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窓の外は向日葵の畑



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【この小説が収録されている参考書籍】
窓の外は向日葵の畑
窓の外は向日葵の畑 (文春文庫)

窓の外は向日葵の畑の評価: 3.50/5点 レビュー 4件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.50pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(2pt)

息子と親父の(成長しない)夏

樋口有介の小説はいろいろあるけど、大きくは二種類。ひとつは、多感で繊細な少年を主人公にした青春ものミステリー。舞台はだいたい夏休みで、学生である主人公が休みを利用して事件を追う、というストーリーであり、自分の青春時代を思いだして、ノスタルジックな気分に浸れる。夏を終えると事件も終わり、主人公もなぜかすこしだけ大人になっている、成長している、というエンディングも、ありきたりだけど泣ける。
 もうひとつは、繊細少年を卒業した中年ロマンティック・オヤジの柚木草平を主人公とした大人の探偵小説。こちらは、柚木のちょっぴり厭世的態度と、オトボケの会話が秀逸で、読みながらクスクスと一人笑いをしてしまう。
 どちらにしても、ボクにとって樋口有介の小説は、ストーリーもさることながら、主人公のキャラそのものが大きな魅力。

 本書、タイトルに「向日葵」とあるので、当然青春ものと思って読み出したのだが、どうもちがう。同級生の失踪と「自殺」をめぐって高校生の主人公が事件を追うというのは樋口ファンにはおなじみの設定だけど、途中から離婚した親父も一人称でストーリーに割り込んでくるのだ。息子と親父が交互に一人称で語りながら、事件を追うという趣向。つまり、青春ものミステリーの舞台に、柚木草平風な親父も登場するという、樋口ファンには1冊で2回楽しめるつくりになっている。

 だが、1冊で2回楽しめる、という作者の狙いは失敗である。青春小説としても、中年親父の探偵小説としても、どっちつかずの中途半端なのである。ま、息子と親父、それぞれの登場機会が半分づつなのだから、魅力的なキャラも充分生きない、ということなのだろうか。おまけに幽霊となってガールフレンドまで登場するので、さらに息子と親父のキャラは消されてゆく。失礼ながら、1冊で2回楽しめるというコンセプトなら、昔あった「エースのダブル」(米国の安いペーパーバック)のように、2冊の本を表裏で張り合わせた本にしたらよかったのに。また、夏の事件が終わっても、息子と親父のどちらもあまり成長してないカンジで、エンディングのカタルシスもない。

 なお、樋口有介という人は絶版と復刊の多い不思議な作家。大手版元で文庫本になっても絶版になってしまい、版元を変えてまた文庫本として復刊される現代作家なんて、彼ぐらいではなかろうか。メジャーではないけど、熱烈に愛するファンがいる作家で、かくいうボクも大ファンである。だから、この本はすすめないけど、柚木草平ものとか、青春ものとか、もっと多くの人に読んで欲しいと思う。「ぼくと、ぼくらの夏」、「風少女」、「彼女はたぶん魔法を使う」など、一度読んだらやみつきになること間違いなし!
窓の外は向日葵の畑Amazon書評・レビュー:窓の外は向日葵の畑より
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