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腐蝕の構造
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【この小説が収録されている参考書籍】
腐蝕の構造の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.58pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全17件 1~17 1/1ページ
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森村誠一の主要な作品はだいたい読んだ気になっていたが、重要な一作をスルーしていた。1972年日本推理作家協会賞に輝いた本作『腐蝕の構造』である。 とはいえ長い小説なので「つまらなかったどうしよう」と躊躇したが、いざ読んでみると意外にすらすらと読めた。まあ長いのでそれなりに時間はかかるけれど、『野性の証明』のような退屈な長さではなかった。とても面白かった。 最初は雨村という男が主人公だと思って読んでいると、実は途中から出てくる久美子が主人公で、登場人物もエピソードもてんこ盛りだった。そのごった煮感は、映画ではなくテレビドラマ向きかもしれない。実際1977年にドラマ化されているようだ。 本格っぽさ少々、社会派っぽさ少々、でも結局は男と女のサスペンスロマンみたいな味わいは、いかにも高度成長期に書かれた昭和のミステリらしくて悪くないと思う。こういうのが嫌いじゃない人は楽しめるだろう。僕はけっこう堪能しました。 | ||||
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カップルの遭難死に端を発し、航空機事故や、原発問題や、企業の利権な、不可能殺人や、不倫が錯綜するてんこ盛りミステリ。 読み進めるうちに、どちらの方向へ連れていかれるのかわからくなってしまうという展開だ。少なからず偶然に左右されているので、あくまで物語的に愉しむべきだろう。 人の心のドロっとした部分をあからさまに描いているため、どんよりした雰囲気を漂わしてる。随所のラブラブシーンはいらないように思うが、発散した内容を一気にまとめ上げる力技は流石。クライマックスで盛り上がって、最後の一行で虚しさを感じたりする。【協推賞】 | ||||
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これは重厚な作品ですね。著者が社会派推理作家と言われる所以を作った作品で、読み応えが十分です。賞を取っただけのことは有ります。 著者は組織や団体等のグループを扱う作品が多いのですが、この作品ではそれよりも登場人物の姿や心情といったものを前面に出し、それに加えて山岳の背景をこれでもかという具合に描ききって、読者に読ませている筆力を感じます。 物語の時代背景はもう古いのですが、現代にも通ずる場面や事柄などを社会に訴えている感じがしますね。 著者の作品の中でも、スケールの大きな数少ない名作だと思います。 | ||||
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とても面白くどんどんほんの中に引き込まれました森村誠一のファンです | ||||
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1972年に刊行されました。1969年に「高層の死角」で江戸川乱歩賞を受賞した後、日本推理作家協会賞を受賞した作品です。読みどころは、なんと言っても現代その存在に国民の多くが疑問を持っている原子力発電に関する記述だと思います。濃縮ウラン製造の有意やメカニズム、又その研究に多くの科学者が鎬を削っている事、更に、それは核兵器に転用可能であり核兵器に使われるのではないかと言う危惧。 原子力発電所建設に於いては、その莫大な利権に群がる大企業や政治家達の私利私欲にまみれた姿を狡猾に否定的に書いています。更に核燃料ゴミを再利用して核燃料サイクルを確立する計画が立てられている事などを詳細に記述している処は、読み応えがあります。 半世紀も前に上記の様な利権が絡んでいた事を知ると、現在ではSTOPさせたくない存在の有る事を知ります。核廃棄物は“もんじゅ”によって再利用されるという空想のために電力会社の燃料として在庫の資産として処理されています。しかし、“もんじゅ”の計画が破綻した場合(もう破綻していると思う)それは資産上ただの産業廃棄物となってしまい、それを処分するための経費も算入しなければなりません。電力会社の決算書は、真っ赤に変わってしまいます。 本書刊行から半世紀近くを経た現在でも何も解決していない事を改めて知らされます。読後に思った事は、絶対に事故など起こしてほしくは無いと言う事でした。 本論は、そんなに難しい話ばかりではありませんが、数々のプロットで形成されていて素晴らしいものになっていると思います。先ず。航空機事故にからみ消息不明になった核技術者の夫の行方追う妻久美子の追跡行です。追えば追うほどに知らなかった夫の姿に気付き、久美子が懊悩する姿を森村氏は克明に書いていて、私も儚いものを感じてしまいました。 また核利権に絡む何者から久美子は脅迫され、身の安全まで脅かされてしまいます。ところが、ここでスーパーマンとも言える助っ人“大町”こと町田竜一が現れるのです。彼は、日に灼けた精悍な顔つきで体躯も良くガッシリし、女もてする姿でしたが、久美子の身の安全を守り、夫捜しの手伝いを申し出るのです。 大町こと町田は実に良い男で久美子を支えます。久美子もしだいに大町に惹かれていってしまうわけです。実際当時、森村誠一氏の事務所に大町(町田)宛に多くのファンレターが来たほどだったそうです。彼の正体はラストで明かされますので、是非!本書を読んで下さい。 本書は600頁にも及ぶ長編なので、あまり梗概に終始してもいけませんが、二人のこの後はサスペンス劇場なみに展開してゆきます。取り分け久美子から夫を奪った恋敵とも言える冬子は美貌の持ち主で、久美子は終始その存在を気にかけ悩み苦しむのですが、冬子は権力者の娘にも関わらず意外にふしだらな処があり本書の初めと終わりでは全く印象が異なってしまう処が作者の意図有りです。美女は二人要らないって事ではないでしょうか? 書きそびれそうになりましたが、もちろん森村氏十八番の高級ホテルも物語の設定の中に数々出てきてきます。デート、密会、官僚の徹夜資料の作成現場として等。その一つでは密室殺人事件が発生します、誰が関わった事件かは差し控えます。でも、これは残念ながら現在では必ずしも密室とは言えないかもしれません。森村氏の作なら通常は高層階で起こるはずですが、なぜか低層階で起こった事件で、このトリックは少し弱そうです。勿論、現在での話です。 日本推理作家協会賞を受賞した本書ですが、中身は推理小説であり、社会派小説であり、追跡行(冒険)あり、サスペンス、ラブロマンスありの多彩なジャンル含めた長編でした。世紀のベストセラーは、今でも全く色褪せていない事を感じました。 新しいものばかりでなく、こういった作品も是非読んで下さい。何故かと言うと本書が発行された時、私は中学生で正直言って理解出来なかったからです。原発の事などは、今は良く分かります、だから尚更です。歴史上の傑作です! | ||||
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1972年に刊行された本書ですが、読みどころは、なんと言っても現代その存在に国民の多くが疑問を持っている原子力発電に関する記述だと思います。濃縮ウラン製造の有意やメカニズム、又その研究に多くの科学者が鎬を削っている事、更に、それは核兵器に転用可能であり核兵器に使われるのではないかと言う危惧。 原子力発電所建設に於いては、その莫大な利権に群がる大企業や政治家達の私利私欲にまみれた姿を狡猾に否定的に書いています。更に核燃料ゴミを再利用して核燃料サイクルを確立する計画が立てられている事などを詳細に記述しています。 半世紀も前に上記の様な利権が絡んでいた事を知ると、現在ではSTOPさせたくない存在の有る事を知ります。しかしながら現在の“もんじゅ”を見ればそれは破綻している様に思えます。本書刊行から半世紀近くを経た現在でも何も解決していない事を改めて知らされます。読後に思った事は、絶対に事故など起こしてほしくは無いと言う事でした。 本論は、そんなに難しい話ばかりではありませんが、数々のプロットで形成されていて素晴らしいものになっていると思います。先ず。航空機事故にからみ消息不明になった核技術者の夫の行方追う妻久美子の追跡行です。追えば追うほどに知らなかった夫の姿に気付き、久美子が懊悩する姿を森村氏は克明に書いていて、私も儚いものを感じてしまいました。 また核利権に絡む何者から久美子は脅迫され、身の安全まで脅かされてしまいます。ところが、ここでスーパーマンとも言える助っ人“大町”こと町田竜一が現れるのです。彼は、日に灼けた精悍な顔つきで体躯も良くガッシリし、女もてする姿でしたが、久美子の身の安全を守り、夫捜しの手伝いを申し出るのです。 大町こと町田は実に良い男で久美子を支えます。久美子もしだいに大町に惹かれていってしまうわけです。実際当時、森村誠一氏の事務所に大町(町田)宛に多くのファンレターが来たほどだったそうです。彼の正体はラストで明かされますので、是非!本書を読んで下さい。 本書は600頁にも及ぶ長編なので、あまり梗概に終始してもいけませんが、二人のこの後はサスペンス劇場なみに展開してゆきます。取り分け久美子から夫を奪った恋敵とも言える冬子は美貌の持ち主で、久美子は終始その存在を気にかけ悩み苦しむのですが、冬子は権力者の娘にも関わらず意外にふしだらな処があり本書の初めと終わりでは全く印象が異なってしまう処が作者の意図有りです。美女は二人要らないって事ではないでしょうか? 書きそびれそうになりましたが、もちろん森村氏十八番の高級ホテルも物語の設定の中に数々出てきてきます。デート、密会、官僚の徹夜資料の作成現場として等。その一つでは密室殺人事件が発生します、誰が関わった事件かは差し控えます。でも、これは残念ながら現在では必ずしも密室とは言えないかもしれません。森村氏の作なら通常は高層階で起こるはずですが、なぜか低層階で起こった事件で、このトリックは少し弱そうです。勿論、現在での話です。 日本推理作家協会賞を受賞した本書ですが、中身は推理小説であり、社会派小説であり、追跡行(冒険)あり、サスペンス、ラブロマンスありの多彩なジャンル含めた長編でした。世紀のベストセラーは、今でも全く色褪せていない事を感じました。 新しいものばかりでなく、こういった作品も是非読んで下さい。何故かと言うと本書が発行された時、私は中学生で正直言って理解出来なかったからです。原発の事などは、今は良く分かります、だから尚更です。歴史上の傑作です! | ||||
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1972年に刊行された本書ですが、読みどころは、なんと言っても現代その存在に国民の多くが疑問を持っている原子力発電に関する記述だと思います。濃縮ウラン製造の有意やメカニズム、又その研究に多くの科学者が鎬を削っている事、更に、それは核兵器に転用可能であり核兵器に使われるのではないかと言う危惧。 原子力発電所建設に於いては、その莫大な利権に群がる大企業や政治家達の私利私欲にまみれた姿を狡猾に否定的に書いています。更に核燃料ゴミを再利用して核燃料サイクルを確立する計画が立てられている事などを詳細に記述しています。 半世紀も前に上記の様な利権が絡んでいた事を知ると、現在ではSTOPさせたくない存在の有る事を知ります。しかしながら現在の“もんじゅ”を見ればそれは破綻している様に思えます。本書刊行から半世紀近くを経た現在でも何も解決していない事を改めて知らされます。読後に思った事は、絶対に事故など起こしてほしくは無いと言う事でした。 本論は、そんなに難しい話ばかりではありませんが、数々のプロットで形成されていて素晴らしいものになっていると思います。先ず。航空機事故にからみ消息不明になった核技術者の夫の行方追う妻久美子の追跡行です。追えば追うほどに知らなかった夫の姿に気付き、久美子が懊悩する姿を森村氏は克明に書いていて、私も儚いものを感じてしまいました。 また核利権に絡む何者から久美子は脅迫され、身の安全まで脅かされてしまいます。ところが、ここでスーパーマンとも言える助っ人“大町”こと町田竜一が現れるのです。彼は、日に灼けた精悍な顔つきで体躯も良くガッシリし、女もてする姿でしたが、久美子の身の安全を守り、夫捜しの手伝いを申し出るのです。 大町こと町田は実に良い男で久美子を支えます。久美子もしだいに大町に惹かれていってしまうわけです。実際当時、森村誠一氏の事務所に大町(町田)宛に多くのファンレターが来たほどだったそうです。彼の正体はラストで明かされますので、是非!本書を読んで下さい。 本書は600頁にも及ぶ長編なので、あまり梗概に終始してもいけませんが、二人のこの後はサスペンス劇場なみに展開してゆきます。取り分け久美子から夫を奪った恋敵とも言える冬子は美貌の持ち主で、久美子は終始その存在を気にかけ悩み苦しむのですが、冬子は権力者の娘にも関わらず意外にふしだらな処があり本書の初めと終わりでは全く印象が異なってしまう処が作者の意図有りです。美女は二人要らないって事ではないでしょうか? 書きそびれそうになりましたが、もちろん森村氏十八番の高級ホテルも物語の設定の中に数々出てきてきます。デート、密会、官僚の徹夜資料の作成現場として等。その一つでは密室殺人事件が発生します、誰が関わった事件かは差し控えます。でも、これは残念ながら現在では必ずしも密室とは言えないかもしれません。森村氏の作なら通常は高層階で起こるはずですが、なぜか低層階で起こった事件で、このトリックは少し弱そうです。勿論、現在での話です。 日本推理作家協会賞を受賞した本書ですが、中身は推理小説であり、社会派小説であり、追跡行(冒険)あり、サスペンス、ラブロマンスありの多彩なジャンル含めた長編でした。世紀のベストセラーは、今でも全く色褪せていない事を感じました。 新しいものばかりでなく、こういった作品も是非読んで下さい。何故かと言うと本書が発行された時、私は中学生で正直言って理解出来なかったからです。原発の事などは、今は良く分かります、だから尚更です。歴史上の傑作です! | ||||
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1972年に刊行された本書ですが、読みどころは、なんと言っても現代その存在に国民の多くが疑問を持っている原子力発電に関する記述だと思います。濃縮ウラン製造の有意やメカニズム、又その研究に多くの科学者が鎬を削っている事、更に、それは核兵器に転用可能であり核兵器に使われるのではないかと言う危惧。 原子力発電所建設に於いては、その莫大な利権に群がる大企業や政治家達の私利私欲にまみれた姿を狡猾に否定的に書いています。更に核燃料ゴミを再利用して核燃料サイクルを確立する計画が立てられている事などを詳細に記述しています。 半世紀も前に上記の様な利権が絡んでいた事を知ると、現在ではSTOPさせたくない存在の有る事を知ります。しかしながら現在の“もんじゅ”を見ればそれは破綻している様に思えます。本書刊行から半世紀近くを経た現在でも何も解決していない事を改めて知らされます。読後に思った事は、絶対に事故など起こしてほしくは無いと言う事でした。 本論は、そんなに難しい話ばかりではありませんが、数々のプロットで形成されていて素晴らしいものになっていると思います。先ず。航空機事故にからみ消息不明になった核技術者の夫の行方追う妻久美子の追跡行です。追えば追うほどに知らなかった夫の姿に気付き、久美子が懊悩する姿を森村氏は克明に書いていて、私も儚いものを感じてしまいました。 また核利権に絡む何者から久美子は脅迫され、身の安全まで脅かされてしまいます。ところが、ここでスーパーマンとも言える助っ人“大町”こと町田竜一が現れるのです。彼は、日に灼けた精悍な顔つきで体躯も良くガッシリし、女もてする姿でしたが、久美子の身の安全を守り、夫捜しの手伝いを申し出るのです。 大町こと町田は実に良い男で久美子を支えます。久美子もしだいに大町に惹かれていってしまうわけです。実際当時、森村誠一氏の事務所に大町(町田)宛に多くのファンレターが来たほどだったそうです。彼の正体はラストで明かされますので、是非!本書を読んで下さい。 本書は600頁にも及ぶ長編なので、あまり梗概に終始してもいけませんが、二人のこの後はサスペンス劇場なみに展開してゆきます。取り分け久美子から夫を奪った恋敵とも言える冬子は美貌の持ち主で、久美子は終始その存在を気にかけ悩み苦しむのですが、冬子は権力者の娘にも関わらず意外にふしだらな処があり本書の初めと終わりでは全く印象が異なってしまう処が作者の意図有りです。美女は二人要らないって事ではないでしょうか? 書きそびれそうになりましたが、もちろん森村氏十八番の高級ホテルも物語の設定の中に数々出てきてきます。デート、密会、官僚の徹夜資料の作成現場として等。その一つでは密室殺人事件が発生します、誰が関わった事件かは差し控えます。でも、これは残念ながら現在では必ずしも密室とは言えないかもしれません。森村氏の作なら通常は高層階で起こるはずですが、なぜか低層階で起こった事件で、このトリックは少し弱そうです。勿論、現在での話です。 日本推理作家協会賞を受賞した本書ですが、中身は推理小説であり、社会派小説であり、追跡行(冒険)あり、サスペンス、ラブロマンスありの多彩なジャンル含めた長編でした。世紀のベストセラーは、今でも全く色褪せていない事を感じました。 新しいものばかりでなく、こういった作品も是非読んで下さい。何故かと言うと本書が発行された時、私は中学生で正直言って理解出来なかったからです。原発の事などは、今は良く分かります、だから尚更です。歴史上の傑作です! | ||||
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1972年に刊行された本書ですが、読みどころは、なんと言っても現代その存在に国民の多くが疑問を持っている原子力発電に関する記述だと思います。濃縮ウラン製造の有意やメカニズム、又その研究に多くの科学者が鎬を削っている事、更に、それは核兵器に転用可能であり核兵器に使われるのではないかと言う危惧。 原子力発電所建設に於いては、その莫大な利権に群がる大企業や政治家達の私利私欲にまみれた姿を狡猾に否定的に書いています。更に核燃料ゴミを再利用して核燃料サイクルを確立する計画が立てられている事などを詳細に記述しています。 半世紀も前に上記の様な利権が絡んでいた事を知ると、現在ではSTOPさせたくない存在の有る事を知ります。しかしながら現在の“もんじゅ”を見ればそれは破綻している様に思えます。本書刊行から半世紀近くを経た現在でも何も解決していない事を改めて知らされます。読後に思った事は、絶対に事故など起こしてほしくは無いと言う事でした。 本論は、そんなに難しい話ばかりではありませんが、数々のプロットで形成されていて素晴らしいものになっていると思います。先ず。航空機事故にからみ消息不明になった核技術者の夫の行方追う妻久美子の追跡行です。追えば追うほどに知らなかった夫の姿に気付き、久美子が懊悩する姿を森村氏は克明に書いていて、私も儚いものを感じてしまいました。 また核利権に絡む何者から久美子は脅迫され、身の安全まで脅かされてしまいます。ところが、ここでスーパーマンとも言える助っ人“大町”こと町田竜一が現れるのです。彼は、日に灼けた精悍な顔つきで体躯も良くガッシリし、女もてする姿でしたが、久美子の身の安全を守り、夫捜しの手伝いを申し出るのです。 大町こと町田は実に良い男で久美子を支えます。久美子もしだいに大町に惹かれていってしまうわけです。実際当時、森村誠一氏の事務所に大町(町田)宛に多くのファンレターが来たほどだったそうです。彼の正体はラストで明かされますので、是非!本書を読んで下さい。 本書は600頁にも及ぶ長編なので、あまり梗概に終始してもいけませんが、二人のこの後はサスペンス劇場なみに展開してゆきます。取り分け久美子から夫を奪った恋敵とも言える冬子は美貌の持ち主で、久美子は終始その存在を気にかけ悩み苦しむのですが、冬子は権力者の娘にも関わらず意外にふしだらな処があり本書の初めと終わりでは全く印象が異なってしまう処が作者の意図有りです。美女は二人要らないって事ではないでしょうか? 書きそびれそうになりましたが、もちろん森村氏十八番の高級ホテルも物語の設定の中に数々出てきてきます。デート、密会、官僚の徹夜資料の作成現場として等。その一つでは密室殺人事件が発生します、誰が関わった事件かは差し控えます。でも、これは残念ながら現在では必ずしも密室とは言えないかもしれません。森村氏の作なら通常は高層階で起こるはずですが、なぜか低層階で起こった事件で、このトリックは少し弱そうです。勿論、現在での話です。 日本推理作家協会賞を受賞した本書ですが、中身は推理小説であり、社会派小説であり、追跡行(冒険)あり、サスペンス、ラブロマンスありの多彩なジャンル含めた長編でした。世紀のベストセラーは、今でも全く色褪せていない事を感じました。 新しいものばかりでなく、こういった作品も是非読んで下さい。何故かと言うと本書が発行された時、私は中学生で正直言って理解出来なかったからです。原発の事などは、今は良く分かります、だから尚更です。歴史上の傑作です! | ||||
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森村誠一氏。今では『731部隊』や『忠臣蔵』に取材するなど、 その守備範囲も広く今や日本を代表する“国民作家”の1人といっても 過言ではないでしょう。 出世作“人間の証明”より遡ること8年、本作の筆致は森村氏がその旺盛な 制作意欲や社会への挑戦といった作家本来のアグレッシブな姿勢が感じられ テンポよく読み進む事ができます。 政界と鉄鋼業界との癒着が新原子力エネルギーの争奪戦をキーワードに 登場人物やロケーションも効果的に設定されてゆきます。 この人、山岳風景の描写が得意ですよね? ご本人もかなりお好きなことがその文章から窺われます。 興味深いのは、旅客機の衝突事故・・・。日航ジャンボ機の惨事を 思い起こせば、森村氏の構成力には脱帽です。 最終章まで読み進めると本書のタイトルである“腐食の構造”の意味が 理解できます。推理小説なんていうフレームをはるかに越えた モチーフと思います。 読んで損の無い1冊です。 | ||||
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森村誠一氏、今でこそ『731部隊』や『忠臣蔵』に 取材するなど、その守備範囲も広く今や日本を代表する “国民作家”の1人といっても過言ではないでしょう。 出世作“人間の証明”より遡ること8年、却って本作の 筆致は森村氏がその旺盛な制作意欲や社会への挑戦といった 作家本来のアグレッシブな姿勢が感じられテンポよく読み進む事が できます。 政界と鉄鋼業界との癒着が新原子力エネルギーの 争奪戦をキーワードに登場人物やロケーションも 効果的に設定されてゆきます。 この人、山岳風景の描写が得意ですよね? ご本人もかなりお好きなことがその文章から 窺われます。 興味深いのは、旅客機の衝突事故・・・。 日航ジャンボ機の惨事を思い起こせば、 森村氏の構成力には脱帽です。 最終章まで読み進めると本書のタイトル である“腐食の構造”の意味が理解できます。 推理小説なんていうフレームをはるかに越えた モチーフと思います。 読んで損の無い1冊です。 | ||||
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2007年に刊行された、森村氏の小説論を作家志望者を主たる対象として詳細に解説した『小説道場』(小学館)には、本格推理派から社会派への傾斜を強めた代表作として『腐食の構造』(日本推理作家協会賞受賞)が指摘されている。『高層の死角』でのトリックメーカーしての作風はむろん残しながら(殺人事件はホテルで実行される)、そこに原子力開発(濃縮ウランの開発化)をめぐる企業と国家の貪欲な駆け引きという社会問題を巧みに盛り込んだ意欲作である。著者には格別の想いがある<山>の情景描写も印象的である。ハルキ文庫版では600頁を超え(講談社文庫版は552頁)、著者が綿密な構想とそれを確実に裏付ける地道な取材とを重ねたときに生まれる文字通りの力作であり、主題が有する社会性・話題性もさることながら、そうした一連の問題群の背景にある人間ドラマも鮮やかに描かれている。森村作品には常に<人間>に対する深い洞察力と、ときにその人間が自らの意識を遥かに超越する行動をおかす危険性を内に秘めていることへの鋭い観察力が文体そのものに刻み込まれている。タイトルにある「腐食」という言葉も、一見すると、「企業と国家の癒着」というありきたりの意味かと思いきや、最終章からも分かるように、腐食の主たる構成分子はやはり「人間」であった。『腐食の構造』をなす企業や国家、それを構成する人間の思惑は複雑に絡み合い錯綜しているのである。本作品は本格(推理)派と社会派の融合作品であるが、読み終えてみると後者の色彩が強い。とはいえ、個人的には些か本書は冗長な感じが拭えない。内容的に豊かであることは認めるが、もっとコンパクトに仕上げることはできないものか。主人公の雨村や彼が握っていた濃縮ウラン開発技術の話も途切れ、次第に<愛>をめぐる人間ドラマが中心部に居座ってくる。たしかに力作であるが、正直なところ抜群の読後感を得ることはできなかった。 | ||||
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2007年に刊行された、森村氏の小説論を作家志望者を主たる対象として詳細に解説した『小説道場』(小学館)には、本格推理派から社会派への傾斜を強めた代表作として『腐食の構造』(日本推理作家協会賞受賞)が指摘されている。『高層の死角』でのトリックメーカーしての作風はむろん残しながら(殺人事件はホテルで実行される)、そこに原子力開発(濃縮ウランの開発化)をめぐる企業と国家の貪欲な駆け引きという社会問題を巧みに盛り込んだ意欲作である。著者には格別の想いがある<山>の情景描写も印象的である。ハルキ文庫版では600頁を超え(講談社文庫版は552頁)、著者が綿密な構想とそれを確実に裏付ける地道な取材とを重ねたときに生まれる文字通りの力作であり、主題が有する社会性・話題性もさることながら、そうした一連の問題群の背景にある人間ドラマも鮮やかに描かれている。森村作品には常に<人間>に対する深い洞察力と、ときにその人間が自らの意識を遥かに超越する行動をおかす危険性を内に秘めていることへの鋭い観察力が文体そのものに刻み込まれている。タイトルにある「腐食」という言葉も、一見すると、「企業と国家の癒着」というありきたりの意味かと思いきや、最終章からも分かるように、腐食の主たる構成分子はやはり「人間」であった。『腐食の構造』をなす企業や国家、それを構成する人間の思惑は複雑に絡み合い錯綜しているのである。本作品は本格(推理)派と社会派の融合作品であるが、読み終えてみると後者の色彩が強い。とはいえ、個人的には些か本書は冗長な感じが拭えない。内容的に豊かであることは認めるが、もっとコンパクトに仕上げることはできないものか。主人公の雨村や彼が握っていた濃縮ウラン開発技術の話も途切れ、次第に<愛>をめぐる人間ドラマが中心部に居座ってくる。たしかに力作であるが、正直なところ抜群の読後感を得ることはできなかった。 | ||||
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人間の証明の方が有名ですが、森村さんの作品の中では個人的にこの作品が イチオシです。 人妻が謎を追いかけるストーリーは、松本清張さんの(ゼロの焦点)でおなじみです。 それよりも、さらに読みごたえがあり何倍もロマンチック。 ただ、松本氏の作品のエンディングが文学的で、森村氏のそれがどちらかというとドラマ的であった。このことが現在の評価の明暗を分ける元だと思いますが、再評価して欲しい作品です。 | ||||
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人間の証明の方が有名ですが、森村さんの作品の中では個人的にこの作品が イチオシです。 人妻が謎を追いかけるストーリーは、松本清張さんの(ゼロの焦点)でおなじみです。 それよりも、さらに読みごたえがあり何倍もロマンチック。 ただ、松本氏の作品のエンディングが文学的で、森村氏のそれがどちらかというとドラマ的であった。このことが現在の評価の明暗を分ける元だと思いますが、再評価して欲しい作品です。 | ||||
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日本推理作家協会賞を受賞した、森村誠一にとって最初の転機となった作品です。とにかく重厚な作品です。それまではトリッキーな作風を得意としていた森村が社会派に転換した一作と評されているのですが、単に“社会派”という言葉で済ますことのできない異様な迫力を持っています。トリックもきちんとあって、作者が得意とするホテルでの密室殺人が扱われています。やはり作者の得意技のひとつである山登りも大きなテーマとなっており、ホテル・密室・山岳・社会悪と森村が繰り返し扱っているテーマをすべてぶち込んだという感じです。 ストーリー進行の面では、最初は主人公だと思われた雨村征男が途中から全く登場しなくなるという点に驚きました。読者が十分に感情移入した頃に彼を行方不明にさせることによって、彼の不在から来る妻の不安感を読者にも感じやすくするという効果が出ていますが、反面読者としては“主役”を奪われた形になるので今度は誰に感情移入したらいいのかわからなくなるというリスキーな選択肢です。それまでは大した重要性を持っていなかった雨村の妻がその後の主役を務めるのですが、森村が自らの筆力によって短時間のうちに今度は読者を妻に感情移入させる自信を持っているからこそできる技と思います。 | ||||
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日本推理作家協会賞を受賞した、森村誠一にとって最初の転機となった作品です。とにかく重厚な作品です。それまではトリッキーな作風を得意としていた森村が社会派に転換した一作と評されているのですが、単に“社会派”という言葉で済ますことのできない異様な迫力を持っています。トリックもきちんとあって、作者が得意とするホテルでの密室殺人が扱われています。やはり作者の得意技のひとつである山登りも大きなテーマとなっており、ホテル・密室・山岳・社会悪と森村が繰り返し扱っているテーマをすべてぶち込んだという感じです。 ストーリー進行の面では、最初は主人公だと思われた雨村征男が途中から全く登場しなくなるという点に驚きました。読者が十分に感情移入した頃に彼を行方不明にさせることによって、彼の不在から来る妻の不安感を読者にも感じやすくするという効果が出ていますが、反面読者としては“主役”を奪われた形になるので今度は誰に感情移入したらいいのかわからなくなるというリスキーな選択肢です。それまでは大した重要性を持っていなかった雨村の妻がその後の主役を務めるのですが、森村が自らの筆力によって短時間のうちに今度は読者を妻に感情移入させる自信を持っているからこそできる技と思います。 | ||||
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