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祈りの幕が下りる時



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祈りの幕が下りる時の評価: 8.07/10点 レビュー 15件。 Sランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.07pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全15件 1~15 1/1ページ
No.15:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)
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昭和、そして平成を生きた人々の人生劇場が幕を閉じる

加賀恭一郎の父親との確執は彼が初登場した『卒業 雪月花殺人ゲーム』の時点で明らかになっており、その原因が仕事に没頭し、家庭を顧みない父の母親の仕打ちに対する嫌悪であったことは書かれていた。しかし父隆正との確執については書かれるものの、離婚した母親のことはほとんど何も書かれなかった。そして今回初めて離婚して消息知れずとなった加賀の母親、田島百合子に焦点が当てられた。

旅行で行った時の印象が良かったというそれだけの理由で何の伝手もなく仙台に身を落ち着けた百合子。瓜実顔の美人ですぐにスナックの経営者に気に入れられ、ママに落ち着き、彼女の評判で店も繫盛し出した百合子の人生はしかし一般女性の幸せとは程遠いものだ。たった1Kの部屋で16年も過ごした彼女の心の謎はいかばかりか。

そして田島百合子の人生に一時のみ交錯した綿部俊一という男性。それが現在加賀の捜査する事件と密接に絡み合う。

謎めいた母親の過去と滋賀の1人の女性の東京での不審死。この何の関係のない事件が16年の歳月を経て交錯する。決して交わることのないと思われた2つの縦糸が1人の謎めいた男性を横糸にして交わっていく。
実質的な捜査担当者である捜査一課の刑事で加賀の従兄の松宮と図らずも母の過去の男と対峙することになった加賀。彼らが事件の細い繋がりを1本1本解きほぐしていくごとに現れる意外な人間関係。次々と現れる新事実にページを捲る手が止まらない。この牽引力はいささかも衰えず、まさに東野圭吾氏の独壇場だ。

物語が進むにつれてさらに人生が織り成す奇縁という深みに捜査の手は入り込んでいく。
犯行の犠牲者となった押谷道子。彼女が訪ねてきた女優の角倉博美。特に角倉博美が背負ってきた人生が実に重い。

気の弱い父親が貰った若い母親は町の小さな洋品店で一生を過ごすことに嫌気が差し、男を作って逃げていく。しかも家の実印を持ち出し、家族に多額の借金を負わせる。もはや店の経営も成り立たなくなった父親は絶望して飛び降り自殺し、角倉博美こと浅居博美は施設に預けられ、そこで観た演劇に感動して女優の道を進むことを決意し、上京して見事夢を成就させ、現代では演出家としての地位も確立しようとしている。

まさに夢のようなサクセスストーリーだ。

しかしそこには隠しておいた苦い過去があった。それは彼女の父親が深く関わっている。

そしてこの変転する1人の奇妙な男の人生の影に原発が絡んでいる。

『天空の蜂』で当時ほとんどの人が注目していなかった原発の恐ろしさを声高に説き、その18年後、改めて東野圭吾氏は原発の恐ろしさを別の側面で説く。
身元不詳の誰もが簡単に原発で働けていたという怖さと彼ら原発従事者が一生抱える後遺症の恐ろしさを。

実は私にはここに書かれなかったもう1つの真実があると思うのだ。
なぜ加賀の母親田島百合子は亡くなったのか?その死因については語られない。彼女の後見人であった宮本康代の話で綿部俊一と付き合うようになってから体調を崩すようになり、店も休みがちになった、そしてとうとう彼女は衰弱死してしまうとだけ書かれている。

私は田島百合子は原発作業者の綿部と付き合うことで自らも被曝したのではないかと察する。しかしこれは職業差別に通じるので敢えてそこまで作者は書かなかったのではないかと思う。

また作中で登場人物の一人が述べる台詞が辛辣だ。

「原発はウランと人間を食って動くんだ(中略)作業員たちは命を搾り取られている」

事件の真相はまたもやなんとも哀しい。

加賀が日本橋署配属となり、そしてそれまでの捜査スタイルから町に溶け込もうとする、云わば地域に根差した巡査のような役割を担っていたのが『新参者』からの特徴だったが、それがまさか亡き母と生前親しくしていた人物を捜すためだったというのは驚きだった。
この辺の構成が実に巧い。

そして加賀シリーズには他の東野作品にない、一種独特の空気感がある。
自身の肉親が事件にも関わっているからか、従弟の松宮も含め、家族という血と縁の濃さ、そして和らぎが物語に備わっているように感じるのだ。だからこそ物語が胸に染み入るように心に残っていく。

この和らぎは加賀が抱えていた父隆正への蟠りが『赤い指』にて解消されたからではないだろうか。
彼は家族の中の問題に踏み込むことこそが事件を真に解決するのだと『赤い指』で述べる。そして父に逢わずに看護師の金森登紀子を介して将棋を打つ。それが彼が父と最後にした「対話」だった。

そして今回もやはりすれ違いが生じた夫婦に纏わる哀しい物語だ。
田島百合子と加賀隆正夫婦、浅居忠雄と厚子夫婦。
その2人が離婚する理由の違いはあれど、どちらも夫婦仲がこじれた結果の悲劇だ。
しかしその2人の道のりに数多くの人間が巻き込まれ、その1人として加賀恭一郎がいた。人生とはなんとも奇妙な旅なのだと思わされる。

そしてこの2人が望んだのは我が子の幸せ。わが子の幸せを願わない親はいない。ただ同じ1つの思いでこれほどまでに境遇が変わる。それもまた人生。

また橋の謎の真相がこれまた泣かせる。
そう、加賀恭一郎シリーズが持っている独特の空気感にはどこか昭和の匂いが漂うのだ。
人形町、水天宮、日本橋、そして明治座。日本橋署に“新参者”として赴任してきた加賀が相対してきたのは過ぎ去りし昭和の風景、忘れ去られようとしている情緒や風情だ。
そして今回の事件の発端となった角倉博美の人生を変えるようになった事件が起きたのは30年前。まだぎりぎり昭和だった時代だ。このシリーズはまだ地続きで残っている昭和の残滓を加賀が自分の家族のルーツと共に探る物語となっている。

今回も東野劇場による演目に感じ入ってしまった。
登場人物たちの人生は傍から見れば不幸にしか見えない。
狭い部屋で必要最低限の物だけを持ち、日々を暮らしてきた。人生を思わぬ形で踏み外した2人が思いもかけない形で巡り合う。そんな不幸な境遇だからこそ悔恨にまみれた中で唯一自分たちの子供の成長を幸せの拠り所になった魂の充足。それ以外何もいらなかった2人。
でもたとえ幸せを感じていたとしても哀しすぎるではないか。そんな割り切れなさが本書の幕が下りた時、残った。

加賀はまたどんな事件と遭遇し、どんな人生とまみえるのか。
いやそれに加え、父の死を看取った金森登紀子を1人の女性として、伴侶として迎えるのか。そしてその時の加賀は?次作への興味は尽きることがない。
暗い事件が多いから、哀しい人々が多いから、父と母の死を乗り越えた加賀の明るい未来に希望を託そう。


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Tetchy
WHOKS60S
No.14:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

祈りの幕が下りる時の感想


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mick
M6JVTZ3L
No.13:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

本日よりロードショー公開

本日よりロードショー公開される「新参者」シリーズ完結編。
先程「王様のブランチ」で主演を務める阿部寛、ヒロイン役の松嶋奈々子、加賀の従弟役の溝端淳平が出演していたのを見た人もいるであろう。
その名の通りの豪華俳優陣で今回の作品がシリーズラストとなるそうだが、先程、阿部寛がこんなことを言っていた。
「東野さんが書いてくれれば、次もあるかも。。。」
また、溝端淳平もドラマ時代を振り返り、「もう足掛け20年で、最後となるのが悲しい」とも。

完結編と言われる通りの内容で、今回は加賀の過去と密接に関わった殺人事件を涙、人情で解き明かしていく。
特にヒロインの過去で涙ボロボロになるであろう。映画館で見る方は必ずハンカチ持参をお願いしたい。
また、CMや今日のブランチで見た感じでは、原作と劇場版とでは若干ラストに変更があるようにも感じられる。
是非、原作を読んだ方はその違いを堪能してもらいたい。(かくいう私もであるが)
そして劇場で初めて見た方は、必ず原作も読んでもらいたい。

ところで、「新参者」シリーズはこれで終わりそうだが、また加賀恭一郎が次の所轄で奮闘する物語を期待する。
東野圭吾様、是非是非、新シリーズ開幕の構想を練って下さい。宜しくお願い致します。
小説としての評価は、分量、読み易さ等全てにおいて文句は無しの100点満点である。

yoshiki56
9CQVKKZH
No.12:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

祈りの幕が下りる時の感想

第48回吉川英治文学賞受賞作。新参者(日本橋)シリーズ最終章として相応しい、哀しい家族の物語でした。少々プロットが複雑で途中分かり辛かった所が有りましたが、見事な着地を決めた流石の筆力には脱帽です。「白夜行」、「容疑者X」を思い出させる読後感で、エンタメ方向では無く悲劇方向に振れた東野作品は深い余韻が残り、面白かった、と簡単に一言では言いたくない。加賀シリーズの初期作品はもう記憶に無いので再読して見たいですが、勿論今後も新作を書き続けて欲しい。本作が加賀シリーズの最終章では無いと信じてます。

なおひろ
R1UV05YV
No.11:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

祈りの幕が下りる時の感想

加賀シリーズ、なんらかの節目を感じる。次の展開が気になります。期待したい。

kmak
0RVCT7SX
No.10:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

祈りの幕が下りる時の感想

事件解決までの課程は、ちょっと物足りなさを感じたが、最後の加賀恭一郎への手紙には、ジーンときてしまった。母の息子への思いというものが溢れていて感動した。
でも、最近の東野圭吾の作品は原発問題をサラッと入れてくるから、何となく物語にのめり込めなくなってしまう。

松千代
5ZZMYCZT
No.9:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

祈りの幕が下りる時の感想

テーマは親子愛でしょうか。
歪な形と言えますが、父娘の愛情の深さを痛感させられました。
物語の中心となる父娘には、かなり同情的な読み方になってしまいましたね。
正直、もっと違う方法があっただろうに、と思うものの、かと言ってじゃあどうするのが正解だったのかと聞かれても言葉に窮してしまいそうです。
裏切られて残された者の苦しみ悲しみ、ってな作品は数多く読んできた記憶がありますが、父と娘ってのが私にはツボだったかも知れません。

人間関係はかなり複雑となる今回の事件ですが、加賀母子も相関図に登場します。
これまでのシリーズで謎のままとされていた、加賀の母親の失踪の理由、そして加賀が日本橋の所轄に固執した理由が明らかにされました。
本庁復帰が決まり、私生活の方でも変化がありそうです。
新たなる加賀恭一郎の幕が開けられるのでしょう。
次回作を楽しみにしたいと思います。

梁山泊
MTNH2G0O
No.8:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

祈りの幕が下りる時の感想

良かったです。加賀シリーズで久々にじわっときました。

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ぺこりん12
M5MH63SF
No.7:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

涙がこぼれました

スケールは大きくありませんが、展開がドラマチックでした。

わたろう
0BCEGGR4
No.6:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

祈りの幕が下りる時の感想

ストーリーについては

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サイ
ESRN4BQH
No.5:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)
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テーマもテクニックも古いが、読ませる

刑事・加賀恭一郎シリーズの2013年の書き下ろし作品。今回、捜査の主体が従兄弟の松宮刑事なので、スピンオフと言えなくもないが、登場人物が加賀を軸にしていることや、捜査の方向性を決めるのが加賀であることを考えると、加賀シリーズの作品と言える。
自作の舞台を明治座で成功させた演出家・角倉博美は、つい数日前に、30年ぶりに自分を訪ねてきた故郷の中学時代の同級生が葛飾区小菅のアパートで殺害されたことを知らされる。被害者の身辺捜査の過程で、松宮たち捜査陣は角倉博美が何らかの事情を隠しているのではないかと疑問を持ち始める。さらに捜査陣は、新小岩のホームレス殺害事件との関連性を発見したが、その事件の証拠物の中に、数年前に仙台で死んだ加賀の母親の遺品と関連するものがあった。果たして、犯人は加賀の関係者、あるいは角倉博美の関係者なのだろうか・・・。
テーマは、不幸な生い立ちの子供が成功したのだが、その絶頂のときに、影に隠されてきた悲しい過去が露呈して行くという、これまで数限りなく繰り返されてきたものだし、ホームレスの人物入れ替わりというのも、東野圭吾自身も書いてきたテクニックである。だからといって凡庸な作品にならないところが、東野圭吾の実力。謎解きも含めて、最後まで飽きさせない。

iisan
927253Y1
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

触れるからには・・・


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ショボタン
G1380KCM
No.3:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

祈りの幕が下りる時の感想

とうとう我慢できずに読んでしまった。加賀恭一郎シリーズのあいだ3冊飛び抜かして。スゴい素晴らしい内容でした。途中で犯人が大方わかってくるのですが、最後まで人情味溢れる物語が続いていきました。シリーズの節目になる作品です。

マグル
ZH9M7YFR
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

祈りの幕が下りる時の感想

すごいドラマ的な内容で、絶対ドラマ化されるはずです。ラストには、泣きだそうくらい悲しかった。東野さんの得意な作風です。是非、読んでねみんなさん!

CasT_EyE
5SSX46FU
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

祈りの幕が下りる時の感想

加賀シリーズの最新版。これまでの話なども絡み合って、面白い内容となっている。ただ、最後が少し強引な展開なので、残念な感じはするが、これまでの謎が少し解けて、良かったと思う。

ビッケ
K1LY4PU3

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