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忍法忠臣蔵
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【この小説が収録されている参考書籍】
忍法忠臣蔵の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.67pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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忠臣蔵と忍法を結びつけるとしたら、正攻法でいくんだったら赤穂浪士を忍者が助けるとか、討ち入りの裏側で赤穂を吉良の忍者合戦が行われるとか、変化球で四谷怪談を絡める考えそうだけどそうはしないで、上杉側から描くとはさすがの風太郎。 狂言回しに忠義嫌いの忍者を持ってきて、さらには登場人物達に討ち入り、義挙への疑問、批判を述べさせ忠義にもろ手を挙げて賛成の世相を皮肉る。 忍法帖の中でもグロテスク要素がちょっと高め。 「血まみれの腓腸筋、外股筋、内転筋、臀筋の堆積」-へぇ、脚ってそんなにいろんな筋肉があるんだぁ。 あと、寄生虫の名前がずら~っと出てきて勉強になるところがあるけど、写すのが面倒なので割愛。 | ||||
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上杉の国家老、千坂がくの一達を使い色仕掛けを持って赤穂浪士達の内部崩壊(自滅)を企てる。一方、上杉藩主である網憲は上杉子飼いの別の忍びを使い赤穂浪士達をことごとく亡き者にしようと企図する。藩主の意向に逆らう家老千坂の意図とは? 忍者達の奇想天外な秘術も必見。 | ||||
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血盟した赤穂浪士の中から脱落者が何人も出たのは史実だが、その裏にはさる筋が放った忍者の暗躍があった という設定で、12月14日の討ち入りに至る上杉方と大石方の動きを追って、物語が展開する。 コンパクトな章立てで歯切れがよく、筋の展開も忍法バトルも充実した申し分ない出来のAクラス作品、非常に楽しめる長篇忍法帖の第7弾。 なのだが、これは奇想の作家、山田風太郎でなければなしえない、異常な構造を持った小説だ。 冒頭に忍法帖短篇の傑作「忍者帷子(かたびら)乙五郎」を主人公の名前を変えて(帷子乙五郎 → 無明綱太郎)そのまま使い、重要な伏線としている。さらに忍法帖連作短篇集「妖説忠臣蔵」の中の一篇、これも傑作だが、「変化城」の主要部分を長篇の終幕のところでほぼそのまま使っている。つまり、自作の二つの短篇を流用し取り込んで別の一つの長篇を作っているのだ。 こんな作り方をした作家がほかにいただろうか? 奇想と評するのは簡単だが、風太郎の場合、そのレベルは異常だ。なぜなら、この3本の小説をどの順番で読んでも、三つとも楽しめるように作ってあるからだ(さすがに、ある程度の時間を置いてから読んだほうが楽しめるが)。本作も、読者に「なんだ、自作を流用して引き延ばしただけじゃないか」と言わせないだけの工夫が凝らしてある。 既存の自作を取り込みつつ、まったく新しい別の物語を創り上げる・・・ どうすればこんなことが可能なのか、想像を絶する。風太郎はまったくとんでもない作家である。 | ||||
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まだ、読んだことがなかったので購入しました。風太郎ファンは買うべし。 | ||||
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本作の、2つの忍者のグループがお互いの術を駆使して戦うという構図は、他の忍法帖シリーズと変わらないおなじみのものである。 しかし、無明綱太郎という強力な第三者を中心に動く本作では、「甲賀忍法帖」のような壮絶な対決はない。 だから、忍者が駆使する術のエログロと面白さは相変わらずだが、個々の忍者、特に上杉家当主に雇われた忍者グループの存在感は非常に薄い。 本書でも、緻密な時代考証と該博な医学的知識に裏打ちされた話の面白さは抜群である。 とはいえ、「柳生忍法帖」「甲賀忍法帖」「魔界転生」のようなカタルシスやドライブ感を期待する向きには、物足りなさが残るだろう。 こうしたエンターテインメントの代わりに前面に出ているのが、日本人好みの「忠義」という価値観への強烈なアンチテーゼである。 「忠義」という錦の御旗を揚げてそれに伴う他人の犠牲を顧みない身勝手さ、さらに「忠義」の仮面に隠れた人間の欺瞞を、本作ではこれでもかとばかりに描いている。 忠臣蔵という、多くの日本人に愛されている物語の骨格を変えずにここまで違う作品に変質させるのは、山田風太郎以外には到底不可能だろう。 ただ、こうした作風故に、主人公を含めた各登場人物に感情移入するのが難しく、他の山田作品と比べてどこか物語の世界に入りづらい。 おかげで、奇想天外な物語の面白さやメッセージ性の強さは評価できるが、他の山田作品の名作にある読後感の爽快さが本作にはない。 その点で☆を1つ減点した。 | ||||
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主人公、無明網太郎の存在感は薄いが無茶苦茶強い! おそらく、山田風太郎の忍法帖シリーズの中でも、五指に入るほどの強さを持っている。 だが、そんな彼の存在感が薄いのも、忠臣蔵の話自体を問う物語だからだ。 物語の途中でも、大石内蔵助自身が主君の先を考えない殿中沙汰を批判するシーンなどは唖然とする。 忠臣蔵の話でありながら、忠義を美徳とせず、忠義に否定的に話が進むのだ。 そして、忠臣蔵の忍法帖なら、赤穂浪士対吉良家の戦いになるかと思いきや、吉良上野介の息子に当たる上杉家の内部抗争という設定も面白い。 物語後半の、最後のくノ一が仕掛ける赤穂浪士達への討ち入りを萎えさせる作戦は思わず読んでいて、「あ、赤穂浪士達は討ち入りを辞めるだろうな」と、歴史を覆すほどの説得力を持って進むのだが、それをひっくり返したのは……、とにかくこのシーンこそが、この物語の傑作にした最高のシーンであり、やりきれないが説得力のあるシーンだ。 余談だが、この物語に出てくる能登組十人衆の、浪打丈之進。 彼の忍法は、忍法帖シリーズ最も気色悪いので、この本を読むときに食事を取る事は辞めた方がいいと忠告しておきます。(いや、マジで) | ||||
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忠臣蔵に忍法を持ってきた大胆な発想に「あっ」と言わされます。が、さらに驚くのが赤穂浪士抹殺を図る上杉方の忍者(ちなみに当時の上杉の主君は吉良上野介の息子)と、赤穂浪士を堕落させて自主的に討ち入りを諦めさせるくの一の争い、そして主人公はその審判役(?)という複雑な設定です。ただ、この設定故、中盤は忍者とくの一、赤穂浪士が目立ち、主人公の存在感がどうも薄いのも事実。 この作品で印象に残るのは、作者の忠臣蔵への公平な視点です。単純に赤穂浪士を正義とし、吉良を悪としていないのは勿論、忠義の影に隠れた犠牲についても掘り起こし、大石内蔵助が強硬派の浪士に困惑する姿を描くなど、さすが山田風太郎です。忠臣蔵を描いた物語に、忠義が嫌いという主人公を据えた対比も見事だと思います。 | ||||
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~美談として語られている『忠臣蔵』が、この一冊で180度捉え方が変わってしまいます。 男たちの身勝手な忠義、そしてその忠義さえも大義名分で塗り固められていると知った時、私は日本という国さえ信じられなくなってしまいました。 本作はエロティックな忍法が多く登場しますが、それを通り越した余りの凄まじさに最初は呆気にとられ、終いには美しさ、切な~~さまで感じてしまうのだから、あらためて作者の手腕に頭を下げずにはいられません。~ | ||||
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『忠臣蔵』で忍法帖といったら誰もが吉良対浅野という図式を考えるが、そうではなく舞台を上杉家に持ってきたところがすごい。 同人数での星取り合戦のごとく進められる他の忍法帖とは一線を画していて、その構造は複雑。 さらにそこに忠義が嫌いという無明綱太郎という忍者を主人公に据える。この配置の見事さ、しかもこれしかないといったストーリー展開で話はラストの場面まで一気に進んでいく。 夢のような、時が止まったようなラストは深い余韻を残す。 この小説の完成度は限りなく高く、山田風太郎の奇想は果てしなく深い。 ああ、私はすごい作家に出会ってしまったのだなと感慨にふけるのでした。 | ||||
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