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地上最後の刑事



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地上最後の刑事の評価: 4.06/5点 レビュー 17件。 Eランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.06pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全13件 1~13 1/1ページ
No.13:
(4pt)

終わりが見えた世界で捜査を続ける

ストーリーはバリバリの刑事もので、未来の科学や機械などが登場する訳ではありません。
隕石の落下が予測され秩序が崩壊し始めたところに起きた事件。真面目に取り組む刑事も減った中、主人公は懸命に犯人を追う。
動機やきっかけに設定が活きる。興味を惹かれる設定でキャラクターも特徴が出ており続きが気になります。文庫版で買ってしまったので続刊も文庫版が出てくれると嬉しいです。
地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
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No.12:
(4pt)

設定への興味だけでなく、主人公を好きにならずにいられない

設定が興味を惹くものだったので、文庫になるのを待って購入。
小惑星が衝突するのを待つ地球の混乱状態を想像し、チャイナ・ミエヴィルをうんとミステリよりにした作品を予想していました。が、全くもって違う印象の話でした。

地方都市(田舎町)の様子はそこまで混乱状態ではないけれど、もはや日常が継続可能ではなくなったことに様々に対処する様子が、設定からすると控えめなくらいの描写で説明され、そこに一人称の主人公が際立ちます。
若くて真面目で,こんな状況のおかげで刑事になる夢がかなったばかりの新米が手探りで捜査を進めよう、刑事としての仕事をしようという様子--この真摯さがたちまち伝わり、この主人公に好感を抱かずにいられません。刑事としての仕事も、恋も、もう次は望めないのかもしれないけど、頑張れ〜と声をかけたくなるほどに。

ミステリとしてのストーリー立てにも設定がよく生かされています。謎解きとしては意外性がなく、むしろ予定調和に近いくらいの印象があるのですが、物語としての整合性・ストーリーバランスとしては非常にいいと思います。日常の継続性を失ったとき、人間がいつ、どう変わるのかの考察も無理がないし--もともと推理マニアでなく、ミステリであっても読み物としての楽しさのほうを期待する私には十分な読み応えがありました。

現時点で続刊の文庫化はまだのようですが、じらさないでほしいなあ...
地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
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No.11:
(4pt)

人類滅亡の危機が迫る中、静かに職務をまっとうする刑事の物語

巨大隕石が地球に衝突する約半年前に発生した殺人事件を追う刑事ヘンリー・パレス。遺体の発見状況からみて自殺と判断されそうな事件であるが、パレス刑事は殺人事件として捜査する。あと半年で人類が滅亡するかもしれないときに、そんな面倒な仕事をしなくてもいいのではと思うが、きっちりとした性格の被害者に報いるようにパレスも粛々と捜査をする。そして真相にたどり着く。

本書の舞台のような極限状態で、人類がどのように振る舞えるかを問われた作品だ。このような状態では群衆が勝手し放題となり秩序なき世界に移りながら最後を迎えそうであるが、まだ落ち着いていららるくらいの聡明さは残っているようだ。きっと作者が人類はこうであってほしいとの願いもあるのかもしれない。殺人の動機も泣かせるものだ。人間の弱さと強さと優しさが出ている。自分だったらどう行動するだろうかと常に考えながら読み進めた。考えすぎると気が重くなるので注意。

本作品は三部作の最初の作品だ。次の作品「カウトダウン・シティ」や三作目の「世界の終わりの七日間」も読んでみたいと思う。人類がどんどん滅亡に向かって時が過ぎるなか、パレスがどのような行動をとるのか楽しみである。
地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
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No.10:
(4pt)

設定はSF的だが、設定以外にSF的要素は一切なく、良質のミステリとして読める

半年後、小惑星が地球に衝突し、人類は滅びる。 そんな背景の中、周囲が自殺だと思われた事件を、1人の刑事が他殺だと判断し、捜査を始める。  この設定だけで、思わず読みたくなる。 設定はSF的だが、設定以外にSF的要素は一切なく、良質のミステリとして読める。
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No.9:
(5pt)

設定がいい。主人公もいい。

小惑星が半年後に衝突する、という地球の一都市。
人々は、あと半年以後の世界を想像できず、世界が終るのにという、厭世観に。
そんな中、刑事になりたてのヘンリー・パレスは自殺と思わしき死体に不自然な事態を発見し、殺人事件として捜査を始める。
アメリカの一地方都市コンコードのまさに一部分しか描かれないのだが、空気感は、世界中の行き詰まっている人々をどこかに感ずる。
設定がいい。
主人公の逡巡と純粋さが際立つ。
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No.8:
(5pt)

滅びゆく世界で光る「小市民的」主人公の尊さ

惑星衝突を半年後にひかえ、恐慌状態に陥りつつある地球。そんな状況下、アメリカの小さな街のハンバーガーショップで首吊り死体が発見される。自殺が流行する街で、他殺を疑うさしたる証拠もない。誰もが自殺と断定するなか、一人の新人刑事が殺人事件ではないかと疑念を持つが…。

 主人公刑事による一人称の語りと聞いて、ハードボイルド要素を期待すると少し肩透かしを食らうでしょう。主人公は堅い信念を持ちつつも「小市民的」人物で、ニヒルなタフガイという典型的ハードボイルドの主人公ではありません。また、ミステリとしても小粒感はいなめません。設定だけ聞くとSFを連想しますが、SF要素はほとんどないので注意が必要です。

 はじめのうちは、頭の回転が速いわけでもなく気弱な主人公に好感が持てないかもしれません。ですが物語が進むうち、多くの人が自暴自棄になっていくなか、自分に与えられた仕事をしっかりと全うする主人公の姿に感銘を受けます。
 冒頭の遺体発見現場に某大手ハンバーガーショップを選ぶことで作品の世界観を説明しているのですが、それがとても自然なことにも作者の技量を感じました。

 しかし何よりも秀逸なのは、絶対に起こる滅亡の日を目前にひかえ、なおかつ、依然として混沌とした無法状態にはならない程度の余裕が残されている、という環境下の心理描写です。「まだ叱られていないけれど、いずれ叱られることがわかっていることがわかっている子ども」(作中より)のような人々の心理が巧みに語られます。
 文明が崩壊し原始的暴力が跋扈する世界を描いたフィクションは数多くありますが、理性に対する信頼がゆっくりと失われていく世界を描いたものは少ないように思います。本書の世界は私たちの社会の延長線上にとらえることができるので、共感と悲哀を覚えることができます。
 また、そのような世界観がきちんとホワイダニット(動機)に結びついています。その点にも作者の抜け目のなさがうかがえます。

 訳文はとても読みやすいです。ただ原文未読なので偉そうなことは言えないのですが、「which(that)+文章」で修飾された名詞を訳すさい、律儀に「which(that)〜」を名詞の前に持ってきて訳しているように見えます。日本語では名詞の前の修飾語が長いと文構造がわかりにくいので、そのあたりはけっこう読んでいてひっかかりました。
地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018782
No.7:
(5pt)

それでも林檎の樹を植えるのか。

あした、たとえ世界が滅びようとも、私は林檎の樹を植えるだろう――。
発語の主については諸説あるけれど、この言葉を胸の内でころがしながら作品を楽しんだ。
自分が林檎栽培農夫であったなら、そのような行動をすることができるだろうか。

マクドナルドの便所で保険会社の社員が死体で発見される。
大方の見立ては自殺だ。だが、たとえ、それが他殺だったからといって、どうだと云うのだ。
半年後には小惑星が地球に激突して全人類は絶滅するのだ。
例外なく。ひとり残らず。平等に。

このような状況下で、自殺説に疑問を抱いたひとりの新米刑事は殺人事件として捜査を開始する。
人々の日常生活のネジは緩み、タガは外れつつある状況だから
当然、捜査は難航する。だけでなく主人公の身にはさまざまな厄災が降りかかる。
満身創痍だ。
その顛末が、刑事による一人称現在完了形の文体で冷静に語られる。

地球滅亡と云う空想科学小説の世界観の枠内で物語は進むが、
これはSFではない。「いやSFだ」と云われれば別段の異議は唱えぬが、
やはりこれは本寸法のハードボイルドの本流に位置する作品だと
おれは小声でつぶやくばかりだ。
地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
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No.6:
(5pt)

懐古的な終末

小惑星マイアの衝突で、半年後には壊滅的被害を受けるとされているアメリカ、ニューハンプシャー州コンコード。刑事に昇進したばかりのヘンリー・パレスはマクドナルドで首を吊っている死体を担当することに。関係者の誰もが、終末に絶望した自殺者であると決めつけるが、パレスは被害者のベルトが他の衣服とはそぐわない高級品であったことに違和感を抱く。避けようのない悲劇を前に、日常生活を放棄し、やりたくてできなかった夢の実現や犯罪行為に手を染める人々のなか、パレスは異様なまでの真面目さで職務を遂行、事件にのめりこんでいく・・・

終末モノのSFに、チャンドラー節のミステリを加えたような小説。SFっぽさ、理屈っぽさはあまり前面に出ておらず、ヒューマンドラマとして秀逸なので、どんな読書傾向の人にも読みやすいのではないかと思います。
読みどころは、懐かしい感じがする未来社会の描写。田舎町コンコードに絶望と頽廃ムードが満ち、便利だったはずの社会が綻び、破綻寸前の様相が、一昔前の刑事小説風文体とマッチして、昭和の時代の推理小説みたいな読後感。携帯電話は通じたり通じなかったり。社会のルールは人員不足で穴だらけなので規則にがんじがらめにならなくても良い。実は、古き良きタイプの刑事が活躍するにはもってこいの舞台なのかも。
個人的な感想としては、謎が謎を呼んだり、とんでもないドンデン返しがあったり、といった驚愕は得られませんでしたが、パレス刑事の人物像が魅力的。20代後半とは思えないほど覇気がなく、仕事に対してのみ、やたら頑固。価値観は理系の男性そのもの、純粋なのか嫌なやつなのか、すれすれなキャラクターが終末のアメリカに似つかわしい、ような気が。「なぜパレスは刑事という職務にこうも拘るのか?」と彼の心理状態を想像してみるのも面白いかも。小惑星マイアに関する見解や天文学的、物理学的数字が正しいのかどうかはサッパリな文系読者ですが、一気に読みました。オススメです。

作者の邦訳はこれが初めて、とのこと。本作は三部作の1作目。続編『カウントダウン・シティ』は11月に発売されたばかり。
リアルな災害についての小説は、読むと気分が暗くなりがち、なのですが、どういうわけだか人類絶滅、地球滅亡モノとなると、非常に爽快に感じられるのが人間心理の不思議さよ。訳文も読みやすいのでさくさく読めますよ。年末年始のストレス解消などに、地球にマイアをぶつけてみるのも一興(?)かも。
地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
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No.5:
(4pt)

破滅する世界で孤軍奮闘する刑事を描いたSF風推理小説

半年後に地球に小惑星が衝突し滅亡すると予測された時期にアメリカのファストフード店で首つり自殺の死体が発見され・・・というお話。
人物造形は申し分ないし、会話や筋の流れもいいし、謎解きも小味ながら堅牢で良いと思いますが、もうちょっとSF的設定と謎解きが密接に絡んだ推理小説になっていれば凄い傑作になっていたのでは、と少し思ってしまいました。まぁこれはこれでよくできていると思いますが。それと、滅亡前の地球の狂乱状態や痴態をもっと詳しく書き込んでもらいたかったです。もっとも三部作の第一作だそうなので、これ一作だけで即断しない方がいいと思いますが・・・。
近未来SF風推理小説の佳作。機会があったらどうぞ。
地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
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No.4:
(5pt)

極限状態を描きだす、設定の妙!

小惑星が衝突する未来が確定している地球。
人類滅亡を半年後にひかえ、ひとびとは「死ぬまでにやりたかったことリスト」を実行に移すため、職場を放棄して半年のモラトリアムを生きている。
自殺者が続出する街で、「もうこの星は滅ぶのに」と周囲の刑事たちに冷笑されながら、自殺と見なされた他殺(らしい)事件を追い続ける若手の刑事が主人公。
このみごとな状況設定が、主人公や被害者らをとりまく極限状態を、「これしかない」形で浮かびあがらせていく。
本当に、本当に面白かった。
続編の刊行も決まっているとのこと。なんとも楽しみなシリーズが開幕したものだ。
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No.3:
(5pt)

設定の無駄遣いのない秀作

あらすじは他の方も書いておられるし、それ以上はネタバレっぽくなるので触れません。

文体は現在完了形を多用するハードボイルド調で、硬派な警察小説の王道を行きます。簡潔でとても読みやすい。
それより何が凄いって、半年後に小惑星が衝突して地球が滅びるかもしれないというSF的状況を、SFっぽさを捨象したうえで使い切っていることです。
設定が単なる小道具でなく、作品の隅々にまで緻密に及んでいる。この状況でなければこの作品は生まれない、というすべてが必然。

警察小説ですから、ストーリーの進行は捜査の進行と並行します。
しかし、終盤、これまでの捜査がひっくりかえってしまう位に話が急転直下。
そして真相を迎えることになりますが、そこでこれまでのすべてが無駄のない伏線に彩られていることに気づきます。
フーダニットとしても素晴らしいし、構成は見事の一言。

久しぶりのポケミスですが、大当たりでした。三部作の第一部とのことですが、心配しなくても続編は翻訳されるでしょう。されなければハヤカワの知見を疑うくらい。
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No.2:
(4pt)

これが、私がずっとやりたいと思ってたこと。

小惑星が地球と衝突して人類とその文明が崩壊しようとしている中ある店のトイレで自殺した男性の死体が発見される。
世界が凄いスピードで崩壊するなか主人公は、男性の死の真相に迫るべく捜査を始める。
正直言って主人公は地味だし、捜査も特別派手に進むわけでもない、でも世界がもうすぐなくなるという理不尽な状態での主人公の
職責を全うするといった信念には好感が持てるし(これには主人公の過去が大きく関係している)世界が崩壊する中、自分の生活を守ろうとする人々の描き方も中々いい、まあすったもんだのなか、犯人は逮捕されるのだが。状況が状況なので、
全然ハッピーエンドにならない。でも世界の終わりとその中をかけまわる刑事の物語としては、凄くおもしろかった。
お願いだから続編は必ず出してちょうだい。
地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018782
No.1:
(4pt)

小惑星と刑事。

これは好きな物語。続編が楽しみだ。

半年後に小惑星が地球に激突し、大半の人類は死滅するという状況の近未来。
人生や歴史がつづいてゆくという「前提」がなくなった時、社会は崩壊しはじめ、人間たちも崩壊してゆく。
自殺者が急増し、警察官はつぎつぎに辞めてゆく。
そこで繰り上げで刑事になった新人が、ある首吊り死体の捜査をはじめる。自殺としか見えないのに。

「ザ・ロード」に代表される「人類絶滅文学」は、小説や映画に多数のバリエーションを生んでいて、70年代にディストピアSFが流行したのにも似ているけど、今回の方がもっと切実だ。
「地上最後の刑事」がユニークなのは、瞑想型のファンタジーかと思わせて、実はとてもオーソドックスな探偵小説、それもフーダニットになっていること。
主人公のどこか頼りなげな若い刑事が、やがて「空からなにか落ちてくるからといって、私は容赦しない」という強い意志をみせるに至る成長小説にもなっていて、それが爽やかな読後感を与えてくれる。

3部作となり、小惑星の接近が進んでいくとのこと。
楽しみです。
地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:地上最後の刑事 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150018782

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