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陀吉尼の紡ぐ糸
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陀吉尼の紡ぐ糸の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.90pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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野暮を承知で申し上げる。御批判も多々あるだろうけれども、言わずにはおれない。 本書が発表されたのは平成10(1998)年。版元は徳間書店である。この当時、日本の言論空間は左翼一辺倒であった。歪んだ形のナショナリズムが高揚し、奇妙な右傾化が進んでいる現在からは想像できない方もおられようが、「従軍慰安婦」の存在は疑いようのない「事実」として扱われていた。その存在を否定する者は社会的に抹殺されかねないほどのアンタッチャブルなものだった。 本書は昭和初期を舞台にした歴史ミステリーである。形式は歴史上の人物や事件を架空のキャラクターと絡めるタイプのもの。つまり、いくら「この作品はフィクションです」と断り書きを入れても、嘘八百を前提としてミステリーを組み上げることはあってはならない、ということだ。旧軍の将校が悪役だからとか、そんなことでは怒らない。「従軍慰安婦」計画なるものが実際に存在したかのように書いていることを指摘したいのだ。 巻末に列挙されている参考文献には、西野留美子の『従軍慰安婦と十五年戦争』がある。タイムリーだった話題を作品に組み入れた著者を罵る気はない。この当時は、「従軍慰安婦」は歴史上の新事実だったのだから。 角川書店よ、何故本書を復刊させた? 存在しなかった「従軍慰安婦」のことを、日常会話で朱雀や柏木が使うわけがなかろう。イラク戦争勃発当時、我々はあの戦争をそう呼んだか? イラク戦争という名称が浸透したのは戦後しばらく経ってからだった。著者の藤木稟も、何故復刊を許した? しかし、いくら言い募っても仕方がない。角川からは、未だに森村誠一の『悪魔の飽食』が刷られ続けているのだから。 最後に、慰安婦云々(でんでんとは読まない)という件がなくても、高い評価を付けられなかったろう。キャラクターが余りにも魅力に欠けている。柏木は正義に燃える熱血漢ではなく、短慮で己の正義を世の中全てに通ずる唯一無二のものと信じ込んでいる傲慢不遜な男だ。朱雀に至っては、ニヒリストというより、ただのいやみ野郎だ。感情移入できるキャラクターがいないというのは、娯楽作品としては致命的ではなかろうか。 | ||||
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