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(短編集)

嗤う伊右衛門



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嗤う伊右衛門の評価: 4.48/5点 レビュー 89件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.48pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全89件 21~40 2/5ページ
No.69:
(5pt)

夜の読書にオススメ。

非常に難解な作品です。京極夏彦氏の作品は大好きでほとんど読んでますが、この作品ほど読み直した作品はない。でも読む度にズルズルと深淵に引き摺り込まれます。私のなかでは鬱小説ランキング断トツ一位です...気分が落ちているときは読んじゃダメ。でも好きなんですよね。特にお岩様が。まっすぐに生きすぎてて不器用なとことか。離別されて貧しくても提灯を作って生き生き自活してるとことか。しかし、敢えてお岩様に話さなくていいことを話して怒涛のような悲劇が。又市さんが「奴の舌先三寸で生死に決まっちまうこともあるんです」と別の作品で言ってたけど、言葉って本当に怖いと思いました。何気なく発した言葉で人は壊れる。迷う。死ぬ。もちろん、その逆もあるんだろうけれど...。気持ちがすれ違うのに大したきっかけなんて要らないんでしょう。いろんな意味で恐い物語なのです。余談ですが、葛飾北斎の表紙でジャケット買いしちゃいました!中公文庫さん、センスいい〜。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.68:
(4pt)

悲しい愛

正直高尚すぎていまいち理解できない言動が多く完璧に作品を理解したとは言いがたいが
まあ何となく雰囲気は楽しめた
ただ盛り上がってくるのは後半からで、主役がコロコロ変わることもありやや退屈
文体が独特なこともありやや人を選ぶので試し読みしてから買うほうがいいかもしれない
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.67:
(2pt)

ゲンナリしました

好みが分かれると思いますが
余りにも、おどろおどろしくて
不快感が残る作品でした。

耐えながら最後まで読み切りましたが
私にとっては娯楽になりませんでした。

ゴメンなさい、、、。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.66:
(5pt)

一つの愛が迎えた、世にも悲惨で幸福な結末

余にも名高い『四谷怪談』を京極夏彦が新しい解釈でもって描いた 悲しくも美しい名作。
『巷説百物語』の又市が出ているという理由で手にとったのだが、 思わぬ拾い物をした。

南北の『四谷怪談』のインパクトが強かったせいか、 お岩と伊右衛門が不器用ながらも
互いを大切に想っていたという設定には良い意味で裏切られた。
また、お岩に毒を盛った人物の正体について明言はされていないが、
きちんと読むと所々に伏線を張っているのが分かるので、
この辺りはさすが京極夏彦だと、思わず感心してしまった。

ただし、お岩と伊右衛門が互いのどこに惹かれたのかについて深い描写がなく、
恋愛部分の心情表現の掘り下げがいささか足りていないが残念である。

それでも、あまりにも悲惨で幸福な結末には、涙せずにはいられない。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.65:
(5pt)

歪んだ愛

原作の四谷怪談の予備知識は殆ど無い状態で本作を読みました。
どの登場人物も歪んだ愛情を持っているが故にすれ違いが起きていると感じます。
互いを愛するがゆえにうまくいかない夫婦の愛、現実逃避のための愛、恐ろしい性の為に愛が持てないという男、妹への愛等、様々な視点から描かれています。
これらが絡まり儚い物語を成しており、只の怪談や恋愛小説とは違う仕上がりになっており、一読の価値はあると感じました。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.64:
(5pt)

人間

京極夏彦の小説を最近、何冊か読んだ。

この小説を含め、その全てに共通していると感じた点は、京極氏は人間の恐ろしさを愛情を持って描かれているということである。
結果、どんな凄惨な顛末にも、一筋の光を読了した者の心に与えてくれる。
この作品もそうだ。 あらすじをなぞれば、登場人物で報われた人間など誰もいないだろう。
しかし、人間の愛しさ、儚さ、強さ。
読み終えた私の気持ちに強く残るのは、そういった人間といった生き物を肯的に捉える気持ちばかりである。
理想を云えば、喜兵衛を、もう少し掘り下げていただきたかったか。 だが、読んで良かったと思える作品だった。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.63:
(5pt)

怪談を芸術に昇華させる京極夏彦の魔術

もはや大作家と言える京極先生。数々の賞を受賞され「嗤う伊右衛門」も泉鏡花文学賞を受賞しています。はては直木賞に二度ノミネートされたあと落選し、五木寛之氏をして「直木賞になじまない、さりとて芥川賞の枠にも入らない、というところが京極夏彦という作家の栄光と言えるのではあるまいか」という名言をはかせ、賞の範疇も超えてしまった現代最高のストーリーテラーの一人です(のちに直木賞を受賞した時には京極さんの力量よりも直木賞のふがいなさを印象づけてしまったように思います)。

京極堂シリーズ(後で紹介します)でミステリー作家としての地位を不動の物としたわけですが、
この「嗤う伊右衛門」を読んだ時には「こんな事もできてしまうのか。。」と絶句しました。

とにかくせつない物語です。そして恋愛とは本来このように美しいものなのかなと考えさせられる
一冊です。

悲しみの中で笑う(嗤う)事は日本人の美徳であると、かつてラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が
言っていましたがそんな日本人的な情緒にしんみりと響く恋愛小説の傑作だと思います。


嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.62:
(5pt)

魑魅魍魎よりも寧ろ人間の方が恐ろしいのだ

まず、初めての京極作品でしたので、当て字や昔言葉に戸惑いました。ですが章ごとに主人公が違い、様々な視点での展開を楽しめたので、さほど難読ではありませんでした。
そしてなにより、驚愕したのは物語りもさる事ながら、【文章がページを跨がない】と言う点でした。これは言われてみなくては解らないような些細な事のように思えますが、これも作者の拘りらしいのです。読みやすく感じたのはそういった文章構成技法のお陰かと物凄く感心しました。嘘だと思うならページを捲って確かめてみてください。そして他の本と比べてみてください。他の本は文章がページを跨ぎまくりですから。
さて内容ですが、言わずと知れた四谷怪談のお岩と伊右衛門の怪談話のリメイクです。私の浅い知識では、オリジナルの方は伊右衛門に殺されたお岩が、祟り、化けて出る。と言うまるっきりの怪談です。ですがこれは、魑魅魍魎、化け物の類は出ず、それらのおぞましさではなく、人間のおぞましさや、それぞれの感情を顕著に描き、寧ろ人間の方が化け物なのだと言っているようです。また、その中で翻弄される伊右衛門とお岩の愛、まさに純愛の物語です。伊右衛門は生真面目を絵に描いたような優しい男で、お岩は顔が崩れてしまっても尚、凛とした武家の娘です。
最後の場面に至るまでは理解できるのですが、お岩が居なくなってからいつの間に戻ってきて箱の中に入ったのか?いや、入れられたのか?それだけが謎のままです。ですが、二人の愛が如何なる形であれ昇華し成就したならば、そんな事は最早関係ないのではと思えてしまってならないのです。
なおこの作品は【第25回(1997年)泉鏡花文学賞】受賞作です。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.61:
(5pt)

後世に残すべき名作

断言する。
後世に残すべき名作。
極上のラブストーリー。
いや、ラブストーリーなんて表現はやめよう。
恋愛小説、恋愛映画なんて嫌いだという人が多いから。
俺もその一人。
だけど、この本は違う。
恋愛モノ嫌いでも、充分に、いや、充分以上に楽しめる。
京極作品で、初めて読んだのがこの『嗤う伊右衛門』。
テーマは四谷怪談。
ホラーでもない、甘い恋愛小説でもない。
胸に迫って迫って仕方がない、そんな小説だった。
その後、京極作品を色々読んだが、この本に勝る京極なし。
この本を読まずに『姑獲鳥の夏』あたりを読んで、
「京極夏彦って、なんか苦手……」
と思っている人がいたら、今作をぜひ読むべし。
俺も『姑獲鳥の夏 』系は苦手。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.60:
(5pt)

切なすぎる愛の物語

京極夏彦の本はよく読んでいたんだけど、これはなぜか敬遠。もともと四谷怪談とか、怪談ものは好きじゃなかったのもある。でも食わず嫌いだったな。
この小説は全く怪談ではない。お岩と伊右衛門の悲しい愛を描いた恋愛小説と言うべき。
お岩の性格描写が巧み。武家の娘とはこうだったのだろう。そして彼女が狂わなければならなかった悲しみ。読んでいて胸が詰まった。
最後のラストシーンの美しさをたとえようがないぐらいだ。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.59:
(5pt)

京極夏彦による新「四谷怪談」は、悲しいラブストーリー

京極夏彦=妖怪ものとくれば、新説四谷怪談もこうなるのかと感心した次第。それもまったくのフィクションではなく、「江戸雑話集」などの故実にのっとり、非現実的なホラーが、ミステリー小説に生まれ変わっています。伊右衛門やお岩の人物像も大きく変更されており、もともとの怪談話より、リアルな愛の物語へと昇華されており、作者の力量に脱帽するばかりでした。こちらのお話の方が、怪談話より数段いいですね。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.58:
(5pt)

これも、恋か

かの有名な「四谷怪談」をベースにした物語です。
しかしこの作品は、私の持っていた四谷怪談のイメージを思いっきり覆しました。
笑ったことのない生真面目な浪人、伊右衛門。
気高くまっすぐな意志を持つ美しい女、岩。
しかし岩の顔の左半分は、病によって醜く崩れてしまった。
ふたりの周りの人々は、みな心に闇のようなものを持っている。
罪悪感、嫉妬、得体のしれない苛立ち、それらが引き起こす惨劇を、何一つ飾ることなく描ききっている。
その悲劇に翻弄されながらも、すれ違いながらも、ふたりは愛し合った。
たとえそれがどんな形であっても、美しかった。
これは幸せな物語ではありません。
しかし、私たちが思う幸せとは違う幸せもあると、考えさせられる一冊だと思います。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.57:
(4pt)

頑なな心

「人の器量の善し悪しは心根の美しさに関係ない」。確かに綺麗な人でも不器量な人でも、優しい人もいれば底意地の悪い人もいる。功名心の強い人もいれば慈悲深い人もいる。それでも器量はその人の性格に大いなる影響を及ぼすのだ。
四谷怪談のお岩さんを、新たな構想でパスティッシュした本書。崩れた顔を持つ岩の哀しみがひしを胸を打つ。「どのような容姿、境遇であろうとも我は我」と考える岩の強さはそう考えることで己を保っていた岩の弱さをも含んでいる。おどろおどろしい女の怨念を具現化したような四谷怪談の「お岩」とはあまりにも対照的な京極夏彦の「お岩」。同じ話をベースとしてこれほどにまで別の世界を違和感なく構築する京極氏の力量にただ感服する次第である。
嗤う伊右衛門 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (中公文庫)より
412204376X
No.56:
(4pt)

怪談を純愛小説に昇華

 この作品は四谷怪談を現代風にアレンジした作品と理解しています。作品というものはどうしても時代の制約を受けてしまう。昔の話のままでは古臭くてしょうがないので今風に作り変える。どう作りかえられているかが作者の腕の見せ所だと思います。四谷怪談は物語の展開に深みがあり扱い作品なので、いろんな時代に新たな創作がなされてきたのではないでしょうか。この作品が、これまでの設定を大きく変更し、怪談を恋愛小説に昇華することに成功したという点で優れていることは論を待ちません。
 
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.55:
(4pt)

嗤う。

京極堂シリーズとは、少し違った。だが、謎はある。
四谷怪談のリメイクという珍しいものだ。だが、四谷怪談のようなおぞましさはなかった。ただ、淡々と進んで行く。人も淡々と殺されて行く。
だが、ラストがなんとも良かった。淡々と進んで行くから、良いのだろうか。
しかし、最後の『嗤った』が怖い。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.54:
(5pt)

又市登場。

「京極堂」シリーズ以外では(たしか)初の単行本作品。
怪談界?のスーパーヒロイン、お岩さんのこのキャラ造形、
そして伊右衛門像が出来上がった時点で勝ち!(感想)
哀しく、残酷で、この上なく美しい物語は、そして圧巻のクライマックスへ。
京極夏彦という小説家の恐るべき底力を見せ付けてくれた傑作です。
嗤う伊右衛門 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (角川文庫)より
4043620012
No.53:
(5pt)

純愛のかっこよさ

最後の1ページで号泣。
京極夏彦ってものすごくポジティブな人だな。
怪談として知られるお岩さんと伊右衛門の話を、完全無欠の純愛ものに仕立て上げた。
作品を読んで作者の力量を量るのはあまりしたくないんだけど(結局選択の余地を狭くして自分の首を締める結果になるから。自戒の念を込めて)、この作品に関しては作者の力を感ぜずにはいられませんでした。
あくまでも読み物なので芸術性や文学性は無視しますが、この娯楽性の高さは並々ならない。しかも京極夏彦の作品は(おそらく)すべて本歌取りの二重構造になっているので、二度も三度もおいしく味わえると言う特典付きだ。これがたまらなく好き。
北村薫の『六の宮の姫君』は高木彬光『成吉思汗の秘密』のような点と点を線で結ぶ探求ものだったが、『嗤う伊右衛門』もそんな作りになっている可能性があるんだろうか。いや原始資料の種類から言ってその可能性はあるだろう。だとしたら本歌・改作・探求の三種をこの作品ひとつで味わえる可能性がある訳で、そりゃまた凄いところに目を付けたもんだ。そしてそれを形に出来る度量も凄い。
それにしても、岩と伊右衛門の純愛のかっこよさよ。
どーしても京極作品は『必殺』の匂いがそこはかとなく、する。
嗤う伊右衛門 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (中公文庫)より
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No.52:
(5pt)

深淵妖面たる京極結界の最高傑作

1997年6月リリース。鶴屋南北の怪談狂言『東海道四谷怪談(文政8年-1825)』の京極夏彦戯作である。369ページと京極作品にしては画期的に短いが純化した言霊になった京極結界は無駄な言葉などなく、こうなったということなのだろう。本作は小雪の主演で映画化もされている。
語りで結界を作る。京極作品はそういう陰陽師のような世界である。語るか文字になっているかその違いだけである。ただ文字には言葉よりもっと強い力がある。文字から喚起されたこの四谷怪談は余りに美しい。その美しさは美女小雪をもって映像化を蜷川幸雄が試みても遠く及ばない。イマジネーションの中だけで観ることが出来る美しさである。
はっきり言って京極夏彦の最高傑作だろう。この作品に直木賞を与えず、『後巷説百物語』などに直木賞を与えてしまうということが今の文壇のレベルの低さをよく示している。自覚していないだろうが選考委員は勉強のやり直しだろう。
嗤う伊右衛門 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (中公文庫)より
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No.51:
(5pt)

美しい魑魅魍魎の世界

どうして、この人が描く魑魅魍魎の世界はこんなに美しいのでしょう。
漆黒の闇を舞台に、血の赤や肌の白さや蚊帳の朧さなどが際立って、
まるで色鮮やかな絵巻物をみているかのようです。
日本古来の言葉を駆使した文体は、まるで香を焚き染めたかのように匂い立ち、
独特の言い回しや体言止めの多用が、語り手の息遣いがつたわってくるかのごとく
臨場感をかもし出しています。
日本のお化けの物語をこんなに品よく格調高く描ける人は、この人以外に
いないのではないでしょうか。大好きな本のひとつです。
嗤う伊右衛門 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (中公文庫)より
412204376X
No.50:
(5pt)

人間の心の闇に迫る名作

有名な「四谷怪談」をベースに、人間心理の闇と怖さを主体にした物語に再構成したもの。京極氏特有の人間の心の襞をさぐる話になっており、「怖いのは妖怪や怪異談ではなく、人間の心そのもの」という主張が貫かれている。お岩と伊右衛門との"愛"も重要なテーマとなっており、従来の「四谷怪談」から受ける印象とはかけ離れている。"小股潜りの又市"が登場するのもファンにとっては嬉しい。
本作では、お岩は疱瘡のため容貌は醜いながらも、高い矜持を持つ凛とした女性として描かれている。一方、伊右衛門は実直で生真面目な男として描かれる。伊右衛門は婿養子に入るのだが、2人は口にこそ出さねど愛し合っている。お岩は自身の容貌のため、男から愛されることはないと醒めた態度を取るのだが、伊右衛門を心の底では愛している。伊右衛門はそんなお岩を気遣いながら、愚直にお岩を愛している。
そんな中、伊東という傍若無人で残忍な上役のため、2人の運命の歯車が狂い始める。伊東の讒言で、お岩は伊右衛門の浮気を信じ込まされる。伊右衛門のため身を引こうとして離縁するお岩。そんな伊右衛門に伊東は自分がなぐさみものした女"梅"をあてがうのだ。しかも、梅は伊東の子を身ごもっていた...。
ここから(表面的な)怪談が始まる。赤ん坊が産まれ、その子を溺愛する伊右衛門。しかし、お岩もその子を我が子(=伊右衛門の子)であるかのように溺愛していたのだ。お岩は家に立ち寄って塀際からその子を眺めようとするのだが、家の者からは"化け者"がやって来たと恐れられる。特に梅の怖がり様は尋常ではない。梅はやって来たのが、自分の恋のライバルお岩であることを知っていたのだ。この辺から、梅とお岩の心は崩壊し始めている。そして、お岩は赤ん坊を攫ってしまい、その後、行方不明に...。
この後、伊東の残虐・奸計ぶりに堪忍袋の緒を切らした伊右衛門は伊東を斬る。その時、梅も斬ってしまう。この辺で、伊右衛門の精神も崩壊し始めている。
最後で明かされる、お岩の運命と伊右衛門の心の襞には、暗澹とせざるを得ない。笑わぬ男伊右衛門が、最後に「嗤う」という描写は心を寒々とさせる。「四谷怪談」を見事な人間心理の描写の物語に再構成した傑作。
嗤う伊右衛門 (中公文庫)Amazon書評・レビュー:嗤う伊右衛門 (中公文庫)より
412204376X

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