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顔に降りかかる雨



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顔に降りかかる雨の評価: 6.00/10点 レビュー 3件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

女探偵物興盛時代の受賞作

桐野夏生の江戸川乱歩賞受賞作である。
意外だったのは村野ミロが女探偵ではなく、単に元探偵だった父親の事務所に住んでいただけの人物だったことだ。当時サラ・パレツキー、スー・グラフトンらのいわゆる4F探偵物が流行っていたことを反映して颯爽と登場し、乱歩賞を受賞した桐野夏生によるこの作品はその先入観から女探偵物だと思っていたが、実は事件に巻き込まれた一女性に過ぎなかった。
だからミロは通常の探偵ならばしないであろう、自分の持っている情報について何の躊躇もなく敵役とも云える協力者成瀬に明かす。例えば、寝ている成瀬の隙をついて耀子の部屋に単独で行った際に掴んだ情報なども、成瀬にその旨問い質されると簡単に白状するといった具合だ。

ただストーリーは世に数多ある私立探偵小説の定型とも云える失踪人捜しであり、特に新味がない。ストーリーの流れもオーソドックスで、文体や筋運びには素人の域を既に脱している感があるにせよ、これぞと思うダイヤの原石のような煌めきは特に感じなかった。
受賞当時、世の書評子らが噂していたように、やはり日本に初めて登場した3F探偵物という珍しさを話題性も含め、乱歩賞の審査員が買ったのではないだろうか。

しかし、桐野氏は後に『OUT』で直木賞を受賞し、さらに海外のエドガー賞までノミネートされる存在にまで成長する。そして今や押しも押されぬ女流作家としてその名を馳せているのだから、当時の審査員の選択眼は間違いではなかったわけだ。

つぶさに作品を読んでいくと、この作者の作家としての資質、そして野心を感じさせるものがある。
特に巧いと感じるのは単調になりがちな失踪人捜しのストーリーに起伏を持たせていることだ。例えば川添桂なるアーティストによるネクロフィリア及び性倒錯の世界をモチーフにしたアングラパフォーマンスの件など、そのグロテスクさに読者は吐き気を伴う嫌悪感を抱く事だろう。
こういう風に人の感情を揺さぶる出来事は作用反作用の法則からも読者に物語に対する次への展開への欲求をもたらせ、読書の牽引力となるのは間違いのない事実である。元々ジュニア系小説を書いていた作者だけにこのような計算高い構成も出来たのだろうが、なかなかの手練だと感じた。

また耀子の草稿として挿入されるルポルタージュの内容はドイツ、ベルリンの当時の雰囲気をよく醸し出しており、この応募作を著すのに自費で現地に飛んで取材したのではないかと思われる。それが本作に賭ける熱意としてひしひしとして伝わってきた。

ただ惜しむらくは登場人物1人1人の魅力に乏しさを感じる事だ。
主人公のミロはまだしも、行動を共にする成瀬の造型もステレオタイプのように感じるし、しかもミロが成瀬に惚れて危うく愛を交わそうとする辺りなどは苦笑してしまった。
そして本作ではある意味肝とも云える失踪人耀子の造型が、意外にもなかなか立ち昇ってこなかった事だ。友人だからという理由で巻き込まれるミロが捜査の過程で遭遇する耀子の知られざる貌の数々。しかしそれは単に奇を衒っただけで、1つの肖像として浮かび上がってこなかった。ここら辺にまだまだ力量不足さを感じた。

しかしその後の活躍を見るにつけ、この作家は追いかけるに値する。本作はブレイクするまでの少しばかり長い助走期間の第一歩であるから、ここで見限るのは時期尚早だろう。
今後も読み続けていくことにしよう。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

顔に降りかかる雨の感想

江戸川乱歩賞授賞の桐野氏本格デビュー作。少し飛躍しすぎな嫌いがあるが、物語としては面白かった。ただ、どうにもキャラクターが好きになれない。作者の中では相当魅力的な主人公のつもりかもしれないが、はっきり言ってオバンくさくて華の無い陰気な女という印象でしか無い。親友だから探している、という動機もあまりリアリティを感じられなかった。ただ単に“依頼者”と“探偵”という構図の方がまだしっくり来ますかね。しかし、文章はしっかりしており、勢いもあり、プロットも練られているので中の上くらいの評価になりました。

カミーテル
MCFS6K6O
No.1:
(5pt)

カッコよすぎる女主人公

ちょっとぶっとびすぎじゃないでしょうか。

わたろう
0BCEGGR4

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