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かげろう忍法帖
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【この小説が収録されている参考書籍】
かげろう忍法帖の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
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風太郎は素晴らしい切れ味を持つアイディアと見事なオチで勝負するタイプだから、本質的に短篇作家だと思う。短篇忍法帖の第一集である本作に収載された短篇7本とエッセイ1本もすべて素晴らしい出来だ。短篇ならではの強烈などんでん返しに、思わず「あっ」と声が出てしまう。 風太郎らしい鋭い切れ味を見せる傑作が「忍者帷子乙五郎」。 料理が主題という意表を突くアイディアがまずあり、中盤で非現実的な忍法が料理と絡めて愉快なエピソードとして紹介される。ところが、これが重要な伏線だったことが、末尾の限りなく凄惨でグロテスクな、しかし非常に美しいシーンの最後の一行でわかる。 文字通りのファイナルストライク。 突然理解できるように仕組んであるので、読者は奈落の底へ突き落されるような衝撃を受ける。その衝撃が奇想天外な忍法にリアリティを与える。 こんな構造を、最大の効果を計算して構築できる作家は、風太郎以外にいない。いたるところ、伏線の先に伏線が張ってあり、創作テクニックの凄まじさが実感できる。 半蔵という名を継ぐことが何を意味するかが語られる「忍者服部半蔵」も傑作。忍法はもちろん出てくるが、それを突き抜けて、ほとんどホラーになっているところが驚異的。 エッセイ「今昔物語の忍者」はよくまとまっていてオチもあり、短篇小説に近い感覚だ。忍術・幻術ファンは必読。 今昔物語の巻20に外術(幻術)の話が出てくる。「馬牛の立てる尻より入りて口より出づなどをすることをぞしける」というのは、いくつかの小説で読んだことのある話の元ネタだろう。さかのぼると漢書に記載されているという。 そこに出てくる「屠人戮馬の術」(手足をバラバラに解体し、あとからつなぎ合わせる術)は、この短篇集の「忍者明智十兵衛」で十兵衛・明智光秀が使う「忍法人蟹」と同じだろう。 風太郎が巻20で発見した、また別の幻術“マラ落とし”の話は最高に愉快。 この全集は全12巻あり、編者の日下三蔵によれば忍法帖短篇80数作をほぼ100%網羅しているとのこと。 「かげろう忍法帖」はオリジナル第一短篇集のタイトルで、本文庫はそれを踏襲しているが、収載作品はオリジナル第二短篇集「野ざらし忍法帖」などとシャッフルしている。これは余計なお世話だ。日下という人は首を傾げるようなことを時々やる人で、何でわざわざ混乱の元を作るのか、不思議。 | ||||
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長編に負けず劣らずクオリティが高いにも関わらず、 入手困難となっていた忍法帖短編集がついにコンプリートされます。 しかも、それだけではなく豪華なおまけつき! いままで未収録であったエッセイ、短編や 書き下ろし絵物語までもが収録予定なのです。一巻であるこの巻は、「忍者 固有名詞」という形態の男性忍者主人公、戦国末期から江戸初期舞台の短編を中心に おさめられています。山風マジックともいえる虚実の融合ぶり、 そしてトリッキーな忍法はやみつきになること間違いなし。 これは買うしかありません、家宝決定です。 | ||||
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本書は「忍者***」と人名をタイトルに持ってきた作品の短編集。 しかし「魔界転生」「甲賀忍法帖」など長編を読みなれた目にはこれらの作品は異様に映る。というのも山田風太郎の長編が忍法の攻防戦を中心とした夢幻的な艶やかささえあるのに対し、本書に登場する彼らは忍法を使うものの一見地味だからだ。しかしやはり風太郎は風太郎である。手段を選ばず目的を達するのが忍者の存在意義であるのに、時として登場人物はあっさりその目的を捨て去ってしまう。 はっきりいって忍者の存在を無意味にしかねない行為すら作中で平気でやってしまう。その当たりの凄みはさすが風太郎だ。私としては収録作品の「忍者明智十兵衛」をすすめる。 最後の数ページで読者は唖然とさせられる。 短編でも山田風太郎の忍法帖はやはりすごい。忍法帖長編の本質があくまで活劇であるとすれば、短編は彼らからすら忘れられた稗史の物語であると思う。 | ||||
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