鋼鉄都市
評判
鋼鉄都市の評価:
4.49/5点 レビュー 86件。 B ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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鋼鉄都市の評価:
4.49/5点 レビュー 86件。 B ランク
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しかし、歴史を特に真剣に学んだり、政治に関わったりしていない多くの、私のような一般人には単に未成熟な社会と人間が犯してきた過ちの積み重ねにしか見えていないのではなかろうか。
では、未来の世界を予測するのは?
多くのSF作品が描く未来世界は、悲観的、楽観的、どんな突飛な世界観にしても、
単なる舞台装置であるように感じられる。
突如落ちてきた巨大ロボに陰キャ主人公が乗り込んで大活躍するための未来戦争…ほど安直でなくても、
人類が今の経済や政治、軍事活動を続けた結果の終末を辛辣に予測した作品にでさえ、
「もし今核爆弾が爆発したら、人間が皆いなくなったら、どうする?」みたいな思考実験的なエンタメ性を感じてしまう。
だが、この作品の未来像は一味違うと感じる。
この作品で描かれている未来世界は社会システムの強化・効率化によって一定の安定は確保されているものの、
人々はロボットに取って代わられる不安に恐れ、次第に縮小していく経済の閉塞感に包まれている。
正にこれはAIや食料品値上がりなどの話題を見ない日のない、我々の不安そのものではないか。
(…と、ここまでは、この作品が特に珍しいって訳でもないのだけれど…)
それでも多くの人々(作中でも現実でも)は、
『人類は今までうまくやってきたから大丈夫(誰かが上手い手を思いついてくれるさ)』と言う。
実際、例えば石油は半世紀前の悲観的予測に反してまだ枯渇していない(上手い手を思いついて掘っている)。
だが、週明けからほんの数円の値上げが入ると聞けば、週末にガソリンスタンドに列をなすのも事実だ。
現実の未来は誰かのボタンの押し間違いで突然来るものではないと思う。破壊に限らず、あらゆる形の未来が。
(「スローターハウス5」をディスっているわけではないし、
宇宙規模で見れば恐竜の絶滅を招いたような超大災害が起こる確率も低くはないわけだが、そんな事を考えるなら、
『明日交通事故で命を落とすかもしれないから何もかも止めよう』と言うのと変わらないだろう。)
アシモフがこの作品で描いた未来は、過去から続いて来たグラフの曲線が未来に向かって伸びた結果であるように、そう見えるように説明されている。
そうすることによって、過去と未来の、その途上にある「我々の現在」の姿をより鮮明に浮かび上がらせているように感じられる。歴史を学んで知るのが現代の我々であるように、未来の予想が問うているのも現代なのだと。
この作品は「ミステリ仕立て」のエンタメを思わせる作品になっていて大変に面白い(amusing だ)。
ただ、犯人や犯行のトリックを暴く単純なミステリではなく、ミステリをSFで描くことを目的としたものでもないと思う。
科学の一般化に尽力し続けるアシモフと言う人が、己のメッセージを語るための舞台であり、それを作るためには主人公が自ら「世界の(構造の)」謎に迫っていくと言うミステリ的展開が必要だったのだと思う。
舞台となる未来世界の設定には、「犯人捜し」のエンタメには過ぎると思えるほどの情報量があり、
正直、説明的過ぎる部分が多いように感じられたし、結末の主人公の態度には『それでエエんか?』と大いに思った。
否、主人公が追い込まれた状況と心情を考えるなら『それで済ませられるはずがない』と考えるのが普通では無かろうか?。
でも、この世界を綿密に用意して、主人公を追い込んでおきながら、あえて、このラストにつなげる、
その展開にもアシモフの強いメッセージを感じずには居られない。
現代の閉塞を打ち破って未来を掴み取るためには我々皆に強い覚悟が必要なのだろう。
それは一か八かの掛けに飛び込む蛮勇や、他者を叩きのめす強さのようなものでも、SNSで示して見せるような見せかけの協調でも無く、
もっと静かな、持続的な努力(?)の様なものかもしれないと思わされた。
(上手い言葉が判らないが、アシモフが描く、三原則を踏まえた強く穏やかなロボット達は、それを体現しているように見える。)
読み始めた時はあまりのワクワク感に『これ何で映画にしないんだろう?』と思ったが、
たぶん映画化しても表層的な舞台装置(謎解き)しか描けない―そこで語られるべきメッセージが何もない、
と言う事態に成りかねない(何だったらラスト20分で犯人と殴り合いが始まる可能性もある)んじゃなかろうか。
やっぱり本で読んだ方が間違いなさそう…。
あまりの面白さ(interesting)に興奮して長々と書いてしまいました。お勧めします。