■スポンサードリンク
風の影
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
風の影の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.24pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全69件 61~69 4/4ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
バルセロナの少年ダニエルは、古書店を営む父と二人暮らし。ある日、「忘れられた本の墓場」と称する場所に案内され、そこでフリアン・カラックスという作家の書「風の影」を見つける。この作家の作品を他にも読みたくなったダニエルだが、調べるうちに彼の作品がすべて市場から姿を消してしまっていることを知る。やがて彼を、見知らぬ影がつきまとい、「風の影」を手放すようにと迫るのだが…。 今年一番の収穫ともいえる書です。ミステリーでもあり、冒険小説でもあり、そして恋愛小説でもあり、と様々な要素を見事に融合させた物語ですが、それでいてこの「風の影」は単なるエンターテインメント小説に終わることはありません。少年が大人へと成長する過程をたくましく描く教養小説ならではの、実にすがすがしくも懐かしい読後感を与えてくれます。 フリアンの小説をこの世から抹殺せんとするその謎の背景に、ある人物の、運命と呼ぶにはあまりにも痛ましく哀しい過去があることが描かれます。その人物の、この世の森羅万象を激しく憎み、生きることそのものを忌み嫌う、苛烈な厭世観が置かれているのです。 しかし他方で、ダニエルの人生によって打ち出されるのは、人生はそれでも生きるに値するものであるという力強い信念です。ダニエル自身も、最初は迷いや焦りを山ほど抱えた、人生のとば口に立ったばかりの少年として登場します。その彼が「その人物」の人生を期せずしてなぞりながら、生きることの意味を勝ち得ていく姿に、心打たれざるをえません。 上下巻あわせて800ページを超える大部の書ですが、その厚みを感じさせないのは作者サフォンのストーリーテリングの見事さとあわせて、翻訳者・木村裕美氏の大変優れた技能に負うところが大きいでしょう。 書を読む愉悦にどっぷりと浸ることのできた一冊です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
上巻の後半から話が盛り上がり下巻では次々に謎が解き明かされていった。 一つひとつの話がドンドンつながっていき、一つの大きなストーリーとしてつながった。 関係者が次々と死んでいき残酷さがとても強く感じられたが、最後には平穏で幸福な日々へとつながるというところはよい意味で期待を裏切ってくれた。 上巻を最初読み進めていったときはあまり面白くないかなという気持ちも少しあったが、下巻に進むと読み応えのあるものへと変わった。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
1945年6月のある早朝、10歳のダニエル少年は古書店を営む父親に連れられ、バルセロナ市街のとある秘密めいた場所に連れて行かれる。そこは「忘れられた本の墓場」と呼ばれる、古書の迷宮のような場所であった。そこで一冊だけ好きな本を選べと父に促されるダニエル少年。様々な書き手や持ち主の思いの込められた本の迷宮から選ばれた一冊は、決して失われないよう、生涯を賭けて守らなくてはいけないのだ。彼が選んだ本はフリアン・カラックス著「風の影」。多くが謎に包まれた作家の失われた一冊を中心に、ダニエル少年の人生は数奇な運命を描いていくのであった。 情感たっぷりの導入部だが、ボルヘスやダニング調の「書を巡る運命」を期待すると大きく外れることになる。本作は、書物そのものではなく、それを書いた人間、読んだ人間の運命を綴る物語なのだ。 独裁政権下のバルセロナでのダニエル少年が少年から青年に至るプロセスが、上巻の主要な内容だ。大手古書店主の一人娘、盲目の美女。。。年上の女。。。への激しくも切ないダニエルの初恋の行方に見え隠れする禍々しい人物たち。。。フリアン・カラックスの著作を全て焼き尽くそうと画策する謎の男、冷酷で粗暴な治安警察の刑事部長フメロ。そしてダニエルを暖かく見守る父親や友人たち、ダニエルに助けられて生きる活力を得た元浮浪者にして生涯の親友となるフェルミン。 これら登場人物たちが織り成す物語は、はっきり言って通俗的である。だが、それ故に一度読み出したらもう止められなくなる。それは一重に、丁寧なキャラクター造詣の成せる技である。登場する全てのキャラクターがそれぞれのドラマを感じさせ、陰鬱な時代に鮮やかなきらめきを放つ。魅力ある登場人物のおりなす一大ロマンは、古典的物語を現代に再構築したとも言えるだろう。それは人の営みや感情の普遍性を顕にする。だから、面白いのだ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
17言語、37カ国で翻訳出版され、500万部を突破したという世界的なベストセラーとあって、早速読んでみた。文庫にして上・下巻あわせて831ページにも及ぶ、読み応えのある大作である。 時は1945年。舞台は内戦の傷跡が残るスペインのバルセロナ。少年ダニエルは「忘れられた本の墓場」で手にした小説『風の影』にたちまち魅了される。やがて彼は作者のフリアン・カラックスの謎めいた生涯に興味を抱き、取り憑かれたようにフリアンの過去の探求を始める。 「呪われた本たち、それを執筆した男、その本を燃やすために小説のページから抜けだした人物、裏切りや、失われた友情の物語だ。風の影のなかに生きる愛と、憎しみと、夢の物語なんだよ。」 真実を探るうちに浮かび上がってくるのは、登場人物ひとりひとりが背負っている悲哀に満ちた過去。純愛、憎悪、情欲、嫉妬、呪われた血脈・・・。そしていつしかカラックスの悲劇的な過去が、ダニエル自身がたどっている不思議な歳月・運命と微妙にシンクロしてくる。 本書は、歴史、恋愛、冒険、青春、ホラー、ミステリー、サスペンス、ゴシックロマンと、いろんな要素が盛り込まれた、壮大なイリュージョンである。私のような“小説好き”にとっては十分楽しめる、重厚な迷宮のような作品だった。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この小説をひと言で表わす言葉が文中にある。「呪われた本たち、それを執筆した男、その本を燃やすために小説のページから抜けだした人物、裏切りや、失われた友情の物語だ。風の影のなかに生きる愛と、憎しみと、夢の物語なんだよ」。 この小説は、『風の影』という一冊の本と運命的に出会った主人公による、その本と作者の影をめぐる“喪失と不在の物語”である。この小説では、本は人生の、人生は本のメタファーだ。『風の影』の作者は“本のなかに生き”“魂は、彼自身の物語のなかにある”。つまり、物理的に生きているかどうかなんてことは問題ではなく、「誰かしら覚えてくれている人間がいるかぎり、ぼくらは生きつづけることができる」ってことなのだ。まるで、本が誰かの手に取られることで、初めて登場人物たちが活き活きと動き出すように。 こう書くと、観念的で小難しいような誤解を与えるかもしれないけど、思わず頁をスルスル繰ってしまうエンターテインメントなのだ。主人公の少年ダニエルの恋愛エピソードも、自分も年甲斐もなく追体験させてもらってるリアルさで、甘酸っぱい気持ちにさせてくれるし、なんといっても主人公の書店で働く、“アナーキーな自由主義思想”の持ち主、フェルミンのシニカル・トークが最高。 随所にちりばめられているアフォリズムもナイス。例えば、「本は鏡とおなじだよ。自分の心のなかにあるものは、本を読まなきゃ見えない」とか、「人生なんて、せいぜい三つか四つのことのために生きる価値があるんであって、それ以外のことは、畑にまく肥やしみたいなもん」とか、「なにかを相手にあたえられるかじゃなくて、どれだけ譲れるかってことが、時にたいせつ」とかね。 「この物語も墓場ではじまって、墓場でおわる。もっとも、きみが想像するような墓場じゃない」って予言どおりの結末が果たして待っているのかどうか、期待しつつ下巻へ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
休日の午後にでも、たっぷり時間を取って読みたい本です。 通勤電車の中でちまちま読むにはもったいない! 最近は小説も客を飽きさせないためか、衝撃的な素材、性急な展開、盛り沢山の要素を少ないページ数に詰め込んだものが主流になってきた気がします。でもそんなTVや映画のようなやり方をしなくても別の、本来の方法があったんだ、と忘れていた読書の楽しさを思い出させてくれる作品。 子供の頃夢中になって読んだ「レ・ミゼラブル」や「モンテ・クリスト伯」。あの楽しさを現代の小説で感じられるとは。小説の中でヴィクトル・ユーゴーの万年筆が象徴的な小道具として使われていますが、19世紀文学へのオマージュとして書かれたであろう、この作品の象徴にもなっています。 歴史小説であり、恋愛小説であり、ミステリーでもあるこの作品に、今風のジャンル分けは似合いません。全ての要素が一本の流れの中に取り込まれ、豊かな物語世界を形作っています。そして、ストーリーテリングの滑らかさの上に、最初ファンタジーやホラーまでも取り込んでいるのか?と思わされた事項まで、最後にはきちんと説明されるあたりはさすが。作者の並々ならぬ力量と、読者を裏切らない誠実さに感服しました。 本がテーマで、19世紀文学的味わいがある話、と言うと何かしら地味で古臭い印象を持たれるかもしれませんが、そんな心配は無用です。これは現代のエンターテイメント。逆に文学作品として歴史に残るかどうかは後世の判断、と思わせる小説です。140年前に「レ・ミゼラブル」がそうであったように。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
翻訳小説といえば英米のものばかりなので、スペイン発の本書になじめるかどうか一抹の不安があったが、それは杞憂に終わった。翻訳文がとても読みやすいのもその一因か。物語の大枠はミステリなんだけれど、新潮クレスト・ブックスにセレクトされるような味わいが文章にある。上巻前半のあるエピソードは「朗読者」を彷彿とさせる叙情を感じた。もしかしたら一番の謎は主人公の少年が「風の影」という幻の本と邂逅する舞台「忘れられた本の墓場」かも知れない。村上春樹が描くところの羊男が登場してもおかしくない雰囲気に満ちている。真夏の夜の夢なのだろうか。バルセロナに旅行に行った折には立ち寄ってみたくなる。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
まさに、読む側の心を映し出すような作品です。 世代に隔てなく、是非とも多くの方に読んでいただきたい。 「翻訳文学は苦手」という方でも難なく読める親切さがあり、最も新しい翻訳文学の姿を快く受け入れることができるでしょう。 舞台は1945年のスペインはバルセロナ。 主人公の少年ダニエルは父親に連れられ、世の中から忘れ去られた本が最後に辿り着くという場所を訪れます。 そこで出会った『風の影』という一冊の本が、ダニエルの人生に大きな影響を与えてゆくのです。 ミヒャエル・エンデの某作品を思い浮かべる方も多いことでしょう。 しかし、『風の影』で語られるのは幻想ではありません。 内戦に傷ついた世界の中で生きる、心に美しさと醜さを併せ持つ人間本来の姿が描かれているのです。 友情があり、恋愛があり、もちろんそこには人間らしい猥雑な全てのものがコインの表と裏のように密接な関係を保っています。 自分の心を見つめる夜、それぞれが生きた人間として個性を持つ、多彩で豊富な登場人物が織りなす冒険とミステリーの調べをどうぞ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
父親に連れられて行った「本の墓場」で、ダニエルは一冊の本に出会う。 「おまえが選んだその本をおまえは守らねばならない。それは一生の約束なんだ‥。」 父との不思議な約束と符合するように、その著者の作品を執拗にこの世から 消し去ろうとする、謎の男が出現する。 一体誰が、何のために‥? スペイン内戦の後、消息を絶った著者の人生をたどるうちに、ダニエルもまた 物語の世界に飲み込まれてゆくのだった。 一冊の本を巡って多くの人生が綾をなし、走馬灯のようにちらちらと見え隠れしながら、 ミステリータッチの物語は進行する。 そして読者もまた、いつの間にかその物語のなかに取り込まれ、バルセロナの街を ダニエルとともに彷徨っている自分に気がつくことだろう。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!