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クレムリン・キス



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【この小説が収録されている参考書籍】
クレムリン・キス (新潮文庫)

クレムリン・キスの評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
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No.1:
(7pt)

人間臭いスパイの日常

イギリスの諜報機関MI-6のモスクワ駐在員ジョン・イングラムの後任として新人のジェレミー・ブリンクマンが選ばれた。イギリスの外務事務次官の息子である彼は、父親の権力に頼ることなく、MI-6内で優秀な成績を収めており、今回の人事は大抜擢だった。
イングラムの送別会の席で彼はアメリカのCIAの駐在員エディ・フランクリンを紹介される。彼こそはこのソ連駐在の各国の駐在員の中でもとびきりにソ連の政情に精通しており、業界でもその名は知れ渡っていた。聡明なブリンクマンはフランクリンと親密になり、ソ連国内の小麦不足を契機にした米ソ間の政治的緊張の勃発について予見し、MI-6内での評価をどんどん上げていった。
一方、ソヴィエト国連大使を経て帰国したピョートル・オルロフはアメリカ滞在中に知り合った通訳の女性ハリエットとの再会に心焦がしていた。しかし、国連大使での手腕が高く評価され、オルロフはソ連国内で将来の指導者と期待されていた。周囲の評価と自らの恋情に板挟みに苦しむ中、オルロフはアメリカへの亡命を計画する。
また、フランクリンにはワシントンに前妻ルースと息子2人を残しており、現在モスクワで一緒に住んでいるアンは後妻だった。アンはモスクワでの暮らしに退屈しており、フランクリンの異動を今か今かと待ち望んでいた。そんな中、フランクリンの許にルースから知らせが入る。長男のポールが麻薬を求めて強盗を起こし、警察に捕まったというのだった。フランクリンは急遽アメリカへ飛ぶ事に。
そしてその急なアメリカへの出国に対し、ブリンクマンは何かアメリカで事件が起こっていると推測したブリンクマンはその情報を探ろうとアンに近づく。

上に書いた粗筋は実はこの作品のテーマに触れてなく、本作のテーマはCIAとMI-6の諜報員同士のソ連の大物政治家の亡命を巡っての、丁々発止のやり取りである。この展開で物語が動き出すのは全400ページ強の本作に於いて、270ページを過ぎた辺りである。
それまではスパイたちのプライベートライフを綴った物語というべきだろうか。本作で繰り広げられるのは従来のスパイ物に見られる、情報工作、情報収集に危険と隣り合わせで挑むスパイの緊迫感溢れた仕事ぶりよりも、モスクワに送られた各国スパイ達の交流とその夫婦生活と奥さん連中の内緒話、三角関係、遠距離恋愛といった、非常に通俗的な内容になっていた。

そしてスパイも家庭問題を抱えるのだ。息子が非行に走り、急遽勤務先から舞い戻ったりと大変なのだ。
やがて独身者で新進気鋭のブリンクマンがフランクリンの不在中にその妻アンに対して横恋慕を始めるうちに―当初はフランクリンの動きを摑む為に接近したのだが―、私情を絡めた2人の攻防戦が繰り広げられるといった次第だ。ここからがエスピオナージュ作家フリーマントルの手腕が光る諜報合戦と云えるだろう。

さて本作は今までのフリーマントル作品同様、最後に思わぬどんでん返しが待ち受けている。それは最終的にフランクリンが凄腕のCIA諜報員だったことを如実に示す事になるのだが、いささか唐突過ぎるのではないか。
最後の最後まで気の抜けないのがフリーマントル作品の長所であるのだが、どんでん返しを受け入れる布石はやはりところどころに示唆してほしいものだ。

こういうどんでん返しならば、私でも書ける。
今回はどんでん返しというよりも辻褄併せのような感じがした。実にフリーマントルらしくない歯切れの悪い結末だ。



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Tetchy
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