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死神の浮力
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死神の浮力の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.97pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全102件 81~100 5/6ページ
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伊坂幸太郎さん人気作家なのですが、私は合わないようです。 でも、唯一好きなのが「死神の精度」。 なので、期待して読みました。 「死神の精度」のような気のきいた感覚とはちょっと違って、途中冗長に感じる時もありましたが、結末にやられました。 すっごい! | ||||
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伊坂氏の死神シリーズが好きで購入しました。長編なので読み応えはありましたが、短編で後々の話にリンクする方が「千葉」の色々な顔が見えるので面白いかと。続編にも期待します。 | ||||
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前作の死神の精度に続きずっとファンでありたいと思わせてくれる作品です。 | ||||
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『死神の精度』の死神・千葉の、なんだかゆかいな7日間を描く、 ボケあり、笑いあり、ツッコミなしの長編小説。 今回、千葉が担当することになったのは、 とある事情を抱えた、小説家夫婦。 小説家夫婦は、娘をサイコパスに殺されており、 犯人への復讐に燃えて、ピリピリした空気。 ところが、 千葉がとぼけた会話で、彼らと絡みだすと、 暗い雰囲気は一変、なぜか明るい雰囲気へ。 (天気は、雨だけど) 物語も、なんだかおかしな方向へと進んでいく。 ミュージックに気を取られた千葉のせいで 犯人を目の前でとり逃がしたり、 やはり雨の中、ママチャリに二人乗りして、 犯人の乗るライトバンを追いかけたり。 ラストは、伊坂さんらしい、 和やかなエンディングになっており、 すっきりした読後感を味わえる。 | ||||
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「死神の精度」を読んだ人は分かると思うが、ある気象的なエピソードのため、 こちらの「死神の浮力」の方が時系列的には前の話であることが分かる。 精度を読んでいない人は、浮力→精度の順で読むのが絶対的におすすめである。 この浮力によって、極めて素晴らしい精度のラストが更に際立つだろう。 | ||||
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『死神の精度』で楽しませてもらったので、こちらも期待して購入、短編集だった前作とは異なり長編ものだが、読み始めて途中で区切ることができず、結局夜中になるまで読み続けてしまった。ストーリー展開はとても面白いし、まじめに「仕事」をしているのに、どこかズレている死神・千葉の言動に笑いを誘われたりしながら、本筋のストーリーにぐいぐい引き込まれていった。ストーリーの骨格は、子どもの誘拐殺人を犯した犯人に対して、子どもの両親が復讐を行おうとし、それに千葉が絡むというものだから、結構重い話なのだが、あちこちにちりばめられたユーモアがある意味での潤滑油ともなって、ストーリーにひきつけられていく感じが心地よかった。それに加えて、登場人物が「死」について交わす会話が、普段考えずに過ごしている「死」の問題に気づく大事なきっかけにもなったとも感じた。だから、☆五つでもよかったのだが・・・。 すでに別のレビュアーが書いていることともかぶるが、「ああ面白かった」とページを閉じたところで、生きた犯人像が浮かんでこない感じが残ったのは少しばかり残念だった。犯人は、良心を持たないサイコパスとして描かれているが、良心の働きがなくとも内面はあるはずだろう。もちろん、描き方として、得体の知れなさをベースにして、人を苦しめもてあそぶことにのみ動機づけられて犯罪を犯すような人物として造形するということもありなのだろうが、やはり納得のいかなさを感じてしまった。自分としては、人間の内面がどう育つのかに興味があるため、こうした感じ方になったのだろうし、作品の出来とはひょっとしたら関係ないのかもしれないのだけれど。 | ||||
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いつものように、伊坂さんの本は、デフォルト購入。 1章ごと(1日ごと)に、語る人が、山野辺氏と千葉に変わりながら、話が進んでいきます。小説としては、このあたりが1つのテクニックです。山野辺氏との差がでる千葉の語り部分が面白いです。一審で無罪になった「サイコパス」本城に対して、山野辺夫妻が復讐をするというプロットで話が進みます。最初のフリも、ほぼ最後に回収されていて、いいです。 「ゴールデンスランバー」までを伊坂氏第1期とするらしいですが、そのあとの一時期の不調を乗り越えて、マリア・ビートル、ガソリン生活、本書とやっと、伊坂さんは、戻ったという実感です。最近の3作に共通していると思うのが、敵役というか、悪役のキャラが、非常に人間として、いやな、悪意のあるやつになっています。1期までは、悪役みたいなものがなかったりした記憶があるので、このあたりの悪意の描き方が変わってきたのではと思います(記憶だけ書いています)。 犯人がPCデータの消去を念入りにする説明は、元SEだなと思います。 最後の千葉の言葉まで、読むとしんみりです。 今年の読んだ小説では、一番のお勧めです。ただ、できれば、「死神の精度」を同時に読んだ方がよいと思います。 | ||||
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娘を殺された男の一人称から始まる冒頭の重さが、千葉のずれた発言で少しずつ浮き上がっていく。 暗い話のはずなのについつい笑ってしまいながら、ページをめくらせる絶妙なリミット設定とおなじみの見事な伏線回収に脱帽しつつ一気読み。 「先に行って、怖くないことを確かめてくるよ」 このセリフでは、不覚にも少し泣いてしまった。 重たいテーマを正面から扱いながら、きちんと「浮力が働いている」話にできるのは、本当に伊坂さんのすごさだと思う。 (−☆1は、千葉への突っ込みが子どもに死なれた母親にしては軽すぎるような気がしてなかなか納得できなかったから。だけど、この話はこれでいいような気もする) | ||||
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48時間程、仕事の合間ながらあっという間に読み終わりました。 もっとこの世界にゆっくりと浸っていたい、という思いの反面、展開に引っ張られ夢中でページをめくっていました。 まず、名作と感じずにはいられなかったバラエティ豊富なサスペンスでありファンタジーなキャラクターが痛快な連作短編集「死神の精度」 その後、千葉という主人公が登場すると宣伝文句の添えられた「魔王」 しかし「魔王」ではほとんど千葉の活躍はなく、申し訳なさ程度に登場しただけであり「千葉ファン」の自分としてはちょっとがっかりしていたらなんと長編「死神の浮力」の発売。2013-7/30 「精度」では275ページあっとものが「浮力」では436ページとその厚みにも期待せずにはいられず読み出したらもう止まりませんでした。これは「精度」をもう一度読み直すしかない。 あらすじとしては(死神の設定については省略)、娘を殺された山野辺夫妻と容疑者である本城と死神の千葉の三人が主な登場人物である「復讐劇」 死神の設定を省略したのにも関わらず、まず死神ネタの配置の仕方が見事だと言っておきます。ここはファンタジーとして楽しむもの。 「参勤交代」や「ロミオとジュリエット」など普通の日本人としてこの物語にのめり込んでいた俺は、中盤まではニヤニヤしっぱなし。もちろん本筋はダークな復讐劇ではありますが、それとは別物として割り切れるのが死神シリーズのすごいところ。 そしてサスペンス苦手な俺でも分かりやすく単純明快にニヤッとしてしまうように爽快に拾われていく伏線と淡々と伝わってくる緊迫した空気。判り辛さはほとんどありません。犯人像などに関してなどは短編なら割愛出来た登場人物の掘り下げ部分も長編となると少々置いていかれる感じはあったものの醍醐味として味わえるものであると俺は思いました。 死神に生き方を教わるというのもおかしな話しかもしれないけれどある種の啓発としても心に残るのが死神シリーズの良さだと思っています。 単純ながら迷った時は千葉の仕事の仕方を思い出そうと思うくらいです。心がグラっと来たときは千葉です。 なんだかレビューでないようなレビューになっていますがまだ発売して一ヶ月ちょっとなのでこれから読む人もいるだろうとネタバレにならないように感想を書くのが大変です。俺としては最後の最後まで目を離してほしくないので、あまりレビューなんかは見ないことをおすすめします。というか死神シリーズ童貞処女の方達は、まずは「死神の精度」を手に取り大体の設定と世界観と千葉の魅力をグッと感じ取ってから、大いに「死神の浮力」で脳内旅行を満喫するといいですよ。子を持つ親に、親を持つ子に見てほしい「復讐劇」自分の向く方向に迷ってしまっている人間に感じてほしい「死神の千葉」 ネタバレありきのレビューならこの5倍の量の文章になるところでしたが、そうもならないことにある意味助かりました。 名作「死神の浮力」是非手にとってみてください。「精度」から「浮力」のコンボで読めば三日は退屈しません。おすすめです。 | ||||
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伊坂幸太郎の作品に現実感(リアル)…生活感と言い換えても良いが を求めてはいけない 寓話的なもの“お話”なのだ 伝記でもなければ ルポタージュでもない フィクション 完全なるフィクションなのだ 面白いか 面白くないか 『〇〇の部分は 普通ではありえないので残念』とか 『登場人物の〇〇の人物像があまりに浅く、描写がされてなくて不満』とか 感想に書く人は 伊坂作品の楽しみ方がわかってないみたいで 可哀相だなぁ… ジャックと豆の木 を読んで あんなに豆が育つ訳がない!興ざめです! って言ったり 浅見光彦シリーズを読んで 一人のルポライターの身の回りで あんなに殺人が起きますか? ありえません!! と言い出したり 映画の寅さんを観て あんな毎回 毎回 片想いばっかでフられるなんてオカシイ!! と怒るのと近くて ナンセンスだと思う 私は この死神シリーズ初の長編も 細かな伏線や 洒落た会話、スカッとする敵役の結末 ホロッとする ラストの描写etc… 大いに楽しめました♪ やっぱ 私は伊坂幸太郎の作る“お話”が大好きみたい(*'艸`*)シアワセ | ||||
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小説。死神の浮力(伊坂幸太郎・文芸春秋・1650円+消費税)。 「死神の精度」の続編。伊坂小説は僕の中で3種類に大きく分けていて、1つは明るく楽しい、1つは暗くて話がよくわからない(読み手の力量次第か)、1つは「その中間」。 今回の小説は「その中間」。ストーリーはある出来事に対する復讐(被害者→加害者)へのプロセスを描いたもので、被害者への共感を伴いつつ読み進める流れ。 ただし、話は憎悪復讐系のダークなニュアンスに染まりきらない。ブレンドされるのは「笑い」。状況が真剣であればあるほど、本人に笑わせる自覚が微塵もないときであるほど、会話の解釈ずれで起きる笑いの威力にはすさまじいものがある(漫才でいうボケとツッコミもこの構造ですね)。 その「ずれ」の源が主人公。緊張と弛緩、意外かつ軽快に進む展開、会話のリアル感(平成の人物像を口調で感じさせる力量のすごさ)、などなど、伊坂さんならではの味がしみじみ。 | ||||
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「死神の精度」は、短編集でしたが、この「死神の浮力」は、長編です。 憎らしいほど、運の良い悪役には、むっとします。 娘を奪われた夫婦には、おのずと肩入れしてしまいます。 かなり、戯曲的な話なので、ぜひ、ドラマ化、もしくは、舞台化してほしいと思います。 千葉氏が、いい味出してますよね。 あの、無関心そうな、でも、きちんと観察している感じ、仕事人って感じでいいです。 監査役の死神さんたちの名前が県名なのが、また、いいですね。 ぜひ、ほかの死神さんたちも、新たなキャラで登場してほしいものです。 | ||||
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前作同様ラストにやられました。 数多の辛い出来事を一瞬にして浄化するような清々しさを感じましたね。 あの死神にあのセリフはずるい。無垢で無自覚な最大級のツンデレじゃないか。 | ||||
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前作未読の状態で読みました。 そのためだと思いますが、手袋をしていない状態で千葉の手に触れると何故気絶するのか?とか、何故音楽をあれほど聴きたがるのか?など一部意味が分からないところはあるものの最後まで非常に楽しく読めました。 この作品の魅力は主人公である死神・千葉のキャラクターの受け取り方で大きく変わると思います。参勤交代の話をはじめ、至って真面目に話しているにも関わらず周りからはギャグ扱いされ憤慨する描写や、全く危機意識がない(死神だから死なないし苦痛もないので当然ですが)にも関わらずポロッともらした一言で結果的に周囲の人間を救ってしまったり、その重要性をあまり意識しないまま人間離れした(死神だから当たり前ですが)身体能力を発揮しピンチを切り抜けていく姿など、どちらかというと死神というより非好戦的なターミネーターという印象で、稀有な魅力に溢れたキャラクターだと思います。 物語は章(日)ごとに千葉と、千葉のターゲットである山野辺との視点が交互に綴られていきますが、やはり千葉視点の章が面白いです。 最後まで楽しく読む事が出来たとはいうもののやや難点もあり、山野辺視点の章はいまひとつ臨場感にかけ作品世界への没頭を妨げています。これは恐らく殺された娘の日常的な描写や魅力のクローズアップと、犯人である本城の悪質さや許し難さを演出する部分が足りない事が原因ではないかと思います。 山野辺の章は愛する娘を無残に殺害された両親が、その殺害犯である本城に復讐する事だけを目的に行動するパートであり、ここで演出すべきは 1)殺された娘の愛らしさ 2)娘を失った両親の哀しみ 3)司法の手に委ねるのでなく、自ら手を下す事を決意するまでの経緯とその丁寧な描写 4)両親の想いをあざ笑うがの如く、山野辺夫妻を翻弄し追い詰める本城の脅威 の4つのポイントだと思いますが、残念ながらその4つのポイントのうち1)〜3)に関しては作中での描写が非常にあっさり(娘が殺されるシーンの直接的な描写すらない)としており、両親の哀しみや怒りという感情にシンクロ出来ないまま物語が進行してしまうので非常にもったいない限りです。更に4)のポイントを描く上で不可欠な「本城という人間の姿をした悪魔」の描写も少なく、倒したくても倒せない強大な悪という本来の位置づけまで持っていけてません。キャラの優秀さを演出しようと思ったら、それと比較する為のレベルの低い存在が必要ですが、この作品ではその立ち位置に本城を追い詰めようとする山野辺を持ってきてしまっており、結果的に本城が優秀というより山野辺が馬鹿にしか見えないという状況になってしまっているのも難点。そのため「何でそうなんだよ!」とついつい山野辺に突っ込まざるを得ず、作家というどちらかというと知的なイメージのキャラにはそぐわない見せ方になってしまったのが残念です。 しかし、そういった点を差し引いても尚、7日目の山野辺の最後のセリフ、そしてエピローグにおける千葉の最後のセリフに込められた想いとか、それがもたらす余韻は非常に心地よく素晴らしい読後感を生み出してくれており、読んで良かったと思える一作でした。 | ||||
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娘を無残に殺された夫婦。 犯人は人の心を持たない青年。 彼は夫婦の怨念をあざ笑うだけでなく、 彼らをさらに苦しめることに 無上の喜びを見出しているようで・・・・・・ 読んでいてとてもつらかったです。 いつもならあっという間に読み終えるところ、 この物語は心で声を出しながら、 話すときと同じスピードになっていました。 章(1日)ごとに、死神の千葉と 娘を殺された主人公の山野辺の一人称で 交互に語られるためか、 千葉のパートではとぼけた受け答えにクスリとしつつも シーンによってはいら立ちを覚え、 山野辺のパートでは無力感と使命感のないまぜになった モノローグに息が詰まるようでした。 7日間は決して死なないという安堵があったにもかかわらず、 5日目の後半に明らかになった事実に愕然とし、 その後はページをめくる手を中断できず。 伊坂さんがこれまでに描いてきた悪意は、 オーデュボンの城山といいマリアビートルの王子といい 最後はスパッとフェイドアウトさせられましたが、 これまで以上に深い闇に対し、 今回は結末をちゃんと描くのか。 そんな不安に駆られながら最後まで読みましたが、 本を閉じたいまは、平穏な気持ちになっています。 そして、途中冗長に感じ、正直焦れた山野辺と父親との エピソードや死についてのさまざまな表現を、 もう一度ゆっくり読み返してみようと思えています。 急いで読んではいけない話。 「ゴールデンスランバー」のようでも、 「バイバイ、ブラックバード」のようでもあり、 なんとも味わい深い物語でした。 | ||||
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「死神」が主人公となると、こういうストーリーになるのか、と、妙に納得してしまいました。人間の運命が、こう定めれているのかもしれない、と、問いかけられているようにも思いました。 宗教的、哲学的な色合いも強い作品だと思います。 主人公の死神・千葉は、小説家の「山野辺」を「担当」することになります。 (つまり、山野辺の運命に、死神が舞い降りたことになります) 山野辺は、彼のファンを名乗る近所の男、本城に娘を殺されたという過去を持ちます。その本城が無罪釈放とされてしまうことになり、山野辺は夫婦で本城への復讐を企てます。 山野辺を担当する千葉は、本城への復讐に、行動を共にすることになります。 対して、本城は、山野辺からの復讐を予見し、返り討ちを企みますが。。。彼自身にも死神・香川が「担当」としてつきまとうのです。 殺人事件の遺族夫婦の夫と、加害者の両方に死神が。。。生き延び、また、命を終えるのはどちらなのか。。。読み手としては、山野辺に肩入れをしてしまいますが、果たして、彼らがそれぞれどのような運命を迎えるのか、非常に読ませます。 死神「千葉」のキャラクターは非常に特異ですが、それでいて、大変魅力的です。 普通の人間にとっての一生は、千葉にとっては一瞬の出来事でしかありません。山野辺夫妻は本城への復讐に怨念を燃やしますが、千葉は死神としての役割を果たすため、彼らとは淡々接します。 この山野辺夫妻と死神・千葉の振る舞いのギャップがストーリの魅力を引き立てます。そして、千葉が死神として備えている超常的な能力が、結果として山野辺夫妻の復讐の力添えとなっていくことも、大きな読み応えとなるところです。 山野辺夫婦と死神・千葉の会話がストーリーに味わいを添えます。一見かみ合わないようでいて、文芸に秀でる小説家と、幾代にもわたって人の最後を見届けてきた死神との会話だけに、非常に奥深い意味合いを滲ませていると思います。 死神に付きまとわれることになった人間にもたらされる宿命はいかなるものか、謎解きやサスペンス作品とは、異なる別種の緊迫感を感じながら楽しむことができたと思います。 読み終えて、「人間はいつか死ぬ」ことの寂寥感を覚えつつ、今、普通に生きていられることのありがたさをしみじみと実感しました。 | ||||
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伊坂さんは東日本大震災以降、少し変わったように感じます。 作品の根底に「明るさ」をより感じるようになった気がします。 この小説の設定は、これ以上ないくらい、哀しいものになっています。 それでも、読み終わったときに、心があたたかくなります。 それは死神千葉の、滑稽なまでに真面目な言動によって、より一層深まります。 | ||||
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まさかの「死神」続編!楽しみにしてました。 愛娘を殺された作家・山野辺遼とその妻が犯人を追い、その犯人の本城は知能が高くシッポを掴ませない冷酷なサイコパス…が、そこに任務を遂行すべく千葉さんが絡み、どこか可笑しい言動でクスリとさせてくれます。 (のっけから「参勤交代」を長々と話しだすんだからニヤニヤしてしまいました。前作でも「年貢制度がまだあるのか?」などトンデモなことを言っていたと思いますが、本作はもっと全開です) 山野辺の敵討ちは成功するのか、山野辺は生きるか死ぬか、本城はまんまと逃げるのか、と胸中穏やかで無かったですが、読後は不思議に穏やかな気持ちになりました。 「映画でも本でも、彼らのその後を想像できる話って良いなぁ」と常々思うのですが、これもそんな話でした。私も「死神の精度」再読しようと思います。 | ||||
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死神の精度が好きだったので凄く良かったです! ただ、前作を読んでない人にはちょっと不親切かも。 なぜかというと、主人公(千葉さん)の紹介とか、死神の仕事がどんなもの(「可」「見送り」とか)か、雨が降るとか音楽好きみたいな基本設定の説明がほぼないからです。 読みながら「そういやこういう設定あったな」とか思い出してワクワクしたけど、読んでない人は、ん?ってなるような気が。。。 というわけで、前作のファンとして星5つです。 ノリはあんまり変わらないので、前作を読んだ人は前作の評価とそのままになると思います。 読んでない人は評価辛くなるんじゃないかなぁ。 | ||||
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一年前、小説家・山野辺遼の娘である菜摘が殺された。そして今、容疑者には無罪判決が下った。容疑者逮捕に至るまでの数々の有益な証拠は、裁判が始まった途端に次々と翻った。その不自然な現象の裏には、ある人物の大いなる決意が込められていた。無罪判決を受けて、山野辺宅にマスコミが大挙として押し寄せるなか、一人の男が現れた。その男は「千葉」と名乗った。というあらすじです。 これまでの伊坂幸太郎さんの著作は全て読んでいて、本書の発売が決定した際には脱臼しそうになる程嬉しかった記憶があります。あの死神・千葉の物語をまた読むことが出来るという感動に打ち震えていました。その震えはやがてゆっくりと止まりました。本書の発売日に脱兎の如く書店に馳せ参じ、脱走兵の勢いで自宅に戻り、一心不乱に読み耽りました。本当に不躾な表現ですが、「伊坂さんも大人になったなぁ」という感慨が起こりました。がっしりと地面に根を下ろして、物語の浮沈による揺れを最小限に抑え込むような、心地よい「平常心」をもって安心して読み進めることが出来ました。 「大人になったなぁ」と感じた要因としては、自らの娘(小学生)を殺害された山野辺夫妻の、憤り、詠嘆、絶望が克明かつ丁寧に描かれているところです。私は20代前半で独身なのですが、この物語に描かれている、子を持つ親の心理・行動には、すんなりと同調することが出来ました。娘が殺害されてからの一年間、感情そのものが消滅したと思いきや、ふとした瞬間に娘の「生」を感じてしまった時に滂沱する様子には、胸が締め付けられる思いでした。 本書の容疑者は、サイコパスであるとされています。確率としては、25人に1人いる「冷淡な脳を持つ人間」です。「あいつは〜だから、〜だ」と、ある定義の中にその対象を押しこめて、その枠内だけで判断することは非常に危険です。しかし、そう判断せざるを得ない程の人間が現実の世界にも一定数存在することは、厳然たる事実です。そのような「通じない」相手になんらかの危害を加えられた場合にどうするのか、本書を通して自らが考えなければならないことです。 余談ですが、死神・千葉の名前の由来は単なる地名の他に、「千」年以上生きていることも含まれていると思います。「葉」はなんでしょうかねぇ。う〜ん、葉っぱを忌み嫌っているとかそんなところでしょうか。 作品の中でとりわけ印象に残ったセリフは、「幸せになるためには、死については考えちゃいけないんです」というものです。確かに、死について長時間考えていると鬱々としてきます。私は就寝前によく、死について考えています。世人が羊の数を数えて眠りにつこうとする段に、私は死神の持つ、鎌の数をひたすらにそして冷静に数えています。一カマ、二カマ・・・といった塩梅です。是非に。 話は戻りますが、人間は自由な時間をなるべく少なくして、あれやこれや考える時間を減らした方が良いのでしょう。小説家の場合、芥川龍之介は「ぼんやりした不安」で自殺していますし、太宰治の場合は自殺がライフワークでした。この二人に共通する点は、「自由業であること」と「幾多の名作を残した天才作家」であることです。一見、時間を自由に使える身分であり、多くの人に評価され、承認欲が満たされている状態というのは、人間が幸福を感じる際に大きなウエイトを占めていると思いますが、二人は自らの意思で命を絶つことを選びました。他人が思いを巡らせても結句、当人達にしかわからないものです。 物語の後半に、山野辺遼の父親が、小学生の山野辺遼のすこやかな寝顔を見て、「あぁ、この子も必ず死ぬんだ」と思い、得も言われぬ恐怖に駆られるという場面があります。「産む」ということは、「殺す」ということでもあります。一方的に生命を与えて、自然のままにその生命を終結させます。そこまで明確な思いを山野辺遼の父親が意識したかどうかはわかりませんが、一つの生命を現出させることに加担した人間として、不安感、背徳感に苛まれたことは確かです。まぁ、あまり深く考えこまないほうがいいのでしょう。幸せになりたいですし。私の場合は小説を読むことが最上の幸せです(恥)。 長々と書いてきましたが、伊坂幸太郎さんは「逃げない」作家だと思います。今作も、人間が生きていく上であやふやなままにしておきたいものに対して、真摯に捉え、丁寧に描き切っています。著者の作品は生涯、読み続けることでしょう。 追記 それにしても作家には映画好きが多いですね。本作もいくつかの映画について触れています。映画は殆ど見ていないので、勝手に想像して補っています。私事ですが、「ポニョ」を最後に、それ以降全く観ていません。ジブリの宣伝ではないので、あしからず。風立ちぬ。 | ||||
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