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新しい人生
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新しい人生の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全7件 1~7 1/1ページ
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著者特有の精神的な弱さ、突っ込みの浅さ、子供っぽさが、主人公を学生に設定していることで欠点としてさほど目立たない、かえってよく機能しているといっていいかもしれない 特に前半の書きっぷりはいい、 美しい女子学生の恋人が銃撃され、撃った男が逃げていくくだりは、「ひょっとしたら」という期待さえ抱かせてくれる だが、例によってというべきか――ぼくは時間的に遡りながら読んでいる――、謎をちりばめ、時間を意識的に前後させ、寓話的なバスの事故が何度も起こり(バスの旅というのはトルコの特殊事情によるもので、それに関してもっと解説で触れるべきだった)、死者から金をむしりとるという悪行を重ねるうち、肝心の「本」という中心軸がだんだんぼけてきて、 余計な水増しと自分勝手な迂回とでふやけていき、最後にはこんがらかった糸をほどく自信がなくなったのだろう、いつもの「ひとひねり」の後、現場から逃げて読者にまかせる、しかも自分は悪くないとばかりに不要なエピローグを最後にくっつけて、物語を葬ったばかりか、居直っているのだった、 読者への彼のメッセージが聞こえてくる――わからなければ、それはあなたが悪いんです 実際には、著者の構築能力が劣り、話が広がっていくにつれ、論理だけでは収束に至らないことが明らかになり、著者にとって制御不能な情動が予想以上に暴れて抑えられなくなり、ややがさつな責任回避に打って出たということだ 生き方をがらっと変える「本」、それは親戚の書いた絵本のことなのか、その他の作品なのか、それともいまあなたの読んでいるこの本なのか、必要なのはチェックを入れる選択肢ではなく、ズバリ何か、のはず それをあえて書かずに読者の想像にゆだねるという手法は、実際に読者がいかようにも想像できるよう適切に書かれた場合にしか機能しない 著者は(いつものように、)伝統的なイスラム世界から、キリスト教を背景に資本主義化を推し進めれば「新しい人生」がやってくる、と本気で考えているおめでたい人の枠を出ていない、それは単に財力で物事を解決できない貧者とは立場の違う自分(および属する階層)がより物質的な満足を追求するにはイスラムは足枷に過ぎないと主張しているだけに思われる つまりはヨーロッパ人にとってまたとないイスラム圏の優等生であり、涎をたらして待ちごがれる東に在住する西のスポークスマンということ、 何かもっとひとまわり大きな不可解なものをとらえる力が、この俊英ともいえる上質な知性に宿ることはないのだろうか 著者は結局のところ情感に訴えることができず、論理を組み立てることしかできていない、天賦の才に恵まれたというより予習復習上手の小さな真面目人間の印象を受ける 相変わらず肝心の女性が描けていない、そして笑いがない 翻訳はこの作品の雰囲気とあっていると思うが、ところどころ意味の取れない箇所があった(「の」の多用など)、また文法的な誤りも見つかる(主語と使役動詞の呼応関係など)、致命的なのは校正ミス、少なくとも3箇所はある(「にに」他)、 これは出版社の編集の弱さをあらわしている | ||||
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本に憑かれ、「新しい人生」を始めるために出発する主人公。読んだ物語に振り回されたり、出来事の背後に何らかの陰謀があるという物語を作り上げてしまったりする登場人物のあり方は、エーコの『フーコーの振り子』を想起させます。『フーコー』の背景には、政治運動が終息した後のオカルトやニュー・エイジ流行があることが小説自体のなかに書きこまれていますが、『新しい人生』にも、何らかの時代背景があるのかもしれません。 物語に過剰な意味を読み込んだり、自分で書いているかのように書きうつしたり、過去に書いた物語をもとに、あるいは他人が書いた文章をもとにして物語を書いたり、幼い頃に読んだ物語に発想を規定されていたり、自分の人生を、物語を読むように解釈してみたり。そんな「物語」と人との関わりが描かれていく中に、「物語」への作者の愛が感じられます。 | ||||
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パムクがノーベル賞を受賞する10年少し前に書いて、トルコでベストセラーになった小説ということであるが…こんな小説がそんなに売れたことに驚かされる。決してけなしているわけではない。川端康成のように自然に頭に入ってくるような文章とは程遠い、複雑難解な文章で構成された小説だからである。パムクの別作品の翻訳をけなしているレビューがかなりあるが、読みやすく訳すことは不可能だろうし、無理に平易化すると、パムクの持ち味を完全に損なってしまうだろう。 前半は、なぜバスなのか(列車ではなく)、なぜバス事故なのか、といった素朴な疑問を抱きながら読み進めていったのだが、ルフクおじさんとの関係は暗示されているものの、結局よくわからないままだった。しかしこのバスでの放浪の旅が幻惑的でいいのだ。それが一段落した後で落ち着いていると、再度始まってしまうのには驚かされた。 | ||||
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こんなに細部までこだわって書かれた小説を久しぶりに読んだ。 詩的なメタファーで散りばめられた文章も魅力的。個人的には 明らかにされてなかった主人公の名前がほのめかされるくだりに 鳥肌がたつほど衝撃を覚えた。また、あとがきを先に読むと文化背景を より理解しやすいだろう。邦訳されているパムク氏の小説の中では一番 彼らしい魅力が詰まった作品だと思う。 | ||||
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こんなに細部までこだわって書かれた小説を久しぶりに読んだ。 詩的なメタファーで散りばめられた文章も魅力的。個人的には 明らかにされてなかった主人公の名前がほのめかされるくだりに 鳥肌がたつほど衝撃を覚えた。また、あとがきを先に読むと文化背景を より理解しやすいだろう。邦訳されているパムク氏の小説の中では一番 彼らしい魅力が詰まった作品だと思う。 | ||||
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3年前に英訳("The New Life")で読んだ際は、「つまらなくはないが、 仕掛けが完全に成功しているかどうかは微妙」とレビューに書いた。 今回、邦訳が出たのを機に読み返してみたが、 とくに大幅な誤読をしていたわけでもなかったらしく、 基本的には同じ感想を持った。なんというか、 「ポストモダン小説」的に思わせぶりな暗合が多過ぎて、 それを必死に読み取ろうとする主人公たちが、 やや思い込みの激しい人たちに見えてしまうのである。 (訳者あとがきにもあるように、本書に氾濫する数多の商標名は そのままトルコの苦難に満ちた近代化の過程を映し出したものであり、 トルコ人読者にとっては、その名称自体が強い喚起力を持っているはずだが、 我々がそれを感じ取るのは不可能に近いということもあるのだろう。) ただ、今回読み直してみて以前より強く印象に残ったのは、 数か月にわたるバスの旅が結末を迎えた後で あっさりイスタンブルの母の家に戻り、結婚もして 一見平穏無事に暮らしている主人公のその後のことだった。 同じ経験をした人間以外にはまず説明できないような、 そればかりか今となっては、自分がなぜその時そんな行動に出たのかが 幾分いぶかしくも思えるような出来事に遭遇してしまった人間は、 それをきれいさっぱり忘れ去るのでない限り、 多かれ少なかれその地点に囚われたまま生き続ける。 その過程で、主人公はかつて読んだ本「新しい人生」の成り立ちを ゆっくりと理解し始める(というより「想起する」)ことになるのだが、 私自身がいささか歳を取ったせいもあってか、今回は前半のサスペンス的な展開よりも、 「解説部分」とされる最後の数十ページのほうに、より強い哀切さを感じた。 | ||||
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『雪』に強い感銘を受けたパムクさんの新作かと思ったら、新訳ではあるけれど、90年代に発表された小説。 ふと手に入れたある本を読んだことで、今までの行き方を捨てて、あこがれの女性と旅をすることになった大学生の「ぼく」は長距離バスを乗り継ぎながらトルコ中を旅し、行方の分からなくなった、同じ本の読者である若者を探す。その旅で「ぼく」が出会うのは欧米化していく祖国、そして欧米化に抗するために諜報活動、そして殺人も辞さない秘密結社のようなグループのリーダー。そして「ぼく」は禁じられたその本の作者を知り(彼は「ぼく」が幼い頃から知っていた元鉄道員の「暗殺」された童話作家だった)、そして行方不明だった若者の居場所を突き止め……。 『雪』が「世界文学」だとすると、『新しい人生』はロード・ノヴェル、青春文学の形をとった「国民文学」なのかもしれない。よって、その切実さ、文化的な痛み、土地勘がうまくつかめないところもあるのだけれど、誠実な「苦さ」は伝わってきた。 | ||||
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