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黄金のランデブー



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黄金のランデブーの評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

映画化を意識しすぎでは?

マクリーン7作目の本書は豪華貨客船上で起こる数々の不審死とミステリ風味溢れる設定で幕が開ける。

いつも通りに行われるだろう出港は小型核兵器を盗んで失踪した科学者の捜索のため、アメリカ海軍の調査で足止めされ、さらには突然の乗客の要請で棺桶をニューヨークまで運ぶ羽目になった豪華貨客船。そんなトラブルでも航海は上々と思われたが、スチュワード長の失踪を皮切りに首席通信士、四等航海士が遺体となって発見される。

そんな展開はまさに船上の密室状態で繰り広げられる本格ミステリなのだが、物語の半ば170ページ前後で犯人は判明し、一味を取り押さえる事に成功して物語は一件落着の様相を呈するのだが、そこはマクリーン、単なるミステリでは終わらない。

そこからはまさに怒涛の展開。船内に忍び込んだテロリスト一味の仲間によって船は制圧され、主人公のジョニー・カーターも機関銃によって太腿を撃ち抜かれ、重傷を負う。

テロリストの狙いは金塊を載せたタイコンデロガ号と接触し、金塊とその報酬を交換すると見せかけて小型核兵器を積み込ませ、爆破して金塊をせしめようという計画だった。その金額なんと1億5千万ドル。
その企みを知ったジョニー・カーター一等航海士は満身創痍の中、単独で核兵器の軌道阻止と乗客の命を救うため、奮闘する。

題名『黄金のランデブー』とはこの金塊のやり取りが成されるカンパーリ号とタイコンデロガ号のランデブーを示しているが、読後の今ならばその「黄金」の意味が全く違ったものに変わってくる。

極寒の海、難攻不落の要塞、周囲を敵に囲まれた戦線の只中と人の極限状態を引き出すシチュエーションで不屈の闘志で苦境を切り抜ける人々の姿を描いてきたマクリーンだが、この頃になると自然との闘いというシチュエーションから孤島の中の基地、豪華貨客船という限られた場所で起こる事件に変化してきている。それでも1作から一貫しているのは戦艦や石油採掘基地、ミサイルといった特殊な乗り物や設備の詳細な描写だ。それらが素人がちょっとした取材で付け焼刃的な似非専門家になった程度の浅薄なものではなく、物事の本筋を知り尽くした玄人はだしであるのが毎度感嘆させられてしまう。

それは逆に極限状態の環境でなくてもスリラーは成立することをマクリーンは証明したことを意味する。本書では豪華貨客船での優雅な航海が一転してテロリストたちによるシージャックによって制圧され、また彼らの計画によって通常迎える予定ではなかったハリケーンに出くわすことになるのだ。

そしてそんな荒波の中、太腿に三発もの銃弾を負った主人公ジョニー・カーターはテロリストたちに立ち向かうべく、ヒロインの富豪の娘スーザン・ベレスフォードと共に奮闘する。

よくよく考えるとこれは今現在採用されているハリウッドの一大アクション映画のシチュエーションではないか。

平穏な時間が流れ、誰もが歓談に興じるような優雅な時間が流れる中に突如として起こる非常事態。静から動への突然の反転。

そして特筆なのは映画を意識したかのようなハッピーエンドまで用意されていることだ。
この明るいまでのエンディング、特にスーザン・ベレスフォードというコメディエンヌ役までしつらえた本書を読んで、当時出版すれば映画化が定番となったマクリーンも映像化を意識した創作に移行していったことを気付かされたのは何だかさびしい思いがした。
これが後期の作品の質を低からしめる要因になったのではないかと思うのだが、それは今後の作品を読むことで判断したい。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S

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