柳生十兵衛死す
評判
柳生十兵衛死すの評価:
4.67/5点 レビュー 15件。 D ランク
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全26件 1〜20 1/2ページ
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柳生十兵衛死すの評価:
4.67/5点 レビュー 15件。 D ランク
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柳生庄の河原に横たわる十兵衛三厳(みつよし)の屍という衝撃的なシーンで始まる物語は、室町期と江戸初期、250年を隔てて出現した二つの陰謀を平行して描く。室町期は三代将軍義満の皇位簒奪であり、気弱な性格で協力させられるのが100代後小松帝(実は姦通によって生まれた義満の子。史実!)。江戸期は正雪の変であり、108代後水尾法皇と紀州藩主・徳川頼宣(家康の第10子)が共謀する。
この陰謀を阻止すべく活躍するのが、二つの時代の二人の十兵衛(室町期は十兵衛満厳)と二人の世阿弥(江戸期は世阿弥の子孫・竹阿弥)だ。
江戸初期・慶安年間に生きた十兵衛は室町期・応永年間へタイムトラベルする。この時代にタイムマシンがあるはずもなく、風太郎はその機能を能という芸術に果たさせる。金春竹阿弥の「世阿弥」創作にかける執念が竹阿弥と十兵衛を250年前へテレポートするというアイデアは見事だ。
またSFとして興味深いのは、時空の一本化が不能というタイムトラベル固有の矛盾が解消されているところ。タイムトラベルしても二人の十兵衛、二人の世阿弥の人格が入れ替わるだけという設定が、その一本化を可能にしている。
しかしこの小説の眼目は、風太郎独自の様式美“シンメトリー構造”の集大成にある。物語の主要な要素は、たとえば二つの陰謀をそそのかす予言さえも、すべてシンメトリーになっている。十兵衛満厳はシンメトリーの必要から創作されたが、二人の開いている目を左右逆にして抜かりなくシンメトリーを重ねている。
四人は入れ替わりつつ二つの時代で大活躍する。終幕、二人の十兵衛が対決する場面の映像的な構成は完璧なシンメトリーで、風太郎作品中でも屈指の美しい描写だ。
ではなぜ、わざわざ室町と江戸を舞台に、シンメトリー構造の物語を作ったのか? たぶん、著者が語っているように「十兵衛を死なせる」ためだ。十兵衛は最強無敵だから倒せる剣客がいない。主人公を死なせずにはおかない風太郎としては、もう一人の十兵衛が必要だった。ダイヤモンドはダイヤモンドでしか研磨できないからだ。
奇想に次ぐ奇想、完璧なシンメトリーの実現、タイムトラベル矛盾の克服・・・ 著者最後の長編小説である本作の完成度は圧倒的だ。