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悪貨
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悪貨の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.41pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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オウム真理教集団がサリンなどを使わずに贋札の製造・流通に手を出していたなら…そんな“if”を想起させる一作。悪貨が良貨を駆逐するのは“貨幣”の世界に限らず、日銀“異次元の金融緩和”も同じこと。 | ||||
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島田雅彦氏の作品を読んだのは今回が初めて。きっかけは書店でたまたま目に留まったから。背表紙にある“カネの根本の価値を覆そうとする男の運命の向かう先とは!?”という言葉と、ひとつひとつがエッセーのタイトルの様に魅力的な44項目の目次に惹かれ購入を決意した。本書が発行されたのは2013年9月、東日本大震災からの復興と、一年前の安倍政権の誕生、アベノミクス支持の世論に向けて自称『サヨク』の思想を持った著者がダメだしを連発する...そんなショウモナイ展開だと嫌だなぁと若干の危惧もありながらの読書開始。そのファーストインプレッションは良い意味で裏切られた。 本書を手にした2015年、社会では『地方創生』なる言葉がもてはやされ、どの地域も必死で地方を創生しようとアイデアを捻り出す努力を惜しまない。そのアイデアの中には、きっと『彼岸コミューン』的なものもたくさんあるだろうなと感じ、出版から2年経った今、時代背景的との程よい合致により物語に入り込むことが出来た。世の中から貧困を無くす。そのためのきっかけとして農業からコミュニティを発展させる。その純然たる弱者救済の思想が、一人の異端児と共に歯車を狂わせていくストーリーと、そのコミュニティを外国の資本、それも悪意に満ちた資本が着実に忍び寄っている臨場感は、読むてを止められなくなるほどのリアリティを帯びていた。と、確かに面白く読めたのだが評価は★3つ。なぜか。 それはマネー規模への違和感。物語では500億円の偽札が日本中を混乱に陥れる様が描かれている。混乱時の具体的な描写があるわけでは無いがそこは問題ではない。問題は500億円というマネー規模だ。ちなみに、政府が2014年度補正予算に盛り込んだ地方創生交付金の総額は4200億円。例えそんなことを知らなくても、500億円を国民人口で分配すれば、一人当たり約415円...一人当たり415円のお金が空から降ってきたとしてハイパーインフレになってしまってしまう様な国の混乱なんぞ物語としてなにも面白くない。「ちがう!原因は偽造通貨流通に伴う信用崩壊だ!」と反論者が現れそうだが、そんなパニックは本書の何処かに描かれていただろうか。記憶に残っていない。ともあれ、登場する印刷職人の存在意義を守るため、何千億円も自動で刷れる機械を導入する展開を拒否したのだろうが、その結果“危機を煽るにはちょっと...”的な設定になってしまったことが大きな興醒めポイントとなってしまった。 貨幣とは何か、貨幣に代わるものとは何か、そもそも貨幣とは代用品であり、代用品の代用品が登場したとしても結果的にそれは貨幣以上の何かを生みことにはならないのではないか。著者が描く『悪貨』の論点は、現在の貨幣に対してだけでも、その後を狙う後続の“貨幣のようなもの”だけでもなく、その両方であろうことは伝わって来た。作品として、悪貨たるものの推移事態を面白くも感じられた。ただし、読了後の天邪鬼な僕の感想は、「現代の資本経済、貨幣経済を否定するストーリーを描きたかった人が、廻り回って結果的に肯定しちゃってる小説」となってしまった。結局、今の経済から抜け出す手段はないってことなのか。これはあれだ、著者本人の価値観をもっと良く理解した上で読まねばならぬ書籍だ。 残念ながら、読者はそこまで親切ではない。 | ||||
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この本を読むタイミングで最近WOWOWで悪貨の放送があった。 テレビドラマでは偽札は台湾で偽造、小説は中国瀋陽が舞台との相違はあるものの両者とも比較的面白かった。 単なる偽造紙幣の犯罪捜査にとどまらず、偽造紙幣が出たことで日本経済が大きな打撃を受けるとともに日本国家の信頼性まで大きく損ねた点などは小説のほうがリアルだった。 ただ偽造紙幣の黒幕である中国人は日本企業、日銀などに深く関わっており中国政府との兼ね合いもあり摘発できなかった点などはやはりそうかと思わざるを得ない。 一般文学通算1033作品目の感想。2015/05/26 17:50 | ||||
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エンタテイメントとしてはよくできていると思うが、経済小説としてはどうか。まず中国が日本をハイパーインフレにして国ごと買い上げる、という背景の構図にリアリティを感じない。インフレって買い手には魅力のない状況だし、中国人が日本を買い占めて「移住する」っていうのも「?」。だったら今のアメリカのように裏から効率よく支配して富を吸い上げるほうがよほど賢い。バブル期の日本を見れば、「よその国を買う」という行為は支配することとは違う、むしろ真逆のベクトルかもしれない。 些細な部分なのかもしれないが、「貨幣」というものを描く以上、新聞紙上の何気ない解説から一歩踏み込んだ著者自身の観察が読みたかった。 | ||||
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貨幣信用制度を貶めるという内容の小説は海外でもあり、めずらしいものではない。プロットのもっと洗練させた方がよい部分があり、又全体に人物設定が非常に粗く、最後の結末も物足りないものを感じた。力がある小説家だと思うが本作品はあまり感動やスリル感がなかった。 | ||||
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暴力でも権力でもない「偽札」によって人や国家が狂っていく、という筋書きは面白いし、リアリティも感じる。 ただ、そこに入ってくる恋愛要素がちょっと鬱陶しく感じました。 思うにヒロインがあまり他の人物よりもバックボーンが感じられず、 頭の良く正義感の強い美人、といった凡庸なキャラクターだったところが理由かと思います。 お金に振り回されるチンピラやキャバ嬢、偽札の細工に異様な執着を持つ男といった サブキャラの各エピソードがそれぞれ細かく豊かに描かれていただけに、 そこだけやや浮いてる感じを受けてしまいました。 あとはインフレが実際に起きた際の描写なんかはもっと具体的であって欲しかったなと思ったり。 意外とその辺淡白だったなと。 なんだかこの描写やこの人物面白い!!というところと、 そうでないところのギャップが結構あるかもしれません。 平均すると「面白かった!」という評価になるのですが。。。 | ||||
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この本の栞は「零円」と書かれた1万円札と同じくらいの大きさの「偽札」。今回は偽札に纏わる、それを作り闇に流す者とそれを捕まえる者の、ちょっと変わった恋愛ものだ。最近、とみに普通の恋愛小説は読む気が失せているが、こういうちょっとない恋愛ストーリーは読みたい。それに最近の著者の作品では、『彗星の住人』〜『エトロフの恋』三部作以来の読みやすい作品だった。 また恋愛小説であると同時に、『海辺のカフカ』のような「父殺し」も少々テーマに入れている。また他にも今の世相を反映させたような、お金の動き、中国の台頭、「円天」を思わせるような、特殊な貨幣価値(1アガペー=10円)などを盛り込んだ、人の価値観を問い直すような内容となっている。 「結局、人が最後に頼るのは・・・呪力だ」と思う者、「世界は矛盾に満ちているが、今や自分もその矛盾の一部になってしまった」と感じる者、みな、最後には本能に従って生きる道を選ぶ。だから恋愛ストーリーとしては、精神的にはハッピーエンディングなのだが、それだけで終われるほど簡単ではなく、罪には罰が用意されている。 1つだけとてもツボに入った表現があった。それは「アメリカ西海岸の公園内にある日本庭園とでもいうべきちぐはぐな感じがついて回った」という個所。これは多分、サンフランシスコのある公園内の日本庭園のことだと思うのだが、これを読んで、その昔、ここの中の橋の弓なりっぷりが、あり得ないほど極端だったのを見て、大笑いした記憶が蘇ってきた。 | ||||
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文章も、構成もしっかりしているし、 主題も「通貨への疑心」という「今どき」のテーマ で、一気に読んでしまいました。 ただ、島田さんの「エンターテイメント」って こういうもので良いのでしょう「的」なご自身にとって 余技を見せる作品になってしまっていて 読後は、物足りなさを感じました。 | ||||
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