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凶手



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【この小説が収録されている参考書籍】
凶手 (Hayakawa Novels)
凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))

凶手の評価: 4.43/5点 レビュー 7件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.43pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全7件 1~7 1/1ページ
No.7:
(4pt)

不自然なシリーズではなく、

特殊な設定ながら単発だから読め、無駄のなさを深く愛せた。著者の他(シリーズ)は読むまい。
凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))Amazon書評・レビュー:凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))より
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No.6:
(3pt)

池袋ウエストゲートパークの元ネタ

作者である石田衣良さん本人がインタビューなので言っていることですが、
このアンドリュー・ヴァクスの『凶手』はあの『池袋ウエストゲートパーク』
の元ネタです。ネタにしているのは文体。断章スタイルでリズムはあるが硬質
でハードボーイルドな文体。このクールさを現代日本の池袋を舞台に置き換えて
書ききったのが『池袋ウエストゲートパーク』。

そんな元ネタである『凶手』はさすが元祖と言うべきか、ハードボイルド文体と
断章スタイルが上手く溶け合っていて痛快。断章スタイルはヴォネガットなどで
も見られるスタイルですが、ハードボイルドでの断章スタイルはこれが初(未確認
ですが)ではないでしょうか。

しかし、残念なのは物語自体にあまり魅力がないこと。惜しい。
それで☆3つです。
凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))Amazon書評・レビュー:凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))より
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No.5:
(5pt)

究極のハードボイルドヒーロー

タフガイ探偵の説教くさい欺瞞に満ちた正義や
アンチヒーローの露悪趣味にうんざりしている人にはお奨め。無名の殺し屋「ゴースト」の無心でシンプルな行動原理は品格さえ感じさせる。主人公は行方不明の恋人を探すために、自らの「素手で人を殺す」特異な能力を淡々と使う。自分の利益や保身に汲々とするギャングや「高邁な」思想を語る白人至上主義者たちとの対決と「無心の勝利」はもの悲しくも痛快である。
凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))Amazon書評・レビュー:凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))より
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No.4:
(4pt)

救いようのない男の中の闇

名前すらない「ゴースト」と呼ばれる男。彼が刑期を終え出所後求めたのは、刑務所に入る以前、美人局をやっていた頃組んでいた元ストリッパーのシェラという名の女だった。 「アウトロー探偵バーク」シリーズが、現代社会の暗いテーマを扱っていても読めるのは、バークのファミリィの存在が大きいのだと本書を読んで感じた。血の繋がりはなくても、自分が守るべき、そして時には自分を守ってくれる存在――精神的にも、体を張っても――そんな人々がいるから、バークはたとえ「ゼロ地点」を垣間見ても、そこから堕ちては行かないのだろう。
 ゴーストにはシェラ以外求める存在がない。物も、人も。それらが手に入っても彼にとっては意味のないものだから。ゴーストにとっては、「魂の双子」といえ!るシェラ以外は。この救いようのない男は、救いようのない闇の世界を放浪する。ただ一人の女を捜して。 根底に流れるテーマは「バーク」と変わらないのだろうが、こちらはより深く人の心の闇をあらわにしている。読了後、翻訳版のタイトルは優れものだと感じた(原題は「Shella」。余談だが「バーク」シリーズの作品の中にシェラらしき人物の噂話が出てくるのはご存知?)。
凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))Amazon書評・レビュー:凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))より
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No.3:
(5pt)

アメリカ文学史上に残る傑作

作者の本業は、弁護士だ。といっても、ドラッグディーラーや金持ちのためのそれではない。多くの場合金もなく、まともな保護者とも無縁な児童虐待の被害者のために、法廷で戦っている。そんな人物がなぜ小説を書くのか? 人は、自分の感情を揺さぶるフィクションを買い求めるが、見ず知らずの実在児童の被害には、冷淡だから。その現実を逆手に取り、ヴァクスはハードボイルドの秀作・良作を創造して、その中で児童虐待の現実を糾弾してきた。その情熱は時に作品を損ないもしてきたが、本作は違う。ヴァクスのテーマと文学性、ハードボイルドとしての押えた叙情が一体となってアメリカ文学史上に輝く、傑作に結実している。読むべし。
凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))Amazon書評・レビュー:凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))より
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No.2:
(5pt)

ヴァクスのひねくれた正義……深い影世界

いろいろな意味で深読みのできる作品であると思うし、ヴァクスの踏み跡を辿る読者にとっては、興味の尽きない一冊であると思う。

物理的な長さをかなぐり捨てたこの一冊は、ある意味でヴァクス的エッセンスの塊である。短編を引き延したようにも見えるが、実は、もっと長かるべき長編を最小限の骨身だけに削り抜いた作品であるように思える。

ひとえにそれは文体の尖り具合と、冷え具合から来ていたりする。それと小分けされて括られたいくつもの断章。これらが小気味よくテンポを弾き出してくれるので、読み始めたらページを繰る手が止まらない。

なので読後感はどちらかというと短編小説の味わい。せいぜいエピソードを紡いだ中編小説程度の質感。

この作品がバーク・シリーズからどれだけコーナーを曲がってしまうのかという興味があったのだけれど、実はこの作品、バーク・シリーズからストレートに連結している。平行したもう一つの物語とでも言おうか。幻想的な影の人々の物語。
  取り上げられるのは、幼児虐待やクー・クルックス・クランというアメリカ的暗黒面ではあるのだけど、そうしたものは舞台背景に過ぎず、主題はむしろ、その過酷さに歪んでしまった主人公たちの再生への意志の旅と言った方がよさそうな気がする。

主人公が探し求める女性シェラは、つまるところ「母」である。バークが擬似家族の中に真実を見ているのと同じように、本書の主人公ゴーストは孤独から解放されるために、母を求めているのだ。なんか、花村萬月と似たようなところに行ったヴァクス小説……みたいだ。ヴァクスが本当に社会正義として幼児虐待を小説として訴えているようにはなぜかぼくは見えなくなった。もし真正面に構えて訴えるような正義だけであったら、ヴァクス世界はこれほど魅力的ではあるまいと思う。

驚くほどの屈折と特殊さを備えた主人公とその世界ゆえにヴァクスの作品に存在感があるのか、幼児虐待にすべてが起因するゆえにかくも影の世界をしか語れなくなるのか、ぼくはその因果関係がわからない。とにかく特異である。文体は徹底したハードボイルド。

いろいろなことを言ったけど、ヴァクス未経験の読者にはこの一冊をまずは薦めたい。バーク・シリーズで垣間見られる様々な要素は、この一冊に本当に凝縮されている。ヴァクスの手持ちの道具をどれもこれも抛り込んでいながら、ストレートでコンパクトな持ち味を持った小説だからだ。
凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))Amazon書評・レビュー:凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))より
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No.1:
(5pt)

まず最初の数行を読んで欲しい

アンドリュー・ヴァクスのファンなら是非この本を書棚に追加して欲しい。この本はヴァクスの魅力を凝縮した1冊である。クールでスタイリッシュな文体はますます冴えて、あっという間に主人公と同じ暗い空間に迷いこむ自分に驚く。見たこともない世界なのに・・・。殺し屋として人の命を奪いながら、昔愛した女Shellaを捜して歩く男。悲しく非情な主人公の心の闇を覗いても、何故か彼の心はまだ凍っていない、きっと灯火が燃えているはずと希望を持って行間を深読みしてしまう。こんな男を愛したら天国と地獄を味わうことになるんだろうな。
凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))Amazon書評・レビュー:凶手 (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 189-7))より
4150796076

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