作者の死後に(恐らくは出版社の意向で)公刊されたミステリ短編集。私は作者のデビュー当時(「変調二人羽織」)からのファンで、「白と黒」、「陰と陽」とを一瞬の内に反転させてしまう作者の"騙しの手腕"の虜となって来た。その意味において、作者の最高傑作は短編集「夜よ鼠たちのために」(こんな事が可能かと呆然とする程の傑作揃い)だと思う。本作に関しては期待半分、(恐らくは出版社の意向で)"寄せ集め"という危惧半分という所だったが、残念ながら後者の危惧通りとなってしまった。 "騙しの手腕"も男女の心理の機微の書込みも乏しく本当にガッカリした。本作の中では「蘭が枯れるまで」が<花葬>シリーズを"やや"想起させる佳作だと思う(表題作も着想は悪くない)が、往年の作者ならばもっと鮮やかな"騙しの手腕"と男女の濃密な描写があった筈だ。上述の「夜よ鼠たちのために」、他の代表短編集である、「顔のない肖像画」、「宵町草夜情」、<花葬>シリーズ等と比ぶべくもない凡作である。作者が生存中なら、もっと練り直してから発表するという手順になったのではないか。作者にとっても不本意な短編集だろう。 (恐らくは出版社の都合で)こうした短編集が編まれるのは、作者及び作者のファンにとって不幸な事だと思う。本作で初めて作者の作品に触れた方には、もっと優れた作品(特に短編集)が沢山ある事を知って頂きたいと思う。 | ||||
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途中で読むのを止めてしまったという単行本が新刊同様のきれいさで届いて レビュー読ませていただいて初めて。そうなんだ。いつもの連城三紀彦と 違うんだってわかったような。わからないような。 そうかなぁ。自分にとってはそれ程深くそうして沢山読んだことのない 連城三紀彦だからか。時々無性に読みたくなる作家だからか、ほぼ全篇 引きずり込まれるように読ませていただきました。 一番最初に読んだのはタイトルの「小さな異邦人」。8篇のうちの最後。 わりと明るくて発想がユニークで終わり方も希望が持てて、ちょっといつもと 違うかな。それも勝手なる自分のイメージによりかも。そのあとは 「指飾り」「無人駅」「蘭が枯れるまで」「冬薔薇」「風の誤算」「白雨(はくう)」 「さい涯(は)てまで」と順番に読みました。一番心魅かれたのは「白雨」。 次に「無人駅」「蘭が枯れるまで」。あぁこうなんだって。とにかく恋愛においてというか 女性心理を描くのがほんと上手。今回はその女性よりも男性の。それも犯罪的グレーゾーンの もやもや。どっちつかずの迷いそのものをスパっと切り取るのではなく。人間的?な悩み そのものの気がして。女性を描くのは如何してこんなに女性の気持ちがわかるのかなって いつものように読んで驚く程の細やかさ。連城ワールドの着物姿の女性を想像すると素敵で。 それに駄作って一つもない気がして。何故か安心して今回も読んで読まされてしまいました。 早くに逝ってしまって残念とおもうばかりですが読んでないのもたくさんあるので 読む楽しみはまだまだ続きます。 | ||||
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連城先生の短篇集を読むのも久しぶりである。若干期待値を上げて読んだせいか、7作品目までは普通に楽しめる程度だった。 しかしラストの「小さな異邦人」には唸らされた。いろいろとミスディレクションが効いているし、この誘拐のアイデアは実に珍しい。 前例がない、というほどではないが、8人兄弟という設定が上手く効果を示していると思うし、伏線も弱いがきちんと貼られている。超ベテランの域にある時期にこんなアイデアを活かす短編を書いているということは評価に値する。もちろん全体の文章も流麗可憐でため息が出るくらい素晴らしい。繊細な人物描写も詩的でこの文章を読めるだけでも至福の時間だろう。まだまだ現役で攻めの作品を書ける作家だったのに早すぎる逝去は非常に悔やまれる。 他の収録作については以下のとおり。全体的に無理矢理感があったり、切れ味に乏しい、連城作品らしくないのが多かった。 つまり、世界を一瞬で反転させるような切れ味や、一見無理やりな展開でも力ずくで納得させるようなプロットには乏しい。 「指飾り」こんなところで話を逆転させるのか!と驚きはしたが、それだけだった。 「無人駅」どことなく松本清張を連想させる。上手いがあまり連城作品らしくない。 「欄が枯れるまで」次点はこれ。連城作品らしい展開を堪能できる。 「冬薔薇」個人的には怪作。こんな話を書ける作家は他にいないと思うので、らしいといえば「らしい」作品。だが、警官に話しかけられるところや真相などやっぱり無理があるな。 「風の誤算」印象薄い。「ふーん」としか思わなかった。 「白雨」過去の事件の真相はすごい。花装シリーズを思い出させられる。現代の事件と結びつけは無理やりでは? 「さい果てまで」設定は面白いが、真相が弱いと思う。 | ||||
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厳しい評価ですみません。 その前に読んだ連城先生の短編集『夜よ、鼠たちのために』が 過去最高レベルの神がかり的完成度(!!)だったため、 かなり見劣りしてしまいました。 「無人駅」はお得意の世界の“反転”が鮮やかでしたが、 表題作をはじめその他はイマイチでした。全体的に暗めです。 | ||||
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著者の単行本未収録短編を集めたもの。 単行本に収録されなかったのには、やはり、それなりのわけがあるのかな、と思いながら読みました。 ある雑誌では、表題作を「推理小説史上に残る傑作」と書いてありました。 でも、私にはそうは思えませんでした。 確かに「うまいな」と思う反面、(ネタバレになるため詳しく書けませんが)「ずるいな」とも感じました。 本全体に、凝ってはいるが、凝りすぎでは、という印象を受けました。 単行本に入らなかったのは、そういう点が、他作品とのバランスが取れなかったせいかもしれません。 ちょっと期待しすぎたため、点が辛くなってしまいました。 すくなくとも、読んで損をする、という作品ではありませんでした。 | ||||
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著者の訃報に接したのは、ちょうど1年前(2013年10月)のこと。 満65歳という、現代日本では、まだまだ活躍が期待できる年齢であっただけに、強い衝撃を受けました。 本書は、2001年から2009年までに、雑誌「オール讀物(文藝春秋社)」に掲載された8つの短編を掲載しています。 推理作家として、これほど長期(1970年代後半から2000年代まで)にわたり、高水準の作品を発表しつづけた方は本当に稀なのではないでしょうか。 いわゆる失敗作や凡作というものがなく、本書にしても、まさに珠玉の短編集という感じで、作家活動が少しも衰えていないのがよく分かります。 著者の作品の特徴は、「これ以上はないというほどの、意外性に満ちた真相」が最後に用意されていることです。 そして、そのラストに至るまでも、計算し尽くされた精緻な文章で、二転三転は当たり前、長編になると、四転も、五転もしてしまいます。 本作品集で、優れたものを掲載順に挙げると、まず、【無人駅】。 題材は、公訴時効間近の殺人事件(今は時効が廃止されているが、発表当時は15年という時効があった)で、ミステリとしてはそれほど珍しくない題材ですが、この結末を予想できる方がどれだけいらっしゃるでしょうか。 次に、【白雨】。 発端は、学校でのいじめ。 これが、ある過去の事件と絡みあった時、見えてくる真相。 この著者ならではの、驚くべき企みに多くの読者は騙されるはずです。 そして、表題作である【小さな異邦人】。 誘拐をテーマにした作品を著者は何編か書いていますが、ここでも新境地を拓いています。 本編が、最後の発表作品のようなのですが、このレベルの作品が書けるのにも関わらず他界してしまうとは、ミステリ界は、貴重な逸材を失ったことに間違いありません。 本書を読んで、その作風を気に入ったなら、文学賞を受賞した作品を足掛かりに、初期の作品から読み進めることをオススメします。 是非、唯一無二の連城ワールドを堪能してください。 | ||||
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新潟県六日町の小さな駅に降り立った女は、駅に掲げられた全国指名手配犯の男の写真をじっと眺めていた。15年前に東京・池袋で発生した殺人事件の犯人・石田の写真だ。女は六日町の宿にいる「西田」という男を訪ねてタクシーに乗る。おりしもあと数時間で池袋の殺人事件は時効になる。果たして女は殺人犯・石田の関係者なのか…。(「無人駅」) 主婦・有希子は小学校時代の友人・木村多江と30年ぶりに再会する。それぞれ夫に不満を持っている二人は、交換殺人の相談を始めるのだが…。(「蘭が枯れるまで」) 8人きょうだいの大家族の家に「子どもを預かった」という誘拐犯からの電話がかかって来る。しかし子どもは誰ひとり欠けることなく家にいる。三千万円という身代金の要求をいたずらだと思っていたきょうだい達も、電話の主の真剣な声にやがて真相を探ろうと動き始める…。(「小さな異邦人」) 昨2013年10月に鬼籍に入った連城三紀彦の8編の短編を集めた一冊です。 昨日と変わらぬ今日を送ってきただけの市井の人々が、その平凡な日常の連なりの中に俄かに闇深い亀裂が開くのを目にする――どれもがそんな彩りをもった物語です。その裂け目の妖しい奥を覗き見たが最後、心の底で増殖を始めた<疑心>という名の拭いがたい魔力に主人公たちは魅せられてしまったかのように、人生の軌道を逸れ始めます。『トワイライト・ゾーン』のような異次元空間に迷いこんだかのような怪異譚が連なりますが、それでいておのおのの物語は超常現象的ホラー小説に終わることはなく、必ず読者を現実的な<解>へときちんとたどり着かせてくれます。広げた謎と秘密とを、流れる日本語を駆使して、最後に回収していく手際が大変に見事です。まったくもって惚れ惚れします。 その訃報を目にし、そしてこの短編集刊行の報に接するまで、私は連城三紀彦という作家とは縁のない読書人生を送って来ました。そのことが自分の大きな失態であったという思いが、この書の読了後に強くしています。 ですが、作家は逝ったが、その作品は残りました。そして今からその足跡をたどる時間が幸いにも私にはあります。そのことに対して私は安堵の気持ちを抱いています。 | ||||
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連城の最後の最後の贈り物と帯に書いてあったが,まだ単行本化されていない短編があるので,ぜひ出版してほしい。 それはさておき,「小さな異邦人」に収録された他の作品「指飾り」「無人駅」「欄が枯れるまで」「冬薔薇」「風の誤算」「白雨」「さい果てまで」のすべてに,文章の巧みさ,最後までミステリー的に引き込む構成,人に温かい配慮 がとじこめられている。小生,連城作品すべて蔵書としているが,この出版を知ったときの喜びは,久しぶりの感動であったし,読んだ後には胸いっぱいのなつかしさが残った。 | ||||
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30余年前、連城三紀彦氏がさっそうと登場した時のことを私は鮮明に覚えている。流麗な文体と意表を突く展開を武器に、彼はミステリーであって恋愛小説でもある作品を次々に発表した。そこに広がる彼にしか描けない耽美的な世界に私は魅了された。この遺作を読みながら当時に抱いた感慨を私は思い出していた。変わっていない。しかし、追求し続けたものが熟成を迎えた時に作家はこの世を去っていった。 本書には8編の短編が収録されているが、すべて男女間の愛憎を扱い、ミステリー仕立てあることは共通している。テーマは、時効、幻覚、交換殺人、情死、復讐、誘拐と多彩だが、いずれも連城氏らしい凝ったプロットと華麗な文章でしっとりとした抒情的な世界を描き出している。連城氏の手になるだけあって、そのストーリ一は一筋縄ではない。結末がまったく予想できないまま読み進み、ようやく落とし所が見えたかと安堵をつきかけた瞬間に足元を払われるような作品が続く。氏の得意技はますます磨きがかかっている。 この作品集で最も完成度が高いのは表題作の「小さな異邦人」であろう。子供が8人いる母子家庭に電話がかかってくる。「子供を誘拐した。3000万円を用意しろ」だが、子供たちは8人揃っている。幾重にも伏線が張られた見事な結末に唖然とすることは請け合いだ。ミステリーに「誘拐物」のジャンルがあるとすればベスト上位に選ばれることだろう。その意外性から、私はアガサ・クリスティの「アクロイド殺し」を思い浮かべたほどである。しかし、このストーリーには倫理上の問題をはらんでいるのではないか、と感じたことも付け加えておきたい。 このように「小さな異邦人」は誘拐物ミステリーの新たな到達点である。また、娘のいじめが30年前の父親の死に繋がる「白雨」に表れた耽美さは、初期の作品を彷彿させる。ともに連城氏の美質がたっぷりと発揮された作品だと思う。独自の境地を切り開き、読み応えのある作品を多く残して逝った連城三紀彦氏に感謝するとともにご冥福を祈りたい。 | ||||
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巧みな修辞、心理描写、そして意外性。 それらを撚り合わせた、細密にしてミステリアスな情念の宇宙。 そんな連城作品の魅力は、この作品集でも健在だ。 例えば表題作の『小さな異邦人』―。八人の子供がいる大家族に、誘拐犯からの身代金要求の電話が掛かってくるが、八人の子供は全員その場に揃っていた…。 そんな奇妙な導入部から意外なツイストをへて、不可解な誘拐事件が思わぬ真相へと着地する。 鮮やかな匠の手さばきを思わせる作品ぞろい。 危険な香気をはなつ蠱惑の美酒のような連城作品の味を、この一冊でも変わることなく楽しむことができる。 初期作品から、常に期待を裏切ることなく、胸おどる読書の時間をあたえ続けてくれた氏の作品群。突然の訃報は、ただ驚かされるばかりだった。 遅ればせながら、連城三紀彦氏のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。 | ||||
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